遊戯王のユウヤになりました   作:サルガシラン

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久々にTFSPを起動して、エクゾディアデッキを使いました。

初手がエクゾディアパーツ4種とおろかな埋葬。
デスティニードロー機能も切ってるしダメかな。後攻ドロー。

ドローカード:ダーク・バースト

( ゚Д゚)

( ゚Д゚ )

自力でデスティニードローして勝ったのでもう一回書きました。

今回も悪ノリしています。
アンナのキャラが崩壊してる気がしますし、デュエルに使いませんがオリカ状態のカードが出ます。

構わん、と言う心の広い方のみご覧ください。







女心も移動販売車もすぐ違う場所に向かうもの

 

ある日のクラスメイトとのデュエッ。

 

「―――攻撃力三〇〇〇の【電池メン-単三型】で攻撃!」

「今、攻撃と言ったな?罠カードオープン!【閃光のバリア―シャイニング・フォース―】!」

 

要するに相手の場に三体以上モンスターがいなければ使えないミラフォだオラァァ!

発動さえできれば、これはもうハノイの崇高なる力と言っても過言ではない。

相手の単三型をすべて壊すんだ!

 

「カウンター罠発動。【大革命返し】」

 

しかし無情の効果無効。

そりゃ伏せカードあるのに無警戒で攻める訳ないよね。

あ、はい。なにも出来ません。

 

「ビリビリビバディー!?」

 

俺の場の【ロードランナー】も攻撃表示に変えられてしまったので、電撃をまとう人型電池たちの突撃が俺とピンクの小鳥を襲いライフゼロにされた。

痺れるぅ……気がしたが、ただの決闘なので軽く吹っ飛ばされるだけですんでいる。

 

跳び上がって喜ぶ対戦相手とは裏腹に、俺は大の字で空を仰ぐ。

勝負はいつもガチガチとはいえ、勝率がそろそろ五割を切りそうだ。

 

「ユウヤまた負けたのか」

 

D・ゲイザーを外しながら、観戦していたアンナが倒れたままの俺の顔を覗きこんできた。

 

「うん、負けた負けた!いやーでも楽しかった!」

 

いやーまさかあそこからあーしてこーして電池メンを場に揃えてくるとは思わなかった。

あんな面白いコンボを見たら負けてもスッキリと笑ってしまう。

ハッ、もしやこれがエンタメ……!

 

「……決闘ってそんなに楽しいのか?」

 

決闘に興味を持ったのか、驚異の身体能力を持ちながらまだ決闘者ではなかったアンナが聞いてくる。

 

「そりゃそうさ。戦って勝つのはもちろん、やりたいコンボを決めるのも予想外のコンボを相手が繰り出してくるのも面白いよ」

「それで負けても?」

「それで負けても!」

 

負けても魂を奪われず、カードにされないし炭鉱送りにもされないのだからレッツエンジョイし放題だ。

それにARビジョンで立体化するモンスターの躍動をたっぷりと堪能できるのだ。楽しくないわけがない。

それに遊馬先生ではないが、決闘した相手と仲良くなれたらやっぱり嬉しい。

 

「カードの種類も豊富だから、自分の好きなものが描かれたカードでデッキを組むのも良いしね」

「ふーん」

 

決闘するだけじゃなくてカードを集めてコレクションする楽しみ方だ。

まぁ、テーマでデッキ固めるには余程の運命力かサイフポイントが必須だが。

 

俺の決闘盤から【ロードランナー】をとって眺めだすアンナ。

 

「……鳥、好きなのか?」

「ん?いや鳥は別に好きでも嫌いでもないかな」

「………………ふーん」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

アンナをアンナルーツにランクダウンマジックさせると決めてから一か月。

俺のかっとビングはなにも上手くいってなかった。

 

 

