シロツメクサを捧げる   作:Kamadouma

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ここにいる間は敵じゃないですよ

 

 

 

「今日の任務は、テロで街が破壊されて避難してきた人たちの避難所のお手伝いよ」

 

「…え?」

 

「…教導、お気は確かですか?」

 

 

 

芽吹ちゃんが朝のミーティングの時間に、絶対言わなそうなことを言い出した。わたしも風先輩も他のメンバーも目を点にして、芽吹ちゃんが言ったことをもう一回確認する。

 

 

 

「私たちが何のために戦っているか。それを再確認するために、戦火で被害を受けた人たちの支援をする」

 

「再確認、って?」

 

「ただ浪士を撲滅すればいい、という考えは捨てて。私たちは今を生きる人全てに未来を見せなければならないの」

 

「…それが勇者、ってことね?」

 

「その通りです、風さん。困っている人を見て見ぬ振りをしては、私たちに未来は作れません」

 

「乃木教導はやはり真の勇者ですわ。わたくしは大いに賛同いたしますわ」

 

「わたしも!なんか勇者部みたいだね!」

 

 

 

芽吹ちゃんにも銀ちゃんのスピリット…勇者部の魂がちゃんと受け継がれてて嬉しくなった。それに、わたしも絶対やりたいことだ。

 

風先輩もここ最近じゃ一番楽しそうな顔をしてる。防人になっても勇者部みたいな活動ができて嬉しくなったのかな。弥勒先輩も“のぶれすおぶりーじゅ”?って言って張り切ってる。

 

 

 

「でもこれって国士…国防仮面のやってることと被らない?後を追うようにやっても後手に回ってる印象は拭えないんじゃ?」

 

「やるとやらないとでは印象にしても雲泥の差だし、一番大切なのは私たち一人ひとりが勇者だという意識を持つこと。そのための活動よ」

 

「あの勇者部の活動にイヤイヤ付き合ってた芽吹からそんな言葉が聞けるなんてねぇ。銀は先生に向いてるんじゃないかしらね」

 

「元はといえば風さんがやってたことじゃないですか。…風さんにも感謝しないといけませんね」

 

「あー…うん。…なんかムズがゆいわね…。…ありがと、芽吹」

 

 

 

風先輩がほめ殺しにされてほっぺを指でかいてる。

 

芽吹ちゃん、思えばずっとほめてる気がする。訓練の時厳しいのはそうだけど、必ずいいところを見つけてそこをほめてる。

 

 

 

「作業は結構多いから、いくつか班に分けて分担する。炊き出しのお手伝いは風さんに指揮をお願いします。他のメンバーは風さんが選んでください」

 

「任せなさい!ここが女子力の見せどころよぉ!」

 

「物資や廃棄物の分別や処理は弥勒さんに任せます。体力のある人員を選んでください」

 

「承りましたわ!任務を命じられた以上、ご期待に沿いますわよ!」

 

「避難所には子供も多くいるわ。慰問の意味でも出し物を催す。私はそれに取り掛かることにするわ」

 

「出し物、ですか。いいと思いますわ」

 

「…それ、乃木が、やるの?」

 

 

 

しずくちゃんの発言で、その場が凍りついた。

 

芽吹ちゃんが子供向けに出し物をやる。

 

わたしはこの前の子供会のおかげで少しイメージを想像できるけど、厳しい教導のイメージしかない防人メンバーにはピンとこないかも。

 

 

 

「芽吹…得手不得手ってあるのよ?リーダーだからって無理しなくても」

 

「………………こんにちは〜!私の名前は乃木芽吹!ブッキーって呼んでね♪」

 

 

 

凍りついた。ここにいた人全員が。

 

何か見ちゃいけないものを見た気がする。一秒でも早く記憶から消さなきゃいけない気がする。

 

 

 

しばらくシーンとした後、突然吹き出した笑い声が。みんなギョッとしてそっちを向く。

 

 

 

「……wwww。ごめっ…wちょっと……ww」

 

「しずくちゃん!?」

 

「やば…wwこwれwはw…」

 

「ダメよしずく!抑えて!芽吹の尊厳が!」

 

「でもww…」

 

「の、乃木教導はそれだけ真剣ということですわ!」

 

「……?やるからには完璧を目指すわ。演技において恥ずかしがることこそが恥なのだから」

 

 

 

笑いを抑えられないしずくちゃん。

 

芽吹ちゃんがどんな反応するか恐ろしくてフォローに回ったけど、芽吹ちゃんは何を焦ってるのかわかってないみたいだった。

 

 

 

「皆は何も心配する必要はないわ。各自班長の指示を聞いて、人助けにはげみましょう」

 

「は、はーい」

 

「…芽吹ってさ、前から思ってたけどマルチタレントよね」

 

「ものづくりに運動、演技に学業…弱点が見当たりませんわ」

 

