前線小話   作:文系グダグダ

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 それは、ある昼下がりのことであった。

 指揮官はソファで昼寝し、副官も所用で不在の司令室に一人の客人がやってきた。

 その者は音を立てないようにそーっとドアを開け、隙間から覗き込む。そして、確認を終えたのか滑り込む用に入ってきた。

 緑の帽子をいつも以上に深くかぶった銀髪の少女は普段の様子から信じられないほど機敏に動いたらしく、肩で息をしながら自分用の枕をギュッと握りしめた……

 

「ぜぇぜぇ……うぅ、このタイミングを待ってたんだぁ」

 

 眠気と疲労に身を震わせながらG11は指揮官を見つめる。どうやら狙いは指揮官のようだった。

 ソファの背もたれを倒して、一種の簡易ベッド状になったところに、ぐっすりと横になっていた。

 

「やった。これで指揮官にひっつけば寝られる。他の誰にも叩き起こされなくなるよぉ」

 

 至福のひとときを思い浮かべながら、G11は破顔する。

 指揮官が近くにいれば、彼の特殊な出自故に誰にも邪魔はされないと彼女は知っていた。

 

 ふへへへ、と笑みを浮かべながら指揮官ににじり寄るG11ではあるが、唐突に扉が開かれ誰かが中に入ってくるのがわかった。

 ビクン、と身を震わせながらもG11はもうひとりの客人に視線を向けるとそこには白いフードをかぶった青髪の少女が、G11と同じく自分用の枕片手にいた。M249SAWである。

 

「えぇ、モフモフがないと眠れない? なら仕方ないですね。しきかーん、入りますよー……って、うええ」

 

 G11を見つけたM249は露骨に嫌そうな顔をしていた。

 

「ちっこいの、そこをどきな」

 

「え、やだよ。あたしが一番なんだからここはあたしの」

 

 G11も心底嫌そうな表情をして、毛布を指揮官に掛けた。もうここで寝る気だと言わんばかりだ。

 

「偉そうになにを~ちっこいの、指揮官は私みたいにモフモフしたのと寝た方が気持ちよく寝れるのさ」

 

 M249はそれを許すはずもなく、G11の片頬をつまみ引き剥がそうとする。

 

「デカいのが偉そうにー、あたしは45のような小さいのも良いし。

 それなら大きさならこっち(404小隊)には416やナインがいるから平気だもん」

 

 G11も負けじとM249を頬をつまんで引っ張り返す。

 

「このー、ならこっちにはスプリングフィールドの姐さんがいるぞ。

 私ビーチ仕様の寮舎で彼女が脱いだらすごかったのバッチリ見たんだから」

 

「ううう、416だって脱いだらナインより凄いんだぞ、指揮官だってイチコロだよ」

 

 それでも互いに譲らず、お互いの頬を引っ張り合ったり、ポカポカと枕を用いて殴り合ったりとし続ける。そして、やがて加熱した争いはやいのやいのと自分たちの仲間のサイズまでバラしていく自体に……。

 当然、そんな騒々しい自体に指揮官の意識も戻りつつあり、薄っすらと目を開け始めた。

 

「そもそもなんでおっきいのまでそんなキャラなのさ、お昼寝ダラダラマスコットはあたしだけでいいのにぃ」

 

「私もそう思ってた。ちっこいの、アンタとは決着つけようって思ってたんだよね」

 

 バチバチと視線で火花を散らさんとばかりに睨み合っていた2人だが、指揮官が完全に意識を覚醒させる。

 未だにポカポカと枕で戦っているG11とM249が視界に入るが、それよりも司令室の扉の前に居た二人の部下が目に入った。

 

 ――416とスプリングフィールドだ。

 

 二人は共に口角が引きつったような、張り付いた笑顔でG11とM249を見ていたものの、奥で起床した指揮官に気づくと、彼にバレないようにすぐに温和な表情に戻り。にこやかに手を振った。言葉を発しないのはG11とM249に気づかれない為だろうかと指揮官は考えた。

 

 眼下に広がる人形達の様子に指揮官は大まかには察したようで、執行人の如くG11とM249に非情な言葉を投げかけた。

 

「G11、M249。416とスプリングフィールドが君たちに話があるようだが」

 

 仲良く喧嘩していた二人は指揮官の言葉にビクンと硬直し、錆びついた可動部のようにゆっくりとぎこちない様子で416とスプリングフィールドの方向を振り向いた。

 

「指揮官、G11は私が責任を持って指導しますので」

 

