学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~   作:リコルト

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いや~学校では文化祭の準備が始まる季節になりました。受験生は参加出来ないのは、僕としてはちょっぴり辛いですね。いやマジで高一に戻りたいわ~。






後日談と原作の序章
エレナの正体と今後の方針


 

 

「うーん、スバル君の足の容体だけど、時間のかかる治療とリハビリが必要かな。次の春までには足はあまり無理をさせないでね。」

 

 

「ありがとうございます、サードさん。」

 

 

僕は足の容体を見て貰ったダイバーシティで医療にそこそこ携わる《元・調律の巫女一行》の一人だったサードさんにお礼をする。

 

 

僕が診察を終えて部屋から出ると………

 

 

「スバル君、足は大丈夫なの?」

 

 

「うん、まだ車イスでの移動は必要だけど、しっかりリハビリと治療をすれば春には治るらしい。」

 

 

「………そうなの。良かったわ。」

 

 

「お兄さんはしばらく安静しなきゃですね。」

 

 

僕の家のリビングには僕の怪我の心配をしてくれるシルヴィとオーフェリアとノエルが居た。

 

 

 

 

王竜星武祭が幕を下ろして、一日目を迎えたわけだが、今は朝から僕の家に集まっている。

 

 

 

昨日はランに今生の別れを告げた後、僕とリーネもレイナ社長達が主催するパーティーに参加した。シルヴィやオーフェリアも僕とリーネが参加するために帰ってくると、全てを察してくれた様子だった。僕もランが命を懸けた分もしっかりと生きなければならない。

 

 

 

あのパーティーの後、アーネストさんやリーネ達はそれぞれの寮に帰って行った。もちろん、シルヴィやオーフェリアやノエルもである。だけど、ダイバーシティのレイナ社長やシェインさん達は僕の家にまだ彼らを泊めるスペースが有るという理由で僕が帰ろうとすると、一緒に付いてきて彼らを泊める羽目になってしまった。

 

 

 

今は泊めたシェインさんとクロヴィスさんとエイダさんとタオさんはそれぞれ朝から久し振りのアスタリスクを楽しむ為に出掛けて行った。

 

 

 

そんな経緯もあって、実は朝からレイナ社長に話があると言われて僕の家で待っていたのだが、実は朝からシルヴィやオーフェリアやノエルもレイナ社長に僕と同じように言われて僕の家に来たのだ。

 

 

「それにしてもレイナさん遅いね。」

 

 

「そうだね。集められたメンバーから推測して多分、僕のことについて話すと思うんだけど………」

 

 

「………レイナ社長も泊まったのでしょう?」

 

 

「オーフェリアの言う通りなんだけど、実はある人を呼ぶ準備があるから出掛けているんだ。そろそろレイナ社長も帰って来る筈なんだけどな。」

 

 

そんな話をしていると…………

 

 

 

 

 

 

「待たせちゃったわね。」

 

 

レイナ社長が帰って来た声が玄関からした。そのまま僕達がいるリビングまでやって来るのだが、レイナ社長の後ろにはレイナ社長に似た童話のような服をした黒髪の同世代の女の子がいた。たしか…………

 

 

「エレナさんでしたよね?」

 

 

「エレナでいいよ。年齢も同じ位だし。」

 

 

彼女は見た目通り、童話のような可愛らしい笑みを浮かべて僕の確認に答える。この人がランが信用していて、ランの代わりをしてくれる人か。

 

 

だけど、オーフェリアとノエルは彼女を見て少々、疑っているような表情を浮かばせていた。

 

 

「……ずっと昨日から疑問に思っていたのだけれど、貴女は本当に私やノエルを手伝ってくれたあのローブの人なのよね。性格が全然違うのだけれど………」

 

 

「わ、私もあの時は怪我で意識が朦朧としていましたが、もっとクールな感じだった筈でしたが………」

 

 

僕とシルヴィはあまり分からないのだが、彼女らが言うにはエレナと会った頃の第一印象はどうやら寡黙で冷たい性格だったらしい。

 

 

「フフっ。」

 

 

すると、レイナ社長がオーフェリア達の話を聞くと、突然笑い始める。え、何か笑う要素あった?

