卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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リルトットってこんな乙女にして大丈夫なんだろうか…。


21話 霊王の心臓

「ひでぇな」

 

周りに散乱する、死体、死体、死体。

 

破面の死体が辺りに転がっている。

 

黒崎達一行が浦原喜助の手助けを受け、虚圏へとやって来て目に飛び込んできたのは惨劇の跡であった。

 

「ドンドチャッカの霊圧を感じる…向こうか」

 

チャド、織姫が辺りの悲惨さを気に病むが、時間に余裕は無いだろう。一護は先ずはドンドチャッカの救出を優先しようと前へ進もうとするが、別の霊圧を感じる。

 

「みんな、下がれ!」

 

破面ではない、そしてその存在達から攻撃が放たれていた。気づいた一護は斬魄刀でその矢を全て弾き返すと、数十人の白装束の集団を見つける。

 

「やれやれ、こんな所で出会ってしまうとは……」

 

その中の少しだけ装束がボロく黒焦げた眼鏡の隊長らしき男が集団の先頭に立つ。先程、萩風の赤火砲を受けたキルゲだ。

 

「特記戦力筆頭、黒崎一護」

 

新たな矢を番ると、集団は一斉に矢を放つ。黒崎達は各々でその矢を撃ち落とすも、防御するだけでは勝てない。

 

「虚圏を無茶苦茶にしたのは、お前達なんだな?」

 

すると一護は斬魄刀へ霊圧を集中する。チャドや織姫達は一護が何をするのかわかったようで、直ぐに後ろへ下がる。

 

「卍解 天鎖斬月(てんさざんげつ)

 

黒崎一護の卍解、それは朽木白哉の卍解である『千本桜(せんぼんざくら) 影巌(かげよし)』のような派手さも無ければ、萩風カワウソの『陽炎天狐(かげろうてんこ)』のような特殊で特異な能力は持たない。

 

「な、一瞬で…!?」

 

能力は小さな黒刀に力を封じ込め、速度の一点強化をする卍解だ。

 

襲いかかって来た全ての滅却師を切り捨てる、キルゲは円盤を取り出し卍解を奪い取れるか試していたが、結果は奪えていない。

 

既に黒崎一護の卍解が奪えない情報(ダーテン)をキルゲは得ていたが、その理由は不明だ。だが円盤、メダリオンに不備がないのは確認済み。

 

この男には、卍解を封じる事ができない。それは特記戦力でないとしても、警戒に余りある存在であった。

 

「この数の聖兵を瞬殺ですか、恐ろしい力だ。やはり、ここで倒すべき存在ですね!」

 

するとキルゲは円盤を懐に仕舞い、腰から剣を引き抜く。そしてそれに呼応するように、キルゲの体を光のヴェールが包み込む。

 

頭に天使のような輪が現れ、背には光の翼。同様に身体中を光の鎧が包み込んでいた。

 

「お教えしましょう、この力の名は滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)。貴方を裁く神の」

 

だが、その名乗りを終える前にキルゲの体を光が貫く。別に浦原やチャドが不意をついて攻撃したわけではない。その攻撃は、キルゲの後方から、黒崎達の前から来た。

 

「全員伏せろ、月牙天衝(げつかてんしょう)!!」

 

奥に見える巨人から撒き散らされた光弾がランダムに飛んでくる。それは黒崎達にも飛んできたので、一護は斬撃を飛ばしその弾をはたき落とす。だが相殺されても一護を少し後退りさせる程度の爆風が起こる。

 

「あれも、滅却師…なのか?」

 

一護も戸惑いを隠せない、遠目から見て50〜100mを超える人が虚圏で暴れているのだ。これを見て動揺しない方がおかしいだろう。

 

だが、あれを倒さねばならない。でなければ虚圏の破面を助ける事ができない。

 

(ホロウ)化した月牙天衝なら……」

 

しかし、一護の全力でも明らかに火力が不足している。このまま無策で突撃しては無残に返り討ちだろう。

 

それを見兼ねた浦原も一護の隣へ来る。

 

「一緒に戦いますよ、黒崎さん。あのデカイのは、一人で尸魂界を落としかねない程の力を持ってます。とりあえず、策を練るのでお待ちください」

 

ペッシェや織姫達はドンドチャッカ救出の為に護衛も兼ねて避難させる。あの怪物の前に、手数は然程意味をなさないとの浦原の判断である。よって、これから立ち向かうのはチャド、一護、浦原の3名だ。

