卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋
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彼か?紳士仲間だ。

虚圏の住人 ペッシェ・ガティーシェ


14.虚圏で活動中

いつもの鍛錬場で彼はまた、斬魄刀を振るい続ける。霊圧を最大限にまで高め、撒き散らし、また高める。何度だって続ける、何度でもやり続ける。

 

そう、卍解を超えるまでだ。

 

「もうやめんか!!」

 

だからこそ、彼女は大きく萩風の心へ声を荒げた。

 

「天狐ちゃん…俺はまだ諦められないんだよ」

 

天狐、彼女は萩風の斬魄刀だ。精神世界でもボロボロにやつれた萩風の襟首を掴み上げると今度は目の前で声を荒げ続ける。

 

「そんなボロボロにまでなって何を望む!?主はもはや限界なぞとうに迎えとる!!このままでは死ぬ!間違いなく!!」

 

もうやめてくれ、悲痛な叫びが天狐から浴びせられる。必死な天狐を前に萩風は無言であった。

 

「何が主を……っ!?」

 

それが気に食わず、また同じような言葉を浴びせようとしたが。萩風の顔を見て言葉が止まってしまう、冷たいとかそういった類の目ではない。だが、この目を見てしまってはもう言葉は捻り出すこともできない。

 

「それが?」

 

覚悟を決めた、男の目がそこにはあるのだ。

 

「俺は、俺をレベルアップしないといけない。たとえ…何度、死の淵に立っていてもだ」

 

萩風は悔いているのだろう、藍染という怪物的な死神に一矢報いる事すら出来ずに、一方的にズタボロにされてしまった事に。

 

彼は強い、だが藍染はその先にいた。萩風が自信をなくしているわけではない、ただ誤った認識を再確認してしまっているのだろう。

 

もし最初の相手が市丸ならば、彼はこんな事を続ける事はなかったかもしれない。だが、それでも彼は自身が崩壊の一歩手前までを往復するのかもしれない。

 

「天狐ちゃんに相応しい、死神になるまで……折れない」

 

そしてまた萩風は霊圧の上限を解放していく、そしてまた痛みに慣れた萩風ですら絶叫するような修行が再開されていく。

 

天狐ができるのは、もはやそれを見て祈る事だけだ。

 

「本当に……」

 

だが、彼は気づいてない。

 

「主は、死神なのか…?」

 

もはや、彼の魂魄は死神とは異なるものへと変化していっている事に。

 

☆☆☆☆☆

 

殆ど何もないだだっ広い砂漠が広がっている。

 

ここにいたら何もなさ過ぎて、この男の場合は退屈で死にそうなくらいだろう。大きな白い建造物があるだけで、他には何もない。

 

「藍染は…いたら、隊長に任せるか」

 

彼にとって久しぶりの任務だ、四番隊の副隊長である萩風に任務が下されるのは本人でも何年振りかわからないほどである。というより。四番隊に任務が下されるのが少ない。あくまでも後方支援の部隊だからだ。

 

「虚って座学の授業でちょこっと見た覚えしか無いから骸骨っぽい奴ら…ってイメージしかないけど、大丈夫かな?」

 

あくまでも一人であるからこそ、呟ける独り言を呟きながら軽く砂漠の中を走り抜けていく。

 

「ここが虚圏(ウェコムンド)か、何もないな」

 

萩風は虚圏へ派遣された。本人はそもそも何処かへ派遣されるのは初めての事なので少しだけワクワクしていたようだが、何も無さ過ぎて少しずつ興奮が落ち着いてきている。

 

「負傷者探さないとな…てか、虚とかも襲ってくるんだよなぁ」

 

彼の仕事は先行してる者達の治療が仕事だ。初めての前線だが、あくまでも治療がメインだ。

 

最初は一緒に突入した者達と行動していたが、卯ノ花隊長が単独行動を許したので今は一人で虚圏を駆け回っている。

 

流石にそこらの虚には負けないと思っているからこそ、萩風の単独行動を許可したのだろう。

 

そして、虚に気をつけながら負傷者を探していると。萩風は死神ではない霊圧を感じ取る。敵か?と、立ち止まって刀に手を置くと…

 

「待て!お前は一護の仲間か!?」

 

変なのがいた。ちょっと鼻水?が垂れた虚がいた。白と紫のカラーリングと、アリとクワガタが合体したような仮面がついた人型の虚である。そんな虚を見た萩風だが、実はまた少しだけ興奮している。

 

初めての、虚だからだ。

 

「(へー、これが虚か!あれ?虚って人型のこんなサイズのやつだっけ?もしかして昔過ぎて、今はこれが当たり前なのか?人語とか喋るとか進化してんなぁ)」

 

もしくはここだけの亜種みたいな存在か?と勘違いで納得していると、どうやら目の前の虚が焦っているのに気づく。

 

「その格好、死神だな!仲間なら一護を助けて欲しいのだ!」

 

