シロツメクサを捧げる   作:Kamadouma

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あなたを、助けさせてください

 

 

 

「……あ、樹海化…」

 

「大丈夫よ友奈。銀たちならやってくれるわ」

 

「そうですよ。…でもお姉ちゃん、わたし達以外は樹海に引き込まれないのは寂しいね…」

 

「終わったら元の場所に戻してくれるでしょ神樹様も。あたし達は待ってるしかないわよ」

 

「……銀ちゃん…」

 

 

 

「……あれ…?シロツメツクサのお守りが…欠けてる…?」

 

「……気にしすぎよ友奈。銀なら大丈夫。それに夏凜も芽吹もついてる」

 

「……ごめんなさいっ、風先輩っ!樹ちゃんっ!」

 

「ちょっ!友奈さんっ!どこ行く気ですかっ!」

 

「勇者システムあるってったって、あの子たちの手伝いなんてできるわけないでしょっ!!」

 

 

 

 

 

 

「それでもっ!銀ちゃんがっ…!」

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

〈…こりゃ、大仕事だね〉

 

「同時七体…」

 

「何よ。別に意識する必要はないでしょ。私たちなら勝てる」

 

 

 

別に夏凜が言ったことを否定するわけじゃないけど、銀が微妙な笑いをこぼしてるのを聞いて不安になってくる。

 

 

私たちが任に着いてから倒したバーテックスは五。種類は12体いるから、残り全部が今ここにいることになる。

 

 

 

〈んじゃ、戦いの前にお土産のプレゼント〉

 

「お土産?」

 

〈これ、友奈から二人に〉

 

「お守り、ですか?」

 

〈友奈お手製の押し花。みんなでいろいろやったの思い出してねって〉

 

 

 

クローバーの押し花。シンプルながらも構図やバランスを工夫した、才能の垣間見える逸品だ。

 

 

クローバー____シロツメツクサの花言葉ってなんだったかしら。どこかで調べたことがある気がする。

 

 

 

「四つ葉じゃないってところが、いかにも私たちらしいわね。雑草魂っていうか」

 

〈それそれ。友奈はそんなつもりで選んだんじゃないと思うけど、そう思っちゃうよね〉

 

「…幸福、約束……」

 

〈お、花言葉知ってるの芽吹?友奈はそっちで選んだと思うんだ〉

 

「そう、ですか…」

 

 

 

もう二つほど意味があるのを思い出したけど、そうしたら怖くなってきた。

 

 

 

 

 

 

“私を見て”、“復讐”____銀や友奈の心情に妙に当てはまってしまうから____

 

 

 

 

 

 

〈さて、どうしようか〉

 

「…これだけ数の差があるなら、神樹様への特攻も考えられます。特にピスケスやジェミニの潜航や突出に警戒すべきかと」

 

〈勉強してるね、芽吹。よし、じゃあそいつらはあたしが受け持った〉

 

「残り五体を私たちで抑えるわけね。了解よ」

 

 

 

戦略はすぐに決まった。銀が別動隊を強襲して、私たちは正面の敵の足止めをする。バーテックスの生態をよく知る銀が乗ってきたってことは、その戦略で問題ないってことか。

 

 

 

〈あたしが合流するまで遊んでやってな。功に焦ったらいけないぞ〉

 

「わかった。芽吹、行くわよ!」

 

「ええ。銀、気を付けて」

 

〈そういって送り出してくれると、嬉しくなっちゃうね、えへへ〉

 

 

 

照れ隠しをすることもなく、微笑みながら背中を向けた銀。心配を口にはしたけど、銀なら大丈夫って思ってる。

 

 

それより私たちが下手打たないことの方が大事だ。同時五体の陽動はこの前よりずっと重荷だ。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「…アリエスが一体だけで出張ってきてるわ。他が着いてきてない」

 

「なによそれ、囮ってわけ?銀が受け持ったやつらも両翼から迫ってきてるし」

 