 

だがこの三人でも正面から戦えば勝機はない。遠くから見るだけでとてつもない霊圧を放ち、隊長格の死神が束になっても勝てるかどうかわからないような怪物だ。

 

そして一護も浦原も、そこで二つの霊圧を感じ取る。

 

「(誰かが戦って…いや、逃げてるのか。確かに、アレを正攻法で倒すのは難しい。予想が正しければ……霊王の欠片を持ってるのか)」

 

反撃をしているようだが、その部位がパワーアップしていく。そんな怪物相手に、浦原が策を練るのにかかった時間は観察を始めて2分もかからなかった。

 

☆☆☆☆☆

 

萩風はかつてない程に本気で戦っていた。だが、戦況が劣勢なのは誰の目にも明らかであった。

 

「破道の五十七 大地転踊(だいちてんよう)

 

「ちっ」

 

大量の岩石を飛ばすも腕を薙ぐだけで全て破壊される。

 

「破道の九十三 瞬天閃降下(しゅんてんせんこうか)

 

「効かぬと言った!」

 

光の裁きを与えても、耐えきりパワーアップし更に萩風を追い詰める。

 

火の球をぶつけても、氷の刃をぶつけても、どの攻撃でもジェラルドに致命傷を与える事はできていなかった。いや、致命傷は与えている。だがそれを上回る回復力を持っているのだ。

 

卍解が使えない、それは萩風にとっては最も強力な手札を潰しているのであった。

 

「我は奇跡(ザ・ミラクル)・ジェラルド!与えられた聖文字はM!!我は与えられたダメージを、神の体へと変換する!」

 

高らかに宣言する滅却師の体は遂には40mを超え始め、攻撃もあたりを巻き込むような派手なものに変わって来ていた。

 

「流石は副隊長!我によくダメージを与えた!だが、神を殺す事なぞ出来はしない!!」

 

萩風の鬼道は全て弾かれ、もはや勝ち筋は無い。萩風の全ての攻撃を弾いたジェラルドに、もはや負ける可能性は無い。

 

「お前、勝ったと思ってるだろ?」

 

そう……ジェラルドが、思うのは無理もなかった。どこからどう見ても、ジェラルドに敗北する可能性は思いつかない。

 

「俺はさっきからダメージなんて与えてない、それどころか攻撃もしていない」

 

ジェラルドは萩風の言葉を理解しても意味がわかっていないようだ。

 

萩風はダメージを与えていないと言ったが、現にジェラルドの体はパワーアップし、霊圧量も増えている。適当な事を言って勝負から逃げようとしている、ジェラルドはそう考えると拳を振り上げる。

 

「な、我の腕が…!!」

 

だが、それはジェラルドが振りかぶろうとすると簡単に千切れ飛んでしまった。萩風に動きはない、ジェラルドは直ぐに腕を再生させようとする。

 

「馬鹿な!我の能力が……何故だ!」

 

だが、腕の再生は起こらなかった。

 

「俺は滅却師の事を調べた。お前達の身体能力や体内構造、能力その物にも。十二番隊から、ちょこっと拝借してな」

 

萩風の手には注射器が一つある、それは既に空っぽだが中には僅かに緑色の液体が残っている。名を『従属薬』、萩風が十二番隊の研究資料を拝借し、独自に作り上げた薬だ。

 

萩風は薬剤の調合に関しては、自身の右に出る者はいないと自負している。確かに回道では卯ノ花烈や山田清之介に劣っている、だが萩風は隊長格になる為の実績を作っている。

 

それの一つが彼の薬剤師としての実力。

 

薬剤の調合術だけは、萩風が誰にも負けない武器である。

 

「貴様等の感覚器を狂わせる薬を調合した。鼓膜、耳小骨、痛点、霊覚、それと俺等死神で言うところの魄睡に効く薬だ。効果は…対象が想像した事を起きたと錯覚させる」

 

鼓膜や耳小骨は音を聞くのに重要な器官であり、痛点は触覚の事だ。霊覚とは霊圧を感知する器官であり、魄睡は霊力を生み出す器官である。

 

網膜の視神経を操る薬を作っても良いのだが、それでは萩風以外にも使えてしまう。この薬は萩風の待つ斬魄刀、天狐の能力を使う前提とし作り上げたものだ。

 

「お前はダメージを受けていると錯覚していた。だが、これだけなら意味はない。体に起こった異常は7分を超えると平常時の状態に戻る、すると…そうなる」

 

