指揮官がこの基地に着いてから幾分かの時間が経った。
デスクワークや人形達の指揮を執ることが基本的な業務なのだが、AR小隊や404小隊・上司の要請に応えるために時折現地に出向く日々であった。
これらの要請に対しては、現場の状況、鉄血部隊に対する知識、そして今この世界の現状についての知識を深められるのは指揮官としても有意義ではあるものの、やはり疲れる。
ちなみに疲れると言えば、先日M16A1に飲みに誘われた事も疲れた。
AR小隊の部屋に行く途中でトンプソンとSVDとPKに出会ってしまった為、彼女達同伴で飲むこととなった。
指揮官としてはM16A1とのサシで飲む形と考えていたので完全に目論見が破綻した形となった。
M16A1はともかく、彼女の飲み仲間であるトンプソンと仲間ではないものの酒と聞いて興味を持ったSVDとPKはやはりというか、ほぼほぼ予想通りではあるがアルコールの類にめっぽう強いものであった。
ストッパー役として期待していた他のAR小隊メンバーの3人も戦力比4:3では分が悪く、雰囲気に飲まれてアルコールを飲まされてしまった。
まずはAR15が少量のアルコール量で悪酔いし、敢え無く沈む。次にM16A1を最後まで制していたM4A1はアルコールによる眠気に耐えきれず夢の中へと沈んだ。SOPMODはアルコールを一口飲み、その味に慣れず『美味しくない!』と、一蹴したものの、SVDとPKからもたらされたツマミである乾燥肉とハム肉の原木で餌付けされることによってあっさりと買収され、向こう側へと寝返ってしまった。
結局、指揮官は用を足すと言って一時離脱した際に、万が一の為にとPXと経理課のグリフィン職員に渡りをつけて調達したアルコール分解剤を飲んで、醜態を晒すことは回避でき、指揮官としては及第点といった内容であった。
閑話休題
指揮官が担当する地区では鉄血部隊に打撃を入れて、ある程度の地区の安定化に成功していた。
その報を聞き、各企業や商売人達が当地区に人員や物資を送り始め、それに比例するように指揮官の事務仕事の増加へと拍車をかけた。
そのほとんどが、管理元であるグリフィンと深い関係を結ぶか、管轄下に入らざるを得ず、グリフィンの勢力として権力が強まる可能性が出てきた。
基本的には彼らの管理業務は文民型の社員に割り振られるが、軍人側もある程度の情報は把握しておかねばならないし、治安維持の対応として、彼らからの嘆願も捌かねばならなかった。
「指揮官、そろそろ休憩にしませんか? 紅茶をお淹れしますよ」
当地区への物資の搬入の際に起こった商売人たちのイザコザに対して対応したことの報告書を書いている中、腕も目も疲れてきたところで休憩を提案してくれたのは副官用のデスクに座っていたスオミからであった。絶好の機会ではあるが、偶然ではないだろうと指揮官は感じた。
「デスクワークを手伝ってもらってるのに、そんなことまでさせてすまない」
スオミは立ち上がると、部屋の隅っこ、壁際の机にあるティーセットまで歩いていき、手慣れた所作で用意をしていく。
「気にしないでください、好きでやっていることですから。
今日は美味しいイチゴジャムが手に入りました。指揮官、ご提案なのですがよろしければお砂糖の代わりに入れてもいいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
用意を進めながら、気を良くしたスオミが機嫌よく鼻歌で奏で始めた。
そのリズムに指揮官は聞き覚えがあった。昔、平和だった時代、劇場やラジオで耳にしたことがある。
「……シベリウスだったか?」
うっすらも靄がかった記憶からなんとか掘り出したものの、確信は無い。
「はい、正解です、指揮官。人間もなかなか良い曲を作るものですね」
「その手のものはドイツやイタリアの物が目立つからな……」
指揮官は音楽に特段興味は持っていないと思っていたが、どうもそうではなかったのだと最近気付く。
昔はともかくとしてロマン派から近代音楽のような物は今では演奏する者も、以前に道具すらろくになく、久しく聞いていなかった数々の音楽がやけに恋しく感じる。
