並行世界の冬木市に迷い込んだ藤丸立香   作:クガクガ

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いよいよ彼と彼女が出会います。


第二節 『再開の夜』 後編

 「こっちも平和だ」

 

 立香たちは新都に足を運んでいる。歩いた限りでは深山町と同じくこちらも平和そのものだ。

 

 「そろそろ公園の方に行こうか」

 

 「はい。いい時間ですね」

 

 別れる前に決めた集合時間が近づいてきたので、移動を開始する。場所は立香が知っているので迷うことはない。

 

 「マスター」

 

 エルキドゥに呼び止められる。

 

 「なに? エルキドゥ」

 

 「さっきの町でサーヴァントの反応が二体。片方は知らないサーヴァント。もう片方は知ってる。カルデアのサーヴァントだ」

 

 「カルデアのサーヴァントって誰?」

 

 「僕が来るよりも前からカルデアにいる………そう、両儀式だ」

 

 「式さん?」

 

 「うん」

 

 カルデアのサーヴァント。その中でも英雄ではない両儀式が来たと言うのは立香にとって驚きだった。

 

 「合流したいけど、もう一人のサーヴァントが気になるな…」

 

 敵か味方か。この世界に何故来たのかわかっていない状況で、何か事情を知っている可能性のあるサーヴァントは重要だ。立香としてはできれば敵ではないことを祈りたい。

 

 「急いで向こうに行こう」

 

 善は急げ、だ。面倒なことになる前に合流しようと深山町に行って式と合流する。

 

 「――その前に悪い知らせができたよ。こっち側にもサーヴァントだ」

 

 「そのサーヴァントは知ってる?」

 

 「似たのは知ってるけど…いや別物だ。彼とは異なってる」

 

 エルキドゥの目が細くなった。それは現れたサーヴァントに対する警戒の現れだ。

 

 「行くならこっち側のサーヴァントがいいと思うよ。多分普通じゃない。向こうだ」

 

 エルキドゥが指をさしたのはまだ立香たちが足を運んでいない方向だった。

 

 「わかった。町ならエミヤがいるからそっちは任せよう。俺たちはこっち側にいるサーヴァントのところに行く」

 

 

***

 

 

 赤い槍は男の振るった剣を受け止めている。

 

 「刃物なんか振り回しやがって、場所を考えろ。危ねえだろ」

 

 「お前たちも同じだろうが」

 「確かにそうだな」

 

 男が手に力を入れて剣を無理やり押し込もうとするが槍は微動だにしない。

 

 「…なるほど、お前は強いらしい」

 

 男は後退して一旦クーフーリンとの距離を取る。

 

 「召喚されてから初めての戦闘だ。この際敵か味方なんてどうでもいい。槍兵、削り合おうぜ、命を」

 

 「ハッ! おもしれえ。俺も最近本気の命の削り合いはしてないんだ。相手になってやるよ、剣使い」

 

 クーフーリンの姿が変わった。いつもの青タイツだ。つまり彼は戦闘態勢にある。

 

 「おい、待てよ。俺は状況がわかってないんだ」

 

 「わりいな。余裕がねえんだ。あいつが大人しく俺らの話を待つように見えないだろ。それに純粋にあいつは強い。話は後でするから下がってな」

 

 「――わかった」

 

 不満はあるが、クーフーリンの言った通り男が説明の時間を与えるとは思えない。渋々式は彼らから離れた。

 

 「用は済んだよな。なら行く――」

 

 最初に動いたのはクーフーリン。後手に回るのは不味いと先手を仕掛ける。

 まずは槍による刺突。鋭利な刃先は高速で動き何度も男を襲う。だが男はそれら全てを回避する。身体を動かして避け、危険だと判断した攻撃だけ体にあたる直前に剣を使い槍の軌道をずらす。

 十度ほど金属音が鳴り響いたところで、クーフーリンがさらに仕掛けた。途中までは腹部への刺突。しかし男が剣で軌道をずらそうとした瞬間に槍を跳ねあがらせて斬り上げた。

 そのフェイントはあまりに自然で並のサーヴァントでは反応が間に合わず切り裂かれてしまうだろう。けれど男は違った。

 