「ごめんなさい、指揮官。少しばかり、M249とお話がありますので」

 

 指揮官は無言で涙目になるG11、M249を引きずって司令室を出ていく416とスプリングフィールドを見つめるのであった。

 

 

 

   ■   ■   ■

 

 

 

 さて、指揮官は眠りから目覚めたものの副官は所用が長引いているのか一向に戻ってくる様子もなく、本日は決済する書類も無いので、せっかくだから体を動かすがてら散歩でもするかと思い立った。

 業務内容の確認ついでにAR小隊が作戦から帰還中の様なので、迎えに行くのも良いかもしれない。

 そう思った指揮官は上着を羽織り、入れ違いにならないように行き先と目的を書いたメモを部屋に残して、基地内の飛行場へと歩き始めた。

 

 途中、部下の人形達と挨拶程度の小話を交えつつ飛行場へと向かうと、AR小隊の到着予定とされている飛行場にちょうどヘリコプターが着陸態勢をとっていた。

 

 しかし、様子がおかしい。

 ヘリコプターは確かに輸送ヘリで間違いないのだが、ローターが前後に2つ配置されている大型のヘリコプターなのだ。

 記録上では、運ぶのはAR小隊のみなので行きはそこまで大きくはないメインローターとテイルローターで構成された輸送ヘリを用いていたはずだ。上司兼クライアントのペルシカやヘリアントスからの連絡がないので、それがさらに指揮官の中で異常性を掻き立てていた……

 

 ――何か厄介事が起こったのか

 

 こういう時の感はよく当たると内心で舌を打ちつつも、完全に着陸し安全を確認した後に、まずは快く作戦から帰還したAR小隊を迎え入れようと思い。開かれようとする後部ドアへと移動した。

 

「しきかぁーん! ただいまぁ!!」

 

 開ききる前の後部ドアからはSOPMODが指揮官めがけて飛び出してくる。

 シューティンググラスで表情は誤魔化してるものの、目を見開きギョッとする指揮官ではあるが、正面から受け止めて抱きしめた。彼女もそれに応える形で指揮官の首に両腕を回し、抱っこの体勢になる。しかし、SOPMODの飛び出した勢いが強すぎるのでそのままぐるりと指揮官は一回転ほど回って勢いを殺す羽目になった。

 

「今日は迎えに来てくれたの?」

 

「仕事がひとまず片付いたのでな」

 

「えへへ、嬉しいなぁ」

 

 宙に浮いた両足をパタパタとさせて、上機嫌に鼻歌を歌いながら指揮官の首筋に頭を擦り付ける。指揮官もされるがままの状態になり、彼女が満足するまでその体勢を維持していた。

 指揮官の視界の先には慌てて指揮官に駆け寄るM4A1の姿がみえる。自身の得物だけではなくSOPMODの物も持ってきているようだ。

 

「すみません、指揮官さん。わざわざお迎えまでして頂いて……っ!」

 

 SOPMODを下ろして、『えー、もっとして欲しいなぁ』という彼女の抗議を受け流しつつ、M4A1を見据えるが、彼女は取り乱して、懐からハンカチを取り出して指揮官の頬を拭き始める。

 

「ああ!? 指揮官の服が血まみれに! ごめんなさい!」

 

 左手で先程までSOPMODが擦り付けていた首筋を撫でるとぬめりとした感触が、なるほどと指揮官は納得した。

 腹部を見ると見事に真っ黒なシミができており、その主犯たるSOPMODは鉄血人形の血にまみれた格好のまま、首をかしげて指揮官とM4A1を見つめている。

 

「構わない、大丈夫だ」

 

「そんな、クリーニング代は弁償しますから」

 

「そんなことに使わなくてもいい。何か自分の為に使いなさい」

 

「なら、自分の為に弁償させてください」

 

「それは自分の為ではない」

 

 ハンカチを下げて、M4A1を落ち着ける。

 生真面目な彼女と真面目な指揮官の弁償する・しない論争はお互いに譲らないこともあって、平行線をたどっていた。瞬く間にSOPMODは蚊帳の外になり、手近な小石を一つ蹴り飛ばした。

 

「おーいSOPMOD。指揮官とのスキンシップもいいが、ちょっと運ぶのを手伝ってくれ」

 

「うん、わかったよ」

 

 SOPMODから入れ替わるようにヘリから降りてきたM16A1は指揮官とM4A1の間に割って入り……

 

「M4もそれくらいにしておいてやれ、甲斐性を出している指揮官の面子を潰さなくてもいいだろう」

 

