芥ヒナコにエドワードをどう呼ばせるのかでとても迷いました。「貴方」ってのは違和感ありますし、かといって「お前」呼びはマスターが後輩だからするのでしょうし。
そして悩んだ結果「アンタ」になりました。もしより良い意見があれば教えてもらえるとありがたいです。採用させていただくかはまた別の話ですが(何様なんだ)。
「あ〜、暇だなぁ」
「………………………………………………」
「ひ〜ま〜だ〜な〜。ひーまひまひまひまひまひまひ…………まひ?麻痺、麻痺?暇?」
「……………………………………………………………………」
「僕は今なんて言ってたんだ?麻痺?暇?ひまってそもそもなんだ?どういう意味だっけ?暇がゲシュタルト崩壊してきた…………ってかゲシュタルトってなんだ?ひまってのはそもそも────」
「黙って」
「………………はい」
怒られた。かつてないほどの圧で。
「…………はぁ。エドワード、貴方少しは静かにできないの?」
そう言って呆れたように彼女────オフェリア・ファムルソローネはこちらを見る。その目は眼帯のせいで片方しか見えないが、それでも雄弁に彼女の今の気持ちを語っていた。うるさいと。
とある朝、僕は自室にて目を覚ました後もずっと起きずに布団に包まっていた。そんな僕を見かねてオフェリアが起こしに来たのだが、完全に何も考えずぼけっとするモードに入った僕は自分でもわけのわからないことを口走っていた。
「いや、一人だとぼーっとするのも好きなんだけどさ。急に誰か増えると暇な時間が辛くて。つまりオフェリアのせいだ」
「なぜ私のせいなのかは疑問なのだけど、まあいいわ…………。それより、貴方別に暇じゃないでしょう?ここの
「いやあ、それに関してはここの王様たちに任せちゃってるしな。僕の仕事なんてサーヴァントの相手や異星の神の使徒の相手くらいだよ」
と、言ってもこの日本にサーヴァントは三騎しかいない。それに訪問してくる使徒だってコヤンスカヤくらいのものである。なんでリンボと神父、謎の青肌(と言えるのか?)巫女は来ないんだろう?まあ来ない方がありがたいのだが。
ぶっちゃけあのエセ陰陽師はかませ感漂ってるからまだ良い。ただ異星の神と異星の巫女に関しては、まだ謎が多すぎるのでなるべく来てほしくないのだ。
今でこそ僕の
恐らく異星の神は、キリシュタリア以外のクリプターに興味ないだろうから誤魔化せている訳で。もし僕にも興味や疑惑を抱いて干渉してきた場合、それでも誤魔化し続けられるかは正直微妙なのだ。
つまり神様に頑張ってもらうしかないってことだな。大丈夫、ゼロから宇宙を創る以上に難しいことなんてそうそう無いはず!頑張れ!
「────ってわけで、僕は今暇してるんだ」
「どういう訳かは知らないけれど、貴方にやる気がないのはわかったわ」
そして、オフェリアはベッドに寝転ぶ僕を「ほら起きて!今何時だと思ってるの!」なんて言いながら無理矢理起こす。オカンかお前は。
「ぐああああああ!光が眩しい!」
そんなことを考えていると、容赦なく戸を開いて部屋に光を入れられる。眩しい!僕は暗くて狭い部屋が好きなのに!
