卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋
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最初見た時はこいつから大した才能も力も感じなかった、霊王様が気にかける理由もな。

零番隊第一官 東方神将 麒麟寺天示郎


3.斬魄刀への道

斬魄刀って、エロくね。何というか、響きが良いよね。

 

ザンって女の子の前に現れて、パクっと平らげて、トウッてドッキングする。

 

斬魄刀の鍛冶師が聞いたら、いや…全ての死神が聞いたら「ねぇよ」と答えるような事を考え続けて何年たったんだろうか。

 

「お主、わっちが来てからも心の声が喧しいのぅ」

 

そしてカワウソの前に座る少女もまた「ねぇよ」と答え「殺すぞ」と答えるだろう。

 

そう俺の斬魄刀、名は天狐だ。て○んこじゃないぞ、てんこだ。見た目としては花魁さんみたいなのに獣耳と尻尾が九つある。

 

超可愛い、ぺろぺろしたい。俺の心の中のオアシスです。

 

「いつか殺す」

 

もう、ツンデレだなぁ。

 

「炙り殺すぞ、ゴミが」

 

はい、すいませんでした。調子に乗りました、ごめんなさい。痛いのは嫌です!女の子に嫌われるのはもっと嫌です!だって仕方ないじゃん!可愛いもん、美少女だもん!ちょっとくらい調子に乗っちゃうじゃんか!これからも大切にしますから許してください!!

 

「…ふ、ふん!精進すると良いわ!」

 

あ、照れてる。可愛い。ちょろい。

 

「ん?主はなんと言った?」

 

まぁ心が癒されましたわ、とりあえず現実にでも帰るか。少しだけお別れを告げて現実に帰ります。

 

現実では卯ノ花隊長の私室の前に居ます、今回は呼び出しじゃないよ?とりあえず軽く声をかけますか。

 

「萩風ですか、入りなさい」

 

そしてその数刻後に凛とした声が響く、やはり大人の女性の色気って良いよな。

 

「失礼します、卯ノ花隊長。ご報告があります」

 

……さて皆さんお気づきになったかと思うが、斬魄刀を手にいれました。長かったなぁ……こんな15歳くらいの子供が考えそうな事を考え続けないとやっていけない程に長かったわ。

 

「やっと手に入れましたか」

 

どうやら向こうも察しているようだ、俺が報告すことなんて殆ど無いからね。

 

卯ノ花隊長も祝福してくれている。俺は四番隊に配属されてから特に親しい仲になれた人は居なかった、何というかここに来るのは戦いから逃げた人が集まる的な風潮があるからなのかもしれない。

 

俺がここに来た理由とか合法的に女の子の死神と触れ合えるからだからなんだけど、周りとの温度差がやっぱり大きいのかもしれない。

 

とまぁ四番隊で話せる仲は卯ノ花隊長位しか居ない、そしてその卯ノ花隊長だけど。

 

どこか疲れた顔もしてる気もする、気にしないでおこう。

 

だって……

 

「100年でやっと手にいれてくれましたか……」

 

この視線が痛いから。

 

いや、頑張ったんだよ?俺は頑張ったんだよ!?5年越えてから残念そうな目を向けられてたけど、その時は回道でそこそこの成績残してたらオーケーだったから!ノーカンだから!ノーカンだから!!

 

でも天狐ちゃんが中々名前を教えてくれなかったんだよ!始解をモノにしろって言われてこんなに掛かるとは思いもしなかったんだよ!?

 

最初の50年なんだけど、そもそも修行場まで走って往復して帰るだけになってて辛かった。斬魄刀の修行?ほとんどなかったな、瞬歩は速くなったと思うけど。

 

あ、この時から視線が痛かった。他の隊士からもな!

 

その後の40年は、洞窟で殆ど這いつくばってた。てか今も立ってるのがシンドイ、そんな中で刀を振り回すとか無理ですよ。そんな感じで時間は流れまして。

 

最後の10年、刀を振れるようになってたら女の子が現れた。なんか幻覚が見えるほどに疲れたのかと思ってたら斬魄刀の化身?みたいものだった!

 

そして結婚を前提に付き合おうとしたらぶん殴られた、それが今の天狐ちゃんである。そこで斬魄刀になったんだけど、そこから直ぐにだけど、なんとか始解をできるようにもなった。

 

天狐ちゃんの力が発揮される、つまり俺と天狐ちゃんが一つになると……なんか力が漲ってきた、卍解したくなってきたぜ!できないけどね!

 

で、俺の霊圧も入隊した時よりも高くなってる。でも、そうしたら俺の霊圧ってそこらの死神より高い気がするんだよね。で、その事を例によって先輩に相談したら「みんな力は隠してんだよ、解放してたら煩わしいってのもあるし、恥ずかしいって思われるぞ。常識を持ってない可哀想な奴ってな」と聞いたので、霊圧は隠すようにしてます。

 

自惚れるなよ、まだその時じゃない。最低でも、卍解できないと自惚れねぇよ。

 

「萩風、私から一つ話があります」

 

「あ、はい。なんでしょうか」

 

「実は席官に空きが出ているのですが、どうでしょうか」

 

…席官、あの席官か?選ばれし者だけがなれる、あの席官か!?