「お笑いのセンスもありそう…まさに完璧超人…」

 

 

 

______任務を遂行すること以外を削ぎ落とした芽吹ちゃんだったけど、防人隊の教導になってから人間らしさが良く見られるようになったと思う。良く笑顔を見るようになったし。

 

芽吹ちゃんは…今幸せなのかな。銀ちゃんとは会えなくなっちゃったけど、毎日が充実してて。芽吹ちゃんなりに、銀ちゃんが望んだ自由を生きてるのかな。

 

 

 

でも、芽吹ちゃんは夏凜ちゃんとの友情を失ってしまった。芽吹ちゃんにとっても、夏凜ちゃんにとっても、銀ちゃんと同じくらい大切なものだったはずだ。

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「…げ」

 

「…!!貴様は…乃木芽吹!?」

 

 

 

避難所に来て早々、大トラブルにみまわれたわたし達。

 

いたんだ。国防仮面が。避難所に。難民キャンプのお手伝いに。

 

 

 

この前会った言葉遣いの難しい国士さんが芽吹ちゃんの顔を見るなり、あわてふためいた様子で周囲を確認する。

 

芽吹ちゃんは身構える防人隊に待ったをかけて、一つため息をついて国士さんに伝えた。

 

 

 

「落ち着いて。別に国士を狩りに来たわけじゃないから」

 

「……くっ」

 

「こんなところでドンパチするのはそっちも不都合でしょう?下手な気を起こさないで」

 

「…ちっ」

 

「……いるんでしょ?夏凜。ここは私たちで話し合って調整しましょう」

 

 

 

遠くに視線を向けてお目当ての人を呼び付ける。トップ同士で話し合って、戦闘を避けようと考えてる。

 

まるで打ち合わせたみたいに、義手が引き戸を開けて顔を出した。国防仮面の姿をした夏凜ちゃんが。

 

 

 

「ちょっと。隊員にはあんたと接触を禁じてるんだけど」

 

「それはお互い様よ。だから私たちで取り決めしようって話よ」

 

「てか、なんであんた達がここにいるのよ。防人隊の三十人近くが勇者部に入ったわけ?」

 

「困ってる人を助けるのに理由がいるの?国防仮面さん?」

 

「…はいはい。大赦の首長様はご殊勝なことで。全く、誰の薫陶を受けたんだか」

 

 

 

ほとんどいつも通りの憎まれ口の言い合い。仲がよかったころと変わってない。

 

夏凜ちゃんが手招きして芽吹ちゃんを呼び付ける。

 

でも、そっちに行ったのは芽吹ちゃんだけじゃなかった。

 

 

 

「夏凜…!のこのこ顔を出して…!」

 

「どうしたの勇者部部長。そんな怖い顔して」

 

「それはあんたが一番知ってることでしょうがぁ!!!」

 

 

 

風先輩が見たこともないような怖い顔で勇者の力を解き放った。振りかぶった大剣が引き戸ごと夏凜ちゃんを叩き斬ろうとする。

 

風先輩、樹ちゃんのことで夏凜ちゃんに恨みを募らせてたから、もう理屈なんてお構いなしだ。

 

 

 

ダメだ、止めないと!!

 

 

 

「風さん、三好夏凜との接触は禁止したはずですが?」

 

「なっ…!」

 

 

 

私が駆け出す前に、芽吹ちゃんが変身もせず刀を抜いた。武器を叩き折る武器の大剣が、刀に触れた途端に真っ二つになる。

 

 

 

「規律を乱さないでください。現場長を任せられる人がそういうことをしては、隊員に示しがつきません」

 

「…でもっ…」

 

「…もし風さんが除隊になったら、樹ちゃんは一人で戦わないといけません。…どうなっても私は責任持てませんよ」

 

 

 

これ以上食い下がるなら防人をやめてもらうと、樹ちゃんと引きはなすって言ってる。芽吹ちゃんの表情はいつも通りだけど、視線が冷たく言い放ってる。

 

さすがの風先輩も引き下がった。変身を解いて怒りを抑えつけた顔をしてる。

 

 

 

「借りは戦場で返せって話よ、風。ここは戦っていい場所じゃない」

 

「……っ」

 

「そうやって煽るのやめてもらえるかしら?そっちから突っかかってくると収拾がつかない」

 

「はいはい。…あーあ、そっちは勇者が四人もいるのか。こっちは一人だってのにやってらんないわ」

 

「テロリストの末路には相応しい相手と思わない?大義の物量にすり潰されるって」

 

「まあ、私が一人ずつ始末すればいいだけ、なんだけど?」

 

「その中には私も含まれるのかしら?」

 

「お望みならやってやるけど?」

 

「せいぜいほざいてるといい。言うだけならタダなんだし」

 

 

 

言い合いがとどまるところを知らない。

 

みんながあ然とする中、二人は言い合いながら人が来なさそうな建物の裏手に歩いていった。

 

