シロツメクサを捧げる   作:Kamadouma

24 / 38
私たちはいいのよ、勇者部だから

 

 

 

〈悪いね二人とも。ちょっとの間空けるけど、その間お願いな!〉

 

「ええ、お任せを。いいお話、期待してます」

 

「怪しまれないように分散ってねぇ。まあ、上手くやってきなさいよ」

 

 

 

銀は極秘の出張に行くというらしい。例の“どうにかする計画”の一環ということで、場所も教えられてない。

 

 

私と芽吹は丸亀城で待機、バーテックスが現れたら即時対応する。私たちまで銀に同行したら目を付けられる、ってわけだ。

 

 

 

「…では、銀様」

 

〈うん。先生、二人をお願いね〉

 

「承知しました」

 

 

 

先生にあいさつしてから、銀は丸亀城を後にした。____何だかんだ言っても、銀は先生のことを信用してるらしい。つまりは先生も“こっち側”ってことか。

 

 

 

「…先生も、銀が何をしようとしてるかご存知なんですか」

 

「…はい。私は銀様付きの神官。意思決定は銀様にあります」

 

「…何でもいいけど。銀の障害になるんだったら、私は容赦しないわよ。例え先生でも」

 

 

 

相変わらず仮面の下の表情は読めない。本当に銀に付き従う人なのか、大赦の密告者なのか、全然わからない。

 

 

 

「…さて、勇者部の依頼やっていきましょうか、夏凜」

 

「あんたがそのセリフを言うとは思ってなかったわ」

 

「別に嫌じゃないし」

 

「あっそ。お利口さんね」

 

 

 

ま、訓練も根詰めすぎても良くないし、やってやりますか。

 

 

芽吹が割と乗り気だってのは意外だけど。前なら時間の無駄って言って取り合ってくれなかっただろうし。

 

 

 

「大掛かりなのは銀が帰ってからにして、二人でどうにかなる依頼を当たっていきましょう」

 

「そうね。あいつの負担を減らしてやんないと」

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

〈…まさかあたしがこれをやるなんてね〉

 

 

〈須美、銀様の一世一代の大芝居、刮目せよ!〉

 

 

〈国防仮面三号、推参!〉

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

 

「夏凜ちゃん夏凜ちゃん」

 

「ん?どうした?」

 

「この付近にも現れたらしいよ」

 

 

 

銀は一週間は戻ってこない。ここまで空けるのは初めてだけど、私たちだけでも勇者部の仕事をやっていけてる。

 

 

んで、図書室の蔵書点検を手伝ってたら、委員の人がホットなスクープを持ってきた。

 

 

 

「現れたって?」

 

「国防仮面」

 

「国防、仮面?」

 

「うん、巷で話題の」

 

 

 

何よその胡散臭い名前のヒーローは。

 

 

 

「何なのよその不審者は」

 

「突然現れて困ってる人を助ける謎のマスクマンだって。『次は君が誰かを助ける国防仮面になるんだ!』って言ってさっそうと立ち去るらしいよ」

 

「わけわかんないわね」

 

 

 

全くもってわけがわからない。愉快犯なのか、都市伝説で賑わってるのか。どちらにしても、あまり関わりたくない。

 

 

 

「ちょっと見に行ってみない?そう遠くには行ってないはずだし」

 

「遠慮しとく。早く終わらせて芽吹とトレーニング行く予定だし」

 

「えー。芽吹ちゃんは『確認しておくべきね』って言って先に行ったけど」

 

「あいつ…」

 

 

 

どんどん銀に毒されてんじゃないの?クールを装っておかしなことに首突っ込んで遊んで。お高くまとまったイメージはイメージだけなのかもしれない。

 

 

ちょっと一言言ってやりたいから、私も行こう。

 

 

 

「あいつに言ってやんないと。今どこにいるの?」

 

「うん、そうでなきゃ。行こ行こ」

 

 

 

 

 

 

やってきたのは学校のすぐそばの個人経営の小さな書店。そこに似つかわしくない程の人だかりが見える。

 

 

 

「ここっぽいね。ほら、芽吹ちゃんもいるし」

 

「こんなに野次馬がいるのは聞いてないわね。中の様子が見えないし」

 

 

 

仕方ないから耳だけ傾ける。ガヤガヤしてるけど、一応聞き取れそうだ。

 

 

 

「芽吹…あんた何やってんのよ」

 

「来たのね夏凜。国防仮面の正体を暴きに来たのよ」

 

「何でそんなことに首突っ込むんだか。どうでもいいじゃない」

 

「私たちも無関係じゃない気がするのよ。そうじゃなくても単純に興味があるし。まるで私たち勇者部みたいじゃない」

 

 

 

無関係じゃない?どういうこと?____あ。

 

 

 

 

 

 

もしかしたら銀が言ってた計画の一環なのかもしれない。私たちも知らされてないけど、知っておきたいと思ったし。

 

