並行世界の冬木市に迷い込んだ藤丸立香   作:クガクガ

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どうも。急いで書いたので誤字が多々あるかもしれません。ご了承ください。

それと後書きに今後の投稿について書いておきます。


第七節 『魔人』 後編

 「なぜここに?」

 

 「助けに来ましたよ……ってのは建前で、目的はあいつですよ、王様」

 

 右手に握る剣の先端を黒い外套のサーヴァントへと向ける。

 

 「よう、アーチャー…じゃねえ、リーパーだったか。今回は敵みたいだからぶった切ってやるよ」

 

 「――正直お前が敬語なんて使えるとは思ってなかった」

 

 暗く、冷たい声がフードの下から流れ出る。

 

 「おいおい、久しぶりに会って言う言葉がそれかよ」

 

 「別に大した時間も経ってないだろ」

 

 「ん、確かにそうか。いまいち時間の流れがわからなくてな」

 

 まるで友人であるかのようにフランクに会話をする二人。

 その二人を黙って見つつアルトリアはとあることを考えていた。

 

 (やはりあの声聞き覚えが…)

 

 先ほどアサシンが会話していた時から思っていた。このリーパーというサーヴァントの声にはどうも聞き覚えがある。

 しかし、元と違いすぎるのか思い出すことができない。

 

 「…そういえばお前あの後どうなったか知ってるか?」

 

 向けていた剣先を一旦下げ、ベイリンが問う。

 

 「あの後?」

 

 「とぼけんなよ。救世主を倒した後のことだ」

 

 「それのことか。アンタのマスターは無事だよ。俺もあの後、そこまで長い間現界していたわけじゃないが、心配する必要はない。アンタの呪いの影響も受けていなかった。砂川愛梨は先の時代へと進んでいる」

 

 「…そうか」

 

 ベイリンが安堵したような表情に変わった。

 よほど安心したということなのだろう。

 

 「と、その口ぶりだとやっぱりお前はあの時代より後のサーヴァントだったのか」

 

 「どうだろうな…」

 

 そこでリーパーが視線をアルトリアオルタのほうへと移した。

 

 「なんだ、話はもういいのか?」

 

 「俺から聞きたいことはないし、十分だろ。それにアンタは早くここから離れたいだろ?」

 

 「………」

 

 彼らの会話の最中に移動してしまおうかとアルトリアは一度考えたが、それをしなかった。二人の会話が気になったからとかではなく、単純にリーパーがこの場から逃がしてくれるとは思わなかったからだ。彼はほぼノーモーションで正確に投擲を行えるので、むやみに動くのは躊躇われた。

 

 「向こうには槍兵が行ってるはずですよ」

 

 一応敬語を使ってベイリンが伝えた。

 

 「とはいってもあのアサシンは小賢しいやつなんで、なるべく早く行ったほうがいいですよ。ま、そのためにはこいつが邪魔なわけだが」

 

 「…俺に与えられた命令はお前たちの抹殺だ。悪いがここで死んでもらう」

 

 そう簡単に逃がす気はない。

 むしろリーパーは二人を殺す気でいる。

 

 「早速だが、終わらせよう」

 

 様子が変わった。

 アルトリアはリーパーが何か仕掛けてくるのだと思い、警戒した。

だがベイリンは受け身の彼女とは違った。彼は一目散に走り、リーパーとの間合いを詰めたのだ。

 

 「――させるわけないだろ」

 

 「流石に無理があるか…」

 

 ベイリンが剣を振るうも、難なく黒鍵によって受け流され、刀身が当たることはなかった。

 それだけではない。受け流したのとは反対の手を使い攻撃へと転じる。

 繰り出される三つの斬撃、ベイリンは二本目の剣を取り出しそれで防いだ。

 

 「ハッ! 残念だったな」

 

 馬鹿にするような笑みをベイリンは浮かべる。

 

 彼はリーパーの戦闘スタイルをある程度把握している。

 近接戦闘で彼は基本的に一度最低限の動きで攻撃をやり過ごしてから、攻撃に移る。そのことを知っているベイリンは見事に防御に成功した。

 

 「ああ、そうだな」

 

 「ッ!」

 

 しかし、自分の動きが読まれていることをリーパーは想定していた。

 防御の薄い足へと刈り技を食らわせ、体勢を崩させる。

 すかさず追撃。リーパーは黒鍵を振り下ろそうとした。が、そこで黒い斬撃が彼を襲った。

 まともに受ければ無事じゃすまない。攻撃を中断し、リーパーはその場から離れる。

 

