学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~   作:リコルト

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どうも、約一ヶ月ぶりですね。かなり間を空けてしまいました。塾もそうなんですが、色々と時間が取れなくて一から書くのにかなり時間がかかってしまいました。投稿をしていない間、私の作品を見続けて頂きありがとうございました。今年はこれが最後となりますが、来年も時間があれば投稿をするので待って頂くとうれしいです。


記者会見その2

 

 

 

リーネの進行のアナウンスを聞いて、取材陣だけでなく僕やシルヴィ、ノエルも気持ちを切り替える。先程のトラブルでかなり時間を持っていかれたが、ここからが本題なんだ。

 

 

『質疑応答につきましては現時点で一社につき一回にさせて頂きます。最後の方でまた機会を設けますのでそれを踏まえて質問をしてください。』

 

 

リーネは取材陣に対してそう説明する。だが、見る限りリーネの忠告によって質問が潰された人もいて、最後の方に機会を設ける必要はないかと感じる。

 

 

『それではまず、シルヴィアさんと霧咲さんの二人を第三者目線で見守って来たペトラ・キヴィレフトさんへの質疑応答を始めたいと思います。ペトラさん、よろしいですか?』

 

 

「ええ、構わないわ。」

 

 

ペトラさんは淡々と答えた。流石はベテランだなと僕は思う。僕なんて最初の星武祭の優勝者インタビューはめっちゃ緊張していたからなぁ。

 

 

『では取材陣の皆様どうぞ。』

 

 

リーネがそう言うと複数名の取材陣の人が手を挙げた。それをリーネは見渡して質疑応答する人を選ぶ。多分その辺はリーネやペトラさんが信用できる報道関係者を選んでいるだろう。

 

 

「どうも、〇〇社の者です。まず、ペトラさんは今回の霧咲さんとシルヴィアさんの交際の件についてどうお考えですか?」

 

 

「私は賛成だと思います。霧咲さんの性格は優れておりますし、実績も十分にあります。そして結婚を前提に意識している意思があります。私としては彼だけがシルヴィを恋人にする人として値する人物だと考えています。」

 

 

「なるほど、ありがとうございました。」

 

 

そう言って〇〇社の人は引き下がった。そして、リーネは間髪入れず他の先程手を挙げた人を指していく。

 

 

「◎◎社です。シルヴィアさんが交際を発表しましたが、今後の活動はどうするのでしょうか?」

 

 

「そこは彼女次第ですね。ただ、彼女はこれからもアイドルとしての活動を続けていく意思があるので、私は彼女をサポートするだけです。」

 

 

「ファンの人が減ると思われますが?」

 

 

「それならそれでも私は構いません。私とシルヴィはシルヴィ本人の意思を尊重しつつ、今までのような活動を行っていくだけですから。」

 

 

「な、なるほど。分かりました。」

 

 

シルヴィの活動については前からシルヴィと決めていたのだが、別に束縛はしないし彼女も時期が来れば自分の意思で業界から引退すると話していたので別に問題はないだろう。ペトラさんもそれには賛成していたしね。そう考えながらも隣ではペトラさんの質疑応答をは続いていた。

 

 

「どうも、◇◇社です。今回シルヴィアさんと霧咲さんの交際だけでなく、同時期のノエルさんとの交際についても波紋を呼んでいますが、その辺はどう考えていますか?」

 

 

「そればかりは私とノエルさんは接点があまりないため断言してお答えすることはできません。ですが、霧咲さんやシルヴィとも仲が良いため私としては三人で良い関係が作れるだろうと思っています。その辺は当事者の方に聞くのが一番です。」

 

 

そう言ってペトラさんは横目で僕達を一瞬見た。

 

 

「分かりました。ありがとうございました。」

 

 

◇◇社の記者の質疑応答が終わると、リーネがアナウンスをしても手を挙げる人は居なかった。次は僕達か。

 

 

 

 

『誰もいないためこれでペトラさんの質疑応答はこれで一度切らせて頂きます。続きましてはシルヴィアさんへの質疑応答に移らせて頂きます。シルヴィアさん、よろしいですか?』

 

 

「はい。大丈夫です。」

 

 

シルヴィはそう言ってリーネに答えた。リーネはシルヴィを見て確認を取ると、ペトラさんと同じように取材陣に手を挙げさせた。やはり本題は俺達か……。見ると、先程のペトラさんより手を挙げている人は多かった。

 

 

「▽▽社です。シルヴィアさんは霧咲さんの何処に惚れたんですか?」

 

