卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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資格受けてて遅れました。取り敢えず株主に帰属する当期純利益は見たくない。2月に再チャレンジとか、見たくないなぁ……

あ、それと12月4日にBLEACHの小説の完結作が来るみたいですね!二巻は中々厚みがありましたが、楽しみです!


22.5話 希望は何処か

路地の裏に隠れる死神が、そこにはいる。一人は左の脇腹の辺りが赤黒く染まった羽織を身に付ける長い白髪の死神。もう一人は死神にしては袖が無い珍しい服装であり、頬には数字の『69』が刻まれている。

 

十三番隊の隊長である白髪の死神、浮竹十四郎は満身創痍であった。隣では浮竹程では無いがボロボロの九番隊の副隊長である檜佐木修兵が周りを警戒している。

 

今の浮竹は強力な電撃技を食らってしまい、腹に大きな穴が空いている。唯一の救いは火傷によって止血は行われている事だが、これ以上戦うのは難しいだろう。

 

そもそも、浮竹は体が弱い。これは隊首会を欠席する程に重く、今日も良いわけでは無かった。だからと言って、200年以上も隊長を続けている浮竹は簡単に敗れる死神では無い

 

「申し訳ありません、俺を庇って……」

 

「気にするな、俺も防ぎ切れなかった……」

 

この攻撃は檜佐木を庇って負った傷である。双魚理で防ぎ切れなかった攻撃が貫通したのだ。

 

檜佐木修兵は決して弱い死神ではない。むしろ、斬魄刀の破壊力は始解にしては大きい。隊長程では無いが、間違いなく強者だ

 

この傷を負ったのはどちらも悪くない。真の悪は二人が相対した、卍解を使う滅却師だ。天候を操る、卍解を使って来たのだから。

 

「(最悪だ……元柳斎先生が殺されて、護廷十三隊の士気が目に見えて落ちてる。俺はまともに動けない……いや、俺だけじゃない。京楽や他の隊長たちの霊圧も弱ってる。せめて、敵の幹部を一人でも倒せれば……)」

 

そして浮竹は自身の体の状況、護廷十三隊の状況を冷静に分析する。現状は絶望的だ。卍解は使えない、総隊長は死亡、ただただ蹂躙されている。一方的に、蹂躙されている。

 

増援は期待できない。幹部格を一人として落とせていない。既に副隊長にまで被害を出している浮竹達死神とは違うのだ。

 

「(このまま、状況が好転するきっかけが無ければ……)」

 

護廷十三隊は、完全敗北する。

 

だが、そのきっかけを生み出せない浮竹は奥歯を噛み締める。どうすれば良いのか、他の隊長達も考えているはずだ。現状を打開できる、一手を。

 

卍解を取り戻せる、卍解を奪うのを阻止する。そんな方法があれば間違いなく希望となれるだろう。

 

だが、今すぐに出来るほど楽ではない。

 

どうしたものかと頭を抱える浮竹だが、そこで二人は針で刺されたような鋭い霊圧を感じる。

 

「この霊圧は…!!」

 

檜佐木はその霊圧に困惑している。そう、困惑しているのだ。歓喜ではなく、困惑だ。その霊圧を感じ取って、誰の霊圧なのかわかる死神は恐らく少ない。何故ならこの霊圧を放つ死神は本気で戦う事なぞ殆ど無く、普段は戦うフィールドが違う。敵を倒す死神ではない。

 

本来ならば待機命令を受けていたはずの死神だ。

 

「卯ノ花隊長か……」

 

卯ノ花烈、護廷十三隊の中では実力を疑問視する者が多いが護廷十三隊では指折りの実力者である。

 

浮竹は彼女の実力を知る、数少ない死神だ。恐らく、護廷十三隊において彼女以上の剣技を扱える死神は存在しないだろう。鬼道の腕もあり、霊圧も高い。そこらの死神が束になっても戦いにすらならないような死神なのだ。

 

初代剣八、初代最強である。

 

「これが、卯ノ花隊長の霊圧……!?何て、力強い霊圧なんだ……」

 

浮竹は檜佐木の目を見ると、そこに希望が見えたのに気づく。そしてそれは檜佐木だけではないようで、護廷十三隊の死神達が鼓舞されているのにも気づく。

 

だが、浮竹の顔色は良くなかった。体調の問題ではない、檜佐木の目を見ればわかるのだ。

 