 「――紙一重だな…」

 

 男は反応し、完全に回避してみせた。男の直感などではない純粋な瞬発力の速さにクーフーリンは少なからず驚いた。

そしてそれが隙となる。

 一秒もない隙をついて男は反撃に出た。地面に対して水平に振るわれる剣、無駄のない効果的な攻撃。斬られる寸前で赤い槍はそれを防ぐ。

 

 「隙に見えたか?」

 

 確かにあれは隙だった。だが何度も死地を生き抜いてきた彼は、戦闘において致命的ともいえるその隙を埋める技量がある。

 

 剣に加えられている力を上回る力でクーフーリンは男の剣を弾いた。これで剣を使用して攻撃を回避することはできない。

 

 「喰らいやがれ」

 

 刺突というのは刃物の形状からして面積が少ないため案外避けやすそうではある。が、彼が本気で振るう槍は体を回避なんて許さない。それに男は攻撃を弾かれたことによって体勢が崩れている。いくら高い反射神経があろうと回避は不可能だ。

 

 ――だがこれはあくまで男に何も隠していなかったらの話だ。

 

 「な――――!」

 

 槍は当たることなく剣に防がれた。もちろんクーフーリンが先ほど弾いた剣ではない。

 男が右手に握っている新たな剣によって刺突は防御されてしまった。

 

 「2本目…!」

 

 二人の戦闘を見ていた式は理解した。自分が勘違いをしていたことを。

 気になってはいたのだ。剣の柄の長さが明らかに片手剣のものではないのに彼がずっと左手だけで剣を振るっていたことが。これでわかった。彼はそもそも二本剣を使って戦う二刀流なのだと。

 

 お互いに一旦後方へと下がって距離をとった。

 

 「ったく…、二刀使いかよ」

 

 どこぞの弓兵が脳内をよぎったが今はふざけていられる状態でもないので、すぐに映像を頭からかき消した。

 

 「まだ終わりじゃないだろ? 続きだ、ランサー。行くぞ」

 

 

***

 

 

 巨人は大剣を振り上げる。

 

 「くっ――――!」

 

 もう避けられない。バーサーカーの間合いに入っている。ここから少年と少女が自力で生き残る方法はない。

 バーサーカーが剣を振り下ろす。

 

 「巴さん!」

 

 「御意」

 

 少年の後方から巴御前が放った三本の矢がバーサーカーを襲う。それを受けてバーサーカーは攻撃を中断した。

 

 「ジャンヌ! そこの二人!」

 

 「わかってるわよ!」

 

 ジャンヌが立香の指示通り士郎と桜を抱え立香の後ろまで運ぶ。

 

 「ヘラクレスか…」

 

 彼らの前に立つのはギリシャの大英雄ヘラクレス。しかしカルデアにいるヘラクレスとは何かが違う。

 

 「シャドウサーヴァントか? いや違う」

 

 シャドウサーヴァントはサーヴァントの影に過ぎない。本物を模しているだけの偽物だ。それとは違い目の前に佇むヘラクレスは紛れもない本物。黒い闇に包まれているが間違いなく彼である。

 

 「巴さんいける?」

 

 「――、お任せを」

 

 いつもの戦闘服に着替えた巴御前は頼もしい声で答える。アイコンタクトだけでやってほしいことは伝わったようだ。

 

 「ジャンヌもお願い」

 

 「はいはい」

 

 二人を運び終わったジャンヌも戦闘に加わる。

 

 

***

 

 

 「大丈夫です…か…って、村正さんにパールヴァティ!?」

 

 士郎の目の前に突然現れた少年はなにやら驚いている様子だった。

 

 「…いや、まて…。ただ似ているだけ? でも瓜二つだぞ。――ああ、そういえばパールヴァティが自分と波長が合う少女を依り代にしたとか言ってたっけ。まさかそれが…」

 

 「君は…一体」

 