 

「何事においても私を支えてくれるところです。幼少期、私とスバル君は同じ学校に通っていたのですが、私があるトラブルに巻き込まれた時に助けてくれたのが私の馴れ初めです。先程ペトラさんが話してくれたのですが、今後の芸能活動も彼が私の意見を尊重してくれるおかげでやっていける所があるんです。」

 

 

「なるほど。先程シルヴィアが先に霧咲さんを好きになったと言っていましたが、交際の申し込みもシルヴィアが霧咲さんにしたのですか?」

 

 

記者の人はそう言って話題を広げようとした。恐らくこの記者の人もペトラさん達の信頼する取材陣の1人だろう。シルヴィも会ったことがあるのか、気軽に話していた。

 

 

「はい///私からです。一年前に私が今年の王竜星武祭に優勝したら私の願いを叶えてくれると約束したんです。」

 

 

シルヴィは恥ずかしながら記者の人に説明した。

 

 

「なるほど。いい話をありがとうございます。」

 

 

そう言って▽▽社の記者の人は笑顔で質疑応答を終わらせた。リーネもそれを見て次の質疑応答に移ろうとする。質疑応答をする人も内容が被ったのか少し減っていた。質問をする人も限られており、先程ペトラさんに質問した記者ばかりだった。今まで質疑応答をしなかった記者は単に質問の内容が被ったのか、リーネの忠告を無視するような質問ばかりを考えた人達だろう。

 

 

「先程ペトラさんにも質問した◎◎社です。シルヴィアさんと霧咲さんとノエルさんには世間から多くの意見があります。その中には批判的なものもありますが、シルヴィアさんはどう考えていますか?お答えしづらいのであれば別に答えて貰わなくても構いません。」

 

 

◎◎社の記者はシルヴィアに気遣うように質問した。僕的にも答えなくても構わないと思うが、シルヴィはそれに答えるためにマイクを口に寄せる。

 

 

「私もそのような意見を拝見していますが、あまり気にしていません。私がアイドルだから交際や結婚は駄目だとコメントをしてくれる人もいますが、私はアイドル以前に一人の女性です。私にも自由に恋をする権利はあるというのが私の考えです。それが受け入れられないというのであれば、ペトラさんが言ったように私のファンを辞めても構いません。それと他にもスバル君が重婚を前提に私とノエルちゃんと交際していることにも批判的な意見があると思われますが、私達当人は重婚に納得しています。私自身もノエルちゃんには嫌な気持ちは抱かないし、私達3人なら一緒にやっていけると思います。」

 

 

シルヴィは記者の人達を圧倒するかのような演説のように◎◎記者の質問に答えた。◎◎記者の人もシルヴィの答えに圧倒されていた。

 

 

「質問は以上ですか?」

 

 

シルヴィはフォローするかのように◎◎社の記者の人に訊ねた。

 

 

「は、はい。答えづらい質問にお答えして頂きありがとうございました。」

 

 

◎◎社の質疑応答が終わり、リーネは手を挙げる記者を探すが、誰も手を挙げなかった。まぁ、あんな強弁したシルヴィに質問するのは空気的にも厳しいだろう。

 

 

 

 

 

リーネは記者達の様子を確認すると、シルヴィへの質疑応答を終わらせようと次のプログラムに移る。まぁ次は僕なんだけどね。

 

 

『次は霧咲スバルさんの質疑応答に移らせて貰います。霧咲さん、よろしいですか?』

 

 

「はい、いつでもどうぞ。」

 

 

リーネは俺に確認をとると、記者達は手を挙げた。案外もっといると思っていたが、ほとんどが前に質問した人じゃないか。多分、さっきのシルヴィの影響もあるだろう。

 

 

「先程質問した〇〇社です。霧咲さんは実績などが優れているため統合企業財体の色々な縁談があったが、断っていたと聞いています。これについてはやはりシルヴィアさんやノエルさん関連でしょうか?」

 

 

「そうですね。〇〇社の言う通り僕は統合企業財体から縁談の話を多く貰っていました。ですが、僕自身もシルヴィが幼少期から色々な事があって気になる所がありましたが、今は世界の歌姫ですからね。僕なんかとは身分が違いますよ。だから縁談を持ち込んで来た人にはぐらかすようにして断っていましたが、もし僕が断って傷ついてしまったら本当にすいません。それと関連してノエルとの交際には統合企業財体が絡んでいるという噂があるのですが、それは違います。彼女とは統合企業財体関係なくお付き合いをさせてもらっています。実際、彼女とはかなりの付き合いがあります。それにシルヴィも僕とノエルの交際の現場にも立ち会い、納得しています。だからその辺は誤解している人もいるのですが、これは僕達だけの問題だという事を理解してくれれば嬉しいです。」