 「これで先ほどの貸しはなしだ」

 

 ベイリンの傍に立つとアルトリアがそう言った。

 彼は少し驚いた顔を見せた後、笑った。

 

 「…了解。あの時代の王だったのがあんただったら俺は文句なしだったなぁ」

 

 「私が貴様の王でも結末は大差なかっただろうがな。…どちらも変わらない終わり方だ」

 

 「そんなもんか…」

 

 「そんなものだろう」

 

 結局は過ぎ去った出来事。

 もう結末は決まっているし、わかりきっている。

 だから過去の振り返りなど終わりだ。

 二人はリーパーの方へ意識を向ける。

 

 「あいつの宝具は絶対に発動させるな。一人は確実に死ぬ」

 

 「――わかった」

 

 『殺される』ではなく『死ぬ』とベイリンが言ったことが気になったが、それを聞くのは後回しにし、返事をした。

 

 「――やる気になってるところ悪いが、今回は切り上げる」

 

 アサシンと士郎がいるはずの方向を見ながらリーパーが予想外な言葉を口にする。

 

 「なんだ。流石に二対一じゃ勝てないか?」

 

 ふざけた冗談だ。ベイリンは知っている。リーパーが宝具を発動させればもはや数の有利など関係ないことを。

 

 「いや、どうやら器が壊れたらしい」

 

 「あ? 器ってなんだよ」

 

 「…そういえばあの時は中身ごと殺したのか」

 

 一人でリーパーは納得をしている。

 

 「おい、何の話を――」

 

 「助けたいなら急げ。死ぬぞ、あいつ」

 

 そう言って二人に背を向け、リーパーは立ち去ろうとする。

 

 「…待て」

 

 一度躊躇ったが、アルトリアが声をかける。

 そこには敵意も戦闘の意思もないようだった。

 それを感じ取り、リーパーは立ち止まって振り返った。

 

 「なんだ?」

 

 「その顔を見せろ」

 

 「………」

 

 聞き覚えのあった声の確認。思い切ってアルトリアは尋ねることにした。

 

 返ってきたのは言葉ではなく、フードの下から向けられる視線。リーパーは静かにアルトリアのことを見つめる。

 

 「…まあ、いいか」

 

 そう言って彼はフードを掴み、上げた。

 

 「――貴様…」

 

 アルトリアの目に移ったリーパーの顔は――

 

 

***

 

 

 力なく地面に落ちたアサシンを式は見ていた。

 

 「なんでいるんだ、お前」

 

 衛宮邸にいるはずの式がここにいるのはおかしな話だった。

 

 「助けられて第一声がそれなのか?」

 

 「…あんがとよ。――で、もう一回聞くがなんでここにいるんだ?」

 

 「さぁ…、なんでだろうな…」

 

 本当にわかっていないようにも見えるが、さすがにここにいる時点でそれはないはずだ。クーフーリンは訝しみつつも自分を拘束していた黒い手を槍で消し去る。

 

 「にしてもなんだったんだ。この手は」

 

 シャドウサーヴァントと似ているようにも思えたがどうも違うように思えた。宝具という可能性は十分にあるが…。

 

 「…それはまた後でもいいか」

 

 式の様子がおかしいことに気づき、クーフーリンは彼女の視線の先へと目を向ける。彼女が見ていたのは地に落ち倒れたアサシンだった。

 その死体を式はじっと見つめている。

 

 「おい、どうしたんだ? もう死んでるんだろ?」

 

 式の直死の魔眼。その能力についてはクーフーリンも知っている。

 だから今の一撃でアサシンが絶命したのだということも知っている。

 

 「――――」

 

 式は応答をせずにアサシンを視界に捉えている。ただじっと観察するように彼を見る。

 

 「――! まずい…!」

 

 式はソレに気づき、アサシンも元へと駆けた。

 だがすでに手遅れだった。

 考えるべきに行動しておくべきだったのだ。まだ右腕には『線』が残っていたのだから。

 

 「が……ッ!」

 

 式が吹き飛ばされ、道の端に生えた木に背中から激突する。

 

 「なんだ…、あれ……」

 

 ここまで状況の変化についていけず黙っていた士郎が口を開いた。

 