 

 

「…ん?何か聞こえない?」

 

「声、なのかしら、これ」

 

 

 

 

 

 

〈お待たせしましたー!古い蛍光灯はこっちで処分しておきますんでー!〉

 

「ありがとね、えーと」

 

〈国防仮面です!今度はおばあちゃんが困ってる人を助けてあげてください!〉

 

 

 

____聞きなれた私たちだからこの声が機械音声だってわかるけど、普通に聞いても肉声と聞き間違えるくらいには修正されてる。

 

 

そして、国防仮面の正体が誰かも確信した。

 

 

 

「芽吹」

 

「ええ。夏凜」

 

 

 

「「確保よ!!」」

 

 

 

私たちの意見は一致した。そして、これからどうするかも。

 

 

何のつもりか知らないけど、こんなところで遊んでるアホから事情聴取しないといけない。

 

 

 

〈ではっこれにてっ!〉

 

「そうはいくかぁぁぁ!」

 

〈うおっ!?やばっ!退却ぅー!〉

 

 

 

気付かれた!

 

 

足早に詰め寄った私から逃げるように身を翻して、軍服の不審者は人だかりの隙間を縫っていった。その動きはもはや人間じゃない。

 

 

____アレ、一目じゃあのポンコツサイボーグだってわからない。マスクと義眼が一体化してるし、グローブで義手は見えないし、スカーフが見事にチョーカーを隠してる。

 

 

 

「そこですね!抜けてこられるのは!」

 

〈何っ!?何のぉ!〉

 

 

 

芽吹は行動を先読みして人だかりを抜けた不審者に立ちはだかる。

 

 

さすがにビックリしたのか一瞬足を止めたけど、次の一瞬で芽吹を突破した。

 

 

 

〈へへ、眼福眼福ぅ〉

 

「…え?」

 

 

 

仁王立ちした芽吹の股下をスライディングで抜けた。

 

 

____私たちは制服のまま国防仮面を追いかけてきた。つまり。

 

 

 

〈やっぱり下から見ると全然違うね!〉

 

「…!!」

 

〈正義のヒーローは正体がバレちゃいけないんだ!バイバイ子猫ちゃん!〉

 

「あーあ、取り逃した。あのセクハラヒーロー、相変わらずすばしっこいわね」

 

「………………」

 

 

 

芽吹は顔を真っ赤にしてプルプル震えてる。脱衣場で見られるのとスカートの下から覗かれるのじゃワケが違うか。

 

 

____まさか、これがどうにかする秘策の一つなの?ワケわかんないわね。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

〈…やっぱりちょっと迂闊だったかな。勇者二人が襲いかかってくるのは予想外〉

 

 

 

〈けど、徐々に噂になってるね、国防仮面。このまま続けていけば……〉

 

 

 

〈……次は丸亀から離れないと。そしたら……風さんたちのところでも行ってくるか。何してるかも気になるし〉

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「…うわ、国防仮面、トレンドになってるし…」

 

「神出鬼没の変人、よね。これじゃ」

 

 

 

仕事を終えて、図書室で委員の人たちと国防仮面の情報を集めていた。お役目に関係ない話なら放っておいたのに。

 

 

正体がアレだって気付いちゃったから、調べないわけにはいかない。

 

 

 

「でも夏凜ちゃんも芽吹ちゃんも大胆だよね。いきなり捕まえにいくなんて」

 

「…一応大赦の人間だからね。治安を乱すようなやつからは事情を聞かないと」

 

「いいことしてたけどねー」

 

「その意図が掴めないから怖いのよ。理由もなく、代価もなく、施しをする人間って、不気味じゃない?」

 

「芽吹ちゃん、ブーメラン刺さってる」

 

「私たちはいいのよ、勇者部だから。銀のスピリットを引き継いでるから」

 

「なにそれ」

 

 

 

クスクス笑われるけど、何かもう気にならない。勇者部であることがアイデンティティになりつつあるのかしら。自分でもどうかと思うけど。

 

 

 

「案外同じような考えの人だったりして、二人と銀ちゃんと同じ」

 

「だったらいいんだけどね」

 

「……あ、また国防仮面が出たって。大束町の方」

 

「随分遠くない?この短時間で…」

 

 

 

____その神出鬼没さを実現できるのは、あの人しかいない。確証が持てた。

 

 

 

「タワーの外壁に登って降りられなくなったネコを救出したってー。相変わらずの超人っぷりー」

 

「いや、辛うじて人間技だっていうのがますます怪しいわよ」

 

「度胸と身体能力だけで全部やってるからね、どんな人なんだろ?」

 

「さあ?男か女かも判別つかなかったし」

 

 

 

芽吹、なかなか言ってやるわね。スカートの中覗かれた仕返しかしら。

 

 

上げられた動画には、磁石みたいに吸い付いて壁を登ってネコの所まで行く軍服の変人が収められていた。窓枠や排気口を上手く使って登ってるように見えるけど、私にはどうも本当に“吸い付いてる”ようにしか見えない。