 自分たちを助けてくれたことは何となくわかるのだが、状況が今一つかめないのでまず何者なのか聞くことにした。

 

 「あ! すみません」

 

 士郎の声を聞いて今はそれどころではなかったと少年は謝った。

 

 「ごめんなさい。事情はあとで説明します。それよりその人は大丈夫ですか?」

 

 少年は士郎が抱える桜のことを見て身を案じているようだった。

 

 「わからないんだ」

 

 「そうですか。とりあえず…」

 

 少年が手をかざすと桜の体が数秒明るい緑の光に包まれた。

 

 「効くかは不明ですけど、一応使っておきます」

 

 「…魔術師なのか?」

 

 士郎は少年が何をしたのかわかった。少年が使った力は紛れもない魔術だった。

 

 「魔術師を知ってるんですか? なら都合がいい。時代が時代だからどう誤魔化そうか困ってたんです」

 

 士郎が魔術師のことを知っていることがわかって少年は安心したようだった。

 

 「正確魔術師ではないですけど。俺は藤丸立香、カルデアのマスターです」

 

 少年――立香は士郎にそう答えた。

 

 

***

 

 

 「動かないわね」

 

 ヘラクレスは巴御前の矢を受けてから指の一本も動かしていない。

 

 「ですが注意は怠らずに。相手はあのヘラクレス殿です」

 

 「わかってるっての」

 

 動いていないだけで隙があるわけではない。

 

 「■■■■■■■■■■■■――――!」

 

 「来ます…!」

 

 咆哮と共にヘラクレスが踏み込み、飛ぶように二人に襲い掛かる。

 彼はその大剣を叩きつけるように振るう。

 巴御前、ジャンヌはそれぞれ左右に避けるが、攻撃によって生まれた衝撃に二人は吹き飛ばされる。

 

 「角女、そっちから攻撃!」

 

 「はい!」

 

 ヘラクレスから見て左側に飛ばされたジャンヌが彼の立っている場所に炎を出現させる。

 

 「■■■■■――!」

 

 自分の体が燃える前に異常な反応速度でヘラクレスが垂直に飛び上がる。

 

 「そこです」

 

 ヘラクレスが空中に跳んだ瞬間を、巴御前が宝具で狙う。

 彼相手に出し惜しみしている余裕はない。終わらせるのなら速攻で片を付ける。

 

 「『真言・聖観世音菩薩(オン・アロリキヤ・ソワカ)』!!」

 

 胴体を狙った攻撃。寸分の狂いなく、ヘラクレスの元へ飛んでいく。

 だが巨人は空中でその矢をなぎ払い、矢が届くことはなかった。

 

 「計画通りです」

 

 巴御前の宝具を空中で斬り払った結果、攻撃はくらわなかったもののその反動で体が吹き飛ばされた。

 今の攻撃の目的はヘラクレスにダメージを与えることではなく、彼を道から外れた場所に移動させることだった。

 

 「行きますよ」

 

 「わかってる。ほら、霊体化してないであんたも行くわよ。ス馬鹿」

 

 

***

 

 

  「よし! いい感じだ」

 

 立香が望んだとおりヘラクレスを道から外させることができた。

 何故そうしたのか。理由は二つある。

 一つは助けた二人に危険が及ばないように。

 二つ目は、

 

 「王様、これで戦ってもらっても大丈夫ですよ」

 

 最高戦力であり、ヘラクレスと相性がいいギルガメッシュを戦闘可能にするため。

 彼らがこの場で戦ってしまったら、道にクレーターが出来かねないのでそうすることにした。

 

 「王様聞いてる?」

 

 ギルガメッシュからの返答がない。

 

 「マスター、僕がギルの代わりに行くよ」

 

 「それでもいいけど…。――わかった。頼んだよ」

 

 「うん」

 

 ギルガメッシュの代わりにエルキドゥがヘラクレスの元へと向かった。ギルガメッシュではなく彼が行っても問題はない。やってほしいこと一緒だからだ。

 

 「王様はここで守りをお願いします」

 

 動かないのなら仕方ない。護衛を頼むことにした。

 

