遊戯王のユウヤになりました   作:サルガシラン

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ジャガーノート・リーベ「書け」
( ゚Д゚)「あ、はい」

アンナ愛のある新カード情報が来たので続きます。
列車のコンセプトが単純明快だから出し易いんでしょうね。

今回もオリカっぽいのが描写だけですが出るので注意。





観客席から見る世界。

 

「『幻煌龍 スパイラル』で【竜胆ブルーム】を攻撃!」

「カァリタァ!?」

 

トレードしてもらったばかりの青い花を纏う竜が、元の持ち主が操る青白い竜に爆殺された。

攻守が同じ数値の相手じゃ【竜胆ブルーム】の守備力の数値で戦う効果も無意味だ。

 

「トドメ、行くぜ。二体目の【スパイラル】で……」

「まだまだぁ!【速攻のかかし】発動!」

 

大会前に飛夫さんとトレードして手に入れた【かかし】が、竜から放たれた水撃から俺を守る。

手がある内は勝利への足掻きをさせてもらおう!

 

 

 

「No.96バナナ撃退事件」から二日跨いで、大会の最終日。

 

あれからも観戦を続けたが結局ナンバーズは【85】と【96】だけだったらしく、俺も体調を崩すことはなかった。

大会中は昼食休憩などの暇を見つけて、海美さんや飛夫さんの高校の決闘者たちに交流という名の決闘を挑みまくっていた。

 

俺が完全に小学生なこともあって、快く決闘やトレードに応じてくれる人が多い。

若干、隙を見て鮫のようなトレードを仕掛けてくる輩もいたが常習犯らしく周りに抑えられた。

軽いノリでシメられていたのでナンバーズクラブでいう徳之助みたいな立ち位置の人なのだろう。

とりあえず普通に交換してもらった【サタンクロース】は大切に使わせてもらうウラ。

 

【スパイラル】の人との決闘は粘ったものの、通常モンスターの連打に俺の『白銀のスナイパー』が沈み、あえなく敗北した。

その後も【ベン・ケイ】のお兄さんや【マスター・オブ・OZ】のお姉さんやらとカード交換&決闘を繰り返す。いやー使える装備や融合系のカードがあると戦略の幅が違うなあ。

当然、決闘で勝っても負けても【No.96】のような非ィ現実的なことは一切起こらない。

 

スカッとするぜ!そうだよ、こういうのがいいんだ!

なんだ、勝ったらオカルトカードに追い立てられるライディングデュエルって。どういうホラー?

デュエルモンスターズなら決闘で拘束しに来いよ。

いや、あの場合は俺が勝ったからアイツが拘束されに来たのか。なんてはた迷惑な自首。

そんなことがあったばかりなので普通の決闘が楽しくってしょうがない。

 

「楽しんでる?」

「海美さん。はい、皆さん良くしてくれてます」

 

【パワー・フレーム】を装備した【ロードランナー】で勝利したところに、昼食を取り終えた制服姿の海美さんが近寄ってきた。

俺が思う存分に決闘できるのは、二つの高校どちらにも知り合いがいる彼女のおかげだ。

友人とは決闘者のことなのだと言わんばかりに、沢山の人を紹介された。

 

「それは何より。でもユウヤ君、大事なことを忘れてない?」

「はい?」

 

なんのことだろう?と思うと同時に、笑顔の海美さんに両手で顔を挟まれ横を向かされた。

 

 

その先に普段通りのアンナが居た。不機嫌そうに頬を膨らませていることを除けば。

 

 

え、何故?

疑問符が止まらない俺に、困ったような顔で海美さんが助け舟を出してくれる。

 

「だって同年代の子が他にいないのに、一緒に来た子だけ自分を放って楽しくしてるのよ?」

「あー……えぇ?」

 

確かに普通に考えれば、周りが年上ばかりでは寄る辺がなくなっても不思議ではないだろう。

 

でもアンナだしなぁ。人見知りするような娘じゃないし、初日に紹介された時も女子高生たちと瞬時に打ち解けていた。むしろ最初のうちは俺の方こそ居心地が悪かったぐらいだ。