「…まあ、真ん中を抜かせる訳にはいかないわね。夏凜、後ろの四体に仕掛けられる?」

 

「オーケー。あんたはきっちりひょろ長を仕留めなさいよ」

 

 

 

やっぱり相手も戦略を考えてる。こっちの数を把握して、分散させてから残りの戦力をぶつけて各個撃破するって魂胆らしい。

 

 

けど、そうそう相手の術中には嵌まらない。真ん中を抑えて、本隊に特攻。一番の戦力は両翼への遊撃に添える。一つ間違えれば瓦解必至な戦略だけど、私たちならできる。

 

 

水蒸気を撒き散らしながら夏凜は樹海へと消えていった。銀の機動力は桁外れだけど、夏凜もなかなか無茶苦茶な動きをする。

 

 

 

「…アリエス。切断すると分裂・増殖するバーテックス、だったわね」

 

 

 

相手の特徴を復唱して、次の一手を考える。もう視界に入ってきてるからモタモタしてる暇はない。

 

 

風穴開けて分解するのはNG、というのなら別の手段でダメージを与える必要がある。

 

 

 

「面の衝撃…これなら!」

 

 

 

相手の側面を取って小銃弾をぶちまけた。

 

 

ただの弾じゃない。近接信管。着弾する寸前で破裂して空圧を叩き付ける弾。

 

 

パパパパっと高い音が鳴ってバーテックスの前面はつぶれたアルミ缶みたいにボコボコになる。低速で滑空していた敵はバランスを崩して地面を擦って止まった。

 

 

 

「ここはすぐに封印すべきね」

 

 

 

間髪入れずにランチャーの弾をバーテックスの着地点に撃ち込む。以津真天が旋回すると海老ぞりになったバーテックスから御魂が吐き出された。

 

 

悪あがきにドリルのように回り始めたけど、本当にただの悪あがきだ。

 

 

 

「…同じ回転数だけ逆風を吹かせればいいだけ!」

 

 

 

地面を穿った徹甲弾からつむじ風が起きて、御魂を包み込む。

 

 

逆回転の突風が動きを阻害して御魂はほぼ静止状態。これなら簡単に撃ち抜ける。

 

 

 

「終わりよ」

 

 

 

単発の小銃弾がむなしく御魂を貫通して崩壊。アリエスは霧散していく。

 

 

 

「…次は夏凜の援護に行くべきね」

 

 

 

あっけなく倒してしまったけど、それだけ私たちの実力がついたと証明できただけ。驚いたり困惑したりするほどでもない。

 

 

感傷に浸ることもなく、危なっかしい相棒の世話を焼くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈はーい、地中を泳いでても銀様には見え見えでーす。それでここにうなぎを簡単に掴み取れるマジックハンドもありまーす〉

 

 

 

心配するでもないけど、銀の方を覗いてみる。そこにはサイコキネシスで釣り上げられたピスケスの姿が。

 

 

 

〈どうやって料理しよっかなー。でもバーテックスって変な味しかしないんだよなー〉

 

 

 

____食べたんですか、銀。

 

 

 

〈じゃ、握りにしちゃいますか〉

 

 

 

マジックハンドという比喩で表現するなら、そのまま握り潰したというのが正しいだろう。サイコキネシスで圧力をかけてペシャンコにしてしまった。御魂が現れることもなく光となっていく。

 

 

 

〈うわ…我ながら悪役みたいなことやってる…〉

 

 

 

____割と似合ってると思ったけど、言わないことにした。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「後ろのデカイのはだいぶ遅れてるみたいね。それでも三対一で不利なのは変わらないけど」

 

 

 

芽吹が相手してるバーテックスからはかなりの距離がある。横槍を刺されることはないから、この三体に集中するだけ!