ジェラルドの空虚な体がボロボロになって崩れていく。足が砕け、体がヒビ割れる。元からダメージなぞ無かった、そう錯覚していた体を正気に戻した結果が今のジェラルドだ。

 

神の体の交換が無かったことになり、元に戻ろうと必死になっているのだ。

 

「我は…我は!!」

 

後、勘違いして欲しくないが。萩風はジェラルドに対応した薬を作ったわけでも、ジェラルドという存在を予期していたわけでもない。

 

元は萩風が滅却師の霊子を服従させる能力を逆手に取る事を考えて作った薬だ。

 

霊子を服従していると錯覚させるが、力は実際には発動している。では力をどこから持ってくるか、それは魂魄を削って持ってくるのだ。そう錯覚させるように1日で作り上げた、萩風特製の薬だ。

 

デメリットは量産できず、3つしか作れていない事だろう。そしてその全てを巨大化したジェラルドに使用してしまったのだが。

 

これはまさしく、萩風の対滅却師の切り札である。

 

「……殺すってのは、中々辛いもんだな」

 

初めての殺人。虚すら狩った事がない萩風に、それはのしかかっているようだ。

 

「一人で戦うのも、辛いんだな……」

 

崩れ行く骸を見届けた萩風は、次は卍解を取り返しにリルトットの元へと向かうのだった。

 

☆☆☆☆☆

 

結界に閉じ込められた少女、ここだけ見たら俺はしょっ引かれるかもしれない。

 

先にやらかしたのは彼女なので問題無いだろうけど、俺に対してなんか怯えてるのか戦意が喪失してる女の子を閉じ込めてるんだよなぁ……しょ、しょっ引かれないよな?不安になってきた。砕蜂隊長とかに見られたらキルされそう。

 

「あの眼鏡猿は帰ったか?」

 

「……知るかよ」

 

何だろう、女の子からそんな怯えたような諦めた目で見られると色々と気分が複雑なんだが。俺がこの子を汚したみたいで申し訳ない気持ちが現れて来るんだが。

 

とりあえず置いとくか、天狐ちゃんを取り戻すのが最優先だ。

 

ちなみに、さきに大男の滅却師をやった理由は簡単だ。卍解を返して貰うのに間違いなく邪魔をして来るから。

 

眼鏡猿は大した事無いけど、あれは強い。なら先に倒しておけばいい、天狐ちゃんの始解の力は残ってたから一応は倒せた。

 

気持ち的には直ぐにでも返して欲しかったが、あの滅却師は何というか嫌な予感がした。その予感が何と無くとかじゃなく、確実に何か持ってるって感じた。

 

浮竹隊長の霊圧を目の前で感じた時、似たような感覚があった気もする。

 

その予感は何かはわからないが、あの滅却師が無傷で戻ってきた時に体が反応していた。結局のところ、理由はわからないままなんだけどね。

 

「これに、入ってる……」

 

その円盤を俺は受け取ると、中から俺の中に力が解放されていく感触がした。精神世界を見てみると天狐ちゃんも居た!抱きつこうとしたけど、何故か「邪魔じゃ!今は考え事がある」と断られた。なぜだ!?俺は寂しかったのに!!……駄目だ、俺は重たい男にならない。

 

そう、クールになるんだ。

 

仕方ないので現実世界に戻る。

 

「……終わりだ」

 

すると、なぜか空気が冷え切ってた。

 

彼女の目が死んだように更に暗くなってた。

 

「……なんだよ」

 

こっちのセリフだわ、どうしたらこんな強姦された女の子みたいな雰囲気を醸し出せるの?こことかエミルーちゃんに見られたら誤解しか起きないんだけど。

 

「俺に捕虜の価値は無いし、あっても今無くなった。もう、終わりなんだよ……」

 

何だこのめんどくさい女の子。でもほっとくつもりは元よりない、滅却師なら敵側の情報も知ってるだろうし。

 

とりあえず場所を移そうと思い手を引こうとした時、真後ろで嫌な雰囲気がする。これは……さっきも感じた奴だ。

 

「…マジかよ」

 

死んだ事を確認できたと思ったんだけど、なんでだ!?

