クリプターってどういう意味だよ
エドワード・エヴァンズ。
それが今世での僕の名前だ。
今世での、なんて言い方をしていることから察せられるかもしれないが、僕は俗に言う転生者というやつだった。
前世は普通の日本人で、普通に産まれて普通に育って普通に生活していた。
というか転生する直前までマジで普通に生活していた。
深夜にごろごろしながらスマホをいじっていたら眠くなったので寝て、そして起きたら赤ちゃんだったのだ。
最初は本当に混乱した。目はよく見えないし周りも何を言っているのかわからない。体中は濡れているし裸だし声を出そうとすれば泣くことしかできない。
しばらくたって落ち着いたところで自分がつい先程産まれたのだということがわかった。
そしてその考えに至ったとき、僕は正直めっちゃ喜んだ。
だって転生だぜ?ラノベやらアニメやらでは転生者は総じて美少女に囲まれるのだ。嬉しくないはずがない。
しかも今の自分はイギリス人。両親が美形かつ金髪碧眼であることから僕も将来そうなるであろうことが予想できる。こりゃモテモテコース確定ですわ、なんて思っていた。
今になって考えたらアホすぎる。赤ちゃんになるという一大事があったのにまず思いつくのが女の子のこととは。でも仕方ない。男ってのはそういうもんだ。
だが、現実ってのはそう上手くはいかない。
別に成長したらブサイクだったとかそういう訳ではない。自分で言うのもなんだがかなりの美少年へと育っていった。
問題は、僕が四苦八苦しながらも前世に大学受験で培った知識を総動員して英語を話せるようになってきた頃、ある学問を教えられたことだった。
家は随分と古風な豪邸だったので帝王学でも学ばされるのかと思ったが、そんなことはなく、もっとぶっ飛んだものを教えられた。
というか魔術だった。
…………いや、魔術て。ないわー。
ドン引きしてる息子に気づくことなく僕の父親は喋り続ける。魔術は崇高なものでうんぬん根源がうんぬん。
いや、根源て。Fateじゃあるまいし。え?ゆくゆくは時計塔で優秀な成績を残せ?これから僕の魔術回路について調べる?
……この世界、Fateやん。
そこから、めちゃくちゃ魔術を頑張った。だって弱かったら死ぬもん。メインストーリーに関わらなければ大丈夫だろうが、転生者である僕が関わらずに生きていけるとは思えない。根源とか研究とかそっちのけでひたすら戦闘向きの魔術を学んだ。
幸いこの身体は随分とハイスペックで魔術回路の質と量はうちの家系の中でもダントツだった。あんだけ由緒ある、だとか名門、だとか父は語っていたがうちは魔術師としてはまあまあくらいの家なのでイマイチ参考にはならないが。
とにかく、ひたすら魔術関係を鍛え、女の子とイチャつき、体も鍛え、女の子とイチャつきながらロンドンの時計塔に通っていた19歳のとき、とある女の子に声をかけられた。
「あなたがエドワード・エヴァンズね。少し時間をもらってもいいかしら」
少し偉そうな態度でそう話しかけてきた女の子に、僕は見覚えがあった。
というか、オルガマリー・アニムスフィアだった。
この世界FGOかよ…………。
その後、魔術と科学がうんたらとか貴方は魔術師らしくない柔軟な発想がどうたらとか言われていたが、要はカルデアへのスカウトだろうということで速攻で引き受けた。そらそうよ。だってカルデアにいなかったら焼却された後によくわからんけど漂白されるんだぞ。
というわけで、両親の反対を押し切りカルデアへ。スタッフとして働くはずがレイシフト適正やマスター適正が高いことが発覚。晴れてAチームの仲間入りとなったのであった。
いや、スタッフじゃなかったら死ぬやんけ……。
割とマジでどーしようもない。最初のレフ・ライノールによる爆破をどうにもできない。