この数日でわかったことだが、アンナの中で俺の優先順位は海美さんの遥か下に位置しているようなので、海美さんがいる間は変にかまったりしない方が良いだろうと考えていたのだが……。

困惑していると目の前の海美さんが真剣な顔で俺の両肩を掴む。

 

「ユウヤ君デッキを組んでいる時にこんなことない?このカード絶対相性が良いと思って入れて最初は上手く回ってたけど何回か使い続けていたら機能しなくなって実は他のカードと噛み合わせが悪かったなんてことそういうことは人間関係でも同じことがあるの趣味が合うと思ってたらちょっとのこだわりの違いで仲違いしたりねでもカード一枚じゃ上手く行かなくてもサポートカードがあれば独立したコンボが確立するように誰かが間を取り持つだけで円満に解決できることもあるのでもそれは近くに揃ってはじめて意味があるものよ」

「え?んん?え?」

「だから、ね?」

 

ね?と言われましても、まるで意味がわからない。

早口でまくし立てられ話の内容もいまいち頭に入ってこない。

つまり、なんか女子高生たちと上手く行かなくなったということだろうか。

それに気付かず決闘を一人でやってたからアンナがへそを曲げた……で合ってるのか?

 

「参ったなぁ……」

「大丈夫よ。アンナちゃんの機嫌を直すなら簡単な方法があるから」

「え!そうなんですか」

 

情報源に信頼がおけるので、それは是非とも知っておきたい。

普段でも学校でアンナが暴走した後に説教のプレイミスで機嫌を損ねてしまうと、休み時間に顔面狙いドッチボールという闇のゲームが始まり、よりヒドイ時はいくら謝っても鉄の意思でその日はもう口を聞いてくれなくなる。

それでも下校は必ず一緒なので、鋼の強さの気まずさがトリックスターの地味バーンの如しだ。

 

「ユウヤ君、耳貸して。…………」

「……ええー……」

 

海美さんが耳元でささやかれた対応策に俺は思わず渋い顔で返してしまった。

その方法、あの娘が笑顔を得る代わりに俺が一番大事なものを失ってしまう気が……。

 

「早く早く、アンナちゃんが待ってるわ。ほら!」

 

急かす海美さんに背を押され、他の策もないままアンナの元へと向かう。

 

「…………」

「えーと……アンナどうかした?」

 

とりあえずのご機嫌伺いに対しジト目で俺を一瞥すると、そのままプイと顔を逸らされる。

 

「おーいアンナ―」

「……」

 

無視。

 

「アンナ、見て見て交換してもらった【簡易融合】と【おろかな埋葬】!これ使えるんだよー」

「……………………」

 

自慢もしたかったので成果を見せるがやはり無視、どころか眉間にしわが加わった。

そりゃ決闘しないアンナにこんな話しても効果ないよな。

 

「ごめん、俺だけ楽しんじゃって。まだお昼の時間あるし、今から一緒にやれることで遊ぼうよ」

「……」

 

素直に謝るがどこまでも無視。

その後も、折れないハートであれやこれやと言葉を変えながら謝るものの効果は無効。

くっ、取り付く島もない。届かない届かないこの謝罪を通すには本当に海美さんの助言通りにするしかないのか。

 

「あー……ほら、今日はなんでも言うこと聞くから」

「ホントか!?」

「あれ?」

「あ……フン!」

 

一瞬、すごいキラキラした顔で返事をしたと思ったら、しまったと慄いてからいかにも私は不機嫌ですといった不満顔を作り直して再び顔を逸らした。

不審に感じたので、頬を膨らませて斜を向くアンナをじっと観察する。

よく見ると、なにかを我慢するように頬の筋肉がヒクヒクと動いている。

いつもは一度機嫌を直したらそのまま仲直りできるし、今の言葉だけで機嫌が直ったようには見えなかったし……ふむ、これは。

 

「…………アンナ、実は最初から怒ってないだろ」

「ぷふ」

 

嘘つきは堪えきれなくなったのか、その口から息が漏れる。

そのアゴを素早く掴み、指で膨らむ頬を挟み潰して空気を吐かせて詰め寄った。

 

「人が一生懸命に謝ってるのを笑うとはどうゆう了見さ。ん?」

「んぐうー」

 

