前線小話   作:文系グダグダ

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「しきかーん!! ただいまぁ!」

 

 部隊の帰還の報告が届くのと同時に部屋に押し入って来たのは、SOPMODである。

 AR小隊が任務を終え、16Labに戻るまでの小休止に指揮官の基地へと帰投したのだ。

 

「ねえねえねえ指揮官、はいこれ! おみやげ持ってきたよ!」

 

 ごとり、と音をたてて眼の前に置かれたのは頭部パーツ、それも高等(ハイエンドモデル)な鉄血の人形である。目には生気はなく、苦悶と怒り入り混じった表情のまま機能を完全に停止させている。

 

「これ私で仕留めたんだー。すごいでしょ、えっへん」

 

 胸を張り誇らしげな表情を見せる彼女。少しぎょっとした様子を見せた指揮官に対して奥で後から追いついたのかM4A1がペコペコと申し訳なさそうに頭を下げていた。どうやら、他の2人(M16A1とAR-15)は先に寮舎に戻って休んでいるらしい。

 

「ああ。こいつは解析に回して何かしら情報を吸い出してみよう」

 

「わかった! それじゃあね!」

 

 SOPMODはすぐに踵を返し、寮舎に駆け戻っていった。

 

「指揮官、ごめんなさい。

 どうしてもお礼代わりにお土産として持っていきたいって言っていたもので……」

 

 SOPMODと入れ替わるようにM4A1が司令室に入ってくる。

 お礼というのは、AR小隊用の宿舎を用意したことのことだろう。

 

「構わない。

 済まないがグリズリー、このハイエンドモデルをグリフィンの技術班に渡して欲しい」

 

「わかったわ、指揮官。じゃ、行ってくるわね」

 

 今日の副官であるグリズリーが先程のSOPMODのようにその生首の髪を掴んで、司令室から立ち去っていった。

 

「指揮官、本当にお手数おかけします。

 ……あ、そうだ。今日の副官のグリズリーさんが外出しましたし、ここからは私が副官の代わりをやりますね」

 

 副官を欠いた指揮官に対して、M4A1はさも名案といった風に彼に提案し、すっと副官用のデスクに着いた。

 

「……無理をしなくても良いんだぞ?」

 

「全然、全然大丈夫です。はい」

 

 M4A1は上機嫌になりながら、戦闘報告書の作成作業に取り掛かった。

 はじめは心配そうに彼女を見ていた指揮官ではあるが、本人がそう望んでいるのなら特に言うことはないかと思い、そのまま事務作業を進めていた。

 

(しかし、ここまで懐かれるとは思わなかった)

 

 上機嫌に指揮官の隣にいるM4A1を見て、指揮官はそのきっかけになったであろう出来事を思い出した。

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

 AR小隊は無事に敵の司令部を占領しハイエンドモデルを撃破することに成功したのだが、グリフィンのヘリが回収に向かうには時間がかかる他、敵側の抵抗が激しく、司令部とは少し離れた地点でないと回収ができないと返答されてしまった。

 弾薬も底をつきかけ、単射でちまちまと牽制射撃を行う中、司令部施設跡で即席のバリケードを築いて、救援を待つ他無かった。

 

「弾が切れちゃったよ! AR-15!」

 

「まったく、私のを使いなさい!」

 

 弾薬が尽きてしまったSOPMODにAR-15は持っていた予備の弾倉を渡す。

 

「M4! このままだとマズイぞ!」

 

 M16A1は肉迫しようとする鉄血機械人形兵(Ripper)達に閃光手榴弾を投げ込み、的確に胴体に弾丸を撃ち込んでいく。

 

「わかっています! 姉さん!」

 

「クソっ、ここがアラモ砦になるって言うのか!? うわぁっ!?」

 

 焦りから警戒が疎かになっていたのかもしれない。付近に潜伏していたJaegerのライフル弾がM16A1の胸部に当たってしまい、仰向けに倒れてしまう。

 

「姉さん!」

 

 悲痛な声を上げるM4A1に対して、M16A1はすっかりボロボロになった防弾ベストを脱ぎ捨て、すぐに立ち上がった。

 