 

 

理解できない光景だったかも。少なくても前の二人を知ってる人以外は。

 

わたしだって、芽吹ちゃんがしゃべりたくもない相手と言い合いするなんて思ってなかったもん。

 

 

 

「閣下に刃を向けるとは…!貴様、覚えておくぞ…!」

 

「三下のセリフご苦労さん。…あーあ、何やってんのかしらねあたしは」

 

 

 

リーダー二人がいなくなってピリピリした空気がこっちにも伝わったみたいだ。風先輩と国士さんがにらみ合ってる。

 

間に入らないとマズイかも。風先輩もいつもより気が立ってるみたいだし。

 

 

 

「まあまあまあ。戦うことになったわけじゃないんだし。それより、国士さんも避難所の援助にきたんでしょ?目的は一緒だぁ!」

 

「…貴様は。…相棒が世話になった」

 

 

 

この人はゴールドタワーで会った、古風な国士さんだ。帽子をとって頭を下げてきた。

 

 

 

「ううん。困ってる人を助けるのに理由はいらないよ!どうなの?元気にしてるの?」

 

「ああ。今も中で子供たちと遊んでる」

 

「よかったぁ。いろいろお話を聞かせてもらって、すごい気になってたんだ」

 

 

 

古風な国士さんの声のトーンが一つ下がった気がする。敵をイアツするような張った声じゃなくて、相手に話を聞いてもらおうとする声だ。

 

この人は義理堅い人なのかも。いくら敵対するグループの人でも、善い行いには礼を尽くしてくれる。やっぱりただの悪のテロリストじゃないんだよ。

 

 

 

「…結城さん。敵とそのように馴れ合うものではありませんわ」

 

「少なくてもここにいる間は敵じゃないですよ。同じ目的を持った仲間です」

 

「何言ってるのよ友奈。油断したところを刺されるかもしれないのよ」

 

「そういうことはできませんよ。国士さん達は、自分の正義を信じて戦ってる勇者だから」

 

「…三好閣下と、同じことを言うのだな」

 

 

 

国士さんからもう敵意は感じない。わたしと同じことを感じてくれたのかな。

 

でも防人のみんなの方が警戒を解いてくれない。イメージが固まりすぎちゃったのかも。

 

 

 

「…結城の言うとおりだと思う。困ってる人を助けたいのは…防人も国士も同じ」

 

「いいこと言うじゃないしずく。今はそういういがみ合いはナシで」

 

「休戦休戦。今日は休戦記念日ってコトで」

 

「誰が決めたのよそれ」

 

「あたしが決めた!」

 

 

 

「…ふ。防人も大して我々と変わらんな」

 

「所詮は女子の集まりってことよ。だから女子力が強い方が勝つ!」

 

「団結力で言うなら、そうなのかもしれんな」

 

「そうおっしゃる貴女は女子と思えない言動ですわね」

 

「私は天子に仕える公僕であることを常に矜持としている。貴様とて同じであろう?弥勒」

 

「わたくしが仕えるのは弥勒の血だけでしてよ」

 

 

 

それでも一緒に避難所のお手伝いをするのを受け入れてくれたみたいだ。お互いのリーダーがそうするって言ってるんだし、拒否はできないと思うけど。

 

 

 

______心の底から手を取り合えたらいいな、ってわたしは思った。

 

 

 

 

 

 

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しばらくして芽吹ちゃんと夏凜ちゃんが戻ってきた。話はついたみたいだ。

 

中にいた国士の人たちもぞろぞろ出てきて、わたし達のとなりに並ぶ。

 

 

 

「協議の結果、私たちは共同でこの避難所の支援を行うことを決定した」

 

「…マジで?」

 

「友奈から厭戦ムードが伝播した?」

 

「それは違うわ。目的が同じなのに別々に行動してたらお互いに邪魔になるだけだから。それなら一緒にやった方が効率的でしょ?」

 

「…およそ敵対していた勢力のリーダーたちから聞ける提案ではないですわね…」

 

 

 

二人はやっぱり銀ちゃんの弟子だ。勇者部の部員だ。

 

勢力の枠を越えて、手を取り合うことができる。人助けって一緒の目的のもとに。芽吹ちゃんも夏凜ちゃんも、そういう人なんだよ。

 

 

 

「はいはい!わたしは大賛成でーす!」

 

「閣下がそう決断しましたのなら、私は賛同するほかありません」

 

「…いいと思う。こういう時は…みんなで明るくしないと…」

 

「人として善を行う。陛下もそれが人間らしさとおっしゃっていたし」

 

 

 

「…わかってるの?芽吹。敵と手を取り合う意味を」

 

「僭越ながら私も反対です閣下。情が芽生えれば、いざという時撃てなくなります」

 

「マッチポンプやってる相手よ?行動を共にするって…ちょっとないわ」

 

