学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~   作:リコルト

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前回から半年も……この作品を待って頂いてくれた皆様、お待たせいたしました。


スバルの新たな力

 

 

あの王竜星武祭(リンドブルス)のシーズンから、今日で2ヶ月近くである。王竜星武祭での激戦や僕とシルヴィとノエルとの恋愛報道などがあって、町の人達が騒がしかったシーズンは多々延びてしまったが、今ではすっかり何事もなかったかのような平穏な日々が続いていた。

 

 

それは今の僕にとって非常にありがたい事だった。恋愛報道の熱も今ではすっかり冷めきったように落ち着いていて、余計な記者達に生活を邪魔されずに済んでいるからね。それに、今では人目を気にせず在籍している学園が違うシルヴィとも気軽に会える事が出来る。まぁ、自分の体を考えて遠出は出来ないからリハビリ関係で会うような仲みたいになっちゃってるけど。

 

 

さて、最近の周りの近況を簡単に説明すると、こんな感じかな。次は僕の近況について話そうか。

 

 

あの記者会見の後、シルヴィとノエルと一緒に僕はリハビリを続けていた。今では体力と戦闘の勘を全盛期まで戻すためにリハビリと言う名の実践戦闘も行っている。ノエルやシルヴィからは危ないから程々にと言われているけど、体が鈍っちゃうんだよね。それに実践戦闘(リハビリ)にも協力的な面子がすぐ集まるから。ほら、ダイバーシティのクロヴィスさんとかエイダさんとかタオさんとか。あの体育会系のオーラを纏ったような人達は試合とか大好きだし。あ、でもリハビリ中の僕に三人とも怪我しない程度に加減はしてくれたからね。

 

 

それで今も……………

 

 

「はあっ!!」

 

 

「くっ!!!」

 

 

雄叫びと共に放たれた勢いのある剣撃により、僕の手から練習用の剣型煌式武装が離れ、床に落ちる。

 

 

「……僕の負けですね、アーネストさん。リハビリに付き合ってくれてありがとうございました」

 

 

「どういたしまして。僕も久しぶりにキミと試合が出来て楽しかったよ」

 

 

そう言って笑顔でアーネストさんは床に落ちた練習用の煌式武装を拾って僕に返した。

 

 

 

ここはガラードワースにある練習室。冒頭の十二人に対して与えられる個人用の練習室で、ここは僕に支給されたものだ。

 

 

何故アーネストさんと戦っていたか。それは今日僕が学院に生徒会の仕事をしに来た際に、アーネストさんに僕からリハビリの手伝いをお願いしたからだ。

 

 

レティシアさんやライオネルさんやノエル達生徒会メンバーが一ヶ月後に控える入学シーズンを迎えている忙しい中で、アーネストさんだけ少しだけ時間が空いていたという理由もあったが、やはり今の実力を試すには戦った事のある強者じゃないとね。今の実力と昔の実力を比べる事が出来ないし。

 

 

「スバルくん、調子はどうだったかい?」

 

 

「体調も含めてかなり回復してきた方ですね。この調子でリハビリを続けていれば、入学シーズンまでには強さも全盛期ぐらいに戻るぐらいです」

 

 

それを聞いてアーネストさんはうんうんと嬉しそうに頷いていた。

 

 

「それは良かった。僕だけでなく、レティシア達も心配していたからね。それにガラードワースが誇る生徒が一人でも復活してくれるなら、他の生徒達も活気が溢れるだろうし」

 

 

そう言ってアーネストさんは僕を見つめながら話すが、その顔は少々辛そうに見えた。やはり、アーネストさんもランが居なくなった事に少なからずショックを受けているのだろう。

 

 

ノエルから聞いた話によると、僕がまだ外出が厳しい中、ガラードワースではランが残した後始末に追われていたらしい。

 

 

まず、ランの処分だが、休学扱いにされたそうだ。星武祭の後に急な退学はかなり怪しいからね。休学なら理由がつけられる。だが、それだけでは終わらずに、それに起因して今度は彼の序列の話になった。

 

 

ランの序列は十四位だったからね。冒頭の十二人には入っていないものの、学院としては重要なポジションだ。最初は生徒達の意見をあり、改めて序列入りの生徒を選ぼうとしていた。だが、事情を知るアーネストさん達が身元保証人のような形で序列十四位はランが継続する形で話を収拾した。その結果、序列十四位にはランの名前が残っているものの、実質は空席である。

 

 

けど、そこにはアーネストさん達の色々な思いが詰まっているに違いない。ランという存在を忘れないようにと。エリオットから聞いた話でも、アーネストさん達が統合企業財体にもあれこれ説得をして手を回していたそうだ。

 

 

「ええ、そうですね。僕がランの分まで代わりに頑張らないといけませんね」

 

 

「うん、そうだね。それじゃ、僕はこれで生徒会室に戻るとするよ。レティシア達が書類の整理を終わらせたらしいからね。じゃあ、またねスバルくん」

 

 

そう言ってアーネストさんは僕に別れの挨拶をして部屋を出ていったが、その後に入れ違いでランの代わりとなる見知った黒髪の女の子が入って来た。最初会った時は童話の住人のような格好をしていたが、今はガラードワースの白い制服をそれに混ぜたような格好をしていた。

 

 

「やっほー、スバル。久しぶりだね」

 

 

「エレナ、久しぶり。あの会議以来かな。ところでその姿は?ガラードワースの生徒になったのか?」

 

 

僕が訊ねると、エレナはううんと首を振った。

 

 

「私ね、ここの図書館のボランティアとしてこの学院に入ったんだ。ほら、生徒として入ったら、序列の公式試合とか免れないし。この身分の方がダイバーシティの仕事も両立しやすいんだ」

 

 

そう言ってエレナが自慢するかのように僕に説明した。成る程、確かにエレナはダイバーシティの仕事がかなり多いもんね。事実、ここ最近もあの会議以降は彼女の事情もあって、会うことが無かったし。

 

 

「成る程ね。ところで、エレナはここに何をしに来たんだい?アーネストさんと入れ違った辺りから、僕に用があると思うんだけど?」

 

 

僕がそう言うと、エレナは思い出したという表情を見せながら、僕に話をする。

 

 

「実はスバルの実力も戻って来た所で、スバルには新たに目覚めた力について話そうと思ってね」

 

 

「新しい力?そう言えば僕の真の力についてあの会議でも話していたね。確か、エレナの三つ目の能力にも関係しているとか」

 

 

「そう、スバルに話すのはその三つ目の力よ。関係していると言っても、ただスバルにも私と同じその力が使えるという話だけどね」

 

 

「え?僕にも使えるの?」

 

 

ええ、そうよと答えながら、エレナは彼女のカバンから一枚の栞を取り出した。

 

 

「今から、スバルにその力を教えるわ。その力の名前は『コネクト』。栞に眠る物語の英雄達の力を扱う力よ」

 

 

 

 

 


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