オイオイオイ 死ぬわオレ
遂に、遂にこの日が来た。
レイシフトによる人理修復。そのファーストオーダーの実行日が遂にきたのである。ファーストオーダーとは、よくわからんが、なんか人類の未来なくなってね?やばくね?的な流れで計画された作戦だ。
ざっくり説明すると、なんか冬木って場所に人類の未来がなくなった原因あるらしいべ。じゃあタイムスリップしてその原因消そうや。というものである。ざっくりしすぎぃ!
だが、実際こんな感じなのでしょうがない。まあとにかく、ここしばらくのカルデアはこのために活動をしてきた。僕を含むAチームや、その他マスター候補を含めた47人の訓練。スタッフやオルガマリー所長、ロマンの研究やら準備。その集大成が今日、いよいよ発揮されるのだ。
いや、まあ。どっかのクソダサシルクハットonモジャモジャ杉田のせいで爆発オチが待ってるんですけどね。爆発オチなんてサイテー!
と言っても、そこは大した問題ではない。なぜなら僕はほぼ100%復活できるからだ。爆発で死んでも安心である。
というのも、キリシュタリアを筆頭に、クリプターの面々とは仲良くやっている。つまり僕一人だけ復活から省かれる、なんてことは起こらないはずなのだ。…………だよね?起きないよね?
ぶっちゃけ爆破から逃れることや、仕掛けられた魔術を解除することはできる。ただその場合、レフ・ライノールに目をつけられる可能性があるのだ。最悪ゲーティアに目をつけられたらもうバッドエンド一直線である。そんなん無理ゲーだ。
だいたい、1部と1.5部と2部を乗り越えるルートと、2部だけを乗り越えるルートなら後者の方が簡単に決まってる。なら一度死んだとしても、死なないために爆破に巻き込まれようじゃないか。
…………オルガマリー所長やロマンには悪いが、僕は僕の命のために行動させてもらう。もしかしたらこの世界の立香くんが頑張ってくれるかもだし。
というわけで、あと2年は寝させてもらおう。2年後、目覚めたら僕は人類の敵だ。少しは風格とか出す練習しとこうかしら。
そんなことを考えながら、僕はオルガマリー所長に居眠りから叩き起された藤丸立香ちゃんを見ていた。
……………ぐだ子かぁ。
ぐだ子が追い出されてからしばらく。僕達マスター候補は既にコフィンの中へ入っていた。気分はまさしく棺桶の中の死体である。
そんなわけでじっとしていたら、段々不安になってきた。やばい。死ぬのめっちゃ怖い。いや、チキンとか言わないでくれ。いくら生き返ることができるとはいえ、怖いものは怖いのだ。一瞬で死ねたらいいなあ。なんか地味に意識残ってるとかが一番最悪だぞ。
…………というかカルデア戦闘服がピチピチすぎて全然落ち着かない。前から思ってたけど皆よくこんなの平然と着れるよな。キリシュタリアやオフェリア、マシュとか、すげえキリッとした顔でこの全身タイツ着るもん。ぐっちゃんと僕だけだぜ、このタイツに抵抗あるの。
そんなくだらないことを考えて意識を逸らしていると、外が騒がしくなってきた。いよいよ始まるのだろう。FGOのストーリーが。
「……………………」
コフィンの中にいても、色々レイシフトの準備をしているのが聞こえてくる。
「……………………………………?」
待って、やばいかも。
「……………………………………………………!」
最初はふとした違和感だった。だが、それはだんだん確信へと変わっていく。
そして、
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!お腹痛い!!
やばい、めっちゃう〇ち漏れそう!
そう、唐突な腹痛である。一瞬「なんかお腹痛いかな?」となった後に「やっぱ大丈夫かも」と思ったが最後。人間が油断した瞬間を襲うビッグウェーブ。
ちょ、ちょっと待って。一旦出よう!出発(というか爆破?)が遅れるのは気が引けるけど、漏らすよりはマシだ!
そう思いコフィンの扉を開けようとするが────────。
開かねえ!なんだこれ!ロックとかかかるの!?マジでやばいって!!