 

あれ…って事は、まさか?

 

「待ってください、俺に…斬魄刀を解放しろって事ですか?」

 

卍解をもうご所望ですか、無理ですよ。俺に卍解は早すぎますよ!?彼女にも相談したよ、そしたらあと3回くらい死神としてやり直したらできるんじゃないかしら?とか笑ってたんですよ!?

 

「いいえ、貴方の回道の腕は確かなものとなってきています。これはお願いですね、席官になりませんか?」

 

と思ったが、どうやら卍解は望んでないらしい。これは俺からすれば願ってもいない。だが俺は直ぐに。

 

「お断りします」

 

そう、言った。

 

「俺はまだ、未熟です。俺がそこに着くのは、俺が斬魄刀に認められてからです、それは譲れません」

 

ちゃんと理由はある、俺の下半身は不誠実だけども頭は誠実なのだ。

 

そんな特例のように席官になってみてよ、周りは納得しねぇよ。「卍解もできねぇ奴が何を偉ぶって…」ってなる未来が見えます。

 

回道だって他のヤル気の無い有象無象に比べたらできるだけだ、合法的に女の子に触れ合えるのに何で鍛えないのか理解に苦しむよ。まぁほとんどが野郎だからなんだけど、数少ない少女達を治す俺のゴットハンドはまだまだ成長させたいよ。

 

でも、やっぱり斬魄刀を解放しないと…卍解できないと相応しくないんだろうよ。

 

俺は堂々と胸を張ってなりたい、始解どころか斬魄刀にすらできなかった俺が100年で始解を会得できたんだ。

 

なら、その3倍だろうが4倍だろうががんばるさ。女の子にちやほやされる未来がこの先にあるなら、その先に俺は必ずいるんダヨォ!

 

そしてその気持ちを汲み取…いや、取られたら困るんだけど。卯ノ花隊長は何とか納得してくれたようだ。

 

「わかりました、ですが斬魄刀を鍛えるだけでは席官にはなれません。今後、私が貴方の回道を見させていただきます」

 

☆☆☆☆☆

 

私、卯ノ花 烈は彼をかっている、それはなぜかと言われたら目に力があるからだろう。四番隊に配属される死神の目は基本的に、死んでいる。死神として死んでいるのだ。

 

四番隊に配属されてから目が死んで行くものも多い、特に新入隊者には顕著に出ているだろう。だが彼の目だけは生き生きとしていた、ここでの活動に満足しているようであった。そう、生き甲斐を感じているのだろう。

 

初日からの遅刻でヤル気の無い奴かと最初は思いました、だが彼は1ヶ月と少し会わなかっただけで変わっていた、ミジンコ程度の力の筈であったが芋虫程度になっていたからだ。この成長速度は異常だ、たとえ最底辺の存在であっても伸びるには限度がある。

 

そして私は彼を試すのも含めて少しだけ罰を与えた、斬魄刀を物にしろ。つまり、浅打を斬魄刀にしろと言ったのだ。結果は100年とかなりの時間をかけてしまったが、これは本当かどうか怪しい。

 

彼の霊圧は洗練され、以前とは比べ物にならない。これを見抜けるのは恐らく隊長格でも私か総隊長位だろう、それ程に霊圧を隠すのが上手い。

 

それだけの技術があるならば、彼はとっくに斬魄刀をモノにできたはずなのだ。

 

だがそんな事は取るに足らない些細な問題だ。

 

彼はどんな鍛錬を積んでいたかは知らないが、これならば任せても良いだろう。そう、席官だ。今は9番の席が空いている、彼は知らないかもしれないが周りからの信頼は厚い。

 

そして向上心の高い彼はこれを受けるだろうと、そう思い任せようとするが。

 

「待ってください、俺に…斬魄刀を解放しろって事ですか?」

 

違う、だが彼ならば直ぐに始解も物にできるとの判断だ。我々四番隊に必要とされるのは戦時に血を流すのではなく、血をいかに流さないかである。

 

「いいえ、貴方の回道の腕は確かなものとなってきています。これはお願いですね、席官になりませんか?」

 

私はお願いという形で頼んだ、彼の回道の腕も中々のものである。周りから反対の声も上がらないだろう。

 

だが彼は悩むそぶりもなく。

 

「お断りします」

 

そう、言った。

 

「俺はまだ、未熟です。俺がそこに着くのは、俺が斬魄刀に認められてからです、それは譲れません」

 

そして続けざまにそう答えた、彼は自分が許せないのだろう。斬魄刀に認められてないのに、始解を会得してないのに席官となる事が。

 

周りがどうとは関係ないのだろう、自分を納得させなければ済まないという、何と生き辛い人だろうか。

 

「わかりました、ですが斬魄刀を鍛えるだけでは席官にはなれません。今後、私が貴方の回道を見させていただきます」

 

だからこそ、私にできるのはその生き方を少しだけ助ける事だけだろう。

 

そして彼もまた

 

「ご期待に添えるよう、精進します」

 

と、真っ直ぐな目で答えていた。




主人公が活躍するのは千年血戦編からです。

今しばらく、お待ち下さい。







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