音楽の再生機器もまた、今では娯楽や道楽の類であり、昔では安物扱いなものでも高級品扱いされていた。
「何か音楽を流す機材でも導入しようか?」
「いいえ、鉄血の駆逐と治安の安定化が進めば、軍需品を扱う商人や軍人、難民以外の人間も来るようになります。そうすれば安価で手に入るかもしれません。だから、それまでは私のハミングで我慢して下さいね」
そう言って鼻歌を再開するスオミ。
指揮官としては……まあ、こういうのもいいかもしれないと感じていた。何故なら、耳だけでなく目でも楽しめるのだから。
ちょっとした優雅な時間を過ごし、報告書を書いた後は手紙を読む時間である。指揮官に届く個人的な手紙は
指揮官としても、一人間として事務的な手紙ばかりでは寂しさを覚える時もあるのでこういった手紙はありがたいと感じた。
しかし、届けてくれるグリフィンの職員や人形が彼女の手紙を過剰と思える程丁寧に扱い、大幅な遅配や紛失をしたら社会的・身体問わずに抹殺されると言わんばかりの切羽詰まった表情なのが気になるところではあるが……
逃げるように去っていく職員を見届けたのちに、時間もあるのでのんびりと読もうと手紙の封を切る。
今回の手紙はUMP45が書いていたようだ。内容はとりとめのないもので、妹のUMP9や仲間のHK416、G11とのやり取りから仕事先で見た景色の感想、仕事の愚痴に鉄血人形の排除話まで様々な話が盛り込まれていた。
しかしグリフィン内では仕事以外の話はあまりしない……そもそも存在しないとされる部隊でコンタクトがあれば何らかの厄介事が必ず起こると評判で、指揮官内では半ば都市伝説の類で恐れられている404小隊の手紙がこんなものと考えれば、指揮官としては感慨深いものがこみ上げきた。
指揮官としても親愛の情を中途半端に享受している自覚はあり、変わらずに慕ってくれる彼女達は普通に考えれば得難い存在だ。
手紙の最後には近いうちに仕事も片がつき、休息と補給も兼ねてこちらに帰ってくると簡潔に書いてあり、また会える事をを心待ちにしている旨が数行に渡って書かれていた。
余程仕事が困難なものだったのか、それとも文章を考える内に興が乗ってきたのか、真相はわからないものの熱が入ったように後半に差し掛かるにつれて詩的になる文章に対して、指揮官としてはそういった事には不勉強なので、言葉の一つ一つの意味合いを正確に理解するには少し難しいが、それでもUMP45の伝えたい気持ちは十分に伝わってきた。
読み終わった後に、手紙の一番下の部分が少しだけ折られていることに気付く。裏からインクの跡が見えるので、開けば何か書いているはずだ。
この位置なら書き損じではないと確信できる、そもそも指揮官が知っている限りのUMP45は書き損じをそのまま送るような性格では無いので不思議に思いつつ折られている部分を開いて中身を確かめる。
……そこには、先程までとは違い印刷したかのような丁寧で正確な字体で、指揮官とAR小隊とのやり取りについて書かれていた。当然、つい先日のAR小隊の帰還時に迎えに行ったこと、M16A1に飲みに誘われた事やその詳細についてもまるで当事者のように事細かに言及されていた
――どうやら404小隊には指揮官とAR小隊とのやり取りについてはお見通しらしい。
手紙を読み終わると、次々と残りの仕事を片付けつつ、頭の片隅では404小隊の帰還に合わせて出迎えを行う為の時間調整を考えていたのであった。
PKとSVDに指輪を渡したので初投稿です
すまんな(飲み会をエクストリームカットした件について)
こっちの方が書きたかった(小並感)、まあ機会があれば詳細を
こんなやり取りしたいなぁって書きながらもぶちこまれる細かいネタが小生だーいすき(スオミちゃんにシベリウス作曲を鼻歌で歌わせる畜生の図)
45姉をポンコツヤンデレお姉ちゃん仕様にしたかったけどダメだやっぱ
ポンコツ路線は同業者いるしまあ、いいか!(開き直り)
小生もドルフロ二次の同業者達と交流してぇなぁ……(更新速度がナメクジすぎるから無理だろうけど)
ついでにいうと感想や褒めてくれる(評価的な)とモチベが伸びる(正直すぎる)