「かっとビングだ俺!百メートル九秒以内に走り切ってやるぜー!」

「付き合うよ遊馬!……ん?ゴールの向こうでアンナが手を振ってる」

「へへ、デッキはもらったぜ!ユウヤ、悔しかったら速く走ってオレを捕まえてみろー!」

「俺のデッキー!?」

 

遊馬先生のチャレンジに一緒に挑もうとしていたら、邪魔だからグラウンドの端に置いていた荷物からデッキを盗られ、急遽アンナをデュエルチェイサーとして追うことになった。

奴は決闘で拘束できないのでランニングでアクセラレーションするしかない。

もっと速く疾走れー!と駆けた結果百メートル十秒台くらいの速度が出た気がする。

いや、きっと気のせいだろうとは思うが、それほど早くアンナをタックルで取り押さえられた。

 

「捕まえた!」

「うひゃぅ……!どこ触ってんだ!!」

「ウェスト!?」

 

これで昇進確定だと思ったら変なところを触ってしまったらしくビンタされた。

不可抗力だしそもそもの原因は盗みを働いたお前だと言い争いになった。

小学生の体に興味無いんだよこっちは!

 

 

「くらえー!」

「待って!?ドッチボールは顔面狙いあうゲームじゃないって!」

「ちょ、ユウヤが避けるとこっちに、プラァ!?」

「シドくーん!」

「チッ、外したか」

 

決着を着けるべく次の休み時間にドッチをすれば、突然アンナが始める小学校体育系闇のゲーム。

クラスの仲間たちは、すでに俺が避けるごとに発生する邪心経典という名の顔面ボールに沈み、セーフなのにみんなアウトゾーンで休んでいる。

相手チームの奴を俺がぶっ倒してもぶっ倒しても、もう仲間は帰ってこない。

ドッチボールのルール的に考えて。

これはもうアクションで回避をとりまくるしかない。

 

「甘いぞユウヤ!」

「ブックス!?」

 

一見正しいように見えた回避、しかしそれは大いなる間違いで思いっ切り顔面を撃ち抜かれた。

必要だったのは加速のほうか。

 

 

「これでどうだ!」

「食べ物を粗末にするのはヤメロぉ!」

「なんなのこれ……」

「いいから食べろオレの手作り!」

「ハガぁ!?」

「ユウヤくーん!」

 

小鳥女医たちも巻き込んで弁当を一緒に食べれば、元キング特製シンクロ弁当もかくやというほどの、具材でグッチャグッチャのおにぎりがアンナの手から俺の口に叩き込まれる。

一瞬、あれ美味い?と思った瞬間に複数の味覚すべてを刺激する連続攻撃グォレンダァが突撃。

リバースしそうになるのをなんとか抑え込んで飲み込んだ。

 

「ど、どうだ美味しい、か?」

「…………ふ」

「ふ?」

「……ふざけるなアンナ!」

「フガぁ!?」

「ア、アンナ―!」

 

やられたらやり返す。それが孤高なる希望野郎の流儀だ!

顔を覗きこんで味の是非を聞いてくるこの女のアゴをつかみ、残りのアンナ特製おにぎりで同じことをしてやった。

しかし、ダブルノックダウンで二人とも小鳥女医たちに介抱された。

 

 

「大将……そんなんじゃまた女の子泣かしちゃうって」

「お前には関係ないだろー」

「関係あるなしじゃなくて……」

「お前またやってんのか!」

「ボバサっ!?」

 

性懲りもなくガキ大将が女の子にちょっかい出してたので、ほどほどにしときなと諭しているところを、ガキ大将がまた女子を泣かせたと勘違いして、アンナの正真正銘のダイレクトアタックが俺もろともに突き刺さったりする。

バズーカではなくまだ飛び蹴りであることに安心すべきなのだろうか。

 

 

こんな風に騒動を起こすごとに、暴力はいけませんとか他人の物を盗っちゃダメとか、もっと落ち着いて考えて動けとか文字通り一生懸命に注意するのだが、非があると認めればその場では謝るものの、それのなにがいけないのかな?と言わんばかりに改善の兆候が見られない。

むしろ悪化してないかこれ?