目を逸らして口笛を吹こうとしているが、俺が掴んでいるせいでふひゅーふひゅーと空気音がなるだけだ。吹けていても誤魔化されないけどな。キリキリ吐けい。

 

「だっへ、お前を思ひ通りにするほーほーがはるっへ、姉ひゃんたひが言うはら……」

 

アンナの周りにいる女子高生たちを見回してみるとニヤニヤしているのが二人、苦笑いしているほんわかな方と我関せずなクールさんと器用に鼻提灯膨らませ寝ている人が一人ずつという、明らかに集団犯罪だったことがうかがえる。

師弟たちは一つ、みんな女友達……。

 

「すごいすごい!姉ちゃんたちの言う通りになったぜ!」

「わかったでしょう、少し引いて相手の攻撃を誘うのも大事な駆け引きなのよ」

 

隙をついて俺の手から逃れたアンナと、海美さんがハイタッチしていた。

やはり紅蓮の悪魔はアンタでございますかぁ!

アンナに良からぬことを入れ知恵をし、俺を騙して売った主犯はにこやかにサムズアップをしているが、こっちはセキュリティにドナドナされる気分である。

頭を抱えて座り込む俺の隣で、満足して上機嫌なアンナが笑った。

 

「へへへ、なんでも言うこと聞くんだよな!じゃあ今日から一生オレの言うこと聞けよ!」

 

一つだけ願いを叶えると言ってるのに、叶える願いを百個に増やせーみたいに言わないでくれ。

 

「今日だけだって言ってるだろう……というか人を騙す子の言うことは聞きませーん」

「はぁー!?男が二言するなんてみっともないぞ!」

「女に二言はないって言いながら、二日しないうちに似たようなことする奴に言われたくないよ」

「へいへいユウヤくーん。観念しちゃいなよー」

「年貢の納め時ぃ」

 

アンナに反論する俺に、ニヤニヤ見てた高校生たちによるノリの援護射撃が襲ってくる。

捌ける気がしねぇ!チクショウまんまと女たちによる罠の発動を許した俺をなんとかしろ遊作。

 

「あまりボーイをいじめてやるなよ」

「飛夫さん……!」

 

ああ、救世主がやってきた。

相手は神月の血による被害を俺より被っているだろう偉大なる先輩、羽原飛夫さんだ。

経験豊富ゆえにこの追い詰められた状況へのカウンター策を提示してくれるのではないだろうか。

この状況を見てどこか死んだ目をしている学生服を纏う彼は、ポンと俺の肩を叩いた。

 

「まぁ……頑張ろうな……」

 

解決方法はサレンダーしかないらしい。

地面に手をつく。おそらく飛夫さんも体験したであろう蜂の踊りを俺も踊るしかないのか。

やはり未来には絶望しかない……。

落胆によって伏せられた俺へと住所が書かれた紙が差し出された。

 

「俺のガレージはここだ。夏休みの間ならメカニック仲間たちがいるだろうからいつでもおいで」

「おお!ありがとうございます」

「いいよ。機械いじりの同士ができるのは俺も嬉しいし……違う意味でも同士みたいだしな」

「あはは……」

 

遠い目をしながらも朗らかに笑う飛夫さんに、俺も乾いた笑いが漏れる。

 

【96】に追いかけられて、決闘以外の対抗手段が欲しくなった俺はダメ元でフライングランチャーの制作者である飛夫さんに相談した。

いきなり攻撃的な物が欲しいと言っても断られるのは当然なので、【96】に憑りつかれた男性をスタッフに助けてもらった話を絡め、とりあえず人が倒れた時に安全な場所まで運べるような物を作ってもらえないかと頼んでみた。

 

すると、それなら作り方を教えるから自分で制作してみないか、と勧誘された。

遠回しな断りの返事かと思ったが、正直藁にも縋りたいので誘われるまま応じたのだ。

まぁ、俺がメ蟹ックなれるわけがないので少しずつ仲良くなって対策になる物を作って貰う気だ。

他力本願は某妖精竜もやった聖なる手段。たぶん許されるだろう。

 

