前線小話   作:文系グダグダ

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「指揮官! わたしたち、もっとお手伝いしたいです!」

 

 指揮官の司令室に直談判にしやってきたのは赤いマフラーが似合う少女。一〇〇式機関短銃であった。

 副官のグリズリーは既視感を覚え、またか……といった表情を浮かべていた。

 

「一〇〇式達には十二分な労働を行っているはずと認識している」

 

「いいえ! わたしたちはまだまだがんばれます! もっとみんなの為に頑張りたいんです!」

 

 目を見開きながら一〇〇式は机越しに指揮官に迫る。指揮官の眼の前に一〇〇式が純真な眼差しで指揮官を見据えた。

 

 ――ああ、尽忠を求めるわけか。

 

 これは落とし所を見つけるのは厄介だと、指揮官は感じるとともに一〇〇式の後ろに佇む2体の人形を見据える。どちらも銃器の出身は一〇〇式と同じであり、片方は頭にある白いリボンが、もう片方は左目に眼帯をつけているのが印象に残る。

 この3人は基地の人員増員のために、IOPから製造を発注し送られてきた人形達である。まだ、この基地に配属されてから日は浅いものの、働きとしては悪くないものだと指揮官は評価している。

 

「つまり、君たちも一〇〇式の意見と同じという訳か。64式、62式」

 

 一〇〇式とは異なる意匠のセーラー服を来た二人の人形はスケッチブックを取り出すと同意をの言葉を書き上げ、指揮官に見せた。

 

「……グリズリー」

 

「はいはい、ホントかどうかね?」

 

 今現在、64式と62式には一部部品がリコール対象になっており、不具合の修正中である。製造元であるIOPには問題のない声帯パーツを要望しているが、依然として遅滞している。

 問題のある声帯パーツも戦闘での不利益を被る可能性もあり、指揮官としても人形本人には申し訳ないと思うものの、声帯パーツを取り外した状態で生活している。

 

 指揮官の言葉に大方察したグリズリーはけだるげに応えると、64式と62式を交互に見つめる。

 声には出ないが、ネットワーク上で3人は会話をしているのだ。

 

「はい。他の二人も嘘偽りないよ、ホントだね。

 つけ加えるなら、3人とも今現在は自由時間、というか休暇の区分だね」

 

「なので、おしごとください!」

 

 3人から期待の眼差しを差し向けられた指揮官ではあるが、その表情は変わらない。

 

「人形達の勤務スケジュールは常に最高のパフォーマンスを発揮できるように調整されている。

 休息も君たちの能力を十全に発揮するために必要であることを理解して欲しい」

 

「指揮官、休息って何をするんですか?」

 

 『どうするんですか?』と書かれたスケッチブックを頭上に元気よく掲げる62式と、同様の内容が書かれたスケッチブックをしおらしく胸元に掲げて見せる64式を他所に一〇〇式から発せられた言葉に指揮官は内心で頭を抱えた。

 

 

 

 ――そうか、自由の定義から考えるべきか……

 

 

 

 太古の昔より飢餓と戦ってきた人類は未だに飢餓との戦いにケリを付けられない。それは、満ち足りることを知らないことを意味している。だからこそ強欲であり、満たすために自由を求める。それが、今日に至るまでヒトが生き残ってきた原動力なのだから。

 

 指揮官は街中や、基地の近くで見られるロボット人権団体の謳う「ヒトと人形の真なる平等を!」のフレーズを思い出した。あれもまた、一種の本能からくる欲望でもある。彼らは飢餓の危険から開放されても尚、満ち足りることを知らず、さらに地位や名誉を求めんが為に動いているのだから……

 彼らは知っている。かつて人の肌の色の違いによる不平等があった事実を、だからこそ第二の偉人になろうと躍起になっているのだ。

 指揮官にとっては心底どうでもよく、そして彼らを哀れに感じていた。

 

 ヒトには際限のない欲望がある。しかし、人形にはそれがない。あくまでも自由というのは、製造元である人間や企業から与えられる物でしかない。

 

 ――ヒトとして見るには人形はあまりにも歪なのだ。

 

 指揮官は人形達を、認めている。悩み、考え、自律し、傷つき、ヒトにとって死という概念を超越した存在であっても尚、生存本能に近い生命力を持って自ら行動し続ける彼女たちは紛れもなく、意思を持つ生命であると。

 

 しかし、目的のためだけに創られた、目的しかない意思。

 

 それは明らかにヒトではない。

 