 

頑張った結果変わったことと言えば、周囲からの俺の印象が「かっとビングで決闘が強い方」から「アンナの子分で止める役」になったことぐらい。

俺がランクダウンしてどうする。しまいにはロイド集めてアンナのアニキと言い出せと?

今日も下校時間になり、めげずに明日も頑張ろうと下駄箱の靴に手を伸ばした。

 

が、取れない。

 

よく見ると接着剤でくっ付いているようだ。

しばらく悪戦苦闘していると視界の端で、ゆれる赤い髪が下駄箱の陰から覗いてきた。

 

「…………アンナァ!!」

「やばっ、バレた!」

 

今日という戦いは下駄を履くまで終わらない。

 

そのまま起こった鬼ごっこは、また始まったと残った生徒たちに笑われながら学校というフィールド内を駆けめぐったところでようやく終わった。

途中から遊馬先生や鉄男たちが乱入してきて鬼ごっこの最強進化系と化し、たった一人の鬼役は三十九人全員を捕まえる羽目になった。

だが、遊馬先生のかっとビングに付き合うため決闘マッスルを鍛えはじめた今の俺なら、全力で疾走り続ければ楽勝だった。まだクマは伏せられないので明日は筋肉痛だな!

 

くたくたになったその日は、捕まえたみんなに協力させて靴の接着剤を剥がして、いつも通りアンナと一緒に帰った。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「で?今度はなんで喧嘩したのさ」

 

ある日のこと。

いつもの如くアンナとガキ大将が喧嘩をしていた。

しかし、なぜ女子たちはこいつらが喧嘩を始めると教師より先に俺を呼びにくるのだろうか。

便利だからか。

俺が着いたころには取っ組み合いになって顔とか口とかを互いに引っ張りあっていた。

二人を引きはがす際に思いっ切り蹴とばされるわ無言の裏拳が飛んでくるわで、こっちもボロボロである。

痛む脇腹などを我慢しつつ、喧嘩の原因を正座させた二人に問いただしているところだ。

 

「こいつがオトコオンナって言った」

「こいつもタラコデブって言ってきた」

「ホントのことだろ」

「なんだよ」

「やーめなさい!」

 

また喧嘩を始めようとするのを静止する。お前たちの正座フェイズはまだ終了していないぜ!

二人ともすぐに手が出るのを毎度毎度いくら咎めても聞く耳を持ってくれない。

俺の熱血指導をことごとく拒否りやがって!俺はお前たちが暴力を振るわない姿をみていたいんだよ!

 

「でもここまでヒートアップしたのはなんで?いつもはもうちょっと穏便にすむのに」

「それは……」

 

ガキ大将が俺を恨みがましい目で睨んで口を閉ざしてしまった。

 

根気よく聞き続けると不承不承とガキ大将が口を開いた。

彼はたまたま女子の恋愛トークを聞いてしまったそうだ。

その話の内容で好きな女の子の想い人が「いつも助けてくれる男子」だったそうで、それが自分じゃないことがわかってしまい、恋心を粉砕玉砕されて心がささくれ立っていたところに、アンナがやってきて言い争いになった。

売り言葉に買い言葉かつ普段から蹴っ飛ばされてる遺恨がガキ大将をヒートアップさせたと。

 

ようするに、このハリキリボーイはフラれた八つ当たりがすぐできるタイミングで来てしまって、怒りを止めるに止められなくなったと。

失恋直後で荒れてしまうのはわかるが、それで喧嘩しちゃうのはなぁ。

 

いやそもそもガキ大将の場合は。

 

「アプローチの仕方を思いっ切り間違えてたんだよ」

「だってどうすればいいのかわからなかったし……」

「だからって相手が嫌がることするのは良くない。どうしてそんなことしてんのさ」

「ちょっと悪いことする方がカッコイイしモテるってうちの姉ちゃんが言ってたんだ」

「それ違う。悪いことする奴がモテるんじゃなくて、モテてる奴が悪いことしてるだけ」

 