「あら。目の前の私や女の子たちを放ってユウヤ君をナンパしてるの?」

「人聞きが悪いな。クリエイティブの素晴らしさをボーイに感じて欲しいだけさ」

 

笑顔の海美さんが飛夫さんの前に向かい立つ。

最初に会った時の様子と比べると、どこか険と緊張を含んだ声音だ。

変な嫉妬……とかではないな。この後の試合の組み合わせを考えれば、そうなるのも仕方ない。

 

「ふーん……。で、用はそれだけなの?」

「それと……海美ちゃんとちょっと話しにね」

 

海美さんの緩んでいた口元が真一文字に伸び、目元も先ほどよりわずかに鋭く変わった。

その変化に見覚えがある。初めて会った時に見せた決闘者としての顔貌である。

 

「やるとしたら決勝だな」

「…………ふふ。そうね」

 

大会も残すところ僅か。

休憩後の午後はシングルトーナメントとタッグトーナメントの準決勝と決勝、三人チームの団体戦の決勝があり、それが終われば表彰式となる。

 

両校の中で勝ち残っているのは、シングルでベスト4に数えられているこの二人だけだ。

二人はシングル戦以外にも海美さんはタッグの、飛夫さんは団体戦のトーナメントにも出場していたが、どちらも既に敗退している。

 

「優勝するのは、私よ」

「それはどうかな?」

 

男女が見つめあう。

その間に甘酸っぱいものなどなく、まるで戦士が気迫をぶつけ合うかのような緊迫感がその場を支配している。不敵に笑いあう二人は、獲物を狙う目で真っ直ぐに相手を見据えていた。

海美さんはどこか迷いが吹っ切れたかのような晴れやかな顔で、飛夫さんは己が負けることなど少しも考えていないかのように、全身から自信を放つ。

その姿が二人は男も女も関係なく、互いの実力を認め合ったライバルなのだと物語る。

 

 

なぜだろうか。

言葉少なくとも戦意をぶつけ合うだけでわかり合える相手がいる彼らが、少し羨ましかった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「……」

「……」

 

今日の天気は曇り空。

前日までと比較して直射日光が無いだけでも応援のしやすさは段違いだが、暑さは変わってくれないし湿気は高くなるものだから、ジットリした不快感が肌を撫で続ける。

 

観客席から見える決闘場では飛夫さんと、名も知らぬ選手によるシングル戦の決勝が始まる。

 

 

シングルトーナメント準決勝第二試合。

海美さんは、敗退した。

 

 

相手は、やはりこの世界にも存在したデュエルアカデミアの生徒。

決闘者の育成機関ゆえに、当然こういう大会では強豪扱い……というか結果を出していないと面目が立たないだろう。

タッグ、団体でも勝ち残っていたし、どの生徒たちも垣間見えるデッキの構成や試合の立ち回りを見るだけでもその名に恥じない実力を持っているのがわかった。

『ベン・ケイ』の人から聞いた話だが、プロを目指す者にとって彼らに勝利することは大会で上位に残る以上に重要な、超えるべき壁だそうだ。

彼らから勝利を掴んだ者はいずれもプロで大成しているらしく、一種のジンクスなのだろう。

 

その中で海美さんが敗北したのは、タッグトーナメントで対戦し敗北したコンビの一人だ。

つまり、一度の大会中に同じ相手に二度敗北した形になる。

 

リベンジに燃えていたがゆえ、敗北に涙を流した。

 

試合の直後こそ対戦相手と笑顔で握手までしていたが、選手用の通路で人知れず悔しさを嗚咽とともに噛み殺していた。

それをタイミング悪く俺と、居ても立っても居られなかったアンナが目撃してしまったのだ。

声をかけようとしたアンナを、今は一人にしてあげようと言って無理矢理引き留め、音を立てずにその場を離れて観客席まで戻った。

 

アンナはそれから時折唸りながらも黙ったままだ。

憧れの人の敗北よりも、その泣き姿を見てしまったことがショックだったのかもしれない。

それとも、泣いていた彼女に何もせず戻ったことを後悔しているのだろうか。

だとしたら俺のせいだ。

だから、そこへどう声をかけるべきかわからない俺も、ただ押し黙る以外に取れる手がない。

 