「決起したただの市民を暴力で制圧している走狗どもが何を言うか」

 

 

 

どっちのグループにも賛成と反対の声が上がった。わかっていたことだけど、防人も国士も一枚岩じゃない。

 

次第に言い争いが広がってきた。お互いの勢力の間ではもちろん、チームメイト同士でも。

 

 

 

______どうしよう。このままじゃせっかく二人が折り合いつけてくれたのに、台無しになっちゃう。

 

 

 

「静粛に。これは決定事項よ。異議申し立ては私への口答えと同じ…懲戒も考えるわ」

 

「厳しいわねあんたは。…納得できないかもしれないけど、私に免じて何とかやってほしい」

 

 

 

二人のリーダーはそれぞれ違う言葉で意志を統一しようとした。

 

芽吹ちゃんは教導という立場から、規律を乱すのは許さないと圧力をかけて。

 

夏凜ちゃんはメンバーの考えをくんで、上からお願いするように。

 

 

 

どっちのグループもその一言でピタリと口論をやめた。

 

 

 

「敵対する組織のトップが最初に話をつけたのです。部下があれこれ言うのは野暮というものですわ」

 

「長の二人が個人的な感情を割り切って決断したのだ。どうして我々が非難できようか」

 

「そうだよ!手を取り合うって決めたことはすごいことなんだよ!みんなも二人の気持ちを考えてあげようよ!」

 

 

 

芽吹ちゃんと夏凜ちゃんの気持ちをわかろうとする人もいる。弥勒先輩と古風な国士さんは、リーダーの意志を尊重するように言葉をおぎなった。

 

わたしだって二人の気持ちを大事にしたい。どんなことになっても、わたしは二人の友達だから。

 

 

 

「…ホント、偉大な勇者様よね。あんた達は」

 

「これだけ賢明な人なのに、どうして乃木芽吹は売国奴の側にいるの…?」

 

「三好夏凜がテロリストに加担する理由がわからなくなってきたわ…」

 

「同じ三ノ輪銀様の弟子なのに…」

 

 

 

反対していたメンバーも渋々納得してくれたみたいだ。

 

納得はしたけど、疑問は晴れない。世のため人のために行動できる二人が、どうして敵対してるのか______

 

 

 

 

 

 

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弥勒さん率いる力仕事チームは、さっそく大量に持ち込まれた支援物資の支度を始めた。

 

 

 

「では、気を取り直して届いたベッドをセッティングしていきますわ!」

 

「ベッドだと?支援物資にそんなものは」

 

「乃木教導が手配していたようですわ。楠工務店の職人たちがチャリティーで製作したものですのよ」

 

「乃木…前々から準備してたってことか……」

 

 

 

大掛かりな荷物の半分くらいは、木製の簡易ベッドとふとん。寝具が足りない避難所の実状を見て用意したんだと思う。

 

芽吹ちゃんは、できることを全力でやってる。お父さんや大赦の偉い人に頼んでいろいろ用意してたんだ。それが上に立つ人の使命なのかな。

 

 

 

「さあさあ、無駄口叩いてるヒマはありませんわよ!乃木教導の出し物の時間までに片付けてますわよー!」

 

「それは絶対見たい」

 

「あのカタブツの芽吹先輩が子供向けの出し物って…想像しただけで笑えるよね」

 

「…それなんだけど、三好閣下も共演する話になったって」

 

「…は?」

 

「…もっかい言って?」

 

「乃木芽吹と、三好閣下の、共演」

 

 

 

この空気は今日何回目だろう。笑ってはいけない、凍りついた空気は。

 

 

 

でもやっぱりそれをぶち壊すのはしずくちゃんだった。耐えきれずに吹き出したのを聞いて、全員がしずくちゃんを見る。

 

 

 

「………www」

 

「ほ、本人がいないところで笑ってはいけませんわwww」

 

「だ、だって…www」

 

「閣下が…?子供向けの出し物を…?www」

 

「こ、堪えろっ!閣下の威厳がっ…www」

 

「あんたも笑ってんじゃないのよwww」

 

 

 

不謹慎だけど、笑いって広がってく。防人も国士も関係なく。

 

たったこれだけで二つのグループの距離感がグッと縮まった気がした。お互い警戒姿勢を解いて、普通に話し出す。

 

 

 

「あの乃木芽吹が…?www」

 

「私もそう聞いた時やばかったwww」

 

「いやいや、三好夏凜もやばいでしょwww」

 

「お互いジョークなんて言わなそうだしwww」

 

「…んんっ。笑ってないで作業を始めますわよwww」

 

「弥勒だって笑ってんじゃんwww」

 

 

 

笑って仕事に手が付かない。これを芽吹ちゃんに見られたらどうなるか。

 

 

 

「あ、弥勒さん。ちょっと報告しておきたいことが」

 

 

 

