またまた過去話。
これは、僕がクリプターになって
僕の担当するここ、日本は今や完全に
と言ってもほんの二、三ヶ月前のことなんだけど。
「怪物退治?」
「そ。今エドがいるのは
そう言って
「あ?いや、そりゃあん時の俺は若かったからよぉ。今は暴れたりなんてしねえよ」
変なことを考えている内に僕のサーヴァントである彼、スサノオは少し気まずそうな、申し訳なさそうな表情で反論する。
今の彼はサーヴァントなので生涯を過ごした記憶を持っているのだが、彼にとっての全盛期、つまりは色々やんちゃして暴れていた頃の姿で現界しているため精神が少しだけそちらに引っ張られている。
なので度々こうして注意をされるのだ。いつかまた何かやらかすのではないか、と。アマテラスさんなんて未だにスサノオが近づくとちょっとビクッとする。そりゃ引き篭もって出てこなくなった原因だもんね。可愛い。
そんなことを考えているとたかみーが話を戻す。
「まあ、ともかく今はここは平和だ。問題は下界だよ。基本的にエドを除いて人間は私たちを信仰してくれているから良いんだけど、動物や怪物なんかはそうじゃなくてね」
「いや、何で僕だけ除いたのよ」
「だって君、
「いやいや、神様スッゲーって毎日感心させられてるよ。尊敬してるし。てか僕イギリス人だし」
「……そういうとこなんだけど。まあいいや。とにかく君たちには人間や神様を襲わんとする怪物たちを説得・服従・退治して欲しいって話さ」
なるほど、つまりは人助けの怪物退治か。いいね、神話の英雄っぽい。よくわからんけど空想樹の安定にも繋がるんじゃね?多分。
「……ん、でもさ。たかみーたちが行けば余裕で倒せるんじゃない?」
今僕たちの前でニコニコしているたかみーを見ているとそんな感じは全くしないがこの神、世界を創ったとかいうとんでもない神様の内の一柱だ。下界の怪物退治なんてお茶の子さいさいだろう。
「そりゃそうなんだけど、私が降りただけで人間のみんなは大騒ぎだろうし。下界にどんな影響があるかもわかんないし。そもそも力の加減とかわかんないから殺しちゃうし。さっき言ったけどできれば説得・服従して欲しいんだよ。それにこれは君たち主従のテストさ。この歴史の王たちと並び立つ資格があるか、のね」
…………なるほど。僕のことを興味深い人間として好んでいてくれてはいるが、それとこれとは別ってわけか。クリプターってのも大変だな。
「はっ。良いじゃねえか、マスター。久しぶりに暴れてやるよ。俺のこと上手く使えよ?」
えらく上機嫌なスサノオが好戦的な笑みを浮かべ肩を組んでくる。君やっぱだいぶ若い頃に引っ張られてるよね。暴れたがってるよね。
「わかったよ。まあ、テストだって言うんならやらないわけにもいかないし。神話の怪物やら動物って言ってもスサノオがいれば平気でしょ」
なんて言ったって彼は
あ、そう言えば。
「ねえ、たかみー。僕たちってどうやって下界に降りればいいの?なんかエレベーター的なのがある感じ?」
「えれべえたあ?……ああ、これか。いや、エレベーターなんてないよ?だからまあ移動手段兼助っ人として
そう言ってたかみーは去っていった。自分の神殿にでも帰るのだろう。
やったぜ。
……というか、あの神様エレベーターを知るためだけに汎人類史かめっちゃ未来かのどっちかを
改めてこの
指定された場所に行くとそこには三本の足を持つ巨大な烏がいた。
「あれ、思ったよりでかい」
え?めっちゃでかい。これって
「そりゃ俺たちが乗るんだからでかくねえとな。二、三人は乗れるぜ」
「え?でもなんか八咫って150cmくらいのことじゃなかったっけ?それでもでかいけどさ」
「正確には144cmくらいだな。まあでもこの場合の八咫ってのはただでけえって意味だ。
へー、物知り。スサノオって実は頭良い?って思ったけど長さの単位くらい知ってて当然か。むしろセンチとかメートルがわからん奴おったらドン引きするわ。
スサノオは
ひとまずスサノオの後ろに乗って足を固定させてから紐みたいなのを掴む。あれ?