「吸血鬼か何かなの?貴方は…………。まったく、私がいないと何もできないんだから」
…………吸血鬼、ねえ。
オフェリアの慈愛溢れる謎の視線は一旦スルーし、僕はある女性に思いを馳せる。まだカルデアにいた頃、彼女の過去と共に知ったその素性に。
芥ヒナコ。彼女は俗に言う吸血鬼だそうだ。
と言っても正しくは真祖────更に正しく言うならば『真祖もどき』だそうだが。そこらへんはよくわからん。精霊の一種だとかどうとか。
死徒と何が違うんだよ。全部吸血鬼でええやん、と思ったのは秘密である。ていうかヒナコにそう言ったらしばかれた。酷い。
そもそもアイツ猫被りすぎだろ。地味だけどちょっと闇抱えたヒロイン候補、とか考えてた自分が恥ずかしいわ。二人きりだと口調荒くなるし。自分で虞美人とか名乗っちゃうし。いくらなんでも自分で美人とか言っちゃうのはないわー。これも言ったらしばかれたけど。項羽以外に厳しすぎる。
項羽と言えば、ぐっちゃん(これも言ったらしばかれる)から聞いた話だと項羽の正体はロボットらしい。…………正確には違うかもしれんがまあロボットでいいだろ。ともかくそんな感じだ。
つまり何が言いたいかというと、そんなん絶対サーヴァントとして追加されるやん。カルデアでイチャイチャするのが目に見えるわ。ということである。実際、少し前に項羽の姿を見せてもらったが、確実に実装されるなと予想できる容姿だった。緑に光る黒いケンタウロスとか超強そうじゃん。めっちゃ剣持ってたし。
ってな訳で、今頃シャドウボーダーは第三異聞帯である中国に向かっているだろうが、僕は今回はノータッチでいこうと思っている。
何故ロシアで介入しなかったのか、それはカドックが死なないと知っていたからだ。
何故北欧は介入したのか、それはあのままだとオフェリアが死ぬと知っていたからだ。
そして今回の中国だが、ヒナコに関しては心配いらないだろうと考えている。少なくとも二千年と数百年は生きてるであろう不老不死の真祖もどきだ。僕が行かなくたって死なないだろうし、どうせ英霊になって項羽とカルデアでイチャイチャするのだ。介入する理由がない。
けっ!リア充が。末永く爆発しろ。クリプターになってからの通信でどれだけ項羽との惚気話を聞かされたと思ってるんだ。うちの異聞帯に呼んだが最後、彼女のいない僕は死ぬ。
はー、酒呑ちゃん付き合ってくんねえかなあ。無理だよなあ、サーヴァントだし。鬼だし。所詮は身体だけの関係である。僕とは遊びだったのねっ!
くそお、前世も含め初めてキュンときたのが酒呑ちゃんとか僕の恋路ハードモードすぎるだろ。文字通り鬼レベル。
…………恋愛なんてしたことないし下らない、それが僕の持論だ。所詮男女の関係なんざ打算や欲で塗れたものである。相手は適当に自分のステータスとなるような男を傍に置きたい。僕は女の子とイチャつければそれでいい。相手は本気で僕のことを好きでもなければ愛してもいない。だから僕も適当に相手してやる、それだけだ。
だから僕にはわからない。ヒナコと項羽のことも。マシュと立香のことも。そして、今僕の前に立つオフェリアがキリシュタリアに抱く想いも。
全て『そういうものがある』と知っているだけで、僕自身の気持ちとしては一切理解できない。
…………だからこそ、本能でやりたいようにやる彼女に。鬼という人とは違った、理解できない存在に。
僕は惹かれたのかもしれない。
「────オフェリア。朝ご飯食べよっか」
なんだか目が覚めてしまった僕はようやく布団から出る。朝から変なことを考えてしまったせいか体は重かった。
「もう朝ご飯なら食べましたー。今はとっくにお昼に────────って、エドワード!貴方なんて格好してるの!?」
「え?あ、いや。寝るとき暑くてさ。邪魔くさいし上着脱いじゃうっていうか」
「上着も何も、貴方上半身裸じゃない!今すぐ服を着て!!はやく!!!」
「お、おう。…………そこまで怒んなくてもいいじゃん」
相変わらずの純情少女オフェリアさんである。そんな怒ること?
「────み、見ちゃった。いいの?こんな…………
………………何言ってんだアイツ?
