「ぐぬぬぬぬ………………」
「スバル君あと少しだよ!」
「お兄さん頑張ってください!」
今僕はダイバーシティで施設を借りてシルヴィ達に応援されながら僕はシルヴィ達の補助なしでゴールまで歩く練習をしていた。
あと残り数メートルを僕はなんとか歩く。
「ハァ……ハァ……よし終わりだ。」
僕はゴールラインを足で踏む。
「お疲れ様スバル君。」
「ドリンク持ってきましたよ。」
「ありがとう、シルヴィ、ノエル。」
僕はシルヴィからタオルを受け取って汗を拭きながらノエルからもらったドリンクを飲む。
「そこそこ歩けるようになったじゃない。この調子なら春には足も元の全盛期の状態に戻るだろうし、次の段階に行けるわ。」
「レイナ社長。ご無沙汰しています。」
声のした方を見ると、そこにはリハビリの様子を見に来たレイナ社長とエレナがいた。
「今日で王竜星武祭からもう一週間が経ったんだよね。それにしてはスバルの回復は早いよね。」
エレナがうんうんと頷く。
「僕にジークヴルム・ノヴァがあればすぐに元通りだったんだけどね。今はまだ修理中だから。」
王竜星武祭で使われたダイバーシティの純星煌式武装は全て春まで修理中で使えない。もちろん、オーフェリアの使うダークヴルム・ノヴァもである。
何故すぐに修理出来ないのかというと、今回の件で僕が壊したガラードワースの純星煌式武装であるラグナ・ロックの修理を先にやっているからだ。僕が壊したから責任という意味を込めてダイバーシティが本来時間やお金がかかるものを無償で修理をするとガラードワースに言ったのだ。
「普通の人はジークヴルム・ノヴァのような一瞬で傷が回復するようなものは持っていないわ。貴方はたまに能力に頼りすぎなのよね。」
レイナ社長が溜め息を吐きながら言う。
「まぁまぁレイナさん。ところでスバルはリハビリが終わったけど、これからの予定は?」
エレナが僕に訊ねる。
「今日は用事が何もないので、ダイバーシティでゆっくりしてから帰ろうと思うよ。」
「ふーん。まぁ、私とレイナさんは仕事で忙しいけど恋人二人とゆっくりしていきなよ。」
エレナはニヤニヤしながらそう言ってレイナ社長とその場を後にした。
実はダイバーシティに勤めている人達は僕が彼女達と付き合い始めた事を知っている。実際ダイバーシティの本部に入ろうとした時に正門の警備の人から『おめでとうございます。』とお祝いされた。本当に情報が早くて自分ではびっくりしている。
「さてと、そろそろ正午だからダイバーシティの食堂で昼飯を食べてから帰ろうか。」
「お兄さん、ダイバーシティに所属していない私達でも施設を利用しても良いんですか?」
ノエルが僕に訊ねる。
「あまり知られていないけど、ダイバーシティは一般人でも規制があるけど施設は利用できるよ。それに僕がついてるから大丈夫だよ。」
僕はノエルの疑問に答える。ダイバーシティってまるで大学みたいだよね。
僕は車イスに乗り換えると、シルヴィとノエルに押してもらいながら食堂に向かった。
…………………………
…………………………………………
…………………………………………………………
「そう言えばずっと思っていたけど、ダイバーシティって色々な人がいるよね。」
昼飯を食べながらシルヴィが僕に訊ねる。因みに僕は昼飯を和風パスタにして、シルヴィとノエルもそれぞれ味が違うトマトソースとクリームソースのパスタを選んだ。
「確かにクロヴィスさんみたいに護衛や指名手配の確保といった仕事をする人やシェインさんやファムさんみたいに煌式武装や化学分野で研究をしている人もいますよね。」
ノエルがシルヴィの言葉に頷く。
「そうだね。そこがダイバーシティと呼ばれる所以だけど、組織の人達はそれぞれの事情を持っている人が多いかな。例えばあの人達とか…………」
僕は少し離れて昼飯を食べている男女数名の集団を指差す。
「あの人達は元々別々の統合企業財体に勤めていた人達なんだよ。」
「そうなの!?」
「えっ!?そうなんですか?」
シルヴィとノエルがそれを聞いて驚いている。確かに無理もない、なぜなら統合企業財体はそれぞれ競い合うかのようにライバル意識が非常に高い。だからこそ、別々の統合企業財体同士が仲良くしているのはあまり見られないし、そんな事をすればスパイ疑惑がかけられ統合企業財体に消されかねない。
「あの人達は統合企業財体から追い出された系の人だね。例えばあの眼鏡の男性だけど、彼はアルルカントの運営母体の《フラウエンロープ》で研究者として勤めてたけど、その研究内容が利益主義である統合企業財体の方針に反していることから次第に研究費が削られて、彼は自主的に辞表を出してダイバーシティに来た感じかな。」
「なるほどね。」