今まで、こんなギリギリにコフィンから出ようとしたことがなかったので知らなかった。扉が開かない。完全に閉じ込められている。あまりにもギリギリすぎたのか。しかし、ギリギリというのならこっちのお腹の方がギリギリなわけで。
「ごめん、オルガマリー所長!」
一応所長に謝りながら、無理やり扉を殴る。焦っていたせいか、扉は衝撃とともにかなり吹っ飛んだ。加減もくそもない。クソはすぐそこに迫っているが。
「んなこと言ってる場合か!」
コフィンから飛び出すと、華麗に着地。そのままクラウチングスタート。魔力放出による全力ダッシュでトイレを目指す。当然スタッフやコフィンの中のマスター候補達も焦るが、周りの制止の声なんかガン無視である。
「ちょっ、嘘!?止まりなさい、エドワード!」
「ごめんオルガ、僕は止まらねえからよ!!」
オルガマリー所長の焦った顔は可愛いが、今は構っていられない。一刻も速くトイレに辿り着かねば。人間の限界を超えた速度で出口を目指し走り続ける。
「エドワード!止まりたまえ!!」
すると今度は僕の正面、出口の前に立ち塞がる影が一つ。レフ・ライノール教授だ。おそらくAチームである僕のことはしっかり殺しておきたいのだろう。わざわざ見逃す理由もない。
────────だが、
「無駄だ……!」
一瞬、左に重心を傾ける。目線も少し左に。当然、レフ教授はそれにつられる。そのタイミングで僕は体を左にターンさせ、一気に右へ加速。そのまま壁を走りレフ教授の横を通り抜け、再び床へと着地した。そして僕は、フェイントを織り交ぜることで無事レフ教授を突破し、廊下へ脱出したのだった。
あとは時間との勝負!トイレまで僕の脚なら5秒でいける!全力でぶっとばせ!!!
結局、無事間に合った僕は便座の上で爆破の振動を感じるのだった。
──────────やってしまった。
目の前には瓦礫と炎が広がり、レフ教授による爆破が実行された後だということが一目でわかる状況になっていた。
そんな惨状を気にせず、僕はある場所へと足を進める。Aチーム9人目のメンバー、マシュ・キリエライトのコフィンがあったはずの場所へと。
そこには、巨大な瓦礫に下半身を潰されたマシュと、そんな彼女に寄り添う藤丸立香ちゃんの姿があった。
その光景を見て、ようやく僕は実感する。やってしまったと。完全に1部から参入フラグが立ってしまったと。
『コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。レイシフト定員に達していません』
『該当マスターを検索中…………発見しました』
『適応番号39
『アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します』
機械的な、無機質な音声が響く。
「…………あの…………エドワード、さん。せん、ぱい。手を、握ってもらって、いいですか?」
マシュが息も絶え絶えといったふうに口を開く。その言葉に、僕と藤丸立香ちゃんは自然と体が動いていた。マシュの両手を、それぞれしっかりと握る。最初は急に現れた僕に驚いていた彼女も、すぐに落ち着いてマシュの手を握り続けていた。
二人とも、いつの間にかマシュに寄り添っていた。だが、おそらく、僕と彼女では想いがまるで違うだろう。藤丸立香ちゃんは、マシュの為を想って手を握っているはずだ。でも、僕は違う。
これは、覚悟だ。
これから先のグランドオーダー。その尽くを乗り越えると。必ず生き延びてみせるという覚悟。もうクリプターとして復活できるかはわからない。ならば死ぬわけにはいかない。
─────────そういう覚悟だ。
『全工程
いいぜ、やってやるよ。
前人未到の聖杯探索、人理修復。
何がなんでも成功させて、絶対生き残る!!
─────────と、啖呵を切ったはいいものの。
「…………暇だなあ」
なんというか、今の僕のテンションは下がりきっていた。あの時はちょっと変なテンションが入っていたが、いざ始まってみると拍子抜けというか。手応えがなさすぎる。
手持ち無沙汰気味に、戦利品としてゲットしたボロボロの槍を手の中で回す。周囲は見渡す限りの炎、炎、炎。そして瓦礫。
そんな炎上、崩壊してしまった都市を、僕は
これが全て襲ってきたスケルトンの成れの果てだというのだから、ほとほと呆れる。いったいどれだけいるんだ。
「マシュやオルガマリー所長、ぐだ子とも合流できないし。通信も繋がらない。幸先悪すぎるわ」
思わず愚痴が零れる。ここまでスケルトンだらけだと、そうなってもしょうがないというものだ。
まあしかし、全く収穫がなかったわけではない。ボロボロだが武器は大量に手に入れたし、なにより虹色に光る金平糖のような石を拾った。
そう。何を隠そう皆大好き、聖晶石である。やったね!これでガチャが回せるよ!
