ヤンデレ系主人公!?「桜柳絵美里」さんの爆走恋愛論 作:C・S
この列車の旅が始まってから積極的なトウヤ君。普段の学校生活ではいつも照れちゃっててこんなことはしてくれない。二人っきりだからかしら。人前だと照れちゃうなんてやっぱりトウヤ君はかわいいわ。
「ねえ、絵美里さあ……」
「どうしたの?」
「絵美里はどうして僕のことを好きになったの?」
どうしてトウヤ君のことを好きになったかなんてそう簡単に言えることではない。きっかけは一人ぼっちの時に話しかけてくれたからってことだが、なぜ好きになったかははっきりしていない。だって私にとってトウヤ君は、私にとって……
「そんなこと、簡単に言葉で表すことなんでできないわ。私にとってトウヤ君は……、トウヤ君がいなければ今の私はないんだから」
「絵美里……」
私の名前を言って言葉を詰まらせるトウヤ君。これはこれでまあ、かわいいわね。
そしてしばらくして、列車はトンネルを抜けた。
「うっ、嘘」
車窓に広がる一面の星空。まるで宇宙空間を走っているような状況だ。現実世界では考えられないような出来事に思わず驚いてしまった。
「トウヤ君、見てよこれ」
「ああ。これはもう今に始まったことではないけど尋常じゃないってことは良くわかるな」
混乱しているトウヤ君は語彙力が面白いことになっている気がするがまあいいわ。車窓を眺めていると地球によく似た惑星が迫ってきている。いや、この列車が惑星に向かって走っているのであろうか。
「大変長らくお待たせいたしました。あと10分ほどで終点でございます。お忘れ物ございませんようお気を付けください」
車掌が私たちが乗っている客車にやってきて言ったのであった。
「あ、お客様。お迎えの方のところまでは案内いたしますのでこのままお席でお待ちください」
「はい……」
いったい誰が迎えに来るのかしら。まあ、トウヤ君がいるんだからメンタル面ではどうにかなるわね。でも問題はメンタル以外の面だ。トウヤ君はかわいいけど何かあったときに心強いって体格ではないのよね。まあ、トウヤ君なら何とかしてくれると期待するしかないわね。
「絵美里、もう少しだけ待っていてほしい」
「そんなもんだと思っていたわ。私はずっとずっとトウヤ君のことを好きで居続けるから」
こんなことは前にも言ったような気がする。でもトウヤ君の気持ちの整理がつかないままに無理やり付き合うっていうのもなんか違う気がする。私だって私だけの我儘で動いているってわけじゃないわ。
「まあ、せっかくトウヤ君が誘ってくれたSL旅行だし楽しんでいきましょう!」
「僕が考えていたものとは違うけど……そうだね」
列車はみるみる惑星に近づいていく。宇宙空間のような場所を走る列車はレールと車輪がこすれる音などは聞こえず、客車内は不気味に静かだ。
「まもなく、到着いたします。揺れますのでご注意ください」
車掌が車内放送でそう呼びかけてしばらくすると、惑星からのびているレールに列車が着地した。
「なんだか地球みたいな場所だね、でも今まで宇宙空間みたいな場所を走っていたから違うんだろうけど」
こんな異常な現象を信じてしまっている自分は頭がおかしいのだろうか。しかし、自らの眼でこの異常事態を見てしまうと現実というものが何なのかが分からなくなってしまう。
「まあ、植物があるし水もあることだから生きていくことはできるんじゃないかな」
「そうじゃなきゃ困るわね」
このままトウヤ君と死を迎えるのはごめんである。もっとトウヤ君と楽しい思い出を作っていきたい。私はここで人生を終わりにする気なんて微塵もないわ。
空中から地面に向かうべく列車は急勾配の坂道を下り終えるとガチャリと揺れ速度が落ち始めた。すると、ひどくボロボロになったプラットホームが見えた。大谷石でできた昔ながらのプラットホームだ。ホームの先端まで進むと列車は11時間ぶりに停車し、扉が開いた。