 肌の色や、マイノリティと言った括りと同じように、ヒトと人形を同等に見てはいけないのだ。

 だからこそ指揮官は博愛主義的に人形を見ることはできない。差別的に扱うことなんてことももってのほかだ。

 指揮官は人形達を『ヒトとは異なるが同等の種族』としてみている。そして、鉄血人形やヒト、異型の化物と戦いを経て、『自律人形と共存できなければ、人類は絶滅する』と確信している。

 

 ――人類は自然淘汰か、存続かの分水嶺に立たされているのだ。

 

 

「……何か、やりたいことはあるか?」

 

 暫く考え込んていた指揮官の口から発せられた言葉は、沈黙の時間の割には至極あっさりとしたものであった。

 

 

 

   ■    ■    ■

 

 

 

「なんとか上手くいったようね」

 

「ああ、そのようだな」

 

 執務室で要望書の中身を見ながら言い放ったグリズリーの言葉に指揮官は内心で安堵する。

 結局のところ、一〇〇式と64式、62式には他の人形がどのように休暇を過ごすのか見て回り、なにか事線に触れるものがないかととにかくいろんな事をさせてみたのだ。

 

「でもその結果が家庭菜園だとはねぇ……」

 

 グリズリーが呟きながら、要望書の詳細を見ていた。

 みんなの役に立ちたいという、一〇〇式達の願いと休暇の有意義な使い方としての結論は作物の栽培であった。

 特に、植える作物としては自身の銃のルーツとなった極東の島国が原産のものを使っている。彼女たちはその国に関しては伝聞や資料で知り得ただけで実際には足を踏み入れたことはなく。少しでも故郷を感じたいという希望に従って作物が選定された。

 収穫量によっては配給の節約や、炊き出しに使えることも考えられ、多くの者たちの助けになるだろう。

 

「本人の希望だ。たとえ開発者が設定した味付けであっても、それが個性というものだ」

 

「おせっかい焼きなんだから……」

 

 呆れるグリズリーに対し、指揮官はドーナツの入った袋を渡した。

 

「だが、悪くないものだろう?」

 

「もう、そうやって反論の余地を残さない姿勢はずるいよね。嫌いじゃないけど」

 

 グリズリーは袋からオールドファッションを取り出し、かぶりつく。グリズリーは目を細めて、広角を上げて満足げにしながら。ドーナツを堪能していた。

 

「んー、最高。ここのお店のドーナツはホントにおいひい」

 

「チョコレートデラックスはWA2000から頼まれた物だ。残すように」

 

「りょーかい」

 

 コーヒーを飲みながらグリズリーが答える中、執務室のドアが開く。出てきたのはさきほど話をしていた当人である一〇〇式であった。

 一〇〇式のその両手には蓋をした小さな鍋が収まっている。

 

「指揮官さん、こんにちは。この間はお世話になりました。

 何から何までご用意して貰って、なんと言えばいいか」

 

「問題ない。

 また何かあれば要望書で意見を述べて欲しい。できる限り善処はしよう」

 

 指揮官は席を立ち、一〇〇式の元に向かうと、彼女は手に持っていた鍋を指揮官に差し出した。

 

「お礼と言っては何なのですが、資料で見つけた肉じゃがというものを作ってみたのです。

 62式ちゃんや64式自さんと一緒に作ったので是非、最初は指揮官に食べて欲しくて……」

 

「ああ、夕食にいただくとしよう」

 

 指揮官が鍋を受け取ると、一〇〇式はそそくさを司令室を出ようとする。

 

「あ、あの……よかったら感想下さい!」

 

 最後に赤面させながらそう言うと、一〇〇式は部屋から出た。

 

「……指揮官、なんだかんだあの娘達に甘くない?」

 

 グリズリーが訝しげに指揮官と肉じゃがのはいった小鍋を交互に見て呟いた。

 

「そうでもない。

 一〇〇式が来たので言いそびれていたが、冷蔵庫にグリズリーの言っていた店のバニラアイスをおいておいた」

 

「うっそでしょ限定品のアレ買えたの指揮官?!」

 

 思わず机を両手で叩いて驚愕の意を示したグリズリーは、その直後に食べ物で見事に釣られたような構図になったと気付き、一〇〇式同様に顔を真っ赤にする。

 

「ああ、もう! 嬉しいけど、これじゃあまんまと餌に釣られたみたいじゃない!?

 めちゃくちゃ嬉しいけど!!」

 

 あたふたとするグリズリーを見ながら、指揮官は『まあ、こういうのも悪くはない』と思うのであった。




これでKar98kと一〇〇式消化したしええか……
ammoさんの64式自すき、声帯実装おめでとうございます(関係ない)

ドルフロオンリーすげぇ楽しかったゾ~
冬コミが楽しみ(小並感)
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