「M16姉さん……」

 

 渋々ながらも納得するM4A1を他所に、こっそり指揮官にM16M1は耳打ちする。

 

「指揮官も後で補助金としてM4A1に支給でいいだろう、な?」

 

「むう、すまない」

 

「まあ、いいか。

 それは置いといて指揮官、問題だ。じゃーん」

 

 M16A1のその手にはそこそこ大きな紙袋を彼女は持っている。どうやら、これの中身を当ててほしいようだ。

 ヘリからは無骨な大型の軍用リュックサックを背負ったSOPMODとAR-15が樽のような物を二人がかりで持ち出している。

 

「これはなんだと思う?

 作戦途中に遺棄された醸造所があってな。もしやと思って帰りに寄ってみたら……

 これがなんと大当たり」

 

 上機嫌な彼女は紙袋から瓶を取り出して指揮官に見せる。おそらくは倉庫に安置されていたであろうワインが瓶の中を踊っていた。

 

「ワインか」

 

「どうだ、指揮官? 今晩こいつで飲んでみないか? ジャックダニエルもいいが、こういうのも悪くない。

 それに新陸を深めていくのも良いだろ? なんなら腹を割って話すのも悪くない」

 

「……すまないが、基地に滞在している間は勤務中なので遠慮したい。

 飲み仲間が欲しいなら、私の部下に声を掛けるが……?」

 

「姉さん、やっぱり駄目ですよ。指揮官はヒトなんですから、ね?」

 

 指揮官の乗り気でない反応とM4A1の静止にM16A1は内心で舌を打つ。

 

(どうやら指揮官が相当なストイックだというのは心理テスト通りだな……)

 

 正攻法ではダメだと感じた彼女の次の手は揉め手で行くことにする。

 

「ところで、指揮官はグリフィンの他にも16Labとも契約をしていると聞いたな。

 ラボ所属の人形の支援及び、メンタルケアだったか」

 

「M16姉さん!?」

 

 M16A1から発せられた言葉に指揮官は彼女が屁理屈でも良いから、なんとしても自分を連れ出したい事が理解できた。M4A1もこれには驚きの声を上げる。

 大まかな流れは予測できたが、そのまま聞き流すことにする。

 

「ああ、ペルシカ氏の説明と契約内容はそれで相違は無い」

 

(わたくし)は指揮官様と新陸を深めたい所存ですのに、そんなぞんざいな態度を指揮官様に取られましては私のガラスのメンタルに損傷を負ってしまいますわ……。

 指揮官とは今までとても良好な関係を築いてこれていると思いましたが、これでは16Labとの契約も不履行にならざるを得ませんね……」

 

 紙袋を片手で抱えたまま、よよよとその場にへたりこんでのの字を書く。

 予想通りではあるが、流石に指揮官も契約不履行をチラつかせられては強くは拒否は難しい。ただでさえ本調子ではない中、この時代のアルコールには手を出したくはなかった。

 

「……知っての通り、私の身体は本調子ではない。

 この時代のアルコールが私に与える影響も予測ができない以上、最後まで付き合えることは確約できない

 それで構わないのなら……」

 

「よっしゃぁあ! 男に二言はないぜ指揮官。今夜が楽しみだなぁ!」

 

 苦し紛れの妥協案とも、指揮官が折れたとも取れるが兎も角、指揮官から言質を取ったことによってM16A1が立ち上がり、グッと空いた拳を握りしめてガッツポーズをとった。

 

「こうしちゃいれないな! 指揮官いいか? 今晩に私達の部屋で始めるからな! 遅れるなよ!」

 

 満面の笑みを浮かべて指揮官に詰め寄り、そう言って胸板を人差し指で突付いた後、M16A1はヘリに戻った。

 おそらくはまだ、戦利品があるのだろう。隣のM4A1は片手で目を覆い空を見上げて困り果てている。

 

 ――ああ、これは確かに厄介事だ。

 

 内心で彼女に同意しつつ、指揮官は脳をフル回転させて思案にふけるのであった……

 

 




僕もね、G11とM249の組み合わせが好きなんですよ(畜生)
可愛い娘多くて書くの辛い、お仕事するからダミーリンクで書いて欲しい

最推しはグリズリーとWA2000だけど全然かけねぇ!

戦闘シーンを想像するけど全然(味方の)人形が出てこなくて笑っちゃうんすよね
よその二次創作の指揮官ばっかり生えて来ちゃうやばいやばい
特に対比するように作った某日記とか
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