「いやー、緊張するな。」
僕は今、ガラードワースの生徒会長室の前に居る。前ならこんな緊張することはなかったのにな~。
「スバル君の気持ちは分かるけど、とりあえずアーネストさんに悪いから中に入ろう?」
「だ、大丈夫ですよ、お兄さん。」
シルヴィとノエルが僕の気持ちに共感してくれる。いや、二人が居てくれて良かったわ。一人だったら絶対入れないからさ。
僕は帰るのを諦めてドアを開けて中に入るように二人にお願いする。
ガチャッ
「失礼しまーす。」
僕は車イスを押されて中に入る。
「やぁ、待ってたよ。スバル君。」
挨拶をすると、生徒会長が座る席からアーネストが出迎えるように挨拶をする。
その脇にはレティシアさんとライオネルさんとケヴィンさんとパーシヴァルさんとエリオット君が構えていた。
つまり、ここにはあの頃のガラードワースのいつものメンバーがノエルも含めてほぼ勢揃いである。まぁ、本当はランが居てくれたらな…………
「ど、どうもです。皆さん勢揃いで……」
この面々から見て、僕の処罰は決まったと確信して、言葉がおかしくなる。賠償金……足りるかな。
「内容は分かるよね。まぁ、取りあえずそこのテーブルで座りながら話そうか。」
僕はアーネストさんに促され、応接用のイスに座る。シルヴィやレティシアさん達もイスを全員分用意して、一緒に座る。
「実は星武祭の運営側からも今回の件も含めて処罰が来てるんだ。そっちの理由も分かるよね?」
僕はそれに頷く。星武祭の運営側からということはやはりあのニュースだろうな。
王竜星武祭が終わり、まずアスタリスクを駆け抜けたニュースは大きく分けて三つである。
まず、一つ目はランのことである。ランのことはダイバーシティとガラードワースから長期のダイバーシティの任務により、退学したとメディアに伝えられている。まぁ、今回の事件で関わった人達は真実を知っているが、表彰式後の急な退学と失踪に多くの人は驚きを隠すことは出来ないだろう。
二つ目は僕のここ最近の不本意ながら起こした事故である。まず、ガラードワースの崩落事件についてはただの事故だとメディアに伝えられ、処罰はこれからだが、当事者である僕への注意勧告という形で表向きは丸く押さえた。
だが王竜星武祭では隠し細工が出来ず、テレビなどを通して僕の不本意ながら行った好戦的な戦いが伝えられた。それに関して僕が観客を巻き込みながらシルヴィ達に攻撃をしたのも明らかになり、これについては賛否両論の意見で未だに揉めていおり、星武祭のエンターテイメントの精神に反するということを焦点にメディアはこの件に一目を置いている。恐らく、この後にガラードワースはメディアに星武祭での処罰を報告をするのだろう。
そんな中でやはり《クトゥルフ》らの活動が報道されないのはシェインさんの工作のお陰である。まぁ、その時カメラは僕の攻撃で一時的にシャットアウトしていたのも奇跡的だったから工作がしやすかっただろう。
そして三つ目なんだが、これはシェインさんが工作して起こしたある放送事故である。この件については僕が一番重要度が高いと思うが、今は関係無いので近い内に話そう。
「じゃあ、ガラードワースの方からやるよ。」
アーネストさんは書類を読み上げる。
「この度スバル君が起こした第二練習場の崩落の件についての処罰について………
処罰は与えない事とする。」
「はいっ!?」
僕はアーネストさんからの報告に思わず聞き返してしまう。
「どうしたんだい?何か問題でも?」
「いや、有りすぎですよ!」
僕はアーネストさんにツッコミを入れる。
「どうして処罰が何にも無いんですか?僕は皆さんに多大なる迷惑をかけたんですよ!」
「………スバル、ひとまず落ち着きなさい。」
レティシアさんは僕を宥める。
「………すいません、レティシアさん。」
僕は何とか興奮を押さえる。
「驚かせたようだね。スバル君に処罰がない理由は誰も君を迷惑と思っていないからだよ。」
アーネストさんは淡々と説明する。
「あの時、怪我をしたのは僕達だけだったんだ。崩落には巻き込まれた一般人はいないし、実際あれは君じゃなくて純星煌式武装によるせいじゃないか。だから誰も君を訴えようとは思ってないよ」
「ですがアーネストさん達がそう捉えて処罰が無いと考えても、練習場を壊した器物損害の方は運営母体のEPは許す筈がないでしょう。」
「そうですね、霧咲先輩の言う通り本来ならば適切な処罰、退学のような処罰があったでしょう。」
アーネストさんに理由を訊ねると、親がEPに所属するエリオット君が代わりに答える。
「僕の両親から聞いたのですが、霧咲先輩にも確かに色々な処罰が検討されていたそうです。ですが、僕の家やフェアクロフ家などの必死の説得で、処罰はしないことにしました。」
「どうしてそこまで…………」
「霧咲先輩には皆お世話になっているんです。《魔女狩り》の事だけでなく、日常生活においてもです。僕にだって色々な事を教えてくれたじゃないですか。」
僕はその言葉を静かに聞いていた。すると、アーネストが改めて僕に訊ねる。
「もう一度聞くよ。君は本当に処罰を受けたいのかい?そうなると、君は退学は免れない。僕達とまたアスタリスクでは生活をしたくないのかい?」
今思えば、アーネストさんやノエル達とはずっと生活を送って来た。そして彼らとの生活はかけがえのない楽しいものだった。僕はそれらの思い出を振り返っていくと、涙が溢れそうだった。