 彼が目にしたものはあまりにも異形で、気味が悪くて、到底この世のものと思えるような存在ではなかった。だから無意識のうちに声が出てしまっていた。

 

 「魔人…ってところか。だいぶ気持ちわりぃな」

 

 アサシンは死んだ。間違いなく殺された。

 けれど彼の腕は違った。それがアサシンの体が死んでも消滅しなかった理由。

 

 魔人が受肉したのだ。

 

 アサシンの体が変形する。人体とはかけ離れていく。

 

 「ギ、グゥゥゥウゥゥ!!」

 

 式を吹き飛ばした魔人は咆哮した。

 明らかに人間の声帯から発することのできない音をその場に響かせる。

 

 「完全じゃないみたいだが…」

 

 直後、もはや人型でもなくなった魔人の体から数本の腕が伸び、クーフーリンを襲った。

 彼は槍を回転させ、その全てを消し去った。

 しかし――

 

 「…厄介だな」

 

 微塵もダメージを受けている様子はない。それどころか切断した分だけ新たに体から腕が出現した。

 

 「おい、ランサー」

 

 「坊主は引っ込んでな。というか逃げろ。これから守り切れる自信ねぇぞ…」

 

 質量保存の法則など無視して目の前の魔人の体は膨張を継続する。

 空気中のマナを吸い取って成長しているのだ。

 

 「ったく…。面倒くせぇ置き土産だな」

 

 クーフーリンの宝具と魔人の相性はこれ以上ないほど悪い。というのもそもそも彼の槍は対人戦に特化しているものであって、人外との戦闘には向いていない。さらに今の魔人に穿つ心臓がない。これでもう彼の宝具は封じられたようなものだ。

 

 「――弱音など珍しいな」

 

 クーフーリンの横を黒い斬撃が通過する。

 その斬撃は魔人を真っ二つに切り裂く。が、

 

 「…と思ったが、これは確かに厄介な手合いのようだ」

 

 切断面と切断面から糸のようなものが伸び、二つの体を繋ぎ止める。そして再生を開始した。

 

 「セイバーか。無事だったみてぇだな」

 

 斬撃を放ったのはセイバーことアルトリアオルタである。

 

 「ああ」

 

 軽く返事をしたアルトリアオルタは士郎の前へと移動した。彼を守護するものとして、アルトリアは前に立ったのだ。

 背中越しにアルトリアが士郎に声をかける。

 

 「すまなかった。私が油断していたせいで貴様を危険にさらした」

 

 「――――」

 

 微かに見えるアルトリアオルタの横顔。

 彼女の言葉を聞くたびに、あの時の彼女とは違うのだと思い知らされる。

 でも――

 

 ――心が痛い

 

 「いや、無事だったんだから謝る必要はないぞ。むしろそっちも大した怪我してないようでよかった」

 

 「――そうか」

 

 アルトリアは前へと意識を向ける。

 

 「…なるほど。あれが中身ってわけか」

 

 双剣を握るベイリンが魔人を見て先ほどのリーパーの言葉に納得したようだった。

 

 「なんか説明の必要なさそうだから本題に入るぞ。見ての通り異常な再生速度なわけだが、どうする?」

 

 アルトリアの斬撃によって切られた部分の再生はすでに終わろうとしている。

 

 「残念ながら俺は無理だ。あの再生能力は超えられない。宝具使えば行けるだろうが、ここで使うもんじゃないからな」

 

 「まあ、俺も無理だ。あいつと俺の槍じゃ相性が悪すぎる」

 

 「となると私になるが…」

 

 残されたのはアルトリア。確かに彼女の剣なら魔人を再生させることなく蒸発させられる。しかし、

 

 「いいのか? この道を抉るぞ?」

 

 「昨日アーチャーがな、夜が明ければ町は元通りになるとか言ってた。理由聞くの忘れてたが、嘘じゃないことは確実だろうから、宝具くらい撃っても問題ないだろ」

 

 「大丈夫なのか? その信頼は」

 

 何やかんやクーフーリンがエミヤのことを信頼してるのはこの際どうでもいいのだが、アルトリアの中に本当に大丈夫なのかという心配があった。

 

 「グヴゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 再び響く咆哮。

 魔人は完全に再生を遂げた。

 

 「悩んでる暇はない…か」

 

 これ以上悪化する前に消し飛ばす。

 おそらくそれが最善だ。そう判断して彼女は宝具を発動させようとした。

 