 

 

角が足みたくなってるやつ、まんま天秤のやつ、ボールが三つ集合してるやつ。この前のやつらみたいに連繋するつもりらしい。

 

 

 

「出鼻をくじく!沈めぇ!」

 

 

 

天秤のやつの足元に詰め寄って戟を薙ぎ払う。紫電が通った後は真っ二つになって、切り口から通電する。

 

 

 

「こっちも!」

 

 

 

傾きかけた天秤をさらに石突きで強打する。接触した途端に水蒸気を上げてた無数の穴から高圧の水が噴き出して、敵に穴を開けた。

 

 

槍先が雷の斬撃なら、石突きは水の打撃。近づけさえすればどんな相手でも叩きのめせる。私の性格にあった武器の進化だ。

 

 

自重を支えられなくなった天秤は更に傾く。これでしばらく動けないでしょ。

 

 

 

「次は…うわっ!」

 

 

 

倒れるバーテックスの影から飛び退くと同時に巨大な水の塊が鼻をかすめた。水の威力はさっき確認したから、さすがにドキッとする。

 

 

 

「ふっ、はっ!私ってどうしてこうも何か投げつけられてばっかなのかしら!」

 

 

 

尚も絶え間なくボールから放られる水球が襲い掛かる。避ける度にジリジリと後退するハメに。

 

 

天秤のやつの援護ってか。化け物のくせに随分仲間思いなことで!

 

 

 

「…いつまでも後手に回ってる完成型勇者じゃないわよ!」

 

 

 

石突きで地面を叩き付けると水圧の反動で大きく飛び上がる。今までは長柄のしなりを使って跳んでたけど、これなら予備動作がいらない。

 

 

ふらふらと側面から近づいてきた角のバーテックスを盾にするように着地して、すかさず戟を突き刺す。

 

 

 

「これで撃てないでしょうが!仲良しさん達!!」

 

 

 

力を込めれば水がジェットスキーみたいに噴き出して、角のやつを押し出す。

 

 

巨大なバーテックスすら動かす推力で、このままボールのやつに叩き付けてやる!

 

 

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

 

 

勢いそのまま、ボールのやつを角のバーテックスで突っ込む。それでも勢いが余って、二体一緒に樹海の幹にめり込ませた。

 

 

 

「はぁ、はぁっ、芽吹のやつにも負けないほど戦略の幅があるでしょ!?」

 

 

 

ほぼ力押しなのは相変わらずだけど、そんな無茶ができるくらいの力があるってこと。今なら三体相手でも封印できそうだ。

 

 

自信が実感に変わるのを噛みしめながら戟を引き抜いて後退する。ダメージは大きいはずだし、起き上がってこないでしょ。

 

 

土煙で視覚は役に立たないので耳を済ませる。まだ動くのかしら、バーテックスは。

 

 

 

「……ん?…ぎっ……何この音…!」

 

 

 

私の耳に飛び込んできたのは言葉で表現しようのない怪音波だ。脳幹を直接鷲掴みにされるような感覚に襲われて、立つこともままならない。

 

 

思考も飛びそうだけど、それだけは避けなきゃ。考えられる内になんとかしないと。

 

 

 

「あの…角の鐘、かっ……!」

 

 

 

なんとか視界に捉えたのは角の土台の上に乗った揺れ動く鐘。あそこからこの怪音波が出てるらしい。

 

 

____けど、わかったところで身体が言うことを聞かない。言うことを聞かせるにはあれを止めなきゃいけない。

 

 

 

「止めるって……!どうやって…!?」

 

 

 

自問自答を繰り返す。こんな状況で考えつくことなんてたかが知れてるんだけど。

 

 

だから、最も単純なことしか思い付かない。大声を上げて聞こえないようにするって安直な発想しか。

 

 

 

「だあぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

 

 

力の限りに吠え続ければ、自然と身体が動くようになった。けど、息が続く内になんとかしないといけない。

 

 

私の咆哮と共に、方天戟の刃に雷光が走って、石突きから水が噴き出す。気持ちの高揚を表すように、水蒸気が紫電を纏って輝きを増す。

 

 

 

「今すぐ黙れぇぇぇぇっ!」

 

 

 

打てる手はたった一つだった。戟を投げ付ける。私の唯一の飛び道具。

 