「これでも、勝てるのか……?」という、諦めにも似た敵の強大さに希望が霞んでいるのだ。だからだろう、総隊長が出陣した時に比べて護廷十三隊の死神達から強い覇気が感じられない。

 

「(時間の問題だ。卯ノ花隊長と言えど元柳斎先生を殺した奴に卍解無しで戦うのは……何か、他の希望が無ければならない。このままでも、駄目だ)」

 

いくら初代剣八と言えども、相手が悪い。確かに卯ノ花は強い、だが卍解を封じられて戦える相手ではない。さらに総隊長の卍解を奪われているのだ、剣技だけでどうにかなる域を超えているのだ。

 

「(今の護廷十三隊には、卯ノ花隊長以上の希望が無い。鬼道に長けた死神でも、戦えるかどうかすら怪しい相手だ……隊長の俺が、いつまでも休んでいられない……!)」

 

そう考えると居ても立っても居られない、浮竹は無理矢理に起き上がり立ち上がる。

 

「浮竹隊長、今は動かないでください!隙を見て四番隊に」

 

だが隣にいる檜佐木がそんな状態の浮竹に無理をさせるわけにもいかない。浮竹に休むように手を貸しながらも座らせようとするが、そこで向かおうと考えている四番隊の方向に嫌な気配を感じる。

 

「この霊圧……!!あの野郎!!」

 

それは浮竹も感じ取っている。数は雑兵を含めれば200人を超えるが、真なる脅威は5人だ。その中でも檜佐木が熱り立つのは先程まで戦い浮竹に重傷を負わせた滅却師だ。

 

「卯ノ花隊長が居ない状況で、今の四番隊は不味い……!!」

 

そう言うと、浮竹は言う事を聞かぬ体に鞭を打ちながら駆ける。そしてその後に檜佐木も追従する。各所で隊長や副隊長を負かした滅却師が集結する、四番隊舎へと全力で。

 

「間に合ってくれ……」

 

檜佐木がそう呟くも、既に戦闘が始まっているのに心の中で舌打ちをしていた。

 

☆☆☆☆☆

 

皆を集めた虎徹勇音は隊長と副隊長の不在を皆に告げた。先程から始まったユーハバッハとの戦闘で放たれた霊圧で、勘づいている隊士もいるようだが、副隊長の不在と隊長が敵の首領と戦っていることに関しては大きな動揺を生む。

 

副隊長は殺されたのではないか?と思う者も多いようで、前者には絶望感に包み込まれていたようだが、後者は隊長が戦えること、そして感じる霊圧が卯ノ花隊長の本気ということに驚愕しているようだ。

 

卯ノ花の目的、護廷十三隊の希望へと一時的になる事は成功しているようだ。今の護廷十三隊は大半の隊長格が敗北、もしくは劣勢なのだ。これ以上、敵に好き勝手をさせない為にも『命を賭し、総隊長の命令を初めて背いた』のだ。

 

だが、これは護廷十三隊の精神的な問題だ。今の虎徹達四番隊の抱える問題は希望などではなく、自身の命を、護廷十三隊の命を失うような事態であり、最悪と言って差し支え無い程に深刻である。

 

「他の隊への応援要請はできましたか?」

 

「先程、十二番隊の隊舎も襲撃されたようで連絡がまだついていません!ですが、難しいかと思われます……」

 

「ありがとうございます。引き続き対応を続けてください!」

 

虎徹はいつもの弱々しい声を出さずに、できるだけ気丈に振る舞う。慣れていない行為なのか、彼女の体がガタガタと静かに小さく震えているが、それを押し殺し、言うことを聞かせるように声を張り上げる。

 

「虎徹三席、我々はどうすれば……」

 

不安そうな隊士達の声が辺りから聞こえる。無理もない、外から感じるのは数百の滅却師の兵士だ。

 

更に率いるのは隊長格に引けを取らない滅却師が5人だ。この群を見て、打つ手がないのは誰の目にも明らかだった。それが、全て四番隊へと立ち塞がる隊士達を斬り伏せながら突き進んでいる。

 

今起こっているのは、護廷十三隊の戦闘後の隊士達の命に関わる問題なのだ。ここを捨てるのは簡単だ。だが、捨てては救える命をすくえなくなる。しかし虎徹勇音がどう頑張ろうが勝てないのはわかっている。