 

 

うん、ノエルとの交際には統合企業財体は関係ないよね……多分。あれは元々ノエルが僕の事を好きだったからノエルの母親が手伝っただけだから。現にメスメル家と関わりがあるEPからも将来はEPで働くような指示はないし、大丈夫だろう。

 

 

「な、なるほど。ありがとうございました。」

 

 

『他に質問をする人はいらっしゃるでしょうか?』

 

 

「▽▽社です。今回の件で霧咲さんは重婚をする意思があることが公になりましたが、言い方は悪いかもしれませんが、シルヴィアさんやノエルさん以外にも増える可能性はありますか?」

 

 

「今のところそのような意思はありません。シルヴィやノエルとトラブルが増えるかもしれませんから。今はこのままが一番ですかね。」

 

 

僕がそう答えると、隣のシルヴィがマイクを取った。

 

 

「私としてもスバル君の気遣いは非常にありがたいです。ですが、もし増えるとしたら私としては知らない人よりは知っている人が良いですね。」

 

 

シルヴィはそう言うと、ノエルの方を見てウインクをした。ノエルはそれに顔だけだが反応していた。え、何?思い当たる人でもいるの?僕分からないんだけど。

 

 

「答えづらい質問に答えて頂きありがとうございました。」

 

 

▽▽社は納得してくれたようだ。リーネは時間が押しているため進行を急がせるが、誰も手を挙げなかったため僕の質疑応答は終わった。

 

 

 

 

最後はノエルの番だ。

 

 

『最後にノエルさんの質疑応答に入らせて頂きますが、ノエルさん準備は大丈夫ですか?』

 

 

「はっ、はい。大丈夫です。」

 

 

ノエルはちょっと緊張しているが、大丈夫そうだ。リーネは確認をとると、取材陣にアナウンスをするが………

 

 

『あ、あの誰も手をあげないのですか?』

 

 

リーネは少々戸惑うのも無理はない。なぜなら取材陣の人が誰も手を挙げないからだ。

 

 

恐らくノエルについてはEPのエリオットとも深い関わりがあるため政略結婚を前提とした交際だと思い、取材陣もそれを踏まえて質問を考えて来たのだろう。だけど、僕がそれを撤回したため質問がなくなったのだろう。

 

 

「じゃあ、よろしいですか?」

 

 

『はい、▽▽社さん。』

 

 

先程、シルヴィと親しげに質疑応答をしていた▽▽社の記者が手を挙げた。挙げなかったのは質問のし過ぎで周りに配慮したからだろう。シルヴィに聞いたところ▽▽社はペトラさんにお世話になった仲で、今回の記者会見でも一番信用しても良い所だと聞いた。

 

 

「ノエルさんから見て霧咲さんとはどういう人か教えて下さい。」

 

 

「は、はい。私にとってお兄……霧咲さんはお兄さんのような方です。私が幼い頃からもお世話になりましたし、アスタリスクに来てからも私に優しく接してくれました。シルヴィアさんには色々と彼女として負けている部分はありますが、幼い頃からの霧咲さんを思う気持ちは誰にも負けていないと思います。」

 

 

「なるほど。ありがとうございました。」

 

 

多少緊張していて僕をお兄さんと呼ぶ癖が出てしまったが、記者の質問にはしっかりと答えられていたし、大丈夫だろう。

 

 

 

 

その後、ノエルへの質問はなかったためリーネはノエルの質疑応答を終わらせた。そして、そのままリーネの宣言通り僕達へのフリーな質疑応答があったのだが、時間もギリギリだったため軽めな質問を2つぐらい答えるものだった。

 

 

 

『これを持ちましてシルヴィアさん、霧咲さん、ノエルさんの交際の記者会見を終わります。』

 

 

 

リーネが記者会見を終えるアナウンスをすると、僕達にカメラが向けられ一斉に写真を撮られる。僕達はそのままスタッフに連れられて記者会見場を後にした。

 

 

 

…………………………

 

 

 

………………………………………

 

 

 

…………………………………………………

 

 

 

「無事に終わって良かったね、スバル君。」

 

 

「そうだね、シルヴィ。僕達は大丈夫だったけど、リーネの方は少々トラブルがあったけど。」

 

 