オフェリアが僕の異聞帯に来てからある程度の時間が経った。
彼女も今の生活に慣れてきたらしく、
オフェリアの部屋も僕の家の中に作った。なんでもすぐ連絡を取れるよう近くにした方が安全だとか。高天原で一体どんな危険があるんだと思わないでもないが、特に断る理由もないため受け入れた。そのせいでこっそり抜け出して地上に遊びに行くのが少し難しくなったが。
マジでママだなオフェリア。
『────────聞いてる?エドワード』
「…………ああ、悪い。考え事してた。で、なんだったっけ」
『はあ………。だから、シャドウボーダーがここに来たの。今度は私の番ってわけ』
「あー、なるほど。もうそんな時期ね」
オフェリアがママだとか、そんな下らないことを考えてたとは言えないので通信相手────芥ヒナコの話に乗っかる。
『ようやく項羽様と会えたのだし負ける気はないけれど、あの始皇帝が私の思い通りに動くとも思えないわ。カルデアの残党は全力で潰すしかないわね』
「容赦ないなあ。全力ってのはぐっちゃんモードってこと?」
『ぐっちゃん言うな。あと変なモードをつくるな。ぶっ飛ばすわよ』
怖っ。相変わらず項羽や蘭陵王への態度と僕への態度が違いすぎる。そこそこ長い付き合いなのに、絆レベル低すぎないですかね。
『…………そういえば、エドワードは良かったの?』
「良かったって、何が?」
『わかってるでしょ。オフェリアのことよ』
「────ああ」
そういえば、カルデア勢と僕以外は彼女が大令呪を使い死んだと思っているのだった。ヒナコもその例に漏れないということか。
「なんだ、人間のことなのに気になるのか?」
『それはそうでしょ。彼女が今までの人間と違うのはわかったし、それなりに仲良くもしてたんだから。だからこそアンタが見過ごしたのがわからない』
「ヒナコから仲良く、なんて単語が出るとはなあ。ま、クリプターの関係なんてそんなもんなんじゃねえの。僕が行ったところで何も出来ないし、そもそも行けないし」
『……………………そう。まあ、そんなものね』
…………彼女には真実を話してもいい気はするが、情報を広げないに越したことはないだろう。サーヴァントとしてカルデアの仲間になることがもしあれば、いずれ知ることもあるかもしれないし。
通信越しに見える表情や、声から伝わる諦めの感情────長寿ゆえ、だろうか────に少し心を動かされつつ、オフェリアのことを悲しめる彼女はやはり優しいのだと再確認する。人間嫌いであっても根っこはそうなっているのだ。
「ヒナコ、お前は気をつけろよ。せっかく項羽様とも会えたんだしあんま無理せずにな」
『アンタに言われなくてもわかってるわ。私は、今度こそ────────いえ。じゃあ切るわね』
結局、大した話もせず通信は切れた。なぜ彼女はわざわざそんな報告をしたのだろうか。そもそも────いや。あれは報告というよりまるで
ヒナコも本気ということだ。本気で項羽と共に生きる道を探っている。
それも愛ゆえ────か?僕にはどうにもわからないが。彼女のその気持ちは応援したいと心から思う。
結局、オフェリアのことを彼女に伝えなかったのも。中国に行く気がないのも。僕にとって一番大事なのは僕自身だからだろう。
一度死んで、奇跡的に得た二度目の命だからこそ。
今度こそ、失う訳にはいかないのだから。
それから数日後、またしてもヒナコから通信がかかってきた。今回は傍にオフェリアもいるので彼女には静かにしてもらおう。
「…………ヒナコから?」
「おう。だから一応静かにしといてくれると助かる」
僕がそう言うとコクリと無言で頷くオフェリア。可愛い。
「はい、もしもし。貴女の親友エドワード・エヴァンズですよ」
少しふざけると今度は睨まれた。怖い。
『……………………』
だが、もう一人からは。いつもなら呆れたような声が飛んでくるはずの通信機からは、何も聞こえてこない。
「……どうした?なんかあったか?ヒナコ?おーい」
『………………………………けて』
「ん?」
『…………お願い。アンタにこんなこと頼んだってどうしようもないことはわかってる。それでも、私には…………アンタしか思いつかなかった。アンタにしか頼れなかった』
