ヤンデレ系主人公!?「桜柳絵美里」さんの爆走恋愛論 作:C・S
トンネルに入ると今までずっと聞こえてきていたレールのジョイントの音がなくなった。つなぎ目のないレールの上を走る列車は、私たちに恐怖感を覚えさせる。
「お客様、何か買いたいものはありますか?冷たいお飲み物、おつまみをご用意しておりますが」
「いや、遠慮しておくわ」
「左様でございますか。この列車の終点まで11時間ほどで、途中の停車駅はありません。何か御用がありましたら何なりとお申し付けくださいませ。」
ウェイトレスはぺこりとお辞儀をして隣の車両へ移った。
私たちが本来乗る予定だった列車は3時間ほどだったはずなのに11時間ってあまりにもおかしいわ。
「トウヤ君、私たち帰れるのかしら……」
「そうだなぁ、それは現時点では何とも言えない。帰るための手がかりを考えていくしかないね」
いつでも、どんなときでも冷静な判断ができるトウヤ君には安心してついていけるわね。
こんな風に考えちゃいけないのかもしれないけど、こうやってトウヤ君と二人っきりでいられるってことは私にとって……いや、なんでもないわ。
「トウヤ君、とりあえず車掌室に向かいましょう」
「それがいいね」
そして私たちは車両のデッキに出た。
薄暗いデッキの端に小さな部屋がある。その部屋の入り口のガラスには白い文字で車掌室と書かれている。
トウヤ君は車掌室の扉をノックして、
「すみません、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
すると車掌室の扉が開き、
「はい……」
深々と帽子をかぶっている車掌が出てきた。彼のジャケットには「坂城」と書かれた名票がつけられている。
「どのようなご用件で……」
「この列車はいったいどうなっているんですか?」
トウヤ君、それはさすがにぶっ飛びすぎているんじゃないかな。まあこういうところもトウヤ君のいいところだわ。
「普通の定期列車ですが。お客様、誤乗なさいましたか?」
「いや、そんなことはないと思うのですが」
「とりあえず切符を見せてください」
私たちはSLのグリーン券と乗車券しかもっていないんだけど大丈夫かしら。まあ、違う切符でも次の駅で降りて無賃送還してもらえば問題ないわね。
私は、財布にしまった切符2枚をとりだした。一応、もう一度切符の確認をしたのだがトウヤ君にもらった切符で間違えはなかった。
私たちは車掌さんに切符を渡した。すると、車掌は眉間にしわを寄せながら切符を凝視する。そしてしばらくして、
「なるほどねぇ……。あっ、そういうことか」
車掌は切符を私たちに返した。
「どういうことですか?」
私は車掌さんに問う。
「いやぁ、その、まあこの列車で間違えないですから。SLの旅をお楽しみください。終着駅であなたの知り合いが迎えに来ると思いますので、ごゆっくりと」