「大丈夫だ。防弾ベストのおかげで助かった……」

 

(何かこの状況を打開する策を考えないと……)

 

 思考リソースをフル回転させるM4A1。しかし、その余裕を相手は許すはずもなく……

 

「伏兵?! しまっ……」

 

 M4A1が気づいた時には鉄血機械人形兵(Vespid)の小隊は銃口をAR小隊に向けており、完全に十字砲火の姿勢になっていた。

 咄嗟の一言も言う暇も無く、死を予感したのかM4A1が見る光景はやけに鮮明でゆっくりと見え、思考がめまぐるしく駆け回っていた。

 

(みんな……ごめんなさい……)

 

 相手の銃口が見えるくらいには神経と思考が開け巡っていた彼女は、そのまま目を瞑ろうとするが……

 

 眼の前では発砲炎ではなく、爆発炎が広がった。

 

「え……?」

 

 どうやら、Ripperの小隊には複数発擲弾が撃ち込まれたようで、榴弾の他にも煙幕弾が入っていたのか、完全に射線が煙幕で塞がれていた。

 そして、M4A1が使っている遮蔽物を乗り越えて、何者かが陣地に入り込む。それは、ちょうど彼女の真隣に滑り込む用に入ってきた。

 

「M4!」

 

 ここで異常に気づいたM16A1が咄嗟に銃口を向けたその先には……

 

 

 

「よう」

 

 

 

 大型の背嚢を背負った指揮官がそこに居た。

 

「指揮官!? なんでこんなところに?」

 

 驚愕するM4A1と困惑するM16A1を横目に、質問に応える間もなく指揮官は背嚢を脱ぎ捨てると、その手に持っていたM249パラトルーパーの銃床(ストック)を伸ばしながら、敵部隊を抑えていたAR-15とSOPMODの元に向かう。

 

「「指揮官(さん)!?」」

 

 ちょうど二人の間に陣取り、二脚(バイポッド)を下ろしたM249を遮蔽物に乗せると制圧射撃を開始した。

 

 弾切れ寸前でちまちまと単発で辛うじて抑えていたAR人形2人と比べて、残弾数に余裕のある軽機関銃の射撃はまたたく間に前衛の鉄血機械人形兵を食い散らし始める。

 

「ペルシカに頼まれてきた。

 予備の弾が後ろにある」

 

 その言葉に二人は意図を察したが、まさか指揮官が来るとは思ってもおらず、困惑する。

 

「ここは私が抑える。今のうちに」

 

「ねえねえ指揮官、榴弾はあるの?」

 

「持ってきた」

 

 やったー!と小さく喜びなら下がるSOPMODに対して、釈然としない気持ちを抱えたままAR15も従う。

 後ろでは、M4A1とM16A1が背嚢から弾薬の入った箱を取り出して、補給していた。

 

「MREもある。助かった……」

 

「閃光手榴弾に新品のType3防弾ベストもあるぞ。渡りに船だな」

 

 ほっと一息ついた2人にAR-15とSOPMODの2人が合流する。

 

「ホントだ。榴弾もあるぅー!」

 

「これだけの荷物……あの人は一体?」

 

 補給の最中、SOPMODは40ミリグレネードに頬ずりし、AR15は先程の指揮官の発言を共有した。

 

「そう、ペルシカさんが……」

 

「今回は流石にヤバかったな。だが、助かった」

 

『補給は済んだか?』

 

 AR小隊のインカムに指揮官声が届く。一瞬、全員が肩を跳ね上げるものの、ペルシカからの依頼ということでコードを教えてもらったのだろうとすぐ推察がついた。

 

「はい、問題ないです」

 

 M4A1が代表として答える。

 

『今からこっちで仕掛ける。鉄血部隊に打撃を与えるので、君たちは任務通りに撤退ポイントまで走るといい。

 見える範囲でなら、私も援護する』

 

 LMGの銃声が鳴り止まない中、指揮官はそういった。

 

「指揮官はどうするんです?」

 