ジャックを見ればわかる。

遊星からスターダストをパクってキングになったころも、元キングになって穀潰ししてた時もモテモテだった。

対してクロウにはまともなフラグなどなかった。

要は数いるモテるイケメンの中に闇落ちしたイケメンがいて、それが目立ってるだけなのだ。

 

「多分あの娘の中では大将、『会うたびに嫌がらせしてくる本気で嫌いな奴』でしかないよ?間違ってもそれが好意に書き換えられることはない」

「で、でもそいつより俺と一緒にいることの方が多いし……」

 

顔を青くしながらもダメじゃなーいと反論するあたりはなかなかの根性だと思う。だが……。

 

「普段から会う嫌いな奴より、時々会うだけでも必ず助けてくれる人を好きになるのは当然だよ。大将がやったのはむしろ、その人を好きになる手助けをしただけだと……」

「……うわぁぁん!」

 

ガキ大将が突然泣きながら走り去ってしまった。

しまった。なまじ被害者の気持ちがわかるせいですこし強く言い過ぎてしまったか。

とどのつまり、彼もまた不器用とモテるワルという言葉で拗らせただけなのかもしれない。

頭を抱えているとアンナの様子がおかしいことに気づいた。

 

「?どうしたのアンナ」

「今の話……」

「ん?」

「ユウヤもそうなのか?」

「そりゃそうだよ。実体験だもの」

「!」

 

おずおずと聞いてくるアンナにきっぱりと答える。

遊馬先生や小鳥女医のおかげで俺はネオニュー希望野郎に持ち直したマジサイコーっすよな経験があったからこそ、あそこまで断言したのだ。

するとアンナが頬を膨らませながらプルプルと震えだした。

あっこれはヤバい、と思った瞬間。

 

無言の腹パンが俺の腹を襲う。

しかし、寸でのところでその拳を受け止めた。決闘者として当然たしなみだ。

 

「やめろアンナ」

「フン!」

「人を殴ろうとしてその態度はどうなのさ!というか話はまだ……」

 

俺の手を振り払って背を向けるアンナの肩をつかんで叱ろうとした。

しかし、振り返らせたアンナの顔を見てひるんで手を離した。

 

 

うっすらと涙ぐんでいたからだ。

 

 

「……うるさい!お前にオレの気持ちがわかるもんか!」

 

 

その涙の原因がわからず、肩を怒らせて去るアンナをただ眺めることしかできなかった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

ダメだ……俺はダメだ。女の子泣かせるとか……。

原因が何も思い浮かばないあたりが本当にダメだ……。

 

 

自室のベットに倒れ伏す。

アンナの涙のダメージが時間が経つほどに心を抉りにくる。

 

あの後アンナと話そうとしたものの露骨に避けられてしまった。

小鳥さんから、アンナが落ちこんでいてその理由を知らないかと聞かれて言葉につまった。

わからないと答えると、小鳥さんはなにか事情があると察してくれたのかそれ以上は聞かずにいてくれた。

周りが妙に静かになった気がしていたが、その後はアンナが起こす騒動がなかったからだと気づいたときは、そりゃ子分と言われるなと苦笑した。

 

普段よりも肉体的には疲れなかったが精神的にはチクチクと針を刺され続けているような気分だ。

帰りは遊馬や鉄男と一緒にカードショップに寄ったがどうにも気は晴れない。

なにが悪かったのだろうか。

結果的に叱るふりしてガキ大将をいじめてしまっていたのが良くなかったのか。

気づかないうちにアンナの地雷を踏みつけてしまったのだろうか。

 

いくら考えても答えは出ないので、とりあえず買ってきたパックを開けた。

 

 

【EMモンキーボード】が姿を現した。

 

 

猿ぅ!?