ようやく聞こえたその声は、悲痛な声だった。か細い、助けを求める声だった。
映し出された彼女の姿は見たこともない大人びた姿で、それでもすぐにヒナコだとわかった。
『お願い…………。項羽様を────────助けて』
そして、通信が切れる。
ヒナコは、項羽が戦わないことを望んでいる。だが項羽はその選択をしない。最後まで戦い、そして敗ける。そんな項羽をヒナコは止めることができない。傍にいることしか、できない。
それでも僕を頼ったんだ。最後の最後に、どうしても諦められなくて。僕がどうにかできると決まった訳じゃないのに、それでも。だからこそ、一刻も早く向かわなければ。
「…………行くのね、エドワード」
急いで外に出ようとした瞬間、不安気な顔をしたオフェリアに聞かれる。
……………………そうだ、何故僕は行こうとしている?別にヒナコも項羽も二度と会えないって訳じゃないだろう。少し待てばまた会えるはずだ。なのに今僕は行こうとしていた。中国には行かないと決めたのに。危険で、死ぬかもしれないのに。
オフェリアの時と違って今回はそこまでの緊急性はないんだ。行かなくてもいいんだ。なのに、何故……………………。
────いや、違うだろ。
友達が、アイツが助けてって言ったんだ。なかなか他者を信じない、めんどくさい性格したアイツが。虞美人が、芥ヒナコが。
僕に愛だのなんだのはわからないが、でも。他者にそういう感情があって、それがどれくらい大事なのかってことはわかる。
たとえ英霊になって会えるとしても、ヒナコはそんなこと知らないんだ。それに、たとえ知っていても。大切な者の死が、別れがとてつもなく辛いってことくらいは、わかる。
そんな思いを、
「────オフェリアはここで待っててくれ。すぐ戻る」
「…………わかったわ」
オフェリアを置いて急いで家から飛び出る。なるべく早く、間に合わなくなる前に。
「令呪をもって命ずる!来い、スサノオ!」
走りながら叫ぶ。すると僕の右手に三画あった令呪の一つが消え、隣に僕のサーヴァント、スサノオが現れた。
「おいおいおい、いいのかよマスター!いきなり令呪使っちまって!!」
「急いでるからいい!二画あれば十分だし、そもそも戦闘で使うつもりもない!令呪ってのは奥の手だからな!」
「その奥の手を今使っちまったんだが…………」
「うるせえ!とにかく、今の僕に権能はないからもう一柱くらい連れてくぞ!神殿に着くまでの間に誰か見つける!」
「すげえ無茶振り!……ったく、しゃーねえなあ」
この異聞帯の王たちの下に向かうまでの間に連れていく神様を探す。できれば戦闘が得意な神が良いのだが…………。
「あ、おい!アイツなんか良いんじゃねえか!」
誰かを見つけたスサノオが指を指す。そこにいたのは────。
「よし、準備完了!頼むぜ
「私たち
「あー、ごめんたかみー。もちろんちゃんと感謝はしてる。だから今回も頼むよ!」
「はいはい了解。じゃあいくよ、エドとスサノオは一回経験してるから大丈夫だろうけど、初めてのタケミカヅチは気をつけてね」
「承知した。気を引き締めておこう」
たかみーの言葉に応えるもう一柱の搭乗者、僕とスサノオが見つけたそこらへんを歩いていた神様。彼の名は────────
「う、おおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおお!!!間に合ったあ!」
轟音、土煙と共に両者の間に割って入る。僕の背後には既にボロボロで満身創痍の項羽と芥ヒナコ(ぐっちゃんモード)、ついでにコヤンスカヤ。そして、僕の前方には藤丸立香率いるチームカルデアだ。
『────な、彼ら壁をぶち抜いてきたぞ!!いくらなんでも強引すぎないかい!?』
「いやー、急いでたんでね。悪い悪い。お、立香とマシュは久しぶりだな」
「またですかエドワードさん!それに…………今回は味方してくれる、って訳じゃなさそうだね」
「はい、マスター。どうやらエドワードさんは敵対する姿勢のようです」
「まあな、友達とその旦那助けにきたんだ。悪いが今回は敵だぜ」