 

だからと言って、諦めるわけにはいかない。虎徹は何をしてでも守り切る覚悟を決め、檄を飛ばす。

 

「毒ガスで時間を稼ぎます!私の研究室か、足りなければ萩風副隊長の研究室から『赤い血のような黒さのある薬瓶』と『白緑の蛇の浸る白の薬瓶』を持ってきてください!調合は7:3で、解毒剤の『黄色の魂魄草が浸る透明な瓶』も確保してください!私が『天挺空羅』で伝令を送ります!遅滞戦闘に専念して、無理をしないで!絶対に、敵を倒す事を考えないでください!」

 

虎徹は三席として、副隊長と隊長が居ないこの場所を守る使命があるのだ。いつものおどおどとした態度は無い、あるのは皆を導く席官としての堂々とした姿である。

 

気づけば、体の震えも止まっていた。

 

「ですが、それで何を待つのですか!?」

 

だがそれで隊士達も、虎徹も騙されるわけがない。各所で護廷十三隊の隊士達が敗北したからこそ、ここまで攻め込まれてしまっているのだ。増援なぞ、来るはずがない。

 

そもそも、虎徹の知る限り四番隊にある薬瓶で調合しても大した効力を持つ毒ガスを撒けない。少量を吸って殺傷できるほどの毒ガスは作れない。作れても、時間がない。そもそも、撒けても焼き払われたり、散らされたりはするのは目に見ている。本当に時間稼ぎにしかならないのだ。

 

涅マユリの卍解である『金色疋殺地蔵』のような力は持たないし、広範囲に散布しても解毒剤が足りなければ護廷十三隊の首を絞めてしまう。八方塞がりの中で虎徹の導いた策では、四番隊は勝てないが延命はできる。

 

いや、今の虎徹には延命しか考えていない。他の隊が惨敗してるのだ、四番隊が勝てるはずが無いのはわかってるのだ。

 

「必ず増援が来ます。それまでここを死守するのです!」

 

だからこそ、虎徹はそれを押し通す。気の利いた言葉は無い、今の状況を好転させるような考えもない、今の虎徹にできるのは信じて待つ事だけなのだ。

 

少なくとも、一人だけ増援にあてはある。だがそれだけで事態が好転出来るほどの高望みはしていない。敵の軍勢を前に皆の心が折れかけている、他の増援が来るまでの支えになれるなら良いのだ。

 

だが、彼ならば何とかしてしまうのでは無いか?という確信めいた何かを感じている。四番隊の、虎徹の希望は隊長である卯ノ花だけではない。

 

「更木隊長の治療は田中四席にお任せします。そして、戦える者は私と共に時間を稼ぎに行きます!ついてきてください!」

 

自身の斬魄刀を腰に下げ、四番隊の中で比較的まともな戦力を連れて行く。だが、比較的だ。

 

四番隊は後方支援、他所の隊に比べれば貧弱としか言えない。そのせいで隊長や副隊長ですら『弱い』と言われているのだ。

 

だが、虎徹は知っている。

 

隊長と副隊長の本来の実力を。

 

「(早く戻って来てくださいよ、萩風副隊長……!!)」




Q.貴方の考える理想の女性はどんな方ですか?

萩風「少し頭が悪くて……天然とは違うんだよね。無垢な幼さがあるって感じか?胸は大きい方が好ましいけど、顔は美人タイプより可愛いタイプ。抱きつかれるより抱き付きたい感じで……今のところ、タイプにど真ん中なのはエミルーちゃんです」

Q.死神では?

「死神なら、虎徹さんかな。あと最近になって……砕蜂さんが可愛く感じ始めたんかな。砕蜂さんは近々誰かと婚姻を結ぶ予定って風の噂で聞いたから、取り敢えず相手を嫉妬(薬剤)で不幸せにしたら殺す。あ、顔はタイプだよ。最近は彼女の色んな面が見えて……あれ、もしかして死神の中だと一番好みに近い性格かもしれない。意外と可愛い性格だし……俺が隊長でイケメンならなぁ……」

Q.砕蜂さんから婚姻を申し込まれたらどうしますか?

「カウンセリングですね。どう錯乱したかはわかりませんが、辛いことがあったのかもしれませんし……友人として親身になって、相談に乗りたいと思います」

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