 

あまりの事態に跳び上がってパックを落としてカードが床に散らばってしまった。

ペンデュラムは存在したのか!?それにしてもよりにもよってお前って。

 

いや、待て。

カードを拾ってよく見ると、ペンデュラムモンスターじゃなく普通の効果モンスターのカード枠だし、PスケールもP効果もない。

さらに待て、ということはこのカードは…………。

 

 

EMモンキーボード

効果モンスター

星6/地属性/獣族/攻1000/守2400

 

【モンスター効果】

(1):このカードを手札から捨てて発動できる。

手札の「EM」モンスターまたは「オッドアイズ」モンスター1体を相手に見せる。

このターン、そのモンスター及び自分の手札の同名モンスターのレベルを1つ下げる。

 

 

……SALぅ。

 

なんということでしょう。

使い勝手が良すぎるPスケールとサーチ効果で、EMを使うデッキで暴れまわり超スピードで禁止カードに叩きこまれたあの猿が、劇的ビフォーアフターを成し遂げている!

これもう劣化コストダウンじゃないか。どう使えってんだ。

ペンデュラムモンスターだったころのお前は、もっと輝いていたぞ……。

これもきっとドン・サウザンドって奴の仕業だ。

 

しかし、良き力ではなかったがこのカードだけですごい情報が手に入った。

この猿を見る限りで、この世界ではペンデュラムモンスターはただの効果モンスターになっているみたいだ。

同じパックのカードの中にも、OCG次元ではペンデュラムだったものが同様の状態で入っていたので、猿だけのミスプリントということではない筈だ。

 

……それって意味あるんだろうか。

大事な個性が死んだだけになっている気がする。あれ、EMくん居たの?ってレベルに。

結果的に決闘環境の悪化はなくなっているものの、このカードにとっては自分の特性をまるごと爆殺されて踏んだり蹴ったりだろう。

俺は他にEMもオッドアイズも持ってないので余計に良いことなんてない。

 

―――お前にオレの気持ちがわかるもんか!

 

…………それは俺がアンナにしようとしてることと同じなんじゃないか?

俺はアンナが他人に迷惑をかけないようになってほしいから良かれと思ってやっているが、彼女にとってやることなすことに口を出してくる俺は、余計なお節介でしかないのかも。

うざいのか、目障りなのか。俺のいちいちが。

もしかしたら、そんな気はなくても彼女のことを全否定してしまったのだろうか。

 

……とりあえず、明日アンナに会ってから謝ろう。

いやでも、正確な理由がわからないまま謝罪すると余計にこじれたりするしなぁ……。

次の日のことを考えたからか自然と壁のカレンダーに目がむいた。

 

 

……明日から三連休だった。

 

 

すこし気が楽になった自分がまた嫌になる。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

次の日。

 

「……」

「……」

 

ハートランド美術館。

 

現実逃避の末に、そういえばここに持つ者を幸運にする『№7』があったなと思いだした俺は、その恩恵にあやかろうとさっそく見に行くことにした。

だが、現時点ではまだ寄贈されていないようで完全に無駄足であった。

入館料が小学生のサイフポイントに地味なダメージを与えてきた分、徒労感が強まっている。

せめて元を取ろうと館内を隈なくまーわーるーつもりでいたのです。

 

「……お茶飲む?」

「…………もらう」

 

かつてハートランドシティの前身となった街で走っていた列車が展示されているエリアに来た。

エリア中央に鎮座するでかくて古い機関車は、力強さを感じるほどのふつくしさだ。

 

しかし、そこではアンナが意気消沈していた。

 

アンナ!なぜアンナがここに?偶然か自力で入館を!?

