クズゲーマーはヴィラン   作:ゆきん子

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ゲーム内で死んだら俺も死ぬってラノベかよ

俺は風見蒼弥。

どこにでもいる27歳のプロゲーマーだ!

 

と、戯言はここまでにして、現在バトルロイヤルゲーの練習中だ。前回大会ではいい成績を収めたししばらく食うに困らないだけの賞金も頂いたが、最後の最後に他のゲーマーに負けてしまったのである。いや、皆まで言うな。分かってる。勝負の世界なんだからそんなこともあるって言いたいんだろう。

しかもこのゲームは、ランダムで落ちているアイテムや武器を拾って他のプレイヤーと戦うのだ。運要素の強いところが憎らしくも愛おしい。

 

「っあ~!くそっ、集中切れちゃったな」

 

そんなくだらないことを考えていたせいか、ザコプレイヤーにやられてしまう。

萎えたし次は違うゲームでもしようかなんて考えていたら、急に足先から氷水にでも浸けたように冷たくなり、胸に杭でも刺されたような痛みが走る。

呼吸ができず机に倒れ込むと、PCの画面の中で自分のキャラが丁度倒れるところがスローモーションのように見えた。

 

っはは、キャラが死んだから自分も死ぬって?

ふざけんなよ。

 

納得できる訳がない。

だが体は末端から確実に冷えてくるし、思考は泥に沈むように鈍くなっていく。

 

ふざけんな……ほんとにふざけんな。

親なんてどうでもいい。だがまだゲームがしたいし、大会で一生遊んで暮らす金を稼ぎたいんだ。頼むから、まだ俺にゲームをさせてくれ。

 

 

 

我ながら屑な思考を最後に、俺の人生は終わった。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

と、思ったのだが。

気付いたら目の前には見慣れたようで見たことが無い光景があった。

 

これは……キャラクターエディット画面、か?

画面というには自分の目で直接それを見ている感覚で違和感がある。こんなリアルなキャラクリのできるVRゲームなんて聞いたことが無い。もしかして一部で数年後には実現するって噂になっていたフルダイブ型ゲームだろうか。

だとしたらなぜ……。ん?

 

 

よく見ると視界の下方に字幕のような物が書かれている。

 

――あなたは死にました!新しい人生(ゲーム)を始めるためにキャラクターを作成してください――

 

俺が、死んだ?

じゃあやっぱりあの時助かんなかったのか。

くそだなー、まだ買っただけでプレイできてないタイトルとかあったのに。

 

 

 

 

 

 

ま、いいか。

 

 

もともと細かいことを考えるのは好きではない。決して苦手なわけじゃないからね?

ただ、ここでぐだぐだ悩んでいても何も解決しないってことだけは分かる。

取りあえずこだわりのキャラクリでも見せちゃいますか。

 

 

 

 

体感時間数時間後。

 

俺の目の前には涼し気な顔立ちのとんでもない美青年が居た。

いやー本気出しちゃったよね。プロゲーマーのキャラクリ見せちゃったよね。

 

"操作"にもだいぶ慣れてきて、気負うことなく「決定」と念じると確認画面が出てきた。

 

えー、何々?

 

 

――貴方の容姿をこれで決定しますか?(キャラクターの容姿や性別は、後で自由に変更ができます)YES・NO――

 

 

いや、俺の時間返せよ。

 

 

 

 

 

誰も聞いていないだろう文句を心の中で垂れると、視界が暗く閉ざされる。

 

さてさて、俺の新しい人生とやらは――?

 

 

 

 

……。

いや、まって。

さっき作ったキャラ青年だったじゃん。コレどうみても赤ん坊だよね?コレ。

疲弊した様子の地味な女が抱き上げる様子を俺は見上げていた。

赤ん坊は視力が発達してないって?理由なんて俺が知るわけないだろ。ほら、たまにあるじゃん。ゲームのムービーで自分が生まれた瞬間を何故か赤ん坊目線で見るやつ。あれだろ。

 

しかし気になるな。俺は本当にあの作った容姿通りなんだろうか。

ちっ一人称視点かよ。三人称視点で見たいのに――なーんて思った瞬間、自分の斜め後方に視点が移った。意識は赤ん坊の体の中にあるのに、だ。

まあ丁度いいとカメラを回す感覚で女の抱く赤ん坊……認めたくはないが俺の顔を覗き見る。

 

おぉ、何もかもが小さいし赤いしで分かり辛いけど目はぱっちりしてるし、将来有望そうだ。三人称視点から俺がじっと観察してるからか、目がガン開きで怖いな。試しに瞬きしようとすると視線の先の赤ん坊はぱちくりとその円らな目を瞬かせた。三人称視点だと瞬きしても視界はそのままなのか。

にしても白いやつ…垢?みたいなの付いてて汚いな。誰か洗ってくれないかななんて考えてると看護師のおねーちゃんがおろおろしだした。どうでもいいが美人だ。

 

「先生!産声が上がりません」

「喉に何か詰まってるのか?吸引器具」

「はい」

 

何やら慌ただしくなってきた。俯瞰の視点なのに自分の体が音を拾う感覚に頑張って慣れてるところだったが、気になることが聞こえてきた。

産声?ああ、泣けばいいのか。

自分の耳まで(つんざ)くような豪快なぎゃん泣きを披露すればその場の全員がほっとした。

 

全く赤ん坊ってのも楽じゃねーな。

 

その後おっぱいを飲ませようとする母親のそれに遠慮なく吸い付いた。一人称視点に戻すことも忘れない。

顔は地味だが、産後だからかなかなかいいものを持っている。苦しゅうない。

 

 

 

 

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