「なあ、これシートベルトみたいなのないの?飛んだら落ちない?」
「そんなんないぜ?だからしっかり掴まっとけ!振り落とされんなよ、マスター!」
スサノオがそう言って
「うっ、ぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」
速い速い速い速い速い!なんだこれ!なんかソニックウェーブみたいなの出てない⁉︎音速超えてない⁉︎
「はっはー!!良いぜ、ノってきた!行くぜマスター!」
スサノオがなんか話しかけてくるが無理!返事なんてできらん!掴まってるのが精一杯だ!
僕たち二人を乗せた
現在スサノオと僕は森の中を歩いていた。どうやらここらに人を食べる怪物が出るとのことで近くの村の住人が何人も犠牲となっているらしい。
スサノオが前を行き森の奥深くまで入っていく。この
なんかあれだ。もののけ姫みたい。森の雰囲気とか。たまに精霊っぽいのもいるし、流石ほぼ神代。
「なあ、マスター。ホントに化物なんていんのか?俺たち結構歩いたぜ?」
「うーん、たしかに。この辺で間違ってはいないと思うんだけどなあ」
なかなか見つからない。夜行性とか?てかどんな怪物かも全く聞いてないな。聞かなかった僕もアレだけどたかみーも教えてくれよ。
体力的にはまだ全然大丈夫だけど、精神的に疲れてきた。
「なあ、スサノオ。ちょっと休憩しよう。喉も渇いたし」
僕はそう言って腰を下ろす。にしても本当にどんなのなんだろ。まあでも日本の神話ってそんなに怪物とか出てこないタイプだしなあ。巨大な魔猪とかだろうか。
……水飲んだらしっこ行きたくなってきたな。
植物をかき分け茂みへ入っていく。トイレとかが近くにすぐ無いのは不便だよなあ。
…………ふぅ。スッキリ。にしてもあと何時間探さなきゃいけないんだ?ちょっとめんどくさくなってきたなあ。
そんなことを考えながらスサノオの元へ戻ろうとすると、ふと視線を感じた。
————なんだ?これ。
とてつもない違和感を感じる。視線というか、睨みつけられているような。
そのまま振り返ると、巨大な目と視線がぶつかった。
でかい、あまりにも。普通なら目というのは生物の中でも小さい部位だと思うのだが、僕の頭より明らかにでかい。
そんな目が、こちらをじっと見ている。
これは————蛇か?しかし、蛇と言うにはゴツゴツしている。角のようなものも見えるし、蛇と竜の中間のような。頭全体は僕を簡単に吞み込めるほどの大きさだ。
瞬間、ほんの少し。
ほんの少しだけ蛇が頭が動かしたその瞬間に僕は
「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」
アッパー気味に打ち込んだため蛇の上体が浮き上がる。辺り一帯の木が風圧で吹っ飛び、とてつもない暴風が吹き荒れる。
なるべく上に衝撃が行くよう殴ったが……僕の周囲数十メートルが荒地になってしまった。まあしょうがない。
未だ蛇は雄叫びをあげている。てかやっぱ竜っぽいな。でも見たかんじ胴体の続き方とか蛇っぽいし。腕なんかも見受けられない。
「おいマスター。ようやくだな」
いつのまにか左隣にいたスサノオが笑みを浮かべながら僕に話しかける。その手には既に彼の宝具、
更に僕の右隣には
「さあ、行くぞ」
前を見据え、蛇を見上げる。本気で殴ったためダメージは入ったようだがその鱗には傷一つ付いていない。更に上体を起こし鎌首をもたげるその姿はかなり威圧的だ。
なんてことを考えていると。
荒地となった向こう側、森の中から更にもう一匹。蛇の頭が生えてくる。
「……ん?」
更に横からもう一匹、更に一匹。どんどん木を薙ぎ倒しながら頭が生えてくる。その数は計
…………嫌な予感。
「おいおい、嘘だろ?
隣のスサノオも冷や汗をかいている。……なるほど。確かにこいつは僕のテストじゃあなく、主従のテストだ。僕と、そしてサーヴァントであるスサノオにお誂え向きってか。
地面を盛り上げ、木々を薙ぎ倒し地中から胴体と脚、尾が現れる。
こいつ、体を地面に埋め————首から上だけを地上に出して捕食していたのか。
そう。これは、まさしく神話の怪物。八つの頭に八つの尾を持つ、蛇であり竜である化物。
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!』
八つの頭が同時に吼える。空気がビリビリと震え、体は硬直して動かない。これが——————。
伝説が、僕たちの前に立ちはだかった。
続くッ!