『気にするな、あとで離脱する。

 ……行くぞ』

 

 その後、指揮官の方向から榴弾の炸裂音が複数する。ちらりと視界に見えたのは連発可能な回転式チャンバーをもつグレネードランチャー、MGL-140を発射している姿が見えた。

 

「M4、敵が引き始めた

 今なら離脱できるぞ!」

 

「……じゃあみんな! 撤退ポイントまで移動よ」

 

 鉄血部隊の交代とともにARチームは駆け出した。

 

「あ! 2時方向に敵」

 

 SOPMODが敵を発見し各員、足を止めようとするが……

 

『そのまま走れ、援護する』

 

 M249の曳光弾が、先程見つけた部隊に襲いかかる。

 

「助かりました……っ!」

 

 指揮官の方向へ振り返ると、先程まで籠城していたポイントが鉄血部隊の物量に飲み込まれるところが見えてしまった。

 

『構わん、行け』

 

 思わず足を止めたM4A1に対して、指揮官は応える。

 

「何をやってるM4! 行くぞ!」

 

 M16A1にも言われ、M4A1は後ろ髪を引かれる思いを抱きながらも、AR小隊を預かる隊長の立場としてM16A1やAR-15、SOPMODを危険な目に合わせるわけにも行かず……

 

「指揮官……ありがとうございました」

 

 そのまま撤退ポイントまで駆けて行った……

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

 その後午後に差し掛かり、指揮官がソファで仮眠とっている中、M4A1は初めて戦場で指揮官と遭遇したことを思い出していた。

 

(あの後、飛行場のポイントまで走ったけど、そこに指揮官が居たんだよね……)

 

 初めての指揮官との共闘時では、結果的に指揮官を見捨てる形になり気分が悪くなった中、撤退ポイントの飛行場まで駆けたものの、そこには平然と軍用バギーをワイヤーでヘリにつなげている指揮官が居て、AR小隊共々呆気にとられたことは記憶に残っている。

 

 前線よりの指揮官自体はグリフィンにもいるとは言え、あくまでも正規軍の装備をするのが大前提、それでもって最前線で戦闘に参加すること自体がない。

 なのに指揮官は人形たちと変わらない装備で、なおかつ戦闘にも直接参加しており、それが異常性を際立たさせると共に、希少性を孕んでいた。

 

 ――自分達と肩を並べて戦ってくれる。

 

 作戦中は通信機越しでしか会えない人が常に居てくれるし、常に見てくれる。

 それは人形にとってとても嬉しいものであった。

 

「いいなぁ……」

 

 ふとM4A1が言葉を漏らすが、慌てて口を閉じた。

 確かに心強い味方であるがゆえに欲しい人材ではあるものの、彼は今はグリフィンに所属している社員だ。

 いくら発見したのがAR小隊であっても、ペルシカのツテでコールドスリープとその原因となったものを取り除いたとしても、その自由を侵すことは許されてはならない。

 

 ぐるぐると思考が回る中、タイマーの音が鳴った。指揮官の起床の時間である。

 

「とにかく、起こさなきゃ……」

 

 今この場にいるのはM4A1だけである。

 彼に気持ちよく起きてもらうためにとびきりの笑顔で起こしてあげなければと意気込む彼女であった。

 

 

 




AR小隊(とはいってもM4メイン)は初投稿です。ヒャア!我慢できねぇ!連投だぁ!

初見時「マジ? その見た目と嗜好で味方なのか……(困惑)」なSOPMOD推しなのにアイデアはM16姉ばっかで辛い(小並感)
 M4A1に尻尾ブンブン振られるくらい懐かれてから死んでメンタルへし折りたい(唐突な性癖)

M4以外のARメンバーもまた今度で
日記形式とは言え、短い文章でエモいの書ける人が羨ましいですね('A`)

ところで指揮官のアレコレ(なんでコールドスリープなのか、元ネタ、なんでそんな非現実的な装備なのか、ほかその他)って活動報告にでも書けばいいですかね?
流石にそこまで細かく考える人もいないか('A`)
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