 

雷雲のゲートをくぐった戟は信じられないくらいに加速して、次の瞬間には鐘に大穴を空けていた。

 

 

 

「はぁっ…はぁっ…、やば……体力使いすぎた……」

 

 

 

能力をフル稼働させて戦ったんだ、自身の消耗が限界を越えていてもおかしくない。

 

 

おかげで三体はしばらく立ち上がれないでしょうけど。けど、奥のバカデカイのがまだ残ってる。

 

 

 

「…はぁっ、次はあいつ、ね……」

 

 

 

三体が再生する前に奥のやつを叩かないと。

 

 

____気持ちばかりが先走って身体がついてこない。踏み出した足が身体を支えきれずにバランスを崩してしまう。

 

 

 

「うえっ…!?」

 

「バカ。そんな状態で戦えるわけないでしょ」

 

「…芽吹」

 

 

 

倒れかけた私を、芽吹が抱き止めてくれた。あいつ、いつの間に。

 

 

けど、芽吹の一言で完全に緊張の糸が切れてしまった。引き剥がすこともままならない。

 

 

 

「…もうすぐ銀が合流するわ。それまで少し休んで」

 

「……ええ、そうさせてもらう」

 

「それまで私が警戒を引き継ぐから、揃ったら一気に押し込むわよ」

 

 

 

____言葉からは優しさなんて感じられないのに、妙に安心してしまう。

 

 

大切な仲間、だからなのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈いつ見ても足早くて気持ち悪いなー、こいつ。けど、ようやくあたしも追い付けるようになったんだぜ?〉

 

 

 

銀が浮遊する斧に座って疾走するバーテックスと並走してるのが見えた。あれが箒なら魔女っ子みたいで可愛らしいんだけど。

 

 

もう片方の斧が銀の手から離れると、その瞬間にバーテックスの足を削いだ。避けようと思っても避けられない攻撃だし、前に進むだけの相手がどうにかする手段なんてない。

 

 

 

〈これであたしの苦手は全部克服っと。バイバイ、二度と来んなよ〉

 

 

 

斧の二撃目は薪割りのようにバーテックスを真っ二つにした。丁度御魂も切断するように割って、バーテックスは消滅。

 

 

____銀の戦い方って、すごく効率的。手数も少ないし敵の弱点を的確についてる。銀の経験から来る攻略法と、その戦術を可能にする勇者システム。一切隙がない。

 

 

 

〈サブクエストはクリアっと。じゃ、メインディッシュをいただきますか〉

 

 

 

普段のあのうざったいくらいの余裕が、戦場じゃこの上ない安心に繋がる。銀と一緒なら絶対負けないって。

 

 

____てか、即オチ過ぎて全然休めてないんだけど。もう銀のやつこっち来てるじゃない。

 

 

 

〈おやぁ?夏凜はもうダウンかぁ?〉

 

「うるさいわね、三対一をやってやったんだから少しは休ませなさいよ。こっちは伝説じゃない、ただの勇者なんだから」

 

〈へへ、あたしを称える気になった?〉

 

「ならない。絶対調子こくし」

 

〈夏凜は相変わらず手厳しいなぁ。…でも、よくやったよ。三体相手に無力化まで追い込むなんて〉

 

 

 

義手でくしゃくしゃと私の頭を撫でつける。恥ずかしいからやめろ!って言いたいけど、振りほどく気力もない。

 

 

せめて視線で訴えてやろうと思って銀の方を見ると、____なんていい顔してんのよ。にらみつけようとしてもできなくなったじゃない。

 

 

 

〈けど、あれな!〉

 

「…なによ」

 

〈満開は使っちゃダメだぞ。もうゲージは溜まってるかもだけど、絶対ダメだからな!〉

 

「それはフリ?」

 

〈使ったら勇者システムは没収でーす。それであたしの鞄持ちにしてやるー〉

 

「うわっ、絶対ヤダ」

 

 

 

____わかってるわよ、あんたの心配事くらい。

 