 

「なんで、生きてるんだよ。あの滅却師…!」

 

遠くで体がつながり、復活していくジェラルドが見える。しかも、さっきよりも強いのがわかる。すると俺の後ろにいる女の子も乾いた笑い声を出している。

 

「はっ、はは……バカかよ、あの『霊王の心臓』が死ぬ筈ねぇのに。負けたと思って、陛下に殺される前に殺されるのかよ……」

 

凄い不安な事を言われた気がする。でも聞く間も無く、大男はエネルギーを撒き散らす。

 

ウルキオラ達には結界は張れてるから、大丈夫かもしれないけど。当たれば並みの奴は死ぬ。そんな破壊の光弾。

 

そして、それは俺達の方へも飛んでくる。仕方ないので、魂が抜けた人形みたいになってる女の子を背負って避ける。ってやばいな、向こうも俺達の事に気付いたのかダッシュで追いかけて来た。

 

「なっ、お前!離しやが「黙ってろクソガキ!」っ!俺はガキじゃねぇ!」

 

すると俺に背負われたのをこの子が気づいたようだ。だが、何処と無く元気が薄く感じる。

 

「張る見栄も胸も無いだろうが、比喩抜きで」

 

「なっ、こいつ…!」

 

「ついでに背伸びする程の背も無いよな、比喩抜きで」

 

「お前、俺の気にしてる事を……!!」

 

抱きつく締まりが強くなる。地味に辛いが、女の子に元気が出てきたようで何よりである。女の子のハイライト消えた目とか、俺の精神衛生上よろしくない。

 

でも、今は気にする余裕が無くなりつつある。

 

それと、今の大男は見境なく俺だけでなくこの子も殺す気だった。間違いなくだ、流石にそんなの見過ごしてたら夢見が悪過ぎる。じゃなきゃあんな無差別な攻撃をしてこない。

 

というか、女の子の!それもこんな子供を殺そうとするとは、滅却師には人の心が無いのか?!

 

「何で助けた!敵だぞ!?俺がお前を殺すと思わねぇのか!?」

 

「殺気があるならとっくに投げ捨ててるわ!!もう自分は死んだみたいな顔すんな!…っ!くそ、なんでデカいのに速いんだよ」

 

いや、殺意は俺の発言で来てたけど。元気出させる為だから!俺なりのちょっとした心のケアだから!

 

というのは置いといて、この大男。ジェラルドは強い、そして俺を殺すのに手段を選んでない。それにこの子が巻き込まれる可能性は高いし、この子は陛下に殺されると言って絶望してたんだ。

 

俺を殺して名誉挽回のチャンスをする可能性が無いように話してたんだ、恐らくもうこの子は滅却師側で生きていけない。そんなニュアンスを感じたからな。

 

「『敵でも味方でも、救える命は全て救う』俺の師であり隊長の言葉だ。俺はお前を殺すつもりもないし、自殺紛いの事をさせるつもりもない」

 

俺の後輩で俺より回道凄くてめっちゃ出世…というか他所に引き抜かれた山田清之介君なんかの感性はヤバイけどな。目の前でどんなに死にたそうな奴がいても必ず生かす、そいつの意思は関係ない。

 

そいつよりはマシだろう。

 

後さっきの言葉、師匠である卯ノ花隊長は『敵でも味方でも、救える命は全て救う』の後に『殺す奴は全員殺す』っておっかない言葉も付くな。

 

……あれ、四番隊って変人ばっかり?何か俺も片足くらいは突っ込んでそうだけど、大丈夫かな…婚活とかに響かないかな?

 

「俺はお前の卍解取ったんだぞ!?許せねーだろ!」

 

「何許されてると思ってんだよ!俺の大切な子を奪ったんだ、後でやり返すに決まってんだろ!」

 

敵の情報、洗いざらい吐いて貰うに決まってんだろ。天狐を一時的にとはいえ奪ったんだ、仲間を裏切ってでも吐いて貰う。

 

「へ?……お、お前変態かよ!」

 

「何の話してんだよ!?」

 

てか、こいつに構ってる場合でもない。スピードは俺が少しだけ上、でも流石にこのままだとやられる。てか、卯ノ花隊長との約束の時間まで間に合わねぇ!

 

鬼道で足とか攻撃しても、蚊に刺された程度にしか気にしてないのか化け物じゃねぇか!なんでこんな奴相手しなきゃいけないんだよ!

 

誰か、助けて!童貞のまま流石に死にたくないんだけど!

