ロクでなし魔術講師と復讐の精霊使い   作:ユキシア

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庇った?

魔術競技祭。

アルザーノ帝国魔術学院で開催される生徒達による様々な魔術での技の競い合い。

二年次二組も当然その魔術競技祭に出場するのだが―――

「はーい、『飛行競争』の種目に出たい人、いませんかー?」

まだ誰も種目を決めずに停滞気味だった。

教室が葬式のように静まり返っているには理由がある。魔術競技祭は例年通り、クラスの成績上位陣が出場してくるために成績下位の人達はどうしても気後れしてしまう。

更に今回は女王陛下が賓客として尊来され、全員陛下の前で無様な姿を見せたくないが本音だ。

そんな静まり返っている教室で突然教室前方の扉が開かれ、全員が視線を向ける。

「ロクス…………」

事件後から全く姿を見せなかったロクスが教室にやってきた。

「貴方、今までどこで何していたのよ?」

「俺がどこで何をしようが俺の勝手だ」

冷然と言い返すロクスは自分の席に座って羊皮紙と羽ペンを取り出して何かを書き始める。

まるで今決めようとしている魔術競技祭なんてどうでもいいかのように。

その変わらない姿にクラスの生徒達はああ、いつも通りだ、と安堵する。

だが、そんなロクスに声をかける人物がいる。

「ねぇ、ロクス君。何か出てみない?」

ルミアだ。

まだ何も決められていない種目の内のどれかにロクスを入れようと声をかけたのだが―――

「時間の無駄だ」

そう言って一蹴した。

「お前等で勝手に決めろ。俺はそんなことで時間を無駄にする気はねぇ」

彼は何も変わらない態度でそう言い切った。

「そこをなんとか、ね? ロクス君ならどれに出場しても勝てるはずだよ」

それでもルミアは諦めることなく声をかけるもロクスの答えは変わらない。

「俺は出る気は――――」

「話は聞いたッ! ここは俺に任せろ、このグレン=レーダス大先生様にな―――ッ!」

ロクスの声を遮るように勢いよく扉を開けながら謎のポーズを取って教室にやってきたグレンの登場にロクスは大きなため息を吐く。

そしてグレンは本気で勝ちに行くと生徒達に宣言して競技種目を決めていく。

「心して聞けよ、お前ら。まず一番配点が高い『決闘戦』――――これは白猫、ギイブル、そして…………………ロクス、お前ら三人が出ろ」

競技祭の『決闘戦』は、三対三の団体戦で実際に魔術戦を行う。最も注目を集める目玉競技であり、各クラス最強の三人が選出されるのが常だ。

だから成績順で選ぶのならそれが妥当ではあるが―――

「おい、俺は出ねえぞ」

ロクスは出場する気は一切なかった。

「俺はそんなくだらない祭りに出る気は一切ねぇ。他の奴にしろ」

「おいおいそんな我儘が通用すると思ってんのか? 強制出場に決まってんだろう? それにお前なら楽勝だろう?」

「時間の無駄なんだよ。そんなことに時間を割くぐらいなら俺は魔術の研鑽をする」

「たくっ、久々に顔を見たと思ったら……………………だが、悪ぃが今回ばかりは本気で勝ちに行くつもりだ。その為にもお前は外せれねぇ。嫌でも出て貰うぜ?」

「知るかよ。俺にはどうでもいいことだ」

頑なに出場しないロクスにグレンは溜息を吐きながら頭を掻く。

「しょうがねぇな。おい、ロクス。いいか? よく聞けよ? 学院長様からお前に言伝を預かってんだ」

「学院長から?」

何故このタイミングで学院長が出てくるのか怪訝するも、グレンはにやりと悪そうに笑った。

「もし、お前が競技祭に出場しないと言ったら前のテロ事件でお前が壊した校舎の修繕費は全部お前に持たせる」

「………………………………」

「ただし、出場するのならおおめに見てくれるそうだぞ? どうするのかな~? ロクス君よ~」

当然これはグレンのハッタリである。

学院長はそんなことは一言も口にしてはいない。グレンが確実に勝つ為にロクスを強制的にも出場するように学院長の名前を少々拝借しているだけだ。

しかし、それは仕方がないことだ。

グレンが明日を生きる為にも今回の魔術競技祭は絶対に優勝しなくてはならない。

「チッ、わかった」

(よっしゃ!!)

