ロクでなし魔術講師と復讐の精霊使い   作:ユキシア

15 / 62
合流

「おい、講師。聞こえるか?」

『おい! ルミアが命狙われているってどういう事だ!?』

半割れの宝石、遠隔通信用の魔導器でグレンと連絡を取るロクスは淡々と問いかける。

「んなことよりあんたに聞きてぇ。学院長とセリカ=アルフォネアを出し抜いて女王陛下を殺すことはできるか?」

『…………………たくっ、無理だ。少なくとも俺が知る範囲でそんな奴はいねえ』

概ね予想通りの返答にロクスは再度問いかける。

「じゃ、条件起動式の呪い(カース)がかけられていたらどうだ?」

魔術師史上、散々使い古された古典的な手を告げるロクスで通信中のグレンは目を瞬かせる。

「ティンジェルを殺すことに躍起になっている王室親衛隊は帝国宮廷魔導師団特務分室に所属している俺に何一つ情報を話すことなく殺そうとしていた。恐らくは既に女王陛下は呪い(カース)を受け、その解呪条件がティンジェルの殺害だ。呪い(カース)を話さないところや王室親衛隊の様子を見て、『第三者に情報を掲示』、『一定時間の経過』、『勝手に外す』も組み込まれてんだろう」

『ちょっと待て、お前今、特務分室に所属しているってどういうことだ!?』

「んなことはどうでもいい。講師、あんたはその呪い(カース)をどうにかできる手段はあるか? 俺は解呪(ディスペル)とか苦手だから無理だ」

ロクスが今回の件をグレンに話したのはそれが主な理由だ。

多くの魔術を会得しようと躍起になっているロクスだが、解呪(ディスペル)の類はどうしても苦手だ。逆に呪い(カース)の類は得意ではあるが。

『……………………できる。多分、女王陛下の首のネックレス。あれが呪殺具だ。以前王宮で見たのとは違うものをしていたからな』

「ああ、そういうことかよ」

ルミアを一瞥して先ほどのロケットを思い出して鼻で笑う。

『だが、その為には女王陛下に近づく必要がある。その為には』

「優勝するしかねぇってことか」

グレンの話を聞いて面倒そうに溜息を吐く。

現段階では二組でもまだ優勝は狙える。だが、最後の種目である『決闘戦』はロクスも参加することになっている。

しかし、今はルミアと一緒に王室親衛隊に追われている身。そんな公の場に姿を現すことはできない。

「俺の代わりは誰か代役でも出させろ。こっちもできる限りは――――」

そこで言葉が止まるロクス。すると二人の前に二人組の男女がいた。

「………………………………あんた、任務があるんじゃなかったのか? フレイザー」

「その任務だ。安心しろ、敵ではない」

「……………………誰?」

二人組の男女の内一人の男性はロクスを鍛えているアルベルトともう一人は同僚と思われる少女。

「同僚だ。殺すな」

「ん」

「場所を変える。ついてこい」

ロクスとルミアはアルベルト達と共に路地裏の奥へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

アルベルトそしてリィエルと名乗る少女は王室親衛隊を監視していた。その動きからルミアを殺そうとしているのを遠見の魔術で確認し、ロクス達と合流。

互いに情報を交換し、ロクスの推測は概ね正しいとアルベルトもそう判断した。

「しかしわからん。貴様はどうして条件起動式の呪い(カース)だと思った?」

「………………………………馴染み深いもんだからな」

小さく息を吐くロクスは条件起動式の呪い(カース)は本当に馴染みあるものだった。

異能者として天の智慧研究会の研究施設に閉じ込められ、異能者同士の殺し合いには必ずと言っていいほどに『一定時間内に対戦相手を殺さないと死ぬ』という呪い(カース)が組み込まれた首輪をつけら、殺しを強制された。

死にたくはないが為に異能で、武器で相手を殺したロクスにとって呪い(カース)は忌々しくも馴染み深いものである。

だから、一番にその可能性を疑ったのもその経験があったのが大きい。

「こんなことをする奴は限られてる。ほぼ間違いなく天の智慧研究会だ」

手段を選ばず、ありとあらゆる方法で目的を達成する天の智慧研究会。今回もテロリストの仕業だと断定するも一つ腑に落ちない点がある。

以前のテロ事件ではあくまでルミアの捕獲が目的だった。だが、今回はルミアの殺害。行動に一貫性がない。

そもそもどうしてルミアが狙われているのかも不明だ。

確かにルミアは異能者だ。だが、感応増幅者は探せば他にいくらでもいる。天の智慧研究会がそこまでしてルミアを狙う理由がわからない。

だが、そんなことはどうでもいい。

怨敵が近くにいる。

それだけわかれば十分だ。

「どこに行くつもりだ?」

「決まってんだろ。テロリストを殺しに行く」

迷うことない言動。

「ティンジェルの傍にあんたらがいれば問題はねえだろう。なら、俺は敵を殺しに行く」

「やめておけ。今の貴様では返り討ちに会うだけだ」

諫めるように淡々と告げる。

「貴様はテロリストを前にすると思考も視野も狭まると前に言っておいたはずだ。復讐を果たしたければまずは復讐心を己の内側に留めておけ。そうでなければ復讐を果たすなど夢のまた夢だ」

「………………………………」

「それに忘れるな。今の貴様はここにいるルミア=ティンジェルの護衛だ。それを放棄することは許さん」

「………………………………なら、どうすんだよ?」

「【セルフ・イリュージョン】で俺達は互いに姿を晦ませる。俺達がお前達として時間を稼いでいる間にお前達はグレンのところへ行け。奴ならこの状況を打破することができる」

「フレイザー。あの講師の固有魔術(オリジナル)なら確かにどうにかできるのは理解した。だが、どうやって講師をその固有魔術(オリジナル)の範囲内に連れて行く? 女王陛下のすぐ傍にはあの総隊長がいるだろうが」

そう、女王陛下の傍には王室親衛隊の総隊長であるゼーロスが控えている。

四十年前の奉神戦争を生き抜いた古強者。

グレンの実力はどの程度かは知らないが、少なくとも勝てないまではわかる。

「そこに俺とティンジェルがいても纏めて殺されるだけだ」

「そこは貴様でどうにかしろ。今の貴様なら数秒の足止めぐらいはできるはずだ」

「ハッ、テロリストを殺しに行くよりもよっぽど無茶を言ってるぞ」

「なら、女王陛下もしくはルミア=ティンジェルが死ぬだけだ」

冷酷に告げるアルベルトの言葉に忌々しく舌打ちする。

「チッ、わーたよ」

渋々黒魔【セルフ・イリュージョン】の呪文を唱えてアルベルトとリィエルに姿を変身する。アルベルト達も同様にロクス達に姿を変える。

「くれぐれもヘマはするな」

「こっちの台詞だ」

互いに憎まれ口をたたき合い、離れていくなかでリィエルの姿に変身したルミアはくすりと笑った。

「なんか、アルベルトさんってロクス君と似ているよね」

「笑えねえ冗談だ」

同じ復讐者なのは否定はしねぇが、と内心でそうぼやいた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。