学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~   作:リコルト

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皆さんお久しぶりです。あまり時間が取れなくなってきてしまいました。そろそろ受験モードに移行しなければならなくなり、書ける時間も少ししかありません。一応暇な時間があれば書くようにしますので、よろしくお願いします。1ヶ月程更新がなくても失踪ではないのでそこは心配しなくても大丈夫です。


記者会見その1

 

 

六花放送局  楽屋

 

 

 

「そろそろかな。」

 

 

僕は楽屋の時計を見る。記者会見が始まるまで残り十分位だろうか。

 

 

「そうだね。そろそろ係の人が来るはずだと思うんだけど。」

 

 

シルヴィが髪を整えながらそう答える。ちなみに今のシルヴィの姿は変装をしている茶髪の姿ではなく、いつもの紫色の髪の姿である。

 

 

「はぁ………緊張しますね。」

 

 

ノエルはそう言って楽屋のイスにちょこんと記者会見の時間まで待つように座っている。

 

 

 

それぞれが記者会見の時間まで準備や緊張をしていると楽屋のドアが大きく開く。

 

 

「皆さん、行きますよ。」

 

 

そう言って入って来たのは今回の僕達の記者会見の司会進行をしてくれるリーネだった。彼女はいつものクインヴェールの制服ではなく、まるで秘書のような黒の女性用のスーツだった。

 

 

「ああ、分かったよ。」

 

 

僕達はリーネに連れられて記者会見を行うはずのスタジオに向かった。

 

 

 

…………………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

………………………………………………

 

 

 

「それでは三人はここで待っててください。」

 

 

リーネと共に記者会見を行うスタジオに入り、僕達はリーネに決められた席に座らされる。

 

 

見るとスタジオにはすでに多くの記者が座っていて、テレビ局の人達もスタンバイしていた。それに僕達より少し離れた横の席にはペトラさんが静かに座っている。

 

 

「一応聞くけど、今回の記者会見には僕達を悪く言うような記者は来ていないんだよね?」

 

 

僕はリーネに訊ねた。

 

 

「ゴシップ記事などを書くような悪い評判があるような人達は私と学園長が一応確認して呼んではいないと思うけど、多分まだいるわ。けど、そこら辺は私が何とかするから別に心配する必要はないわ。」

 

 

リーネは自信ありげに淡々と答える。そのやり取りを聞いているペトラさんも不安や心配などをしている様子はない。余程リーネを信頼しているのだろうか。

 

 

そう言えばリーネのクインヴェールでの表向きの仕事ってあまり見たことがなかったな。

 

 

「分かった。頼んだよ。」

 

 

「任せなさい。」

 

 

リーネはそう言って司会用の場所に向かう。

 

 

 

僕達は打ち合わせ通りにやれば良いんだ。そこはリーネの仕事の腕を信用しよう。

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

 

『定刻になりました。これより霧咲さん、シルヴィアさん、ノエルさんによる交際の報告の件についての記者会見を行いたいと思います。司会進行はリーネ・エクスラーがやらせて頂きます。』

 

 

リーネがマイクを通して開始の挨拶を行うと、記者の人やテレビカメラがリーネの方を向く。

 

 

いよいよ始まったか………。それにしてもよくリーネは緊張しないよな。やっぱ慣れなのだろうか。

 

 

『まず、先に今回の記者会見の留意点についてお話します。今回はあくまで霧咲さん、シルヴィアさん、ノエルさんの交際の報告が焦点となりますので、くれぐれも()()()()()()()()()()()()()()()は避けて頂きます。そのような事をする方は質問をする権限を失いますので気をつけて下さい。』

 

 

それを聞くと一部の記者達がざわめき始める。恐らく質問をいくつか潰されたからだろう。

 

 

先程のリーネの留意点の説明には大きな意味がある。それはまだ居るであろう悪い記者の行動を制限するためだ。

 

 

打ち合わせでペトラさんが『僕が王竜星武祭でやってしまった件』を追及される恐れがあるかも知れないと話していた。実際、その件はガラードワースを通して先日謝罪を行って今更引きずる話題でもないはずなんだけどな。

 

 

ただ、シルヴィは世界でもトップアイドルのため僕が彼氏になる事を許さない人もいるだろう。だが、もし僕がその件に追及され始めてあれこれと記事を書かれたら、僕とシルヴィの仲を反対する風潮に助長してしまう。そうなれば僕もシルヴィと別れる事になり、たまったものじゃない。

 

 

リーネのアスタリスクでの仕事は生では初めて見るが、しっかりした仕事ぶりだと僕は思う。

 

 

『次に記者の方達にですが、申請して許可されたカメラや録音機以外の電子機器の使用は控えてもらいます。もちろん通信機器もです。』

 

 

リーネがアナウンスをすると、記者達は一斉に手持ちの携帯電話などを取り出したりして電源を切る。盗撮なんかされたら大変だからね。

 

 

『皆さんよろしいですか?』

 

 

リーネはそう言って確認をとる。すると、確認を終えたリーネがボールペンを取り出し、ボールペンに星辰力を込める。

 

 

一体何をするつもりだろうか………。見ると記者から見えない所で彼女の煌式武装である言霊一筆を取り出している。あれは『波』と書いているのか?