 「なんだ、あんた…」

 

 ギルガメッシュは苦しんでいる少女を見ている。そのことに気付いた少年が彼を警戒する。

 

 「――――そう警戒するな雑種。ただ見ていただけだ。殺しはせん」

 

 少年はギルガメッシュから殺意ではないが、敵意を感じていた。

 

 「王様」

 

 「わかっている。貴様の身を守ればいいのだろう。問題はない」

 

 「俺だけじゃなくて、その二人もです。絶対にその人たちに攻撃しないでくださいね」

 

 「ああ」

 

 ギルガメッシュは桜から視線を外した。

 

 「はあ…。みんな大丈夫だといいけど」

 

 

***

 

 

 場所は墓地。普段は静かなそこで銃声が響く。

 

 「ちっ、効かないか」

 

 エミヤオルタの銃弾はヘラクレスには効かない。

 

 「僕がやろう」

 

 エルキドゥが墓地へと跳躍してきた。

 そのまま手のひらをヘラクレスに向け、鎖を出現させる。

 

 「■■■■■■――――!」

 

 危険だと察知したのか巨人は跳びはねる。先ほどのように空中で攻撃されないことを確認してからの跳躍。それによって鎖は躱すことはできた。

 

 「でもいいの? そんな目立つように跳んで。向こうから見えるよ?」

 

 何かが自分に向かって飛んできていることに気付いた時にはもう遅かった。どこからか放たれた螺旋状の矢によってヘラクレスの右半身が消し飛ぶ。

 

 「だから言ったのに」

 

 追撃。エルキドゥは再び鎖をヘラクレスの方へ放ち、空中で拘束した。そのまま地面に巨人を叩きつける。

 さらに追撃。ジャンヌオルタはヘラクレスへと近づき傷口に黒い剣を突き刺した。

 

 「■■■■■――!」

 

 すると途端にヘラクレスの体が燃え上がり始めた。

 

 「どう? いい火加減かしら」

 

 体外も体内も燃やされる。

 一度目の死亡。

 

 「ス馬鹿、次」

 

 エミヤオルタが左手に持つ銃を構える。

 

 「その名前はどうにかならないのか」

 

 冷たい声と同時に黒い銃から異様な弾丸が発射された。

 

 「I am the bone of my sword…」

 

 鎖を外そうと抵抗しているが無駄だ。

 

 「So as i pray…」

 

 エミヤオルタの銃弾が彼に着弾する。

 

 「『UNLIMITED LOST WORKS』……!」

 

 弾丸を中心に出現した無数の剣によってヘラクレスの上半身は破裂する。

 

 「まだ二回目だ」

 

 ヘラクレスの宝具、『十二の試練(ゴット・ハンド)』の効果がある。彼はこれによって合計十一回の蘇生がされる。つまりヘラクレスを完全に殺すには、あと九回殺して上でさらにもう一度殺さなくてはならない。

 

 「再生にはまだ時間がかかりそうだね」

 

 「ええ、ですから再生した瞬間を狙って…」

 

 ヘラクレスの上半身の再生が完了するまでに準備を整えるつもりだった。が、彼の体は再生し終わる前に溶けるようにしてその場から消えてしまった。

 

 「消えたわよ」

 

 「そのようですね。ですが霊体化とは違うように見えました」

 

 「うん。かといって消滅でもないみたいだけど」

 

 消滅でも霊体化でもない消え方をヘラクレスはした。

 そのことに別段彼らは驚いていない。なぜなら戦っていたヘラクレスがそもそも不自然だったからだ。あのような存在ならば見知らぬ消え方をしていてもおかしくないと全員思っていた。

 

 「あんたはあれが何かわかるの? 見た目はヘラクレスだったけど」

 

 ジャンヌオルタがエルキドゥに尋ねる。

 

 「あれは僕も知らない。サーヴァントではあるけど何かが違う」

 

 エルキドゥですら初めて見る存在だった。

 

 「そういえばエルキドゥ殿、先ほどの矢は一体」

 

 「私のよ」

 