今までただ戦闘で勝つために魔術を学んできた。そのため戦闘訓練ではキリシュタリアと1、2を争うほどの成績を収めている。ただ、知識的な部分では極めて一般的で、下手したらBチームにも劣るかもしれない。
そんな僕が本気ではないといえ魔神柱の仕掛けた魔術をバレずに解除できるはずもなく、ただただ時間が流れていった。
レフ暗殺計画も考えたのだが、ストーリーと大きく乖離することは避けたい。なるべく僕の知っているFGOの流れで進んでほしいのだ。
というか、Aチームのメンバーとそれなりに仲良くできているためキリシュタリアに生き返らせてもらえるだろと考えている。
ほかのマスター候補が死のうがどうでもいいし生き返ることが確定なら一度死んでも構わない。クリプターになっても主人公を成長させて敗北すれば味方サポートポジションになれるかもしれないし。
あれ、これ結構完璧じゃね?上手くいけばピッ〇ロやベ〇ータみたいな存在になれるぞ。
第1部に出てくる美少女サーヴァントとイチャついたり、イケメンサーヴァントと仲良くなれないのが残念だがまあいいだろう。1部も1.5部もわりと死亡フラグあるし。2部は
そうと決まれば話は早い。今のうちにAチームメンバーとの仲をより深めカルデアスタッフの可愛い子には手を出しておこう。コフィンで死んだら2年近く冷凍されちゃうし。
欲を言えばオフェリアやヒナコともイチャつきたいがなかなか厳しい。2人ともお堅いし。
ちなみにマシュには手を出さない。たしかに可愛いしエロいけどあの子はぐだ男と仲良くなるべきだからな。ぐだ子かもしんないけど。
てか僕の担当する
結局、大人しく爆破に巻き込まれるという結論に達してからは気楽に日々を過ごせた。ゲッテルデメルングみたいに
エロいと言えば、ダ・ヴィンチちゃんはとてつもなくエロかった。何故か興味を持たれ色々研究されたのだがわかったことは僕が中身がオッサンでも見た目が美少女ならいけるような人間だってことだけだった。
「今日は随分と静かね?エド」
「…………ん?」
突然ペペからかけられた声で意識が覚醒する。やべ、寝てた。
「カドックにも言ったけれど、アナタも睡眠時間とかちゃんととれてるの?空想樹のことも大切だけど、無理は禁物よ?」
いや、時間はあります。普通にスマホいじってたら夜更かししちゃっただけだ。
「……貴方、もしかして寝ていたの?キリシュタリア様が今後の話をされていたというのに」
そうやってこちらを睨みながら注意をしてくるのはオフェリア・ファムルソローネ。キリシュタリアが僕たちAチームを生き返らせてくれてからすっかり心酔している魔眼持ちのクリプターだ。ちなみに僕を起こしたのはスカンジナビア・ペペロンチーノ。頼れるオネエである。国籍不詳で名前は完全なる偽名だ。
「いや、寝てない寝てない。ちょっと考えごとしてたんだよ。ほら、世界平和的な」
「へぇ?オレたちは今地球をまっさらにして上書きしようってのに、世界平和なんて考えてたのか?」
そうやってニヤつきながら揚げ足を取ってくるのはベリル・ガット。いつも飄々とした態度をとる殺人者である。オフェリアなんかは彼のことを人間として恥ずべき犯罪者だとか言っているが正直どうでもいい。僕からしたら気の良い兄貴分である。
「エドワードがそんなこと考えているわけないでしょ。会議で必ず一回は寝るような人間よ。注意するだけ無駄ね」
そう言って彼女、芥ヒナコは本に目を落とす。相変わらずクールというか冷たい子だ。僕が日本について詳しいと知ったときは凄い嬉しそうだったくせに。
「……確かに、さっきの話じゃないがこの中で一番不真面目なのはエドなんじゃないか?遊び気分ってのとは違うだろうけどな」
