ヤンデレ系主人公!?「桜柳絵美里」さんの爆走恋愛論 作:C・S
そして列車はゆっくりと地下ホームに入り、停車をした。
時刻は午前6時15分。私たちの地元の駅ではまだ人がまばらなはずのこの時間帯も大都会のこの駅では人があふれかえっている。もっとラッシュ時に近づいたらどんな人ごみになるのかしらと思えるくらいだ。
「トウヤさん、絵美里さん、こちらですよ」
元気よく声をかけ私たちを先導してくれている四万十川さん。地下ホームから地上のホームへと移動して次の電車を待っていると、彼女の長い髪を朝日が照らしている。私もこういう髪形にしてもいいかもしれないわね。まあ、トウヤ君がどう思うかはわからないけど。
「なあ絵美里」
「えっ?あっ、どうしたの?」
トウヤ君が突然私に声をかけた。
「またその反応だね。」
「どういうこと?」
「何か考え事をしていたんでしょう」
「絵美里さ、あとで僕に話してよ。僕だって絵美里がいつも元気なさそうにしているのは見ていてちょっとつらいんだよ」
「別に元気がないわけじゃないわ。心配かけてごめんね。なんでもないわ」
これは私の問題であってトウヤ君には全く関係ない。
あれから特急列車とローカル線、路線バス、そしてジェット船を乗り継いで3時間半でとうとう四万十川家が所有しているという無人島に到着した。
「やっと着いたわねぇ」
いくら旅行が好きだといっても朝から列車やバスに乗っていると疲れてしまう。 しかし、その疲れが吹き飛んでしまうほどの絶景が私の目の前に広がっていた。トウヤ君と一緒にこんなにいいところに行けた私は今とても幸せだわ。
「絵美里さん、トウヤさん、今日は思いっきり遊びましょう!」
珍しく元気いっぱいの四万十川さん。彼女は学校から離れると元気になるタイプなのだろうか。いつしかの私みたいね。
「四万十川さん、遊びたいのはやまやまなんだけどその前に食事にしない?」
そう、私たちは疲れてしまったのだ。
「あら、もうこんな時間でしたのね」
四万十川さんが立てた旅行プランなのだからこの時間にこの島へ到着するということは知っていたはずだ。まさか彼女は昼食を食べずに遊ぶつもりだったのであろうか。
「どうしたんですか、絵美里さん」
「いえ、なんでもないわ」
思わず微笑んでしまい四万十川さんに指摘されてしまった。
四万十川さんは旅行鞄からお弁当箱を取りだして、
「わたくしお弁当を作ってきましたの。別荘で食べましょう」
今日の集合時間は朝の4時だったのであるが彼女はいったい何時に起きたのであろうか。しかも、電車の中で一睡もしていないなんて。彼女のそのパワーはいったいどこにあるのだろうか。不思議で仕方ない。
四万十川さんの後ろをついて、けもの道をしばらく歩くと白くて大きな一軒家にたどり着いた。
「こちらです」
「すごい家だわ。こんなに広いおうちに私たち3人で泊まるの?」
「左様でございます。全く気を使わなくて大丈夫ですよ」
「なんかわるいねえ」
建物を眺めながらトウヤ君がそう言った。
「四万十川さん、ありがとうね」
四万十川さんは上品かつ大量にお弁当を平らげ、私とトウヤ君は彼女のお弁当をおいしく頂いて、私たちは海水浴をする運びとなった。
誰もいないビーチで三人だけで遊んでいるという光景はなかなかシュールなもので寂しさすらも覚えるだろう。でも、私にはトウヤ君と大切な友達である四万十川さんがいるからその時はとても楽しかった。
そして、さんざん泳ぎ終わった私たちの夕食はバーベキューであった。私たちは食材を持ってきていなく、四万十川さんも小さい旅行鞄しかもっていなかったため食材はどうしたのかと疑問に思っていたが、四万十川さんが前日にこの別荘まで食材を持ってきておいていたらしいのだ。おかげで私たちはおいしい食事を楽しむことができたのであるが、なんか申し訳ないって感じがするわね。
さて、たくさん遊んでお腹がいっぱいになった私たちであるが、別荘に戻り今日はすぐに寝ることとした。
高級感のある内装に高そうなベッド。あこがれの別荘ってところね。
――明日は何をして遊ぼう。
そのようなことを考えているとこんなに遊び疲れているというのにちっとも眠くならない。眠れないのにずっと布団の中にいるというのはあまりにも退屈なので、この広い屋敷をすこし探検してみようと思った。
長い廊下にたくさんの部屋。いつしかトウヤ君と一緒に行ったSL旅行のときの異世界の屋敷を思い出すような造りだ。いや、あれは私の夢の中の世界であるからトウヤ君と一緒に行ったっていうのは間違いかもしれないわね。それにしても、あの時の夢の記憶は今でも鮮明に覚えているっていうのは不思議なところね。
と、そのようなことを考えながら別荘の廊下を歩いているときのことであった。
「トウヤさん、私じゃダメなんですか?」
「四万十川さん、別に僕はそんなつもりは……」
「嘘、ですよね」
「どうして?」
「あの時は理解してくれたじゃないですか。私の気持ちを少しはわかってくださいよ」
「あのときは、あの時だよ。僕は絵美里を……」
「絵美里さんを、なんだっていうんですか。ここから先はいつも言葉を濁しますよね。私わかっているんですから……」