逢いたい人に、逢いたいと。

愛したい人に、愛したいと。

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愛してるだとか言われてみてぇ

 吾輩は幽霊である。

 

 そんな冗談はおいておくとして、俺は幽霊だ。

 

 生きている間に一度も愛をもらえなかったことが未練になり、死んでからもこうしてこの世に縛りつけられている幽霊だ。そんな幽霊は未練を解消しないと死ねないので、だれも観測する人間がいない以上、俺はここで永遠に村を見守ることになる。

 

 それは構わないのだ。どうせ、死ぬ前の自分は村の守護にもろくにやくに立たなかったのだから。そんな俺が、こうして安穏を観測することができるのは、それは一つのお礼の形のような気がしてそれでもいいと思う。

 

 が、ひっそり生きていく(幽霊だから死んでいくになるのだろうか)覚悟を決めていた自分に話しかけたのは見目うるわしい少女。

 

 美、がつくくらいの少女だ。

 

 彼女は沈んだ顔をしながら俺が腰掛けている石の前にしゃがみこんだので、話しかけてみることにした。なんの意味もないとわかっていても、声をかけることをやめる気はなかった。

 

「なあ」

 

「うっぁっ、ひゃぁ!? な、なんですだれです!?」

 

「……ああ、うん。そんなに驚かなくても別にいいと、思うのだけれど」

 

「……あ、うん。ごめんなさい」

 

 少女とそんなやり取りをした。

 

 そうして、自分が彼女と会話できていることに気づいたのだ。ひっそりと生きていくつもりだったのだが、人とこのような形で交流が取れるのなら、話は変わる。死者として人々の相談に乗ってみようではないか。

 

「……あの、どこにいるんですか? 私には姿が見えなくて」

 

 あら。

 

 彼女側から、俺のことは見えないらしい。

 

「俺は君のすぐ後ろにいるよ。石とくっついてるんだ。ずっとここにいたからね、足が動いてくれないんだ。といってもその足すらないんだけれどね」

 

 それは悲しいが、言葉が通じるのならそれはそれで十分に救いだ。

 

「何を悩んでるんだい? 俺でよかったら相談に乗ってあげるよ」

 

 その言葉を言って、流石にこんな不気味なものに悩みを打ち明けることはないよな、と気づく。が、しかし彼女は予想に反して相談を投げかけてきた。

 

「……あの、私、最近、最強のハンターって言われてるんですよ。それで強いモンスターとも戦う機会が増えて。……私、痛いのが嫌なんです。痛いのが怖いんです。だから、なんとかできないかな、ってずっと考えてたんです」

 

 その言葉に、彼女を見た。

 

 ほっそりとした体は到底ハンターのものとは言えない。だから、その最強というのもきっと冗談だと思った。けれど彼女が本気で悩んでいたので俺は何か解決法がないかを考えてみる。

 

「……じゃあ、攻撃に当たらなければいいんだ」

 

 で、導き出したのはそんな答え。

 

 ……違うんです。そんな無理を言う気はなかったのです。ただ、咄嗟に思いついたのがこれだっただけで。

 

 けれど言ってしまったので仕方ない。このまま全部言ってしまうことにしよう。

 

「痛いのが怖いんだったら、攻撃に当たらなければいいんだよ。攻撃に当たらなかったら痛くないんだから。攻撃をかわし続ければいいんだ」

 

 そんな無茶苦茶な理論だが、彼女は何故だか本気にして、

 

「……なるほど……」と、いった。

 

 納得しちゃったらしかった。

 

「ありがとうございます。……それじゃ、また来ますね」

 

 

 

 

 それが彼女とであった一番最初の日。

 

 今からすれば、はるか昔の話。

 

 彼女は既に少女というには年を取り、女性という言葉が当てはまる年齢を迎えていた。そんな彼女は今、ドンドルマのほうで名実ともに最強のハンターの称号をもらい、こちらに戻ってきていたらしい。

 

「……お久しぶりです」

 

 彼女のその言葉に、自分も久しぶり、と返す。

 

 あれからいろいろあって、彼女は俺の馬鹿な理論を真面目に実践して、そうして最強にまで登り詰めたみたいだ。それは、なんというか、自分は彼女の師である、と言えそうな話だなぁ、と思う。

 

「ええ。あなたは私の師匠でした。悩んでいた私の悩みを初め姿を見せずに聞いてくれた。次にあったときには、真剣な表情で私のことを指導してくれた。あなたのおかげで今の私はあります」

 

 ……その言葉に、地味に衝撃の事実が含まれていて自分は驚いた。

 

「……あれ? 気づいていなかったんですか? 2回目にあったときから、ずっとあなたのことは見えてましたよ」

 

 ああ、うん。

 

 まっさか、幽霊が見えるとは驚いた。

 

 声だけだと思っていたから。

 

「……そうだったんですか。じゃあ、さっさと言っちゃえばよかったですね」

 

 風が吹いた。

 

 なんとなく、自分をほどきそうなくらいの風だった。

 

「……私の真剣な話、聞いてもらえますか?」

 

 うん? うん。

 

 全然、俺は君の話を聞くよ。

 

 それ以外しかここは娯楽がなくてさ。

 

「……………………」

 

 彼女は、沈黙した。

 

 俺は、なにも言わない。

 

「……あの……」

 

 彼女が次に口を開いたので、それを聞くことにする。

 

「──あなたのことが、好きでした」

 

 …………。

 

 ……………………。

 

 ああ、うん。

 

 そっか。

 

 それだけ述べて、俺は空を見た。

 

 恥ずかしそうに彼女が去っていく姿を見ないように。

 

 好きでした、らしい。

 

 俺のことが。

 

 小さく息を吐いた。

 

「──ああ、愛してるだとか言われてみてぇなぁ……」

 

 まぁでも。

 

 ほしかった愛は、もらっていたらしく。

 

 幽明界を異にした。

 

 それでも成り立っているこの話は、そろそろ終わらせよう。

 

 それではみんな。

 

 俺のようにはならずに、死んだらちゃんと成仏しろよ。そんなことだけ言い残してみて。




 愛死体。せつないをイメージにした話です。武器売りとは違ったコンセプトです。

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