「お兄さんの言う通りですね。でも、リーネさんの評判は悪くなっちゃうのではないのでしょうか。」

 

 

「そんな事はないわよ、ノエルちゃん。彼女はしっかりと仕事をしただけだから。もし今日追い出した彼らが根も葉もない記事なんか出したら私が廃業に追い込むだけだから。」

 

 

リーネを心配するノエルをペトラさんが心配しないように説明した。最後らへん物騒なワードがあったのは気のせいだろうか。

 

 

これからの僕達の予定としてはそのまま駐車場に向かって僕達専用の車で取材陣に囲まれない内にそれぞれの学園に帰宅する予定である。

 

 

リーネは記者会見の収拾や片付けを終えてから帰宅すると話していた。

 

 

 

記者会見の反省などを話している内に地下の駐車場に着き、僕達が乗る黒色の車を見つけた。

 

 

僕達はそのまま急ぐように車に乗り込んだ。因みに専属の車の運転手とペトラさんは前部座席、僕とシルヴィとノエルはシルヴィ達が僕を挟むように後部座席に乗った。

 

 

「みんな、大丈夫ね。行くわよ。」

 

 

ペトラさんが後ろを見て確認をとると、すぐに車は出発して、地下駐車場から一般道に出た。

 

 

後ろを見ると、取材陣がテレビ局の入口に押し寄せていた。あと少し遅ければ巻き込まれていただろう。

 

 

僕達はそれを見て一安心すると、僕の隣のシルヴィが腕を絡ませてくる。

 

 

「ねぇねぇ、ペトラさん。これで私達の関係も公にしたから好きなだけイチャイチャしても良いんだよね。」

 

 

「そうね。でも、今日はそのままクインヴェールの学生寮に帰りますよ。このまま霧咲君の家なんかに行ったらまた何かと疑われるかもしれません。」

 

 

「ええ~、ペトラさんのケチ~。」

 

 

そう言ってシルヴィはペトラさんに頬を膨らませながら抗議をする。

 

 

「私は貴女達の心配をしているのよ。あと、シルヴィとノエルちゃんには芸能界の先輩としてアドバイスをするけど、まだ同棲は辞めておきなさい。」

 

 

「「はーい。(はい、分かりました。)」」

 

 

ペトラさんがシルヴィとノエルにそう言ってアドバイスをした。シルヴィもまだ若干納得してなさそうだったが、僕が説得した事で治まってくれた。それにしてもペトラさんはどこで二人が僕の家に同棲するかも知れないことを聞いたのだろうか。恐らくシルヴィかなぁ。

 

 

 

しばらくすると、ガラードワースの学生寮の近くで車が止まった。学生寮に住むノエルと近い場所に家がある僕はここで下りることにしたからだ。

 

 

「じゃあ、スバル君、ノエルちゃんまたね。」

 

 

車の中でシルヴィが別れの挨拶をした。

 

 

「はい、シルヴィアさん。失礼します。」

 

 

「僕達やシルヴィも新入生を迎える時期だから忙しくなるかもしれないけど、暇があったら連絡するよ。」

 

 

僕達も丁寧にペトラさんとシルヴィに挨拶をした。

 

 

「うふふ、じゃあ待ってるからね。」

 

 

「リーネにはよろしく伝えておくわ。霧咲君も病み上がりなのだから体を壊さないようにね。」

 

 

そう言ってシルヴィとペトラさんをのせた車はクインヴェールの方に向かって走っていった。

 

 

「じゃあ、私もここで………」

 

 

「ああ、アーネストさん達にはそろそろ復帰できると伝えてくれるかな。」

 

 

「はい、分かりました。」

 

 

ノエルはそう言って学生寮の中に入って行った。

 

 

ノエルが学生寮に帰ったことを見届けると、僕も自分の家に帰ろうとする。そろそろ日もくれるからね。僕は手短にスーパーで簡単な惣菜を買って家に帰った。惣菜を買ったのは記者会見で疲れてしまい、早々に寝たかったからである。

 

 

 

 

後日、雑誌やテレビでは僕達の記者会見が記事として独占をする日々が続いた。ネットを見てもそんなに悪く言う人が居なかったため少し安心した。

 

 

あと余談なんだが、僕達の記者会見の他にも司会進行をしたリーネにも注目する記事があって、『ペトラ・キヴィレフトの優秀な右手。リーネ・エクスラー』と一部の週刊誌が取り上げられており、リーネの秘書としての仕事が増えてしまったとリーネ自身が話していた。

 

 

 

 

 


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