とか言ってたら芽吹ちゃんがすっと現れた。ヤバいかも。みんな顔を引きつらせる。

 

 

 

「……どうしましたの乃木教導。まだ作業を開始してはいませんわ」

 

「よかった。明日届くはずだった支援物資が前倒しで届いたので、そっちにも人員を配置してください。資材置き場がパンクしそうです」

 

「承知いたしましたわ。わざわざ教導に出向いていただくなんて、お手を煩わせてしまいましたわ」

 

「いいんですよ。私たちは一つのチーム。必要な仕事に立場は関係はありません」

 

 

 

ケロッと表情を変えていつもの対応をする弥勒先輩。全員が笑いを飲み込んで顔をひくつかせてる中、芽吹ちゃんに感づかせることなくやりきった。

 

 

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

「任されましたわ。教導の出し物、楽しみにしてますわよ」

 

 

 

特に何も気づいた様子もなく、芽吹ちゃんは戻っていった。

 

芽吹ちゃんってかなりキレモノで感が冴えてると思ってたけど、______意外にニブいのかな。それともわかってて気づいてないフリしてるだけ?

 

 

 

「…ふはぁっ!ヤバい、笑い死ぬところだった…!」

 

「…弥勒…ナイス…!」

 

「………………」

 

「…?弥勒先輩?」

 

「」

 

「…此奴、気絶しているぞ!」

 

「ええっ!!?」

 

 

 

極度の緊張で精神が限界だったみたい。笑顔で手を振りながら気絶してる。風先輩がオバケの話を聞いた時みたいだ。

 

別に芽吹ちゃんに気づかれても大丈夫だと思うんだけどな。そういう空気とはいえ、ちょっとみんなビビりすぎかも。

 

 

 

 

 

 

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「…あ。どうも。この前はお世話になったね」

 

「ううん!元気そうで良かったよ~!」

 

 

 

炊き出し班のお手伝いに、あの時ケガしてたクールな国士さんが参加してた。わたしの姿を見つけると、軽く手を振って声をかけてきた。

 

元気にしてて良かった。特にケガを引きずってる様子もなく、食材を台車に積んで運んでる。

 

 

 

「またこうして話す機会ができるなんてね」

 

「芽吹ちゃんと夏凜ちゃんのおかげだよ!」

 

「…あなたはリーダー二人の知り合いって聞いたけど。不思議なこともあるものだわ」

 

「ホントにね。…人助けなら簡単に手を取り合えるのに…」

 

 

 

クールな国士さんも不思議に思ってるみたいだった。芽吹ちゃんと夏凜ちゃんがどうして対立してるのかって。

 

それは本人たちにしかわからないことなのかも。他人には想像もつかない理由があるのかも。

 

 

 

「…案外、同じものを違う視点から見てるだけなのかもしれないわね」

 

「へ?」

 

「目標は大きく違わない。これからの世界をどうするかをちゃんと考えるなら、自分がどうするべきかが違うだけで」

 

 

 

______浪士たちだって、霧が晴れた後の外の世界を復興することを考えてるはずだ。それを大赦には任せられないっていうだけで。

 

でも、それって。夏凜ちゃんが会見で言ってたこととは少し外れてるような気がする。もうバーテックスはいないのに、敵を打ち倒すって。

 

 

 

やっぱり、銀ちゃんのあの大蛇を倒すってことなのかな______

 

 

 

「雀ちゃん達はどうしてるの?」

 

「…躊躇なく聞いてくるのね、捕虜のこと。敵である私に」

 

「敵じゃないよ。こうやってお話できてるんだから」

 

「……本当、敵意とかないのねあなた…」

 

 

 

クールな国士さんは両手を上げて苦笑い。そんなにおかしいかな?

 

 

 

「まだ処遇は決まってないわ。このまま幽閉されるか、それとも…」

 

「…?」

 

「…あなたはどうなの?このまま大赦の下で戦い続けるの?」

 

「……わかんないんだ。わたしはどうするべきなのかなって」

 

 

 

「…根本的に、あなたは戦いに向いてないのかもしれないわね。周りにいる人全てを慮ってしまうあなたには」

 

「そう、なのかな」

 

「敵の私が言うのも何だけど、この戦いに関わらない方がいいと思うわ。もっと違う場所に、あなたを必要とする人がいると思うの」

 

 

 

考えもしなかったことだ。防人をやめて、普通の生活に戻るって。

 

 

 

______それもアリ、かなと思う。

 

 

 

でも、そうしたらできなくなることがある。

 

 

 

「…ありがとう。そう言ってくれて。でも、二人を仲直りさせないといけないから」

 

「…そう。それはあなたにしかできないこと、なのね」

 

「うん。…銀ちゃんにできる、せめてもの恩返しだから…」

 

「三ノ輪銀様の…」

 

 

 

クールな国士さんは言葉を続けられなかった。大赦に親友と引き離されたって言ってたし、思うところがあるのかも。

 