そう僕を責めるのはカドック・ゼムルプス。才能はないが努力でAチームになった優秀な奴だ。最近はサーヴァントである皇女様にお熱である。
「いや、それを言ったらデイビットだってあんま喋ってないじゃん。ほぼ寝てるみたいなもんでしょ」
「オレは必要なことと話しかけられたときに発言をしているだけだ。話を聞いていないうえに無駄なことばかり話すお前とは違う」
無表情のまま毒舌を吐いてくるのはデイビット・ゼム・ヴォイド。無表情、無口な男だがなんやかんや良い奴だ。天才だし。ちょくちょくおかしいところもあるが魔術師なら普通である。ちなみに個人的にこいつが一番ヤバイと思っている。なんというか底が見えない。
「さて、そういえば君の
デイビットとお互いに貶し合ってると、我らがクリプターのリーダー、キリシュタリア・ヴォーダイムが話を切り出す。
「……別に、今のところ何もないけどね。みんな知っての通りうちの
「…………そうか。君の
キリシュタリアはいちいちイキってマウント取ってくる。本人からしたら事実を言っているだけなんだろうが知らん奴からしたらイラッとくるからやめた方がいいぞ。この前の会議でそう言ったらオフェリアにボコられたけど。
「わかったよ、キリシュタリア。しばらくは園芸にでも専念するさ。樹を愛でるってのも案外悪くない趣味だろ」
「……エドワード。貴方キリシュタリア様に対する態度が軽すぎるわ。もう少し真面目に返事をしなさい」
オフェリアが母ちゃんみたいなこと言ってくる。彼女とぺぺにはなんかちょくちょく子供扱いされてる気がするけど…………まあいいや。バブみってやつだろ。知らんけど。
「……空想樹を育てることを園芸扱いはどうかと思うけどね」
最後にヒナコにそんなことを言われ、会議は終わったため僕は通信を切った。てか会議の寝てた部分の内容聞くの忘れてた。どーせほぼ雑談だろうけど。
……今更だけど、結局クリプターってどういう意味だよ。
現在、僕は日本の出雲にいる。
異星の神とやらに直談判したら普通に日本の
さっき会議で報告した通り、空想樹も定着していて
そう。これは僕の個人的な問題だ。僕の
「我が契約者よ。心に曇りが見えるぞ。我らが
「んー、よくわかんないね。私たちは神様だから普通は人の心なんて手に取るようにわかるんだけど、エドは別だ。魂が複雑でいまいち掴めない。本当におもしろいよ」
「…………………えどわーど、変わってる」
悩む僕の前にぞろぞろと歩いてきた三柱の神、こいつらが僕の担当する
男なのか女なのかよくわからない見た目に圧倒的な神気。実際彼ら(彼女ら?)には性別がない。男神でも女神でもない、
いかにも神っぽい偉そうなのは
とても神とは思えないフランクな話し方をするのは
無口で横文字が苦手そうな神は
これら三柱が、天地開闢の際に現れたと言われる五柱の
そして、僕はそのまま下を見る。
そこには、別天津神の残りの二柱、
更に、その周りには二柱の独神と五柱の男神、五柱の女神で構成される
他にも、その二柱の子である森羅万象を司る神々、火の神である
……全く、頭が痛くなる。今、僕の下には強大な力を持つものやそうでないものを含め、数十、数百の神々がいるのだ。
他には
一体いつから日本はこんな魔境になったんだ。いや、これも全て僕のせいだ。なんせ僕は
文字通り、他の奴らとは
そのため、日本神話のあらゆる伝承、可能性を同時に内包した日本なんていうとんでもない
そうやって、僕は雲の上の神社に座しながら悩む。
まさに絵に描かれたような、光り輝く天の上で。
……これ、カルデア滅ぶんじゃね?
後悔先に立たず、なんて言うが、まさしくその通りだと思った。
ロストベルト No.0
仮想◼️◼️神域
続かない。