ヤンデレ系主人公!?「桜柳絵美里」さんの爆走恋愛論 作:C・S
次の日、私はいつもと同じように登校した。
スクールコートとマフラーを机の上に置き、鞄を机のわきに引っ掛ける。それは、毎日同じようにしている動作だ。
でも、今日はいつもと同じような朝を迎えることはできなかった。何となく、トウヤ君と話す気分になれなかった。いや、話す気分になれなかったというよりは何となく、話しかけづらかったのだ。
トウヤ君は、私のことをちょっとだけ見た。でも、目があったと思ったらそっぽを向かれてしまった。もしかしたら、トウヤ君から私に声をかけるってのはほとんどなかったのかな。
無機質なチャイムの音が不気味に校内に響き渡ったとき、目が覚めた。嫌な思い出で目が覚めるっていうのは気分がいいものではないわ。
夏の日差しが窓から差し込んでいる。今何時だろう。昨晩は携帯を充電し忘れ、バッテリーが上がってしまったから時間がわからないや。四万十川さんとトウヤ君はもう遊びに行っちゃったかもしれないな。
こんなことは私が悩んでも仕方のないことだということはわかっている。でも、昨日のトウヤ君のあの発言がどうしても気になってしまう。
「あのときは、あのときだよ…」
「あのとき」。その言葉が何を差すのか私にはわからない。私が知らないところでトウヤ君は四万十川さんと何かがあったようだ。
私はトウヤ君と幸せになりたい。ずっと一緒にいたい。でも、トウヤ君はもしかしたらそれを望んでいないのかもしれない。
そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「おはようございます。もう起きましたか?」
四万十川さんだ。
「うん。おはよう。ごめん、起きるのが遅くなってしまったかな?」
「そんなことはないですよ。トウヤ君はまだ寝ていますから。まだ6時過ぎですからね」
「そう」
「ねえ四万十川さん、ちょっとお散歩に行かない?」
「いいですよ」
四万十川さんは、私にとってなんなんだろう。彼女にとっては何なんだろう。
そんな簡単なことすら今の私には分からなくなってしまった。
でも、これだけははっきりしている。
四万十川さんとはずっと友達でいたい。
「気持ちの良い朝ですね」
何だろう、このあたりさわりのないあいさつは。
「私、小さいころからこの島にはよく遊びに来ていて、」
それは、すごいご家庭の出身なのね。
「こうして朝早く起きて両親とお散歩をしていたんです」
そう。
「海ってなんかいいですよね。私の生まれ故郷にはこんなきれいな海はなくて。いや、あることはあったんですけど、こんなきれいな海ではなかったんです。」
今までずっと下ばっかりを見ていた。朝日に照らされている海。私はこんな景色を始めてみた。
「生まれ故郷のことを悪く言うのはよくないと思うんですけど、私はこの景色が大好きなんです。」
生まれ故郷のことをとてつもなく気に入っているって人もなかなか少ないと思う。現に私も…
「四万十川さんが言っている意味とはちょっと違うと思うけど、私も故郷に良い思い出はないわ」
もしかしたらあったのかもしれない。でもそれは過去において来てしまったんだ。今が一番楽しい。今が一番楽しいはずだったんだ。トウヤ君と一緒に旅行ができる。一番の友達である四万十川さんとこうして二人で歩くことができる。
楽しいはずなのになぜか満たされない。それはもしかしたら私のわがままなのかもしれない。
「私、今がとっても楽しいんです」
あなたは楽しいでしょうね。
「今よりももっと楽しくいたいんです」
それは私も同じだ。
「絵美里さんさえよければ、」
なに?
「絵美里さんさえよければ、ずっと私の友達でいてくれますか?」
私も四万十川さんとずっと友達でいたい。私には友達と呼べるような友達は、今は四万十川さんしかいないんだ。でも…
「四万十川さん、私はあなたが何を考えているのか、ちっともわからないわ。」