 

 

「え~~とね、実は誤解させて悪かったんだけど、それは役作りだったんだ。レイナさんが私にスパイ活動するなら、この明るい性格は似合わないって言われたからね………ってレイナさん笑い過ぎです!」

 

 

エレナは恥ずかしそうにレイナ社長を叱る。

 

 

「フフっ。ごめんなさい、私が言ったのもあったけどギャップが激しすぎて………。」

 

 

レイナ社長は何とか笑いを堪えようとする。

 

 

「もう……話が出来ないじゃないですか。」

 

 

 

 

 

 

「…………もう大丈夫よ。」

 

 

レイナ社長は笑いを堪えることに成功して、何とかいつものテンションに戻った。

 

 

「さて、知ってるかと思うけど、この子はエレナ。一応私の後継者みたいな感じね。私が社長になり始めた頃から昨日までスパイ活動をしていたの。」

 

 

「改めてエレナです。ランからは皆さんの事はしっかり聞いています。」

 

 

レイナ社長に説明され、エレナが軽く僕達に自己紹介をして軽く頭を下げる。

 

 

「ああ、よろしくね。僕の事も気軽にスバルと呼んでくれて構わないから。」

 

 

「私もシルヴィで大丈夫だから。」

 

 

僕とシルヴィは改めて挨拶をする。

 

 

 

 

「ところで、どうして僕達が呼ばれたのか教えてくれませんか、レイナ社長。」

 

 

僕はレイナ社長に訊ねる。

 

 

「そうね………話したい事は沢山あるのだけれど、まずは昨日襲ってきた組織についてと《調律》を主に真の力を取り戻したスバル君についてかしら。」

 

 

レイナ社長は真剣な雰囲気で言う。

 

 

「そうです、教えてくれませんか。私の先生だったウルスラが関わっている組織の正体を。」

 

 

シルヴィが必死そうにレイナ社長に訊ねる。すると、エレナが代わるように答えようとする。

 

 

「ウルスラ………あのヴァルダって名乗っている人かな。……まずはシルヴィの質問に答えるね。シルヴィの先生が入っているのは《金枝篇同盟》っていう組織だね。今回、私が潜入した組織であり、そこのオーフェリアさんも入る筈だった組織です。」

 

 

そう言って、エレナはオーフェリアの方を向く。

 

 

「……そうね、私が知る限りメンバーは悪辣の王(タイラント)やそのヴァルダっていう人と《処刑刀》という正体不明の男しか居なかったはずよ。まぁ、私はあの生徒会長に間接的に参加させられた感じだからあまり詳しい事はよく分からないのだけれどね…………」

 

 

「いえ、オーフェリアさんの説明でほぼ合っています。私が見ても主要なメンバーはその人達で、問題はそいつらと同盟を組んだ組織なんです。実際私やレイナさん、ランもこの組織に近付くことが出来るかどうかを目的に活動していたんです。」

 

 

エレナは深刻そうな顔をする。

 

 

「そ、その組織は一体何なんですか?」

 

 

ノエルがその深刻さを察してエレナに訊ねた。

 

 

 

「組織名は《クトゥルフ》。名前の通りクトゥルフ神話を基にした組織で、ダイバーシティのレイナさんの前の社長達を殺したダイバーシティとは浅からぬ因縁を持つ組織です。そして、その組織の首謀者は声しか分からなかったけど、『ラブクラフト』と呼ばれる人です。」

 

 

エレナが組織名と首謀者の名前を言った。

 

 

「因みにここ最近の出来事としては、ランを殺したあの赤い薬品はシャビと呼ばれる仲間がそれを作り、スバル君を利用しようとしたのも彼らです。」

 

 

続けてエレナがここ最近のそいつらの行動を明かしていく。僕達はそれを聞いて、その組織に敵意が湧いてきた。特に、あのシャビっていう男はランの仇だから僕が倒さなければならないという気持ちで僕の心の中は一杯だった。

 

 

「そもそも、そんなヤバイ組織がどうして《金枝篇同盟》と手を組んだんですか?」

 

 

僕はエレナに訊ねる。

 

 

「それは彼らの目標がほぼ同じだからです。《金枝篇同盟》はもう一度世界を変えようとしている、一方で《クトゥルフ》は変わった世界を支配しようとする。《クトゥルフ》は彼らに協力すれば、そのまま自身の目標に繋がると考えたんでしょう。」

 

 

成る程、そういうことか。利害が途中までほぼ同じだから協力体制を敷いた訳か。しかも世界征服とかなかなか思想が危険すぎないか。

 

 

「今回のスバル君の暴走もそいつらの仕業?」

 

 

「いえ、今回の主犯は《金枝篇同盟》の処刑刀によるものです。《クトゥルフ》はあの赤い薬品の提供と最後のヴァルダの撤退に加担しただけです。」

 