そんな俺たちなどお構いなしに時間は進み、眼下では決勝戦が始まった。

 

 

「決闘って楽しいものなんじゃないのか?」

 

 

沈黙を続けていたアンナが突然呟いた。

 

【幻獣機】の戦闘機たちが【壊獣】たちへと挑んでいく。

決勝戦ゆえか、今までの試合よりもモンスターたちが大きく投影されていることもあって、怪獣映画の世界に迷い込んだと錯覚しそうだ。

 

「……決闘に限ったことじゃないけどさ、楽しくてのめり込むからすごく悔しくなるんだよ」

 

迷いながら口を開く。

 

おそらくだが決闘に負けて泣く、という初めてのケースに戸惑っていたのだろう。

この娘が見てきた決闘は、勝っても負けてもいいフリー決闘ばかりのはずだ。

俺は大抵の場合、負けても楽しいしそのままリベンジを申し込んだりする。

よく決闘してくれる遊馬先生や鉄男たちも大差はない。

 

海美さんが本当はどう思っているかなんて俺にはわからない。

俺なりの言葉でしか答えられないことが、少し心苦しい。

ここに戻って来ていない彼女は、どこかでこの試合を見ているのだろうか。

 

「アンナはさ、勉強ってなると覚えられないけど、好きな物のことはいくらでも覚えられるってことない?美術館にあったような鉄道のこととか」

「そうだけど……それがなんなんだよ?」

「好きなことだから、誰よりも知りたくなるし真剣になるってこと。勝負事ならなおさらね。色んなことを覚えて試して、それで上達したらもっと強くなりたくなる」

 

狼柄の戦闘ヘリが甲羅を背負う青い竜を銃撃すれば、それを踏み潰して巨大グモが降り立つ。

クモが呼び水となり、張り巡らされた糸を引き裂いて三頭を持つ雷獣が雄叫びをあげた。

 

「結果を出したら自信にもなる。沢山の人が認めるし形に残るしね。そこからもっとってなる」

 

雷の三連撃を凌いだ戦闘機たちがクモ怪獣を味方に付け大型ジェットが地面の銀河から飛び立つ。

大迫力の攻防による観客の熱狂が声援となって会場を揺らしている。

隣のアンナに俺の声は届いているのだろうか

 

「長い時間をかけたのに上手く行かないとさ、自分がやってきたことが全部無駄だったって否定されたように感じたりするんだよ。その時間は好きな物と向き合った時間と一緒だしね」

 

だからこそ余計に悲しくなる。

自分よりも知識のある人間がいることを、上には上がいることを受け入れたくないとすら思うかもしれない。

 

オーバーレイネットワークから見覚えのない、フィールドに収まらないほどの巨体をもつ恐竜のようなドラゴンのような黒い怪物が、オーバーレイユニットを伴って浮上する。

負けじと対面から真白く輝く超巨大ジェットが飛翔し、獣の頭を有する機械たちが空を制する。

これもやはり見覚えがない。

 

きっとこの世界だから存在するモンスターエクシーズたちなのだろう。

この大会の中で様々な試合を見たが、見知らぬモンスターや魔法・罠が山ほど飛び交っていた。

それはこの決勝でも同じこと。もう驚くようなことじゃない。

 

「大事に思って積み上げてきたから、打ち壊されたら苦しくて悔しくてたまらなくなるんだよ」

 

大好きなことだからもどかしくて辛くなることだってある、と続けてた。

 

「でもそれだけの思いを込められるから、ものすごく熱くなれる……んだと思うよ俺は」

 

会場の大型スクリーンには、怪物と戦闘機の操り手たちの顔がアップされていた。

どちらもギラついた眼と汗を輝かせながらも、その面差しには楽しくて仕方ないと書いてある。

 

「よく、わかんねー……」

 

アンナはまだ子供だ。

経験の浅いうちからこんな話を口頭で理解しろ、なんて酷だ。

それも俺の想像だけが頼りの拙い説明なのだから、尚更だろう。

人によってはそんな体験も、それを想像も理解しようともすることなく大人になる者もいるのだ。

だが、彼女の場合なら今はまだわかり辛いというだけだろう。

 