 

 

すると、彼女の能力が発動して『波』と書かれた文字の能力がボールペンに付与される。リーネはそのまま研ぎ澄ますようにボールペンを司会進行用の机に数回とんとんと叩く。

 

 

『………ハァ。これで最後の確認と致しますが、本当に大丈夫ですね?』

 

 

リーネが溜め息をつきながら記者達に最後の確認をする。記者達はリーネの確認に自信を持って頷いているいるが、彼女はそれを見てまた深く溜め息をつく。

 

 

『………分かりました。それが貴方達の答えと捉えても構わないということでよろしいですね。』

 

 

リーネは不本意であるが、納得するかのように答える。リーネの様子を見ていたペトラさんは頭を抱える。彼女らは一体どうしたのだろうか。

 

 

『では△△新聞社さんと★★通信と▲▲放送社さんは今すぐにこの場から退出してもらいます。』

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

リーネに退出を言い渡された会社の記者達はそれを聞いて驚いた様子である。僕もリーネがどうしてそのような言い渡しをしたのかまだ分からない。

 

 

「な、何故だ!?」

 

 

リーネの言い渡しに反論するように△△新聞社の年配の男性の記者が会場に響くような声を出す。周りの記者達はその声に反応して彼を見る。

 

 

『★★通信と▲▲放送社はどうしてこのような事態になったのか自覚しているようですが、△△新聞社はまだ分からないのですか?では貴方の内ポケットに入っている小型機械は一体何でしょうか?』

 

 

リーネは淡々と挑発するかのように△△新聞社の記者に訊ね返した。すると、△△新聞社の記者が動揺し始める。

 

 

なるほど……。

状況が分かってきたぞ。

 

 

「な、何の事だ?私は決して()()()は持ってないぞ。」

 

 

ああ……あの記者、墓穴を掘ったな。

 

 

『どうしてカメラと断言しているのですか?私はあくまで小型の機械と言っただけですよ。』

 

 

「ぐっ!!」

 

 

△△新聞社の記者がその一言に怯むと、係の人が彼らの元に向かい、持ち物検査を始める。

 

 

すると、彼らの内ポケットからは電源が切られていないカメラや録音機が見つかる。

 

 

『もう言い逃れできませんね。』

 

 

「ふ、ふざけるな!!」

 

 

△△記者の男はリーネにキレた。いや、貴方の醜態テレビカメラに写ってるからやめた方が………

 

 

『なんですか?私は何回も注意はしましたよ。それを無視した貴方が悪いと思うのですが。』

 

 

「黙れ!!たかだかクインヴェールの序列上位者でペトラ殿の秘書をしているそうだが、所詮は学生だろ。もう少し大人に気を利かせる事もできないのか!」

 

 

リーネへの悪口はヒートアップしていく。

 

 

「まったく貴様のような奴は司会には向かないな。私はこれでもペトラ殿と昔からの付き合いでな。貴様のような無能なぞクビ、いや退学にしてやる。」

 

 

あの人、怒りのあまりに周りが見えていないな。貴方の姿バリバリカメラに映ってますよ。

 

 

『……なるほど。もし私でなかったら貴方の行いは許されると言いたいのですね。』

 

 

「ああ、こんな仕打ちあんまりだな。」

 

 

男は勝ち誇る顔をした。僕はある人物の顔色を伺う。うわっ、すごい不機嫌だ。シルヴィも僕と同じような気持ちで様子を伺っていた。

 

 

 

『なら、貴方が先程仲が良いと言っていたペトラ学園長に意見を聞いてみましょうか。』

 

 

「はっ!?」

 

 

男は今更その場にペトラさんがいる事に気づいたらしい。だが、もう遅い。ペトラさんは先程から不機嫌そうに話を聞いていた。リーネの一言でみんなの視点はペトラさんに移るが、逆鱗に触れられたペトラさんに記者達は視線を合わせられず、テレビカメラも映すことができなかった。うん、ナイス判断。

 

 

「あ、あのペトラ殿……」

 

 

『彼女はしっかりと平等に物事をする優秀な私の生徒であり、秘書です。それを貴方の勝手な考えで無能呼ばわりするとはどういうことでしょうか。そもそも年上に気を使わせたり、大人のコネなどで記者会見に参加するなんて記者失格ですね。』

 

 

「いや、その………。」

 

 

『貴方や貴方がいるような場所には今回の記者会見の参加、いや今後も来ないで頂きます。』

 

 

「ま、待ってくれ………」

 

 

『貴方は私と付き合いが長いと言っておりましたが、あのような性格をした人物など私は知りません。もう二度と来ないで下さい。』

 

 

「そんな………」

 

 

男はその場に崩れ落ちる。だが、男はすぐに係の人によってスタジオから連行されていった。

 

 

★★通信と▲▲放送社も一緒に連れていかれたが、先程の記者よりは罰は軽いだろう。△△新聞社はもう………

 

 

ペトラさんは怒りを治めてリーネに進行するように視線で合図を送る。

 

 

すると、一人の記者がリーネに質問する。

 

 

「あの、すいません。先程の空気からで悪いのですが、リーネさんはどうして彼らがカメラや録音機を持っていると分かったのでしょうか?」

 

 

リーネはその質問に一瞬戸惑い、ペトラさんの方を見ると、ペトラさんがOKサインを出す。

 

 

『それは私の能力です。私は文字を使う能力である魔女である事は皆さんも知っているのですが、私は先程『波』と書いてこのボールペンに能力を付与したのです。』

 

 

リーネはボールペンを記事に見せる。

 

 

『私はこれを使ってこのスタジオ内をレーダーのように機械などから発せられる波やノイズを探知したのです。あれほど警告して記者の皆さんから機械の波やノイズが出るのは可笑しいですよね。』

 

 

「な、なるほど。」

 

 

周りの記者も説明を聞いて納得する。

 

 

うん、これなら心配する要素なんて何処にもないな。ペトラさんが信用するのもよく分かる。というより普通の人から見てもここまで徹底した人材なかなかいないと思う。

 

 

 

『さて、少々トラブルがあった注意説明でしたが、次は記者からの質問に移らせて頂きます。』

 

 

記者達はそれを聞いて真面目な様子になる。

 

 

 

さて、やりますか。

 

 

 

 


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