三日間は顔を合わせられないと思っていた相手との遭遇にお互いに驚いた。

なにも話さないわけにもいかず、かといってこんな場合に何ができるか判断できず、混乱のまま自然に場を離れるタイミングを逃してしまった。

結局、機関車の前に並ぶ椅子に間をあけて座っている。

とりあえずアンナに自販機で買ってきた森羅印のお茶を一本渡した。

 

「……」

「……アンナはどうしてここに?」

「……この機関車好きだし、タダ券もらったから」

「そうなんだ……」

「ユウヤは?」

「見たい物があったんだけど、なんか……無くって」

「ふーん……」

「……」

「……」

 

気まずい……!

アンナに普段の覇気がまったくないせいでまた調子が狂う。

彼女がくすんでいるというだけなのに、どうにも落ち着かない。

やたらとのどが渇いてお茶が進む。

 

「こういうの好きなのおかしいって言うのか?」

「え?」

「お前もオレのことオトコオンナって思ってんだろ」

 

会話の糸口を見つけられずにいると、アンナがポツリとこぼした。

 

……ガキ大将との喧嘩で言われたことを結構、気にしていたようだ。

列車とかメカメカしいものを好きになるのは男子、という認識が世間一般にはあるのもその悩みに一役買ってしまっているのだろう。

男女の差。普通ならそういうことに過敏になってしまう年頃なのだ。

 

「そんなこと思ったことないよ」

「嘘つけ」

「噓じゃない。アンナと友達になってから一か月ぐらいだけど、女の子らしいところ沢山あるの知ってるし」

 

鬼ごっことかで腕を捕まえたときに、やっぱり男子より体が柔らかくできてるなとか。

勝負に勝ったときの喜び方の仕草が女の子らしかったりとか。

こちらの反応をうががってくるときの表情のかわいらしさとか。

もうちょっと落ち着いてくれたら言うことなしの美少女だ。

 

「この機関車だって女の子が好きになってもおかしくないくらい強そうでカッコイイよ。それに、誰がなにを好きだっていいんだよ」

「……」

「これが好きだって言えるものに男も女も、大人も子供も関係ないっ!」

「……!」

 

こちとら、いい年こいて遊戯王とか、と言われ続けてもやめなかったその手の大先輩よ!

いや、一度その通りかなぁと思って卒業しようとした時期もあったんだが、結局ちょっとしたら元に戻ってしまって以前より余計にハマった。

その末に遊戯王の世界に来てしまったのだからもう一生卒業することはないだろう。

 

「好きなものは、もういいやって思うまで好きでいていいんだよ」

 

どんなに悩んだって、良いなって思ったものを嫌いにはなれない。

他人にどう言われるか程度では自分の心は変えられるものではないのだ。

 

そこまで言って、また余計なことを言ってしまったかもとアンナの様子をうかがう。

しばらくお互い動かずにいると彼女が吐き出すように口を開いた。

 

「ユウヤってさ」

「うん」

「……小鳥が好きなんだろ?」

「…………んぁ!?」

 

驚きのあまり立ち上がってアンナに向き合った。

え?ん?ひょ?

俺が小鳥女医を?なにがどうなってそういう結論に達した?

 

「なんでそうなった!?」

「だって決闘で好きなものを使うって言って小鳥のカード使ってたし」

「小鳥のカード?……ロードランナーか!そういう理由で使ってないよ!?」

 

ロードランナーを使っているのは、前に買った一パックの中をサポートカードの【スクランブル・エッグ】と一緒にうめていたので、何故だ!と怒りのままにデッキにぶち込んだらまさかの大活躍をしたので、そのまま採用し続けているだけだ。

この世界では攻撃力至上主義な決闘者も多いので、敵が一九〇〇以上の奴ばかりのときに意外と壁になってくれるのだ。

 

「それに助けてくれる奴の方がいいんだろ?」

 

―――アプローチの仕方を思いっ切り間違えてたんだよ

―――『会うたびに嫌がらせしてくる本気で嫌いな奴』でしかないよ?