「いえ……………………皆さんとまだこれからもアスタリスクで生活していきたいです。」
僕はアーネストさんに返事をする。
「そうか、良かった。ならもうこの話は終わりにしよう。ただ、星武祭の方も処罰の報告が残っているからさせて頂くけど、そちらも安心していいよ。」
アーネストさんはガラードワースの処罰についての書類をゴミ箱に捨て、もう一枚の書類を取り出す。
「驚かせないように手短に話そう。」
アーネストさんは書類を読み上げる。
「スバル君の星武祭での行動についてだけど、処罰の内容は二年間の星武祭の出場禁止による観察処分だということだそうだよ。」
「やっばりさすがに星武祭のあの行為は観客にも見られているからスバル君に処罰はあるんだね。」
シルヴィはそれに納得する。やはり業界人になると、体面は大事らしい。批判的な人がいるため少しでも処罰がないと後でめんどくさいとシルヴィは僕に言う。世界のアイドルが言うと説得力が全然違うもんだね。
「にしても星武祭の二年間の出場禁止ですか……」
「不満かい?」
アーネストさんがそう言うと、僕は顔を横に振る。
いや、僕そんな二年間も普通に我慢できますよ。そんな戦いに飢えてるの《万有天羅》ぐらいですよ。
「いや、あっさりしているなぁって………」
「まぁ、確かにあれほどの行為をしたけど、やはりグランドスラム候補が参加すると売上が上がるから統合企業財体側は大会の永久不参加などにはしたくないだろうね。それにテレビとかでは批判的な意見が出てるけど、実際はスバル君にはまだ活躍をしてもらいたいと思う人が多いからね。」
「でも運営側にも僕に対して批判的な意見を持つ人が居たんでしょう?やはり多数決とかですか?」
「確かにスバル君の言う通り観客の気持ちを代弁したかのような偽善者は居たさ。けど、全会一致でこんな処罰になったんだ。……いや
アーネストさんが話ながら頭を抱える。
えっ?僕の処罰を決める背景で何があったの?めっちゃ気になって仕方がないんですけど。
「
僕はその人が気になって試しにアーネストさんに聞いてみることにした。
「ああ、その人はね…………
《万有天羅》だよ。」
えっ?
アーネストさんから予想外の人物の名前が出て辺りを静寂が包み込む。これにはシルヴィやノエルも口から言葉が出ない様子だった。
「ど、どういうことです?」
僕はアーネストさんに経緯を訊ねる。
「実は《万有天羅》が処罰の話を聞いてその偽善者達を叩き潰そうとしたらしい。」
いや、怖すぎですよ。その人達もまさか《万有天羅》を敵に回すとは思ってないよ。
「しかも、《万有天羅》はスバル君に処罰をしないで欲しいと申してたんだけど、やはり体面があるから少しでも処罰は必要だとお互いが妥協し合ってようやく今の処罰の結果になったというわけさ。」
「な、なるほど。」
いやよくそんな事があって、一日で処罰の内容が可決したよね。運営側の想像すらできない苦労が目に浮かぶ。なかなかの修羅場だよね。
「でも、処罰が少ないのは彼女のお陰でもあるよ。スバル君は《万有天羅》に気に入られたんだ。いつか彼女にお礼をしておくといいよ。」
「そうですね、分かりました。」
僕はアーネストに頷く。
「それじゃ、処罰の件はこれでおしまいだよ。メディアにはこちらから勝手に処罰の内容は知らせておくから、大丈夫だよ。」
話が終わったことで僕はまた家に帰ることにし、アーネストさん達が部屋の前まで送ってくれた。
「しっかり休むのですわよ。」
「スバルの仕事は俺とケヴィンでやっておくから、気にすることはないぞ。」
「レオの言う通りだ。たまには顔を出せよ。」
「私達とまた生徒会の仕事をしましょう。」
「ノエル、霧咲先輩の介護は頼んだよ。」
レティシアさん達が僕に声をかける。
「それでは失礼します。皆さん。」
「ああ、いつでも待ってるからね。」
アーネストさんにそう言われて僕はガラードワースを後にした。
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「良かったね。スバル君の処罰が軽いもので。」
「そうだね、シルヴィ。でも、僕が次に出場出来るのは王竜星武祭か。それに今回までに出場権を三回使ったから後は二回分だね。」
僕とシルヴィは家に帰ってくると、次の星武祭について話していた。ちなみに、ノエルは今夕飯の買い出しに行っている。彼女はこのまま僕の家に泊まる気らしい。
「ふふふっ。次の王竜星武祭では私に勝てるといいね。ジークヴルム・ノヴァは修理中だけどスバル君に返したし、あの時は三対一でもギリギリだったから逆に私の方がスバル君に勝てるか心配だよ。」
「いや、シルヴィは普通に強いじゃないか。そう言えば星武祭の願いは何にするか決めた?」
「まだ決めることが出来ないかな。」
僕が訊ねるとシルヴィは考え込んでいた。
まぁ、初めての優勝の時は僕もだけどなかなか願いって決めづらいよね。
すると、シルヴィがこちらを急に向く。
「………ねぇ、スバル君。昨年のクリスマスにさ、私がもし優勝したらスバル君に個人的なお願いを叶えてくれるって約束をしたよね。」
「うん、覚えてるよ。」
「じゃあ、今ここで願いを言うよ。」
僕はシルヴィの話を聞く体勢を取ると、シルヴィは顔を赤らめて僕に願いを言った。
「私と恋人になってください。」