 

 

 

「次あったら絶対確保しないと」

 

「燃えてるねー芽吹ちゃん。ファイトファイト」

 

「出し抜かれたし、次は一杯食わせてやる」

 

 

 

そんで洗いざらい吐いてもらうわ。私たちにまで秘密にするのは情報漏洩対策なんだろうけど、手をこまねいてる私たちでもないわよ。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

〈はい、お待たせ。ちょっと怯えてるけどすぐに元通りになるよ〉

 

「ありがとう!…えっと」

 

〈憂国の戦士、国防仮面だ!救いを求める声があるところに国防仮面あり!お嬢ちゃんも困ってる人がいたらなるべく助けてあげるんだぞ!〉

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

「あれが噂の国防仮面…あーあ、囚われの私も救ってくれないかなぁ~」

 

「たぶん頑張れとしか言ってくれないわよ、雀」

 

「風隊長はまたそんなこと言うー!」

 

「だって、あんた困ってるように見えないんだもん」

 

「死ぬ寸前まで困ってますよぉー!」

 

 

 

「あんな危ないところを命綱もなしで、無鉄砲な所は三好さんみたいですわね」

 

「弥勒さん、夏凜さんのこと知ってるんですか?」

 

「ええ、三好さんと楠さんと勇者の座をかけて競ってたのですのよ」

 

「…何か二人が選ばれた理由が納得できたかも」

 

「何を納得してるのですか樹さん!」

 

 

 

「……三ノ輪?」

 

「え?どうしたのしずくちゃん」

 

「あの声は…三ノ輪じゃないの…?」

 

「銀ちゃん?……あ、確かに!上手くチョーカーが隠れてたけど、銀ちゃんだよアレ!国防仮面!」

 

「…でも、何で?」

 

「聞いてくるねー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈さて、風さんたちの様子も見れたし、そろそろ帰るかなー。…はぁ、これ着替えるのもめんどくさ…〉

 

「銀ちゃーん!」

 

〈どはぁっ!ゆ、友奈!?〉

 

「お久しぶりー!」

 

〈うおっ…不意をつかれた…〉

 

 

 

「国防仮面カッコいいねー銀ちゃん!」

 

〈その感想は須美のやつに言ってやってくれよ。あたしはなりきるだけで精一杯だよ〉

 

「うんうん!上手くやってると思うよ!」

 

〈ありがと、友奈。でも友奈にバレちゃった。正体は秘密でお願い!〉

 

「わかったよー、でも何で変装してるの?」

 

〈国防仮面流行ればいいなーって、須美さんの野望のせい〉

 

「親友のお願いじゃ断れないよね、やっぱり」

 

 

 

「あ、銀ちゃん」

 

〈ん?どうしたの?〉

 

「これ、銀ちゃんと夏凜ちゃんと芽吹ちゃんに!」

 

〈…押し花のお守り?クローバー?〉

 

「うん、シロツメクサ!この前間に合わなかったから、今渡しておくね!」

 

 

 

〈おお、ありがとう友奈。また押し花の腕上げたんじゃない?〉

 

「銀ちゃんたちのためだからね。かなり気合いいれて作ったよ!」

 

〈へへ、これはいいお土産ができた。…でも何でクローバー?しかも四つ葉じゃないやつ〉

 

「花言葉は約束!幸福!銀ちゃんたちにピッタリだなぁと思って」

 

〈そっかぁ。それなら三つ葉の方が三人組って意味もあるし似合ってるよね〉

 

「えへへ。銀ちゃんが喜んでくれてなによりだよ」

 

 

 

〈じゃあ、友奈とも約束しないとね〉

 

「へ?」

 

〈勇者三ノ輪銀は必ず結城友奈のところに戻ってきます。今は離ればなれだけど、役目を果たしたら、必ず戻ってくるよ〉

 

「銀ちゃん…」

 

〈…そんな顔すんなって。あたしは不死身だし、仮に死んだとしてもあの二人が生き返らせてくれるよ、たぶん〉

 

「………………」

 

〈そんでさ、また勇者部六人でパーっとやろうよ〉

 

「…うん」

 

 

 

〈…じゃあ、最後にぎゅーっとして友奈パワーをわけてもらおっかな〉

 

「…えへへ、わたしも銀ちゃんパワーをいただいちゃおっかな!」

 

 

 

〈「ぎゅーっ!」〉

 

 

 

〈よっしゃあ!これで銀様は無敵だあ!国防仮面、任務に戻ります!〉

 

「頑張れ国防仮面!人々のために!」

 

〈ではさらば!〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……銀ちゃん、ちゃんとわたしのことも見てくれてたんだ…」

 

 

「シロツメクサのもう一つの花言葉…ごめんね。疑ったりして…」

 

 

「……大好きだよ、銀ちゃん」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。