 

 

「国士のみんなも、銀ちゃんの話は聞いてるの?」

 

「…ええ。私たちに道を示してくれた英雄。その志を私たちが引き継ぐんだって」

 

「…芽吹ちゃんと同じこと言ってるね」

 

「乃木芽吹も、どうして我々に同調してくれなかったのかしらね…。同じことを考えていたはずなのに…」

 

 

 

______夏凜ちゃんは銀ちゃんを助けたいって、伝えてないのかな?そう聞いたらそっちにも力を貸したいって言うと思うけどなぁ。

 

 

 

いろんな事情が絡み合ってて、わたしじゃとても正解がわからない。

 

でも、お互いに手を取り合えるチャンスは残ってるのはわかった。それを絶対つなげたい。

 

 

 

「…荷物持つよ。ケガ上がりでしょ?」

 

「…ありがとう。…今日はよろしくね、結城さん」

 

 

 

 

 

 

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「みんな~!集まったかな~?」

 

「これからわくわく姉ちゃんがダンボールを使っていろんなものの作り方を教えてくれるりこよ~!」

 

 

 

子供たちが、ニワトリパジャマとお馬さんのようなお魚さんのようなきぐるみを着たお姉ちゃんたちを見て素直に喜ぶ声を上げた。

 

______後ろで見てた防人と国士のメンバーは、全員揃って絶句。

 

 

 

「…う…嘘でしょ…?」

 

「閣下…なぜきぐるみ…?」

 

「いやいや、芽吹もなんでニワトリパジャマなのよ…?」

 

「想像の斜め上をいかれましたわ…」

 

「wwwwwwwww」

 

「しずくちゃん!待って!開演中はせめて!」

 

 

 

しずくちゃんの薄ら笑いはどんどん伝わって、メンバーをどんどん笑いの沼に引きずり込む。

 

 

 

「今日は集まってくれてありがとー!これからみんなと一緒に、いりこーんと工作をしていくよ!」

 

「みんなで役立つ道具を作って、楽しい時間を過ごすりこー!」

 

 

 

ニワトリパジャマの芽吹ちゃん______わくわく姉ちゃんは、今まで見たことのない優しいお姉さんだ。銀ちゃんとも風さんとも違う、みんなを笑顔にするための笑顔。……誰を参考にしたのかな?

 

いりこーん______ユニコーンのきぐるみの夏凜ちゃんは、おどけた言葉と仕草を違和感なくやってる。恥ずかしがり屋の夏凜ちゃんが、その姿でみんなを笑顔にしてる。まるでプロのきぐるみ師みたい。

 

 

 

「ダンボールってすごいんだよー?私がこうやって乗っかってもつぶれないんだよー」

 

「ええー?それはわくわく姉ちゃんがそっと座ってるだけりこー」

 

「いりこーんも座ってみて!勢いよく、ドーンと!」

 

「えーい!」

 

 

 

背中から飛び込むみたいに、いりこーんがダンボールで作ったイスに座る。

 

わー!っと子供たちの叫び声が上がった。

 

 

 

「…あれ?ホントだ!しっかり座れるりこー!」

 

「ねー?ちゃんと作れば大人が座っても大丈夫なんだよ〜!」

 

「すごいりこー!わくわく姉ちゃん、作り方を教えるりこー!」

 

 

 

二人は完全に子供たちの心を掴んだみたいだ。見てる子供たちみんなが食い入るように前のめりになってる。

 

すごい。何か自然と引き込まれちゃう。

 

 

 

「…息、ピッタリだな…」

 

「これが即興芸、なの?こんなに息のあったコンビ、初めて見た…」

 

「…あまりに惜しいわ。二人が手を組めば、どんなこともできそうなのに」

 

「銀のヤツに見せてやりたかったわね。あんたの弟子はこんなにも勇者部だったって」

 

「風先輩、しっかり録画してるじゃないですか」

 

「樹に見せてやろうと思って」

 

 

 

笑ってた国士や防人メンバーも、次第に二人の世界観に引き込まれていく。

 

 

 

______真剣なんだ。世界を導くことに。道は違っても、思いは同じ。

 

だから、なおさら戦わないといけない理由がわからない。二人が協力すれば、大赦や浪士の片方を壊滅させることも難しくないはず。

 

こんな意味のない争い、すぐに終わらせることができるのに。

 

…本当に、銀ちゃんのことだけ、なのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わくわく姉ちゃんの工作教室は大盛況で終わった。子供たちだけじゃなくて、そばで見ていた大人たちも次々参加していって。ダンボールでイスや机などをみんなで作った。

 

そしてそこに、風先輩たちが作った炊き出しの料理が並ぶ。

 

 

 

「全て、乃木教導の計算ずくだったってことですわね」

 

「…資材から出る廃ダンボールを再利用して、みんなで食事できる卓をつくる……」

 