「アンナなら何時か必ずわかる日がくると思うよ」

「なんでそんなことわかるんだよ」

「だって、アンナはいつも全力だからさ」

 

思い込んだら間違っていようがお構いなしに爆走していくのは、裏を返せば自分に揺るぎない自信があるということだ。そういう人間は大成することがある。

この娘を放っておけないのは未来の遊馬先生たちが危ないからだけでなく、それが悪い方向に向かってしまうのがもったいないと思うからだ。

結構迷惑だし危ういが、自分を疑わず進んで行ける力強い姿勢は俺にはない物で好感を覚える。

治してほしいと思う半面、それが大きな長所となって彼女の人生を助けるかもしれない。

 

 

「だから、大丈夫だよ」

 

 

難しい顔をしている彼女に笑いかけた。

この娘が一度情熱を傾けるものができたらどこまでも突き進み、きっとそのエネルギーで俺には想像もつかない様なとんでもない方法で成果を挙げるのではないだろうか。

それは決闘でもいいし、まったく関係のないことでもいい。

少なくとも、ナンバーズをバナナで抑え込む以上のことはやり遂げるだろう。

 

 

――――だが、俺はどうだろう。

 

 

決闘は大好きだ。一度は諦めたものの、遊馬先生にカウンセリングされてからはプロ決闘者の道へかっとビングするのもいいかも、と再考したこともある。

 

だが『96』の人との決闘と普通の決闘を比べてわかった。俺はただゲームとして楽しみたいだけだと。俺の中に海美さんのような敗北を苦しむ情熱はない。

相手に勝つ気がなかろうとも、できるなら勝敗で進退窮まるような決闘はもうごめんだ。

プロの世界ならば、オカルトが関わらずともそんな決闘の方が多いのは明白。

こんな半端な気持ちで入って行ける甘い世界ではないだろう。

ナンバーズを相手にできないと解った今、俺は決闘で強くなろうと拘る必要がまったくないのだ。

 

しかし俺から決闘を抜いたら、役に立つようで立たない前世の知識があるだけの一般人だ。

遊馬先生に付き合って色々挑戦してはいるものの、どれも広く浅く。

決闘者がはびこる世の中で、少々プールを無呼吸潜水で往復できようとも他人より優れているとは到底思えない。

 

 

普通に生きていくにしても、この世界で俺は何かを成せるのだろうか。

 

 

俺の思案など無関係に、目の前の立体怪獣映画はクライマックスだ。

 

黒い暴竜が吠え猛り、口腔へと破壊の意思を持つ光が収束していく。

巨大ジェットへと光り輝く暴威が放たれた。

 

ジェットの先から伸びる獣頭も対抗するように雄叫びを上げ、その身を赤く輝かせながら光線へと飛び込み迎え撃つ。

そのまま破壊せんと光を強めつつ一歩踏み出す怪竜に対し、飛行兵器はリミッターを超えたエネルギーによって機体へヒビを入れながらも、敵を超える力で光を押し返して行く。

 

その翼が光を裂き、ついには黒い怪物へと轟音を立てて激突しその中央に風穴を空けて貫いた。

 

その光景に呼ばれたように、ARビジョンによるものではない一陣の突風が吹き抜ける。

肌にまとわりつく不快感が一瞬だけ飛び去った。

 

いくつもの爆炎と煙をあげながらその巨体が倒れ沈み、光の粒子となって消えていく。

爆煙が晴れる。倒れ伏す敗者と、雲の切れ間から差した光の中で堂々と立つ勝者の姿があった。

 

 

勝者は……飛夫さんだ。

 

 

最後の攻防に目を輝かせたまま放心しているアンナを置いて、爆発するような歓声と拍手が鼓膜を破りそうなほどに鳴り響く。

その中に埋もれる俺の拍手は、普通に叩いているだけなのにどこか空々しかった。

 

 

 




揺れるママママインド。

本当は飛夫・海美によるイケメンフェイズが入る予定でしたが、スキップされました。
というか主人公が出てもいない大会中の話をこんなに書く気はなかったはずなのに……。

書きたい欲求と、上手く書けないから書きたくないの間で私の中でも振り子が揺れる。
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