檎と小判のいつものやり取り。
だけど今日は少しだけ違っていた。

駄文ですが、お目汚しにどうぞ。

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記者小判の潜入大作戦

「はあ、だるいのぉ」

檎の奴、相変わらずやる気ねえなぁ。

あれでよく生きてられるにゃ。

「お~い檎、生きてるかにゃ?」

「お~小判にゃん。金貸してくれんかのぉ」

「何でいきなり金貸さにゃあならんのかにゃ!その前に前貸した分を返すにゃ!」

「すまんのぉ、わしの財布すっからかんなんじゃ」

「んじゃあ何かネタで返せや!」

「ネタ、ネタのぉ。前はかちかち山の兎どんのことじゃったのぉ」

「わっちがかちかちされかけたわ」

さすがのわっちもそのネタ書いて命が無くなるのはごめんにゃ。

「他のネタといやぁ、滝夜叉姫が義経公に惚れとるのは?」

「そのネタは流石に記事にはできんわい」

やっぱり裏社会はだめか。

「まったく、小判にゃんはわがままじゃのぉ」

「わっちか!わっちが悪いのか!」

「ん~、ほなこんなのはどうかの?」

 

 

 

「これは何のまねかにゃ?」

「いや~レディ・リリスから以前もらったもんなんじゃが、使い道が無くてのぉ。何せ条件が条件じゃからな」

「わっちは、何で、鬼の、女に、変化をさせられているかを、聞いているんにゃ!」

「『強制変化薬』ちゅうんはそういう薬なんじゃからしゃーないじゃろ」

何せ変化できる種族でないと効かん薬なんじゃから。

おまけに狐には効かんちゅう縛りまであるからに。

ほんま、何考えて作ったんじゃろ。

「これでどーせいちゅうんじゃ!」

「ほれ言葉言葉、せっかくのべっぴんさんがもったいないわい」

「やかましいわ!」

ほんにべっぴんさんになったっちゅうのに何が気に食わんのじゃろ。

「んで、これがどうネタに繋がるにゃ?まさかこれを記事にしろと?」

「わしが今から獄卒の一人に連絡しておくさかい、小判にゃんはそいつの知り合いちゅうことで閻魔庁で色々聞き込みでもすりゃあええ。ほしたら何ぞ聞けるじゃろ」

「投げっぱなしかよ。まあええ、その辺は自分でなんとかするわい」

「ほな、いてらー」

ま、これでええじゃろ。

…小判にゃん、ほんにスマンの。

 

 

 

「あんたが檎の言ってた奴か?またえらい美人だな」

「わっち、じゃなくて私は朱金言います。とりあえず閻魔庁の中を見学できるように手配してもらえますか?」

「ああ、それはもうしてある。何かあったら『獄卒の御形の妹の友達』とでも言っといてくれ。あ、これが見学証な」

「どうも、ありがとうですに…、です」

ふ~、何とか第一関門クリアにゃ。」

さて、どんなネタが拾えるかにゃ?

 

ある程度経って、とりあえず情報整理のために人目のない辺りに引っ込む。

ネタは幾つか拾えたが、どーにもガセっぽいのが多いわいな。

インパクトは十分なんにゃが、いかんせん確証がなさすぎる。

「次が桃太郎のお供が、不喜処で仕事中。なんか、かちかち山の時みたいな気配が…」

他にも確認してみるが、大したネタがねぇ。

「他には何ぞネタは」

「どうしたの?」

「ネタって何?」

「うおわあっ!ってな、何でこんな所に女の童が…」

「ここにいていいって鬼灯様に言われた」

「色んな人がいて楽しい」

「「でも、あなたは見たことない」」

よく見たらこいつら亡者でも鬼でもねぇな。

「ひょっとして座敷わらしか?」

「その通り」

「ここに住んでる」

そういやここにゃあ双子の座敷わらしが居るって言ってたな。

「私は一子」

「私は二子」

「「あなたはだあれ?」」

「わ、私は朱金と言います。今日は見学に来てます」

せっかくだから、こいつらからも何ぞ聞き出せんかにゃ。

「そうなの?」

「おかしいよね?」

「な、何がおかしいかニャ?」

「だってあなたは男の人」

「だってあなたは猫又」

「「前に鬼灯様が言ってた小判という人にそっくり」」

「いいーっ!そ、それはほら、勘違い」

「へえ、あなた小判さんでしたか」

後ろから聞こえた、そら恐ろしい声に振り返るとそこには

「ほ、鬼灯様…」

「お久しぶりです小判さん。来ていたのがあなたとは全然気が付きませんでした」

「な、何で鬼灯様が…」

「簡単な事です。誰かがここに来る事は事前に聞いていましたから。だからこの子達にずっと見ていていただきました。彼女達は変化幻覚の類いは見破る力を持ってますから」

「檎の野郎、売りやがったな!」

「ちなみに、連絡してきたのは妲己さんですよ」

マジでか…。

そんなことを思いながら、わっちは気を失った。

 

 

 

「ほいで、どうなったん?」

「気が付いたらあそこの医務室に居ったわ。薬も切れとってな。オマケに女装猫又って張り紙されてな!」

「そら、災難じゃったのぉ」

「言うことはそれだけか!」

「しゃーないじゃろ。これ全部妲己様の仕込みなんじゃから」

わしが妲己様に逆らえる訳ないからの。

「それに、ネタが拾えたのは確かなんじゃろ?」

「まあ確かにそうにゃが…」

「ならええやん。後の事は犬にでも噛まれたとでもおもっときや」

「はあ…、肝心のネタも大半は使えんかガセっぽいしなぁ」

「そうなんか?」

「そうニャ。特にこの『鬼灯様がピーチ・マキに想いを寄せている』なんて、有り得るわけないニャ」

「そうじゃの~」

まあ男女の仲は理屈じゃ無いから、ないとも言えんがの。

「ま、わしにゃあ関係ないの」



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