―――普段から会う嫌いな奴より、時々会うだけでも必ず助けてくれる人を好きになるのは当然だよ。

 

「あー……」

 

言われて思い出したが、俺とアンナは元々そういう「いじめっ子といじめられっ子」という間柄だった。

遊馬先生を爆撃する未来にならないようにする方法ばかり考えていたうえに、この一ヶ月の内容がずっと濃かったせいで出会ったきっかけを完全に忘れていた。

それにアンナが自分がやったことを客観視出来ているとは思ってなかった。

 

「実体験だって言ってたし」

「言った。うん、言ったね俺」

 

ええ、記憶にございます。

つまり、あれか。昨日泣いてたのは俺の発言が原因で自分もフラれたと勘違いしたからだと。

……なんだろう。昨日一日中悩んだのがバカバカしくなってきた。

まぁ悪いのは俺……なのかなぁこれ?

 

……まてよ。このまま失恋したと思ってもらった方が遊馬先生は安全になるんじゃないか?

自分のやってきたことがウラ目に出たとなれば粗暴な行いもしなくなるかもしれない。

小学生の失恋で終わって丸く収まるなら、このままにしていた方が……。

 

 

―――思い出すのは、見るも無残なモンキーボード。その絵は、変わらず全力で笑顔の猿。

―――目の前には、今にも泣きそうな弱々しいアンナの顔。

 

 

…………この娘にもいつも通り笑って欲しいな。

 

 

「別に小鳥さんのことは好きじゃないよ」

「……ホントか?」

「小鳥さんには遊馬がいるしね。友達としては遊馬と同じぐらい大好きだけどさ」

「そっか……そっか!」

 

アンナがわかり易く元気を取り戻して、いつも以上に弾けるような笑顔になった。

 

……なんだかプレイミスをしてしまった気がして仕方がない。

いや、そのまま放置して小鳥女医だけを砲撃するようにこじれたら、決闘者ではない彼女はひとたまりもない。そうなったら確実に遊馬先生も危ない。

そうなってはいけないと思った。それだけだ。そうしたら勝手に元気になっただけだ。

アンナが好きだなんて言ってないし思えてもいない。

 

「へへ。なんか安心したら腹減ってきた!」

「食べ物か。そういえば、この近くにクレープの移動販売の車が止まってたような。でも……」

「それ!それ食べに行こーぜユウヤ!」

 

美術館に入る前に見ただけだし時間も経ってるからもういないかも知れない、と言おうとするのも聞かずに、ならシャ店に行くぜ!!と俺の手を引いてアンナは駆け出す。

その姿にもう先ほどの暗さなど微塵も感じない。

もう良くも悪くも完全に元通りである。

 

こんなことで彼女を更生させるとかできるのだろうか。

うん、いずれ変わるさ、いずれな。そう信じよう。

早くしないと俺ではなにも出来なくなってしまう。

 

 

どうあがいても、いつかは遊馬先生に心が向いてしまうのだ。

俺たちの関係はアンナが転校するまでの間だけで終わってしまうものでしかない。

そうなれば俺はただ口うるさい奴でしかなくなって、こうやって手を繋ぐようなことはない。

 

それをすこし寂しく感じながら、引っ張るアンナの手を軽く握り返してちょっと笑った。

 

 

 

 

 

二人分のハートランドクレープは、子供なのでおまけしてもらえたがやっぱりサイフに痛かった。

 

 

 

 

 

 

 




男勝りの女の子が、それをほんのちょっと気にしてる様は可愛いと思う。
アンナはもっとさっぱりしてると思った方はまだ原作前で小学生だからということでどうか、どうか!

しかし、アンナが難しい……!
下手に書くとただの可愛くない暴力女になってしまうし、口調も男らしくしすぎると違うキャラみたいになるし。

違うんだ。オレっ娘って、男っぽい荒さの中から女の子らしさがチラチラ見えるのがいいのであって、アンナもそういうところがあるはずでこういうのではない気がする……!

私を文才ある人間に書き換えてくれドン・サウザンド!
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