「…敵ながら、あっぱれ」

 

「次期部長を任せてもいいかしらね。何か、あたしより才能ありそうだし…」

 

「末恐ろしいわ…。あんなカリスマが敵の首領なんて」

 

 

 

芽吹ちゃんは、避難所の暗い雰囲気を塗り替えた。ここにいるみんなが温かい気持ちになって、心を開いて言葉を交わす。

 

この時だけは、防人も国士も避難民も関係なくて。この時間を楽しもうとする一つの集まりだった。

 

 

 

「お疲れ様です、国士と防人の皆さん」

 

「久々に楽しい気持ちになれたよ!」

 

「浪士の連中が派手に暴れたせいでインフラが途絶して避難してきたが、中には見上げたヤツもいるじゃねぇか」

 

「ああいうのは一部の過激派ってことかい?」

 

「大赦も動きが遅くて腐敗してると思ってたけど、本当に平和を願う人が残ってるってわかって安心したわ」

 

「そういう人がこれからの世界を先導してほしいよね」

 

 

 

実際に現実を目の当たりにした人たちの意見を初めて聞いた。

 

信じるものがゆらいでしまって、心の拠り所がなくなってる。それが不安の種になって、空気が重くなっていく。

 

 

 

______銀ちゃんが国防仮面をやってたのって、こういう人たちの駆け込み寺になるため、ってことなのかな。

 

わたしは国防仮面でも国士でもないけど、それには大賛成だ。こういう活動なら、いくらでもやりたい。

 

 

 

「…今日のヒーローの二人が見当たらないわね」

 

「二人がいないと始められないね」

 

「…わたしが、探してくる。…笑ったこと、謝りたい」

 

「お願いねしずく。たぶんまだ脱衣所にいると思う」

 

 

 

しずくちゃんが芽吹ちゃんと夏凜ちゃんを呼びにいった。謝りたいって言ってたけど、しずくちゃんのおかげで国士さん達と打ち解けられたと思うけどね。

 

わたしはどうにかしてしずくちゃんが作ってくれたチャンスをモノにしなきゃね。芽吹ちゃんと夏凜ちゃんが仲直りする、そのお手伝いをね。

 

 

 

 

 

 

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「_______笑えるのは_________ね…」

 

「…全部終わって______。…でもさ、_________いいの?」

 

「何が?」

 

「____“いいこと”__。私たち___________」

 

「……________感じるのって、_____時よ」

 

「…あんた、_______つもり?」

 

「_________何を言ってるんだか」

 

「______フィクサー_________よ」

 

 

 

「…決めたでしょ。あの時。_______って」

 

「どんな________、ね」

 

「…はぁ。こんな__、______わね」

 

「それには__。…次の__、_____わよ」

 

「ええ。___満足_____、_____と思う」

 

 

 

「…に、してもよ。友奈はすごいわね」

 

「ほとんど____。防人と国士で_______活動するなんて」

 

「それすら_________あんたが一番怖いわ。サイコパス________ないの?」

 

「_______受け取っておくわ。…でも、_______、一番の障害________」

 

「…そう。その時は…_____」

 

「…____」

 

 

 

 

 

 

(……?乃木と三好は、何を話してるの…?よく聞こえない…)

 

(…でも、敵同士でどうしてそんなに仲良さそうにしてるの…?…乃木は三好のことを見捨てたんじゃないの…?)

 

(…なにか、裏がある…?)

 

 

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

 

 

「夏凜ちゃん、隣いい?」

 

「…私との接触は禁止されてるんじゃないの?」

 

「今はただの結城友奈だから。防人のじゃなくて、夏凜ちゃんの友達の」

 

 

 

戻ってきた夏凜ちゃんのとなりに腰を降ろす。聞きたいことがいっぱいあるんだ。

 

国士のメンバーがすぐにこっちを見るけど、夏凜ちゃんは手を上げて止めた。夏凜ちゃんも話す気はあるみたいだ。

 

 

 

「そう。…後で怒られても知らないわよ」

 

「えへへへ。それを考えてたらこんなことできないよ」

 

「そうね。味方の芽吹を盾で跳ね飛ばすなんてできないわよね」

 

「それは……」

 

「…先に言っておくわ。ありがとう。あの時は助かったわ」

 

 

 

夏凜ちゃんがペコリと頭を下げた。

 

いいよいいよと手を振ると、上げた顔はいい笑顔だった。

 

 

 

「お礼って言ったらヘンだけど、聞きたいことがあるなら聞いて。話せる範囲で話すわ」

 

「じゃ、お言葉に甘えて」

 

 

 

義理堅いのは国士さんだけじゃない。

 

夏凜ちゃんのそういうところが国士さんにも伝わってるんだと思う。

 

 

 

「……銀ちゃんを助けたいんだよね?」

 