そして、スサノオと深くフードを被ったタケミカヅチが前に出る。今回はタケの正体は明かさず撤退するまでの時間稼ぎと護衛をしてもらう。いや、マジで百人力だわ。安心感ぱない。
「エドワード…………、本当に……………………」
カルデアの連中と向き合っていると、背後からなんとも頼りない声が聞こえてきた。まったく、こっちまで気が抜けそうだ。
「おう。その姿も随分と美人さんだな、ヒナコ」
だから、安心できるように笑いかける。いつも通りに。
「…………ふふ。────ああ、もうヒナコじゃなくていいわ。正体はバレちゃってるし、虞美人と呼んで」
「わかったぐっちゃん。後は任せてくれ」
「……………………まったく、ぐっちゃんはやめてって言ってるでしょ」
お生憎、僕は人の話は聞かない男なのだ。諦めるんだな。
「いや、いやいやいや。なーにをちょっと良い雰囲気にしてくれちゃってるんですか!エドワードさん、アナタ
「お、コヤンスカヤはチャイナドレスか。いやー、眼福眼福」
「くっ!相変わらず話を聞かない方ですね……!」
「まあ、知りたきゃ僕の異聞帯にでも来ればいいだろ。
「……………………ッ!!」
「正直もっとやってほしいところではあるけれど、そろそろ真面目になった方がいいんじゃない?エドワード」
「あー、悪いぐっちゃん。んじゃま、そういうことだ。次の転移までの時間稼ぎ頼むぜセイバー、と…………まあ、うん。もう一人」
「あのフードのサーヴァントの正体を明らかに隠しているな」
やめてくれ名探偵。ホームズならこの段階でも真名バレそうだ。流石にそれはないか、はい。てかサーヴァントじゃないし。
「虞よ……。この男は────」
「項羽様。彼は…………。彼は、私の友です。ですのでどうかご安心を。勝手ながら、私が呼んだのです」
項羽は会話ならまだできるようだ。だが今にも活動を停止しそうなことには違いない。カルデアもなかなかやってくれるな。
なんてことを考えているところに、紅い稲妻と燃え盛る炎が走る。
「先手必勝ぉ!いつまでもグダグダ喋りやがって、たたっ斬ってやるよ!」
「同意。隙だらけ、必中」
迫るは叛逆の騎士、モードレッドに天界の武将、中壇元帥・哪吒太子。どちらも戦闘を得意とする手強いサーヴァントだ。
────だが。
「…………なッ!」
「……………………!」
何度かの衝撃と共に、どちらも防がれる。モードレッドはスサノオが。哪吒はタケミカヅチが。それぞれの攻撃を完全に受け止めていた。
しかし更に後ろからも迫る影が三つ、シャーロック・ホームズに赤兎馬、陳宮の三騎だ。赤兎馬はともかく、ホームズと陳宮には何をされるかわからない恐怖がある。だからしっかり妨害させてもらおう。
「揺らして分断!できる?」
「もちろんだ、エドワード殿」
瞬間、僕達より前方────────
『なんだこれ!計測の結果としては地震っぽいけど……あまりにも局地的すぎる!』
「くっ、…………みんな!」
更に体勢を崩しバラバラになったサーヴァントたちを、タケが全て雷の壁で分断する。
「これは────なんて密度の魔力だ…………!とてもじゃないが突破できないぞ!」
そりゃそうだ名探偵。神の権能だぜ、そう易々と突破されちゃあこっちのプライドが傷つく。
「なあ、これ俺必要だったか?」
「いや、ここまでハッスルしてくれるとは思わなくて…………」
哀れスサノオ。お前はまた別のとこで暴れさせてやる。
「さて、そろそろ潮時だ。今回もクリプターを攫うのが僕の目的なんでね。ここらで撤退させてもらうよ、またな。立香、マシュ」
「ま、待ってください!エドワードさん!貴方は、貴方は一体────────」
「悪いが今は敵だよ、マシュ。僕がクリプターとして生き返る道を選んだ時点でね。
「それは、どういう…………?」
「おっと、準備もできたしこれで本当にさよならだ。今度会う時はちゃんと戦おう」
そして、僕達は中国の異聞帯を後にした。
「で、どうして
「いや、なんかこう。ノリで?」
「エドワードさん…………アナタ、ひょっとしておバカさん?」