 

 

〈わかってくれたならよし〉

 

「あんたがいれば必要ないわよ」

 

〈頼りにされてるなぁー。……お、芽吹から通信だ〉

 

 

 

義眼が流れるように青く光ると、スピーカーから芽吹の声が聞こえてきた。

 

 

 

〈銀、報告しますっ!〉

 

〈どしたの芽吹、そんな慌てて〉

 

〈バーテックス四体が、合体しましたっ!〉

 

〈……え?〉

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

銀の記録にもないことだ。まさかレオを中心にバーテックスが合体するなんて。

 

 

最大級の体躯を持ったレオを越す圧倒的な質量。各バーテックスの能力を使い分ける高度な戦略。実力が未知数なのは承知してるけど、一つだけ確かなのは私の手には余るってことだ。

 

 

敵を観測できる場所に身を隠して銀に連絡を入れる。

 

 

 

〈…そりゃあたしも初めてだわ〉

 

「今わかってるのは、各バーテックスの能力を操ること、桁違いのパワーと耐久力があること、私一人では対処できないことです」

 

〈オーケー。まずはあたしが……んんっ!?〉

 

「どうしました、銀」

 

 

 

銀が指示を出そうとしゃべり始めた途中で、驚愕の声が待ったをかけた。

 

 

 

〈じょ、冗談でしょ…!?〉

 

「何があったんですか、銀」

 

〈レーダー!レーダー見て!〉

 

 

 

何か動きがあったのか。敵を目視する限りでは変化はない。

 

 

銀の言うとおりにレーダーを覗くと、信じられないものが映っていた。

 

 

 

「えっ…友奈…?」

 

〈ど、どういうことよこれ!〉

 

〈わかんないよ!けど、友奈がこっちに来てる!〉

 

 

 

私たちの背後から“結城友奈”の反応が迫っている。

 

 

銀の慌て具合が半端じゃない。私たちが話してる間にもどうしよどうしよと呟きっぱなしだ。

 

 

銀が本当に守らないといけない人は____私たちじゃなくて友奈と勇者部の仲間のはずだ。危険が迫ってると知れば平常心を保ってられないのも道理か。

 

 

____私がしっかりしないと。

 

 

 

「銀。落ち着いて聞いてください。あなたは友奈から事情を聞いて、戦場に近付かないように説得してきてください。私と夏凜でなんとかもたせます」

 

〈で、でもそしたら二人が危ないって!〉

 

〈危ないのは重々承知よ。でも、友奈を説得できるのはあんただけだし、私たちのことも信じてほしいし〉

 

「説得が終わったら、合流してください。…大丈夫です、私たちは」

 

 

 

呻き声を上げて、葛藤の中を突き進む銀。板挟みだし綱渡りなのはわかってます。須美様と園子様の時みたいな状況と被ることも。

 

 

でも____

 

 

 

「……あなたを、助けさせてください」

 

〈…ぅうーっ!…絶対無事でいてよ!絶対満開なんて使っちゃダメだぞ!〉

 

「わかっています。それが私たちだけじゃなくて、銀にまで災いすることも」

 

〈さ、時間はないわよ!行った行った!〉

 

〈二人とも、帰ったら撫で倒してやるぅー!〉

 

 

 

謎の捨て台詞と同時に銀との通信が切れた。この心理状態でも息を吐くように冗談を出せるのはある意味才能か。

 

 

 

〈…じゃ、やってやりますかね〉

 

「ええ、夏凜。もう復帰できる?」

 

〈万全じゃないけど、あんた一人にもしてやれないし〉

 

「…無茶はしないでよ?何かあったら銀が暴走するから」

 

〈わかってるわよ〉

 

 

 

立ち向かうのはこれ以上にない大敵だけど、不思議と高揚感や不安感はない。____私の向上心はどこへ行ってしまったのかしら。

 

 

ただ、銀と夏凜と一緒に、無事帰ることだけ。それしか考えられなかった。

 

 

 

 

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