 「――待って。それじゃあ確認できなくなる」

 

 穏やかで大人びた声がアルトリアを制止する。

 

 「両儀式。なんでここに…いや、貴様は…」

 

 木に打ち付けられていた式がいつの間にか立ち上がっていた。

 彼女はゆっくりと歩き、魔人との距離を詰める。

 

 「そうか、お前の魔眼なら…」

 

 クーフーリンの思った通り、式の『直死の魔眼』なら再生能力など関係ない。

 即座に絶命させられる。

 

 「あの触手みたいな腕が邪魔だろうから、俺らが援護を――」

 

 管全体ではないからか知性は欠如しているようだが、何かが近づいて来れば魔人はそれに対して間違いなく攻撃を仕掛ける。あの無数の腕は距離を詰める際、確実に邪魔になるだろう。だからクーフーリンたちがそれを防ぎ、式が斬りつけるというのが正解のはずだ。

 けれど、

 

 「――いらないわ」

 

 『彼女』は不要だといった。

 

 少女は間合いに入るために駆ける。先ほどとは違って邪魔になる腕が多いため、当的という選択肢は存在しないのだ。

 

 「ギ、ギ、ギ、グゥゥゥ!!」

 

 案の定、魔人からは無数の手が生え、式を襲った。手の数は先ほどの比ではない。

 

 「――ふふ」

 

 口角を上げ、楽しそうに彼女は笑みを浮かべた。

 

 襲ってくる腕を彼女はことごとく躱す。

 掠ることもなく、その全てを最低限の動きで回避し、近づいていく。

 

 そして、彼女のナイフは魔人を切り裂いた。

 

 一撃。たった一撃で魔人はその命を終えた。

 

 

***

 

 

 「おい、どこ行くんだ」

 

 魔人は死に、アサシンの体も今度こそ完全に消滅した。

 そのすぐ後、何事もなかったかのように少女は歩き始めた。

 クーフーリンが声をかけられたからか、彼女は立ち止まり振り返った。

 

 「ねぇ、来てくれる?」

 

 「え?」

 

 クーフーリンへの返答などではなく、彼女は士郎を呼んだ。

 

 「確認したいことがあるの」

 

 「?」

 

 何だろうかと思いつつ、士郎は彼女の後を追った。

 クーフーリンとアルトリアは一度顔を見合わせた後に彼と同じく後を追う。

 

 しばらく歩いたところで彼女はまた士郎に声をかけた。

 

 「この辺りかしら?」

 

 「…?」

 

 「昨日、戦闘があったのはこの辺りでいいのかしら?」

 

 ようやくそれで質問の意味を理解できた士郎は周りを見回した。

 昨日バーサーカーが現れた時のことを思い起こす。

 

 「ここだと…思う」

 

 自信がなさそうに士郎は言った。というのも状況が違うのだ。昨日の戦闘で破損していたはずの道が、まだ一日しか経過していないというのに完全に修復されている。

 

 「そう――」

 

 彼女は数歩歩き、綺麗で小さな手を地面につけた。

 

 「――上書き……それともテクスチャの巻き戻しのほうが正確かしら。記憶からの再現だから、時間の巻き戻しでも何でもない。これならあの人形さんが気づけなくても仕方ないわね」

 

 「なにかわかったのかよ」

 

 ぶつぶつと呟く式の背中にクーフーリンは尋ねる。

 

 「ええ、もう十分よ。それに、沈んだ時を選んだからそろそろ限界ね…」

 

 「あ? どういう――」

 

 「――ここは…?」

 

 朦朧としている中、式は頭を抱えながら状況を確認するように周りを見た。

 

 「…あれからどうなったんだ?」

 

 式の記憶は吹き飛ばされたところで途切れている。だから自分の周りにいる人物たちに問うた。

 

 『彼女』は再び沈んだ。




リーパーさんの宝具は後々出てきます。
気になることがある場合は感想で書いてもらえば、可能な限りは答えます。

今後の投稿についてなんですが、これからまた忙しくなるといいますか、書きたいオリジナル小説があるので投稿ペースがここからさらに落ちます。もしかしたら今月の更新はもうないかもしれませんが、ご了承ください。
そこそこの評価をもらって、意外と多くの人に見てもらっているようなので、失踪することは百パーセントないです。そこは安心してもらって大丈夫です。

では、また次回。
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