 深山町で探索しているはずのクロエが茂みから現れた。

 

 「あんたなんでいるのよ」

 

 「あの赤い弓兵さんに言われたの。援護に行けってね」

 

 「――――そうですか。エミヤ殿が…」

 

 エミヤなら自分たちの戦力よりマスターの方の戦力を増やすことを優先するだろう。そこは別にいい。今気になるのは、

 

 「向こうはどうなったの?」

 

 「知らないわ。こっち大丈夫だから援護に行って来いって言われただけだから。あっちがどうなっているのかは知らない」

 

 「わかりました。ギルガメッシュ王がついているのなら大丈夫だとは思いますが、ひとまず――」

 

 「うん。早く戻ったほうがいい。さっきのヘラクレスが向こうに行ったみたいだ」

 

 「な――――!」

 

 エルキドゥの報告を受けたサーヴァントたちは急ぎマスターのもとへ移動し始めた。

 

 

***

 

 

 「こちらに来たか…」

 

 「王様…? なんて――」

 

 ギルガメッシュの小声を立香は聞き取れなかったので、彼に何を言ったのか尋ねた瞬間。巨人はどこからともなくその姿を現した。

 

 「王様!」

 

 怯えるのでもなく、戸惑うでもなく、なぜここにと考えるのでもなく、立香が最初にしたのはギルガメッシュへの指示だった。

 

 「フ……。成長したものよ」

 

 初めてであった頃の彼と今の立香を比べてギルガメッシュは笑みを浮かべる。それと同時に展開された彼の宝具。

 

 「喜べ、貴様のような贋作は本来我の手で相手をする資格を持ち合わせていないが……この雑種のささやかな成長に免じて相手をしてやろう」

 

 「■■■■■――!」

 

 ヘラクレスの咆哮。

 それは攻撃の合図などではなく、ギルガメッシュの出現させた宝具によって体を貫かれたために出た悲鳴のようなものだった。

 

 「この程度ではなかろう。贋作とはいえヘラクレスなのだ。もっと踊るがいい」

 

 際限なく宝具がヘラクレスに降りそそぐ。立香が気にしていたギルガメッシュの攻撃によってでる道への被害はもはやどうしようもないだろう。

 十秒ほど経過したところでギルガメッシュは投擲をやめた。

 

 「――――――」

 

 「まだ舞えるだろう?」

 

 「――■■■■■■――!」

 

 再生速度がカルデアのヘラクレスよりも早い。

 再び巨人は咆哮をあげる。大地は震え、空気が変わった。殺意という実体を持たないものが彼らを支配する。

 

 「消えろ」

 

 巨大な黄金色の槍が巨体をいとも容易く貫通する。

 そこでまたヘラクレスは死んだ。かに思えた。

 

 「剣を…!」

 

 動くことのできなくなった彼は立香たち…正確には士郎と桜に向けて投げつけてきた。それも尋常ではない速度で。

 

 「王様、防御!」

 

 指示を出しても彼は何故か動かなかった。守ろうとする意志は微塵もない。

 

 「――――」

 

 返事すらない。剣は立香の横を通り過ぎ、二人の目前へ。

 もう一秒もなく彼らを切断する紙一重のところで、黒い聖剣を持った少女が現れヘラクレスの大剣を当たり前のように弾き飛ばした。

 

 「セイバー…」

 

 懐かしい呼び名を呟く。

 二年前彼のサーヴァントだった少女のクラス名だ。

 なぜその名を口にしたのか。それは今自分たちを守ってくれた少女の顔とあの少女の顔が同じものだったからだ。

 

 「――――」

 

 少女は振り向くと、何も言わずに士郎のことを見つめる。

 

 少女を見え上げる少年、少年を見下ろす少女。

 その光景は、二年前に士郎が彼女を召喚したときの再現のようだった。

 




ランサーと謎の二刀流サーヴァントの戦闘は次回まで続きます。ついでに彼の真名は次の第三節でわかります。

ストックが尽きたので次回はいつになるか不明です。なるべく早く投稿するように努めます。
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