 

シルヴィの質問によりエレナが答えたその話を聞いて僕の頭にはシャビと正確に見たわけではないが、包帯の男を思い浮かべる。

 

 

「……そう言えば疑問に思ったのだけれど、どうしてスバルをピンポイントに狙ったのかしら?」

 

 

オーフェリアさんが疑問そうに言う。

 

 

「それはスバルには《調律》があるからだね。」

 

 

「でもそれって…………」

 

 

「そうなの。シルヴィの言う通り、スバルにはまだあの段階では《調律》は使えなかった。そこで出てくるのが《サジット・アポロニクス》なんです。」

 

 

僕は今は無き純星煌式武装を思い出す。あれを《クトゥルフ》に取られたことは非常に悔しかった。

 

 

「あの純星煌式武装は《十二宮シリーズ》と呼ばれ、用途は知らないけど《クトゥルフ》にとっては大事なものらしい感じでした。ランが使っていた《ストライクヴルム・レオ》もその一つでランがもし破壊してくれなかったら、彼らの計画は滞りなく進行してました。」

 

 

 

「それで話を戻すと、その純星煌式武装には特殊な力があり、彼らはそれでスバルの力を取り戻させようとしたんです。ですが、これは私やレイナさんやランにとってはチャンスだと考えていました。」

 

 

「………どうしてかしら?」

 

 

「《クトゥルフ》にはスバルの真の力による戦闘力がないとおそらく倒せないからです。前社長達はかなり強い人達ばかりで、そんな人達が全滅したんです。それにスバルの真の力は《魔女狩り》で失われ、もう復活しないと推測していました。それが復活するなら私達も敵の計画に乗るしかないと思ったの。」

 

 

「……でも、それは失敗してスバルは暴走して止められなくなった。だから私達に助けを求めたわけね」

 

 

「……まぁ、そういうことだね。」

 

 

エレナは静かに頷く。

 

 

「だから私は能力を使って何とか思い通りにはさせないように未来を見て貴女達に助言をしたの。」

 

 

「待ってくれ。未来を見てきたって言ったな。エレナの能力は一体何なんだ?」

 

 

僕は思わず聞いてしまう。未来を見ることが出来るってなかなかすごいんじゃ………

 

 

「そうだね、まだ話してなかったね。私の能力は大きく分けて三つになるんだけど、一つは私の二つ名に由来する《再編》。スバルの《調律》に似ている感じで世界の在り方を私の好きなように変えられるわ。でも星辰力を多く使うし、私もあまり使わないかな。二つ目は《リ・ページ》。皆が言う未来を見る能力なんだけど、本当は未来から遡って過去に戻る能力なの。だから私は半未来人みたいな感じだね。でも、これも星辰力を多く使うし、回数制限があるから今回位しか沢山使わなかったし、暫く私もこれは使えないの。そして最後だけれど、これはスバルの真の力に関わるからいつか話をするね。」

 

 

 

僕はエレナの能力を聞いて驚く。まだ二つしか説明してないけど、もうその時点でなかなかチートである。こんな人がダイバーシティに居るなんて初めて聞いたんだけど。

 

 

「というわけで結果としてはランという犠牲は払ってしまいましたがスバルの能力は戻ったわけです」

 

 

「そうだね………」

 

 

 

エレナの話を聞いて、僕やシルヴィ達は頷く。けど、やはりランの存在が大きかったからその結果にならずには済んだかもしれないと心の中で思う。

 

 

 

「………スバル君。ランは最後まで親友として命を懸けて貴方のために尽力したの。それを無駄にしないで頂戴。だから無理に気持ちを変えなさいとは言わないけど、《クトゥルフ》を倒すために私達に協力をしてくれないかしら?」

 

 

レイナ社長が僕の思い悩んでいる様子を察して、僕を慰めようとする。

 

 

………そうだな。ランが命を懸けたんだ。僕がそれを無駄にするわけにはいかないな。

 

 

「……ランもレイナ社長に協力していたんですよね。だったら僕もやるべきことは決まっています。僕はレイナ社長達の計画に協力しますよ。」

 

 

僕はレイナ社長に返答をする。

 

 

「スバルの同意が得られて良かったわ。ならここからはこれからの方針について話すわね。」

 

 

「はい、お願いします。」

 

 

僕はレイナ社長による方針を聞くことにした。

 

 