「自分の研究が出来ないのは可哀想ですね。」
シルヴィとノエルが納得する。
「他にも最初からダイバーシティに志願をした人とか色々な境遇の人が集まるし、統合企業財体に追い出された人をダイバーシティがスカウトとかをする時もあるね。」
僕は一通りダイバーシティについて説明をして、食後のアイスティーを飲む。
するとこちらに近づく人達がやって来る。
「おやおや、スバル君。恋人二人といったい何の話をしているのかな~?」
「………相席してもいいかしら?」
魔法使いのような三角帽子を普段被っているファムさんとオーフェリアだった。それにしては珍しいな、ファムさんとオーフェリアってあまり接点がなさそうなんだが。
「別に良いよ。」
僕が答えると二人とも近くのイスに座る。
「ファムさんって研究に夢中でなかなか出てこないって聞いたんですけど、珍しいですね。」
「いやいやノエルちゃん。私だって食事をするために食堂には来たりするよ。ニートじゃないんだから。でも確かに私は研究に夢中になったりするからダイバーシティに基本的には籠っているかな~。」
ファムさんがいつものようにからかう感じで答える
「そう言えばファムさん。今日はオーフェリアと一緒にいるってなかなか珍しいですね。何かまた新しい研究でも始めたんですか?」
僕はファムさんに訊ねる。
「そうだね~。実はこの前のオーフェリアちゃんがダークヴルム・ノヴァの毒素を抑え込んだ所を見て、新しい研究が思い付いたんだよね~。」
「いったいどんな研究なんですか?」
「オーフェリアちゃんの毒を利用して新しい薬……血清やワクチンに近い物を作る研究かな。私の仮説が正しければどんな病気や毒にも対応できる万能な薬ができる可能性があるかな。」
ファムさんがそう答えると、僕やシルヴィ達は驚きの研究にびっくりしている。失礼だけど、ファムさんはこんな性格だが研究内容は人には思いつかない事を発想するし、それを実現させる能力もある。
「じゃあ、それが完成したら………」
「………そうよ、シルヴィ。多くの人達を救う事が出来るわ。私自身も私の毒には人を傷つける事しか出来ないと思っていたけど、彼女の提案を聞いてすぐにその研究に力を貸すことにしたわ。今日は私の血液のサンプルが欲しいからって採血をされに来たの。」
そう言ってオーフェリアは腕を見せる。そこには絆創膏が貼ってあった。
「ファムさんってすごいですね。そう言えばファムさんってどうしてダイバーシティに居るんですか?」
ノエルがファムさんに訊ねる。
「それは秘密だな~。」
ファムさんがいつもの調子で答える。
実はダイバーシティには暗黙のルールがあり、そこには『元調律の巫女一行の人達を詮索はするな。』というものがある。別に罰則規定はなく、ただレイナ社長達が過去を教えてくれないだけでこのような事に発展しただけである。出身すらも教えてくれないため少々不気味だが、良い人達ばかりなので僕はあまり気にしていない。
「そうそう、シルヴィアちゃんにはこれを渡して欲しいとシェインちゃんに言われてたんだ。」
そう言ってファムさんは懐から煌式武装を取り出してシルヴィがそれを受け取る。
「これって………」
「そう。スバル君が壊したシルヴィアちゃんの煌式武装であるフォールクヴァングだよ。実はシルヴィアちゃんの分もやってたんだ。」
「あ、ありがとうございます。」
シルヴィがファムさんにお礼をする。
「その言葉はそのままシェインちゃんに伝えておくよ。実は最近アルルカントに用が有るからあまりダイバーシティにいることが少ないんだよね~。」
その後も僕はファムさんとオーフェリアを交えて色々な話をした。殆どプライベートの話なんだけどね。
………………………………
………………………………………………
……………………………………………………………
「シルヴィ、ノエル。そろそろ船が出るよ。」
僕はアスタリスクに向かう船の港で遠くで何かオーフェリアと話している二人を呼ぶ。
「あはは、ごめんね。」
「すいません、お兄さん。」
シルヴィとノエルが来た事を確認して僕は車イスを押されながら船に乗り込む。
「ところでシルヴィ達はオーフェリアと何の話をしていたんだ?」
僕は船内で二人に訊ねる。
「まだスバル君には秘密かな。」
「そうですね。シルヴィアさん。」
「???」
その後もシルヴィ達は何も教えてくれなかった。一体何の話をしていたのかな?
アスタリスクに着いた後はダイバーシティで思っていた以上に過ごしてしまい、そのまま帰宅となった。ちなみにシルヴィとノエルは僕と同棲するつもりだったらしいが、ペトラさんとレティシアさんに記者会見まで何もするなと言われ今もそれぞれの寮で寝てるらしい。