「誰だそいつ…そんなやつ知らな…あ、死神代行か。助けるメンバーの顔はわかるけど、名前とかうろ覚えだったなぁ…他は誰だったかなぁ…」

 

ちなみに、虚圏へ派遣されたメンバーは十二番隊の隊長の涅マユリ、副隊長の涅ネム、十一番隊隊長の更木剣八、六番隊隊長の朽木白哉、そして我らが四番隊からは隊長の卯ノ花烈、三席の虎徹勇音、7席の山田花太郎と副隊長の萩風の計8人である。

 

攫われた井上織姫、その女性を救出するのが一応はメインの任務であり、四番隊は怪我人の治療がメインである。

 

「まずいのだよ!流石にウルキオラ様と戦うのはまずい!超強いかもしれない私や雨竜でも無理だ!助けてやってくれ!」

 

「確か眼鏡と…え?あぁ、負傷者がいるのか?」

 

萩風は少し考え事をしてたようで、後半の「助けてやってくれ!」しか聞こえていなかったようだが、それを聞き返さずに後半の都合の良さそうな言葉にのみ焦点を当てる。

 

なぜなら彼の任務は治療だからだ、単独行動を許されて誰一人助けられませんでした!と言った場合は卯ノ花隊長から叱責されるのが確実であり、その上で同じ四番隊の隊士に情けない醜態を晒してしまうからだ。

 

彼は今、治療をしなければならないという焦燥感に駆られていたのだ。

 

「どこにいる?あっちか?向こうか?」

 

「あの上だ!」

 

そう言って白と紫の虚は上を指差した。

 

「えっと…空の上で戦ってるのか。うーん…」

 

流石の萩風も予想外だったのか少しだけ悩み込む。軽く見ても、隣にある建造物よりも遠くに穴らしきものを確認する。だが何か納得したようで萩風はその準備を始める。

 

「でも、あんた空飛べなそうだし…ん?なぜ屈伸をしてる?」

 

虚はなぜか準備運動を始めた萩風に対して「とりあえずそこの塔を登れ!そして屋上からおもいっきりジャンプすれば、いけんこともないはずだ!」と萩風に自身の思いついた作戦を伝えようとしていると。

 

「離れてろ、危ないぞ」

 

「え?あ、ちょまっ!?砂がぁぁぁ!?」

 

そう言い、数秒してから萩風の周りが爆ぜた。その衝撃で飛んできた砂が、当然虚…ペッシェに飛びかかる。

 

「ペッ!ペッ!何するのだ!私とお前の仲でもやっていい…んん?あいつは…」

 

口に入った砂を吐き出しながらも予告もなしに謎の爆破を起こした萩風に適当なシャレでも言いながら詰め寄ろうとするが、そこに萩風はいない。おかしいなぁ…と思いながら周りを見渡すが足跡すら見当たらない。

 

そこで、ペッシェは気づく。

 

「うそーん……」

 

この高さを、ジャンプして天蓋へと至った事に。

 

☆☆☆☆☆

 

天蓋、それは虚圏の上に存在する世界。暗い闇と僅かな光が差し込むだけの虚な世界。

 

そこでは白い悪魔のような存在が、片手に人を持ち上げていた。

 

存在の名はウルキオラ、黒崎一護を屠った破面である。

 

「あっけなかったな」

 

今しがた、骸となった人間を無造作に投げ捨てる。

 

その人間、黒崎一護は間違いなく絶命していた。胸に巨大な穴を開けられ、虚空を見つめ続けるその眼は閉じる事なく白く染まっている。

 

「黒崎君!!」

 

「無駄だ、確実に殺した」

 

井上がすぐに治療に取り掛かろうと黒崎の元へと駆け寄る。井上の行うそれを無駄な行為とわかっているが、ウルキオラはそれを拒もうと井上の方へと向かおうとする。

 

光の雨(リヒト・レーゲン)!!」

 

だがそこを真後ろから、技の文字通りに光の矢が雨のように降り注ぐ。滅却師である石田雨竜の攻撃だ、面制圧を行う攻撃であるがまともに喰らえばタダでは済まない攻撃だ。

 

「お前では俺に勝てない。その矢では俺を貫くことはないからだ」

 

しかし、その攻撃はウルキオラの硬質な鋼皮(イエロ)を通す事はできない。また一瞬で石田の隣へ移動すると、地面へ叩きつけるように蹴り飛ばす。

 

「がっ!?」

 

石田は直ぐに敵と自分との力の差を理解する、自分が戦った他の破面とは比べものにならない存在だと。だが、石田が次の手を打とうとしても目の前にいる悪魔の攻撃の方が遥かに早いのも石田は理解していた。

 

ウルキオラが石田雨竜を手にかけようとした時だ。

 