まあ、聖晶石といっても要は魔力の塊的なものだ。これを使えば英霊召喚に必要な魔力やらを賄ってくれる、らしい。多分。
後は魔力が集まるポイント─────霊脈地に魔法陣的なものを描き、中二リリック全開の詠唱をすることでサーヴァントが呼べる、というわけだ。
これでも僕はマスター候補のAチーム。マシュの盾がなくとも自力で完璧な召喚サークルを描き、詠唱をすることぐらい朝飯前である。
とりあえず霊脈地を探索していく。すると、洋館のような、屋敷が見える森に辿り着いた。ここなら申し分なさそうだ。
…………なんかここ見たことある気が。まあ冬木の街並みはアニメやらで見たことあるし。既視感があってもおかしくないだろう。
レイシフト直前の状態からこんなことになったので、一応道具は揃っている。持っていた水銀を使い魔法陣を描けばあとは詠唱のみだ。
ちなみに触媒はない。縁召喚、まあ自然と相性の良いサーヴァントがくる召喚方法でいく。
「えーと、なんだっけ。あー、『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』」
長ったらしい詠唱を思い出しながら、聖晶石を魔法陣に放り込む。
「『
詠唱が進むと次第に魔法陣が輝き出し、魔力の奔流が溢れる。
だからだろうか。
溢れ出た魔力に釣られてきたのか、
…………そうだ、そりゃあ見覚えがあるはずだ。
FGOでは何かを守っていたために登場しなかったサーヴァント。本来なら放っておいても問題がないサーヴァント。
しかし、僕は
ここ、アインツベルンの森やんけ────────。
「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼!!」
木々を薙ぎ倒しながらこちらに向かってくる巨大な影。その姿はまるで岩のようで、彼にかかれば僕なんか簡単に殺されてしまうことは一目でわかった。セイバーオルタによる汚染でシャドウサーヴァントになってるとはいえ、元は万夫不当の大英雄。宝具が使えなくとも勝てるような相手ではなかった。
そう、彼の名はヘラクレス。半神半人の伝説の英雄だ。
ッッッッッやっばい!!!
「『──────告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!』」
秘技、超高速詠唱(早口)!
「『誓いを此処にッ!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者!』」
やばいやばいやばい間に合え間に合え間に合え間に合え!
詠唱の途中だろうがお構い無しで迫ってくるバーサーカー。既にその距離は限りなく近い。
そして、遂にその斧剣が僕に向かって振り下ろされる──────。
「『汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!』」
瞬間、爆発的な光と魔力が溢れる。サーヴァントが召喚される前兆、そして繋がるパス。僕は右手の甲に走る熱を感じながら、簡潔に、わかりやすく、それでいて最優先の命令を下す。
「頼んだ!!」
すると、青黒い炎と魔力による雷が走り、鋼鉄の如きバーサーカーの巨体を吹き飛ばした。
「ハ。ハハハ。クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
そして響く高笑い。マジか、まさかのお前…………!?
「俺を呼んだな!復讐の化身を!そうとも、俺こそ黒き怨念。エクストラクラス、
衝撃によって生じた煙が晴れると、そこには僕の召喚したサーヴァントが立っていた。黒に近い深緑の外套とハット。病的とも言える白い肌。長い白髪の間からは黄金に輝く、復讐に燃える瞳が覗く青年こそ───────巌窟王、エドモン・ダンテス。
いや、僕とお前絶対そんなに相性良くないだろ…………!
なんの根拠もない直感で、僕はそう思った。
というわけで、始まりました人理修復編。
サーヴァントは本編と色々変えた方がいいかなー、と思いこうなりました。後悔はしていない。
次回で冬木は終わらせたいです(終わらせるとは限らない)