「まず、《クトゥルフ》と《金枝篇同盟》は今回の件で暫くは計画が進行できないから二、三年は大きな行動を起こさないでしょう。私達はその間にスバル君の治療と能力の向上に重点を置くわ。貴女が私達の対抗できるだろう戦力だからね。あと、シルヴィアさん。」

 

 

「はい、何ですかレイナさん?」

 

 

「貴女もこの計画には参加するわよね。でしたらスバル君のサポートをしてくれないかしら。戦闘面だけでなく、生活の面でもね。」

 

 

「分かりました。ですが、私もスバル君と同じ計画に参加してるわけですから主にウルスラについての情報を私にもくれないでしょうか?」

 

 

「お安いご用よ。貴女にも十分その権利はあるわ。あと、オーフェリアもダイバーシティの一員として一足早くこの計画に賛同してくれるから彼女とも仲良くしてスバル君のサポートをしてくれると嬉しいわ。」

 

 

なるほど、オーフェリアもすでにこの計画を聞いていたのか。まぁ、彼女も《金枝篇同盟》についても因縁があるから参加すると思うと納得できる。

 

 

「あ、あのレイナさん。」

 

 

すると、ノエルがレイナ社長に声をかける。

 

 

「何かしら?ノエルちゃん。」

 

 

「あ、あの私もその計画に入れてくれないでしょうか。私はシルヴィアさんやオーフェリアさんとは違って組織に因縁などはありませんが、私もお兄さんのサポートをしたいんです!」

 

 

「………貴女が参加すると、貴女自身も《金枝篇同盟》らに襲撃される可能性があるの。なるべく私としては無関係な人は巻き込みたくなかったんだけど………」

 

 

レイナ社長は溜め息をつきながら答える。

 

 

けどノエルは覚悟に満ちた様子で、エレナ社長の参加して欲しくないという意見を曲げる様子はない。

 

 

 

 

「…………分かったわ。ノエルちゃんもこの計画に参加することを許すわ。まぁ、ここでこんな話をしてノエルちゃんだけを仲間外れにしたら私も後味が悪いわ。けど貴女はまだ彼らから自分を守る程の力には達してないから、なるべくスバル君の側に居なさい。良いわね?」

 

 

レイナ社長は妥協した様子でノエルもこの計画に参加させることを決めた。

 

 

それでもレイナ社長の言う通り、ノエルはまだ彼らと戦える程強くはない。僕が頑張らないとね。

 

 

「は、はい。ありがとうございます。」

 

 

ノエルはレイナ社長に頭を下げる。顔は喜びに満ちているが、そんなに嬉しいのだろうか?

 

 

 

「はい、というわけで今後の方針はこのようにいくわ。まぁ、暫くはスバル君やオーフェリアにも仕事は入れないからそれぞれの方法で体を癒したりしなさい。」

 

 

レイナ社長とエレナは席を立つ。

 

 

「じゃあ失礼します。皆さん。」

 

 

そう言ってレイナ社長とエレナは僕の家から出ていく。きっとまだ忙しいのだろう。

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、スバル君。今日これからまだガラードワースに行くんだよね?」

 

 

「そうだよ、シルヴィ。アーネストさんに呼ばれてて、僕の今回の件での処罰が決まったらしいんだ。」

 

 

「大丈夫だよね……きっと。」

 

 

「……そこら辺は分からないな。一応ノエルを連れていこうと思ってたんだけど、心配なら僕の車イスを押して介護人として一緒に参加してもいいよ。アーネストさんならそこら辺は許してくれるよ。」

 

 

「うん、じゃあ参加してもいいかな。」

 

 

「分かった。じゃあ歩きながらアーネストに連絡するから今から家を出る準備をしよう。」

 

 

僕がそう言うと、シルヴィとノエルは家を出る支度をして、僕の車イスを押す。

 

 

オーフェリアはガラードワースに居たら、ややこしくなると気を遣って僕達が家を出るタイミングと同時に、僕達と別れた。

 

 

 

僕は車イスを押されながら自分が不本意ながら起こした事件について、どんな処罰が下されるかとても不安で仕方がなかった。

 

 

 

 

 





今回からは後日談を書いていきます。まず、今回はキーパーソンだったローブの女性エレナとスバル達を襲った謎の組織《クトゥルフ》について書かせてもらいました。因みにエレナというキャラは今のグリムノーツのヒロインから取り上げ、キャラ設定もほぼ同じです。ランの代わりとなった彼女がどう関わっていくか楽しみです。次回はスバル君の処罰について書かせていただきます。まぁ、練習場を壊したりした彼にはどんな処罰が待っているのでしょうかね。



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