ヤンデレ系主人公!?「桜柳絵美里」さんの爆走恋愛論 作:C・S
車掌さんに席で待ってろと言われているので私たちは人がだれもいない寂れたホームを見ながら待っている。そしてしばらくして、
「お客様は桜柳絵美里様でしょうか?」
緑色の髪をした女性が客車に尋ねてきた。彼女の目までかかるほどの長い髪から見える視線は生気を感じさせない不気味さを感じる。
「はい……」
この国では目を髪の毛で隠すのが流行っているのかしら?車掌といいウェイトレスといいみんな不気味だわ。
「私はロイドといいます。お客様をご案内いたします……」
声まで感情が感じられないわね。まあいいわ。この不気味な列車で不気味な世界に連れてこられた私たちはこの人を頼るしかなさそうだ。そうして、私たちはこの人についていき列車を後にした。
「トウヤ君、寒いわね」
暖房に使われた蒸気が客車からモクモクと出ている。こっちの世界では冬なのだ。私はトウヤ君を抱き寄せる。このような寒い場所だとこうしてトウヤ君に躊躇なく抱きつけるわ。
「お二人は恋人同士なのですか?」
ロイドさんが私たちに問いかけた。
するとトウヤ君は、
「あっ、いや、そういうわけでは……」
照れくさそうに返事をする。まあ照れるってことはそれなりの感情があるってことよね。そのくらい私にだってわかるんだから。とにかく、そうであるに違いないわ。
「そうでございましたか。もし私も好きな人とこのような旅ができたらとっても幸せなことだなあと思いまして」
好きな人がいるってことはこの人も一応人間的な感情を持ち合わせているようだ。
「まあ私はトウヤ君と一緒にいられてとても幸せね」
「フフフッ……」
ロイドさんは不気味に笑った。いや、本人は不気味さを出しているわけではないのかもしれない。
ホームの階段を上り連絡橋を渡ると改札が見えた。自動改札ではない昔ながらの有人改札だ。
「桜柳様ですね、ようこそ」
改札のおじさんは私たちをみて切符を確認せずに通してくれた。この人も私の名前を知っているようね。
改札を抜け、駅舎を出ると西洋風な建物が並ぶ街並みが広がっていた。
「なんかまるで異世界に召喚された気分だなあ」
トウヤ君、しゃれにもならないことを言わないでほしいもんだわ。いや、トウヤ君のどの発言もかわいいことは間違いないけど。だとしても、異世界転移するっていう展開はさすがに非常識すぎるわ。いくら今までがうまくいきすぎているからって異世界転移落ちはさすがに破綻しすぎているし非現実的だ。
「こちらの車にお乗りください」
異世界風の街並みにはそぐわない街でよく見かける高級車が止まっていた。その車の後部座席に案内された私たちはそれに乗り込み町はずれの小高い山をのぼることとなった。