ドコン…と、鈍い音が響く。そこには天蓋を突破する時に舞い上がった煙で上手く確認できないが。一人の人影があり、それが徐々に晴れるとウルキオラはその男に目を見開く。

 

「…お前は」

 

石田への手は止まっている、その隙に石田は井上の元へと駆けて行く。ウルキオラがそれを横目にするが、直ぐにその標的の方へと神経をとがらせる。

 

「怪我人は三人か?」

 

「っ!?」

 

が、とがらせる前にその男は石田達の元へと高速で移動していた。そして直ぐに胸に風穴の空いた黒崎の治療に取り掛かる。隣では井上も処置を行っているが…

 

「……すまない」

 

直ぐに、男は治療を諦める。そして三人を覆うように薄緑色の半透明の結界を張る。

 

「治癒の結界だ、内側からは破れないようになってる。俺にできるのは、これくらいだ…」

 

その男、萩風カワウソはそこに居るもう一人の存在へと向き直る。それは明確な敵意を現し、萩風の元へ悪魔のような足を進めて行く。

 

「俺はこの子達の治療をする為に来ただけだ、戦いたいなら下の隊長達とやってくれないか?」

 

萩風の仕事はあくまでも治療、戦闘ではない。それは総隊長より命ぜられた任務なのだ、おいそれと簡単に破って良いものではない。

 

「何か勘違いしてるようだが、お前は確実に殺せと藍染様より承っている」

 

しかし、萩風はすぐに避けようのない戦いだと察する。こいつの敵意は、自分に全て向かっているのだと。

 

「…お前は誰だ?」

 

第4十刃(クワトロ・エスパーダ) ウルキオラ・シファーだ」

 

萩風は何を言ってるかわかってるようでわかってない顔をしているが、その胸に刻まれた4の数字を見て適当に話を繋げる。

 

「奇遇だな、俺も4番だ。俺を知ってるみたいだが自己紹介させてもらう、四番隊 副隊長 萩風カワウソだ」

 

そしてその4という数字、萩風はそれが何を現すかを何となくであるが察している様子である。藍染の手駒の、四番手という事をだ。

 

「俺は藍染様より、貴様を倒すべく力を頂いている。確実に、殺す為だ」

 

そして悍ましく、暗く、冷たく、重みのある霊圧が辺りを包み込む。それは治癒の結界によって治療中の二人も感じ取っているようだ。だからこそ、どれだけ絶望的なのか理解している。

 

「逃げてください!あいつは怪物だ!!副隊長じゃとても…!!」

 

石田が結界を突破し、加勢に向かおうとするもそれはできない。それはそうだ、これは萩風が治療を拒否するような者でも必ず治療すべく編み出した結界。外側からは壊れやすいが、内側からは余程のことでなければ壊れない物だからだ。

 

石田の抗議も虚しいままに両者は歩み寄る。

 

そして、お互いが目の前まで近づくと「戦いを始める前に、一つ質問したい」と萩風が問う。ウルキオラが「なんだ?」と答えると。

 

「藍染は卍解しなくても、お前を倒せるか?」

 

萩風がこの数字の敵を見て最初に考えた事が二つある。

 

一つはこいつの上に三人の手駒が存在していると可能性もだが、「虚は本当に人型に進化したのか…」という事。ちなみにこいつらは虚ではない、死神の力を持った破面である。

 

もう一つは、四番手と推測できるウルキオラは藍染に比べたらどの程度の実力か?という事である。

 

「苦もなくなされるだろう」

 

そして、ウルキオラはそれに即答する。その様子に萩風は「やっぱりか…じゃあ」と少し考える素ぶりを見せると。

 

「卍解しないで倒してみるか」

 

と答えた。ウルキオラも予想外の事であるのか、少し戸惑いながらも「なんだと?」と霊圧を更に鋭く叩き付ける。

 

それに対して萩風は「あー、すまん。お前の実力を疑ったわけじゃない」と言うと。

 

「これは慢心じゃない、藍染を超えるのに…最低でもお前には卍解無しで勝てないといけないからだ」

 

萩風に慢心は無い、あるのは己が上に行く為にはなにが必要なのかを考える向上心だけだ。

 

そして、腰から斬魄刀を抜いて刀を構える。

 

また、ウルキオラは緑色の霊子で固められた光の槍を携帯する。

 

「やろうか、4番」

 

「後悔するなよ、死神」




Q.好きな死神は?

萩風「女の子」

Q.苦手な死神は?

萩風「砕蜂さん…くらいかな?基本的に仲が悪い人はいないと、俺は信じたい」

Q.虎徹勇音さんと付き合いたいとか思いますか?

萩風「めっちゃ思う。てか彼女が欲しい」

Q.砕蜂さんと付き合いたいと思いますか?

萩風「美人だな…まぁ、顔とか可愛いし。彼女欲しなぁ…」

Q.卯ノ花隊長と付き合いたいと思いますか?

萩風「ノーコメントでお願いします……」




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