 

「体は奪われても、俺の心まで奪わせや……!!」

 

「本当に何の話してんだよ!?」

 

このままでも埒が明かない、とりあえず奴の動きを止めなきゃどうしようもない。だけど、この子を背負いながら戦える相手じゃない。

 

「ダメ元でも卍解を「無理だ、あいつも卍解を奪える。あいつが100人に増えるだけだ」ちっ、知ってたよ!」

 

やっぱり滅却師は全員卍解をあの円盤で奪えるのか。てか、能力までわかんのかよ!

 

……あれ、何でこの子俺の手助けしてんの?確かに、滅却師側で生きていけないのかもしれないけどそれは死神側で生きていくとは同義じゃない。

 

むしろ死神は敵だ。滅却師も敵になっただけで、俺に手を貸すか?

 

「俺は捕まったらどうせ殺される。だから……お前に命を預ける」

 

顔は見えないけど、耳元で相当覚悟をした上での言葉が聞こえた。

 

一人の少女がこれからの人生を決める覚悟をした。急に足が重くなった気がする、何というか……命の重さみたいのがズッシリと重量化したんだろう。

 

「体重は軽いのに重たい事言いやがって……。重たい女は嫌われるらしいぞ」

 

「あぁ!?お前、あんだけ俺に口弁を垂れた癖に……!」

 

後ろで何か暴れ始めそうな雰囲気を感じる。ここで暴れられたら最悪、仲良く死にかねん。

 

「任せとけ。女の子の一人や二人を守れないで、副隊長は名乗れねぇんだよ」

 

「……ぅ」

 

……あれ、何も言わなくなっちゃたんだけど?ちょっと震えてる……?

 

もしかして「副隊長だったのか……隊長じゃないのかぁ……」みたいな幻滅したのか?やめて!そんな子供の純粋な奴!耐えられないから!別の意味で足が重たくなるから!

 

俺の背中ってそんなに頼りないのかな!?

 

「っ!!」

 

すると突然、桃色の無数の光弾がジェラルドへ殺到する。それは奴に当たると同時に爆ぜ、奴の頭部や腕部を粉々に吹き飛ばす。

 

「今のは…」

 

今のは……『破道の九十一 千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)』か!?

 

俺は鬼道で使える九十番台の破道は三つしか無い。いやこの三つしか覚える為の巻物見つかんなかったからなんだけどね?

 

他の九十番台の知識程度はある、でも実物は初めて見た。というか、誰が使ったんだ。九十番代は素人が簡単に覚える事ができる代物じゃない筈だけど……。

 

「お久しぶりですね、萩風さん」

 

「何で貴方が…ここに?」

 

浦原喜助(うらはらきすけ)、元十二番隊の隊長。今は現世で活動してるらしいが、何故ここにいるんだ?

 

あ、てか死神代行の黒崎一護君とかも居る。マジで何でいるんだ?

 

「現状は把握してます」

 

俺は把握できてない。すいません、何が起こってるかもよくわかってないです。

 

「それでいくつか萩風さんに質問がありますが、まだ戦えますか?」

 

「まだ戦えますよ…でも、あれに卍解無しで勝てる手があるんですか?」

 

正直、俺が本気を出せても無限に生き返る奴を殺す方法なんて塵一つ残さずに消し去るくらいですよ?卍解封じられてたら流石に無理だ。

 

とりあえず、女の子を元旅禍の大男に渡す。チャドって呼ばれてる子だな。流石にここからは危なさそうだし、この子には死なれるわけにはいかない。

 

ドリスコール、陛下、こいつらの情報だけでも話してもらわなければ困る。

 

「その子を頼むぞ、今だけでも絶対に守ってくれ」と伝えておき、俺は浦原さんの隣へ行く。更に隣には黒崎君、どうやら彼も手を貸してくれるようだ。

 

二人の手には既に斬魄刀が握られている、だが手数が増えた程度で勝てる敵ではない。

 

それでも、俺の隣にいる浦原喜助さんは天才だと聞いてる。何でも涅隊長よりも上の天才。凡人である俺なんかの思いつかない策を練っていたのだろう、目の前で今にも立ち上がりそうな巨人がいる中、俺へ話しかける。

 

「萩風さん、『ーーーー』は使えますか?」

 

「威力は落ちますが、『ーーーー』なら使えます。でも、それで本当に……」

 

『ーーーー』でも、勝てるのか?それで消し炭にでもする気か?だが浦原さんの策ならこの程度じゃなさそうだ。そういう、自信のある眼をしてる。

 

「えぇ、『ーーーー』が使えるなら。今から作戦を伝えます」




本屋に行かないと、売り切れてないのを祈る。

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