ロクでなし魔術講師と復讐の精霊使い   作:ユキシア

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相棒

「ひぐ…………………ぐす……………」

薄暗い牢屋の中で少年は声を殺しながら涙を流していた。

「また泣いているの?」

「な、ないてない………………………」

少年を心配して優しく声をかけてくる少女に少年はそっぽを向くも、少女は苦笑い。

「私の前ぐらい強がらなくてもいいよ」

「強がってない…………」

素直じゃないのか、照れ隠しなのか、そんな物言いしかできなかった少年の隣に少女は腰を下ろす。

「また、人が減ったね………………」

「………………………………うん」

ここ数日でこの牢屋の中にいる人数が減ってきている。

ここ最近は奴等は成果がどうとかで過激な実験を繰り返しているからだ。

少年も少女もこの牢屋にいる人達は今日も運よく生き残れたに過ぎない。

明日死ぬかもしれない。その次の日に死ぬかもしれない。

自分が死ぬ順番が来るのをただ待つことしかできない。

「死にたくないね…………」

「うん…………」

どうしてこんなことになったのだろうか?

ここに連れてこられた時はそんなことを考えていた。だけど、今はそんなことはどうでもよかった。ただ今日も生き残れたことに安堵しただけ。

「ねぇ、もし、もしもの話だけど、ここから出られたら何がしたい?」

「出られるわけないよ…………………」

「そんなのわからないよ。何事にも絶対はないってお父さんが言ってたもん。私はね――――」

そこから先の少女の言葉が耳に届かなかった。

ただ、幸せそうに話していたのは確かなのは覚えている。

「―――――なんだ。だから、一緒にここから出よう。ロクス」

「…………………そうだね。ラウレル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きた」

目を覚ますとサラが顔を覗き込んでいた。後頭部に感じる感触からまた膝枕していることがわかる。

「………………………………どれぐらい落ちてた?」

「二分くらいかな?」

「二分と三十二秒だ。あの程度で意識を手放すとはまだまだ鍛えが足りん」

二人の近くに鷹のように鋭い眼差しを向けるアルベルトが立っていた。

学院が終えてルミアがシスティーナの家まで帰宅するまで監視と護衛を終わらせてすぐアルベルトの下で鍛錬をしていたロクスだが、今日もアルベルトに意識を刈り取られた。

「もう一度だ………………」

強くなる為に鍛錬を続けようと立ち上がろうとするも全身に力が入らず、膝をついてしまう。

「その身体でこれ以上は続けられん。貴様は少し休んだら帰るんだな。俺はこれから任務に向かう」

踵を返して去って行くアルベルトにロクスは地面に寝転びながら今日の鍛錬を思い返す。

(強ぇ…………………)

それ以上に例えようがなかった。

魔術の技量もそうだが、正確無比の狙撃やこちらの動きを先読みしての魔術罠(マジック・トラップ)。どれも未来でも見えるかのような物狂いレベルの精度と先読み。

連続起動(ラピット・ファイア)も高等技法も使えて当然のように起動させるアルベルトにロクスはただ舌を巻くしかなかった。

これでもロクスはそれなりの訓練はしてきた。血反吐を吐いてでも復讐の為に己を苛め抜いてきたつもりだった。

だが、アルベルトはその上を行く。地獄も生温い訓練であの強さを手にしたに違いない。

初見からアルベルトは自分と同じ復讐者だとわかった。

だからこそ今も今以上に強くなろうとしているのがわかる。

心にある絶望と憎悪がそうさせているから。

「大丈夫?」

「……………………ああ」

心配そうに声をかけてくる相棒(サラ)に平淡に返すもサラは笑みを見せる。

「よかった」

あの日、ロクス達を閉じ込めていた施設を破壊した日にサラと出会った。

心を燃やす黒い炎を宿したあの日はただ力を求めた。

純粋なまでに復讐を果たす為の、天の智慧研究会を殺す為の力を求めた。

そんな時、サラと出会った。

運命の悪戯か? 復讐の神の計らいか? そんなことはどうでもよかった。

復讐する為に力を手にする為にサラに手を伸ばした。

―――力を寄越せ。

そう言ったロクスの手をサラは掴んで言った。

『うんいいよ。私の力を貴方にあげる』

そうしてロクスはサラと契約を交わした。

それから共に旅をし、リック学院長と出会った。

「……………………なぁ、お前はどうしてあの時俺と契約した?」

今ならながらもロクスはそんなことを口にする。

これまでたいして気にすることもなく、尋ねることもしなかったが、先の夢を見てふとそんなことが知りたくなった。

「一目惚れ」

その疑問にサラはそう答えて続けた。

「燃えるような意思を宿す貴方の瞳に惚れた。決して消えない荒ぶる炎を宿す貴方の心に惚れた。それが復讐の炎だとしても私はそれも踏まえた貴方の全てに惚れたの」

「ロクな炎じゃねえだろう………………」

自虐するロクスにサラはくすりと笑う。

「そんなことはないわ。それが憎悪の炎でも、復讐の炎でも、貴方の心に宿すのは純粋な炎。それを否定する人間は私が燃やしてあげる」

「そうかよ………………」

「だから私はロクスの復讐を手伝う。貴方の炎を傍で見続ける為に私は力を貸すから安心して」

「それを聞いて安心した。俺はいい相棒に恵まれたようだな」

「最高の相棒に、でしょ?」

「ああ、否定はしねえよ」

笑う。純粋なまでに乙女の笑みを見せるサラに僅かばかりの無垢で狂気を感じさせる。

だけど、そんなことはどうでもいい。

力さえ貸してくれるのならどんな目的があろうと関係ない。

復讐を果たす。ただそれだけ為のロクスは強くなる。

「明日は面倒くせぇな…………………………」

明日は魔術競技祭。下らない祭りに出なくてはいけないことにロクスは溜息を吐いた。

 

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