ひょっとしなくてもそうかもしれない。僕の計画守らない度は異常だ。でもコヤンスカヤには言われたくない。色々好き勝手やって始皇帝から拷問受けてたやんキミ。
取り敢えず日本の異聞帯に帰ってきてから、まず項羽の修復やらメンテナンスを神様たちに頼んだ。ぐっちゃん的には知らない奴らに項羽を任せるのは気が引けるだろうが、ここは僕には免じて任せてもらった。
「エドワード…………。その、今回は……本当に、その────」
「おっと、そっから先は項羽様がしっかり治ってからだ。今はこうやって無事なことを安心しておけばいいさ」
「…………そうね。今はそれでいいわ。でも後で落ち着いたらお礼は言わせて」
「まあそれで気が済むならな。感謝は受け取っておくのが一番か」
「グっちゃんが人間と親しくしているなんて珍しいですねえ。どういう心境の変化です?オフェリアさんとだってそこまでではなかったでしょうに」
「…………うるさいわね。エドワード、なんでこんな女狐まで連れてきたのよ。この異聞帯が滅ぶ前にさっさと追い出すべきよ」
うーん…………。怖い。コヤンスカヤはともかく、ぐっちゃんからの敵対心がとんでもない。昔からの知り合いってのは複雑ですな。
「あ、そうだ。実はぐっちゃんに会わせたい人がいるんだ。ついてきてよ」
「会わせたい人?」
「まあ来てよ、絶対驚くぜ?」
その後、スサノオとタケとはお礼を言って別れた。いやー、マジでタケ良い神。ザ・武人って感じだし優しい。
そして僕の家に向かってぐっちゃん、コヤンスカヤを連れて歩いていると、コヤンスカヤが辺りを見渡しながら口を開く。
「相変わらず平和な異聞帯ですねえ。反吐が出そうです。
「…………言っとくけど勝手に持ち帰るなよな。もしやったらうちの九尾けしかけるから」
「あー、やめてください!
「アンタらも大概よく喋るわよね…………。貴方、人間嫌いなんじゃなかったの?」
「いえ。好きですよ、ニンゲン♡ 剥製にして飾るくらいには。ただちょーっとエドワードさんは違うと言いますか…………貴方一体なんなんです?異聞帯を移動できたのも気になりますし、ねえ?」
ねえ?と言われても。僕は産まれてこのかたずっと人間ですが。転生しただけの。…………それがまずいんですかね。
「サーヴァントと王、珍しい魔獣以外は特筆すべきこともない異聞帯、のはずなんですがねえ。どうにも引っ掛かると言いますか。
「別に?僕ほど清廉潔白な人間もいないと思うぜ」
嘘です。現在進行形で隠しまくってます。どうやらコヤンスカヤは気づいていないらしく、今回も上手くいってるようで安心した。コヤンスカヤには
「ま、というわけでコヤンスカヤはここまでだ。今回連れてきたのは、ぐっちゃんを助ける以外に他意はないって知ってほしかったからだし。なんかあったらまた来てくれ。その時は歓迎するよ」
「…………そうですねえ。勝手な行動をしているのはお互い様ですし。今回は素直に帰るとしましょうか」
やけに素直に承諾するとコヤンスカヤはどこかへと消えていった。いやー、にしてもエロい格好だった。おっぱいの下半分見えていたがあれはいいのだろうか?いや、僕としては是非とも今後も着てほしいのだが。
「…………痛いです、ぐっちゃん」
「アンタが変なこと考えてるのが悪いのよ」
静かに足を踏まれる。クソっ、僕がMだったらご褒美なのに。残念ながらただ痛いだけだ。
……………………というか格好で言えばぐっちゃんもなかなか凄い格好しているが。人妻がそんな格好していいんですか?────あっ!痛い痛い!なんか強くなってる!
「…………はぁ。それで、会わせたい人ってのは誰なのよ」
僕の家の前に着いたところでぐっちゃんが尋ねてくる。ふっふっふ。きっとビックリするぞ。なんやかんや優しいぐっちゃんだ。喜びを押し殺してツンデレる姿が目に浮かぶ。
────かつて、カルデアにいた頃を思い出しながら。
僕はオフェリアが待つその家へ、友達と共に、足を進めたのだった。
個人的に4章が2部の中で一番面白かったです。カルナさんは大分初期に当たった思い入れのあるサーヴァントだったので。勢いで聖杯捧げちゃったけど(あんだけカッコよかったら)是非もないよネ!