ロクスの承認に心の中でガッツポーズを取るグレンはそれから他の種目に出る選手を決めていく。

 

 

 

 

 

 

アルザーノ帝国魔術学院では、魔術競技祭開催前の一週間は、競技祭に向けての練習期間となっている。

具体的にはその期間は全ての授業が三コマ―――午前の一、二限目と午後の三限目―――で切り上げられ、放課後は担当講師の監督の下、魔術の練習をしてもよいことになっている。

当然二組も学院中庭で競技祭に向けて練習をしているが、ロクスは木の下の日陰で本を読んでいた。

練習しろなど、他の生徒の練習に付き合えなど、説教女神と称されるシスティーナなのだが、それよりもロクスがこの場所にいることに驚きを隠せないでいた。

他の生徒達も同様にこの場にいるロクスに時折そちらに視線を向けている。

練習には参加してはいなくても、普段の彼ならこんな場所にはいない。放課後は学院の図書館で魔術の研鑽に励んでいてもおかしくはないのに一冊の本を持ってこの場所にいること自体が驚きだ。

正直、悪い物でも食べた? と尋ねたいぐらいに。

しかし、当然ロクスも好きでここにいるわけではない。仕事でいるに過ぎない。

帝国宮廷魔導師団特務分室に入隊したロクスに下された命令はルミアの護衛。護衛対象の傍にできるだけいなくてはならないからだ。

学院内は安全だとしてももしものことも考慮しなくてはならない。

「ロクス君は練習しないの?」

その護衛対象でるルミアはいつもと変わらない笑みを見せながら声をかけてくる。

「する必要がねぇ。ほっとけ」

「でも、せっかく皆で頑張っているんだからロクス君も少しは皆の練習に付き合おうよ?」

「そんなことして俺に何のメリットがある?」

本当にこの女はどうしてこうも話しかけてくるのか理解できない。

(今ここでお前を殺せれたらどれだけいいか………………………)

剣でも魔術でもこの女を殺せれたらこんなに苛つかなくても済む。だけど、今はそういうわけにはいかない。

仕事もそうだし、政治的にもルミアはテロリストを誘き寄せる餌である。だからロクスの個人的な感情で殺す訳にはいかなくなった。

「さっきから勝手なことばかり…………………いい加減にしろよ、お前ら!」

突然、激しい怒声が耳に飛び込んでくる。

そちらに視線を向けると同じクラスのカッシュと一組の生徒が場所のことで言い争っている。

そこでグレンが仲裁に入って場所を空けようとするも、そこに一組の担任講師であるハーレイが中庭に現れ、横暴にも二組は中庭から出ていけと一方的に言い切った。

成績下位者達……………足手纏いを使うグレンにやる気がないと断言した。

その言葉に顔を俯かせる二組に―――

「下らないことに時間を使う暇があったら別の場所で練習した方がいいんじゃねえか?」

不意に中庭にロクスの声が響いた。

「なに……………………? それはどういう意味だ? ロクス=フィアンマ」

それに噛み付くハーレイにロクスは淡々と告げる。

「言葉通りだ。今、こうしている間にも時間は過ぎている。わざわざ二組をどかして練習するよりも別の場所で練習した方が有意義だと言ったんだよ、ハゲ」

「ブフッ!?」

直球(ストレート)に罵倒したロクスの言葉にグレンは思わず噴き出してしまった。

「ハ!? ……………………き、貴様、それが講師に対する言葉か!?」

「うるせぇよ。知ったことか。それとわざわざ大声をあげなくても十分に聞こえてんだよ。そんなこともわからねえのか?」

呆れるように嘆息するロクスにぴきぴきと拳を震わせるハーレイはロクスを睨む。

「ただでさえこっちは面倒事を押し付けられて苛ついてんのに鬱陶しいから消えろ。それとも消してやろうか?」

殺気と共に睨み付けるロクスに殺気に耐性のない一組は恐怖で震えながらハーレイに言う。

「ハ、ハーレイ先生! 俺達別の場所でもいいですから!」

「そ、そうですよ、ここでなくても練習する場所は他にもあります!」

以前のシスティーナとの決闘の影響もあったのだろう。

これ以上彼を怒らせて惨い仕打ちを受けたくない一組は必死にハーレイに懇願した。

「くっ! ………………仕方がない。ロクス=フィアンマ! この私に楯突いたこと、必ず後悔させてやるぞ!」

恨み骨髄とばかりに、ハーレイはロクスを烈火のごとく睨み付けて中庭から去って行く。

再び彼は本に視線を向ける中で残った二組は彼の行動にざわめく。

「な、なぁ、今のって………………」

「僕達の為に言ったのかな…………………………?」

言動はいつもと変わらなかったけど、今の彼の行動はまるで二組を庇ったようにも見えた二組の生徒達はほんの少しだけ彼を見る目が変わったかもしれない。

「ふふ」

「………………………………なんだよ?」

「ううん、なんでもないよ」

「チッ」

そんな彼の隣で少女(ルミア)は微笑ましそうに笑みを見せる。

 

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