「…ええ。何がなんでも。あらゆるものを敵に回してもいいって思うくらいには」

 

「そのために、大赦を抜けたんだよね?」

 

「そうよ。銀を迎えに行くためのピースを大赦は持ってないから」

 

「ピース?」

 

 

 

そう聞き返すと、夏凜ちゃんは言いよどんだ。話しづらいことなのかな。

 

 

 

「…私は“あるもの”を探してるわ。銀とあの精霊…邪神を完全に切り離す神器を」

 

「…神器?」

 

「……それが、神樹の中にあるって話よ」

 

「………………」

 

「それを取り上げれば、残り少ない寿命を一瞬で終わらせることになる」

 

 

 

避難所にも飾られてある神樹様のほこらを遠くに見て、夏凜ちゃんは言った。

 

国士や浪士の目的とも違う、明らかな神樹様への反逆。それが知られれば、浪士も大赦も黙ってはいられないと思う。

 

 

 

「…その神器…“叢雲”は元々天皇家の持ち物。王がそこにいるのなら、神器はその手に収まってなければならない」

 

「…天子、だよね?」

 

「そう。王政復古を掲げたのもそういう理由。力を持った天皇がいるのなら、神樹から叢雲を接収する大義もある」

 

「………………」

 

 

 

こういうの、風先輩ならよく知ってると思うんだけどね。わたしはお勉強はあんまり……。

 

 

 

「夏凜ちゃんは国士を指揮してるけど、浪士の中でも物言いできたりするの?」

 

「……コネがあるのよ。浪士の主要メンバーに」

 

「その人に頼めば、意見が通るってこと?」

 

「…まあ。国士隊を好き勝手動かしてるのもそういうこと。それに、“天子付きの勇者”だから。天皇直属の勇者…力の象徴ってことよ」

 

 

 

芽吹ちゃんも大赦を動かす力があるけど、夏凜ちゃんも浪士の意志に入り込む力がある。

 

二人が仲直りすれば、全てが解決する。

 

わたしがやるべきなのは、やっぱりそれだ。

 

 

 

「…芽吹ちゃんは、知ってるの?むらくものこととか、天子のこととか」

 

「…全部知ってるわよ。一緒に調べたんだから」

 

「………………」

 

「知った上で、私たちと刃を交えることを望んだ。銀を取り戻す唯一の方法を切り捨てると知って」

 

 

 

夏凜ちゃんの声が震えた。怒ってるような、悲しんでるような、入り組んだ感情が伝わってくる。

 

 

 

「バカよ、あいつは。自分の感情に蓋をして、キレイ事並べて。私は銀も世界も取り戻すっつってんのに」

 

「………………」

 

「…あんたはどうなの?友奈」

 

「…わたし?」

 

「あいつに美化された銀の姿を崇める気?銀が本当の望みを読み違えたあいつの、勝手な妄想に付き合う気?」

 

「………………」

 

 

 

銀ちゃんが本当に望んだこと。

 

芽吹ちゃんが言った“自由になる”こと。

 

夏凜ちゃんが言った“一緒にいる”こと。

 

 

 

どっちが正しいかなんて、わたしにはわからない。どっちも正しいし、どっちも間違ってる。

 

 

 

「友奈。悪い事はいわない。大赦を抜けてこっちに来て。友奈があいつのせいで心を痛めるのを見てられない」

 

「……わたしは…」

 

「…迷うことが、あるの?」

 

 

 

「……わからないよ。この戦いの全部が。何もわからないのに決めなきゃいけないなんて…できないよ…」

 

「……あの子の言うとおりね。あんたはこの戦いに関わるべきじゃない」

 

「…でも」

 

「中途半端な気持ちで戦場をフラフラしないで。私にとっても芽吹にとっても、邪魔でしかないから」

 

「……!」

 

 

 

はっきりと夏凜ちゃんは言い切った。邪魔でしかない、と。

 

二人の真剣さに比べたら、わたしの気持ちは中途半端って言われても言い返せない。現実味がなくて、ふわふわしてる。

 

夏凜ちゃんには敵ですらない邪魔者に見えたってことなのかな______

 

 

 

「…聞きたいことはもう終わり?」

 

「…うん」

 

「…もう防人なんて辞めてしまいなさいよ。…友達として言えるのは、これだけ」

 

「………………」

 

 

 

それが、夏凜ちゃんなりの優しさなんだろう。

 

 

 

頭がおかしくなりそうだ。

 

何を信じていいのかわからなくなった。

 

 

 

銀ちゃんのことを助けたい。

 

銀ちゃんの心を癒したい。

 

芽吹ちゃんの理想を実現させてあげたい。

 

夏凜ちゃんのお手伝いをしたい。

 

二人を仲直りさせたい。

 

 

 

全部できることのはずなのに、やらなきゃいけないことのはずなのに。

 

わたしは選ばないといけないの______?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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