卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

30 / 63
あけましておめでとうございます。

BLEACHを実家から回収してきました。

卯ノ花隊長の卍解の能力を未だに把握できないんですが、オリジナルでも良いのかな……?


26話 新総隊長

隊首会が執り行われるいつもの場所は、いつにも増して重苦しい雰囲気が漂っている。今行われているのは緊急の隊首会、しかし総隊長のいつも居座る場には総隊長の死体が台の上に安置されている。

 

参加している隊長格は砕蜂、鳳橋、平子、狛村、六車、更木、浮竹の7人だけだ。総隊長は死亡、卯ノ花は負傷者の治療、日番谷と朽木は治療中、京楽は珍しい事に不明、涅は滅却師対策の研究中で欠席だ。

 

逆に、これだけ集まれたとも言える。護廷十三隊の被害は過去最悪、集まれた隊長も傷だらけで皆大なり小なり、何処かしらに治療の跡がある。本来なら六車と浮竹なぞ、ベッド上でまだ休んでいなければならないような状態だ。

 

だが、今の事態がそれを許さなかったのである。

 

「総隊長……」

 

浮竹の悲痛な呟きはどれだけの思いが詰まっているのだろうか。山本重國の開いた塾での最初の隊長の1人であり、200年以上彼の下で隊長を務め、敬愛した師が敵の凶刃に倒れたのだ。慚愧の念に堪えないのも、仕方ない事であった。

 

「とりあえず落ち着こう、俺たちは……総隊長の遺志を」

 

「落ち着いてなぞ居られるか!!」

 

浮竹は今集まっている者の中で最も古参な死神だ。対して砕蜂は隊長の中では新米である、しかし声を荒げずにいられなかった。

 

「総隊長が敗北したのだぞ!?分かっているのか!命だけでなく、誇りある卍解も奪われたのだぞ!!」

 

それは誰も言わなかった事だ。皆腹に抑え込んでいるが、内心は絶望で埋め尽くされているのだ。最強の死神を殺され、最強の死神の必殺技を奪われた。今まで起こってきた問題とはレベルが違う、護廷十三隊は過去最大の壁にぶつかったのだ。天にも届くその壁は高さの上限が見えない程の、卍解無しではどうにもならない壁があるのだ。

 

浮竹はその叫びに対して少しだけ怯む、無理もないだろう。恩師を殺され、一命を取り留めたが彼の副隊長である朽木ルキアも重傷、彼自身も重傷なのだ。疲労があるのも仕方ない。

 

砕蜂が間違っているのは誰の目にも明らかだ。だが的外れな事を言っていないからこそ、誰も咎めることができない。

 

全員が水の中にいるように静まり返っている。沈殿し、何を為すべきなのかを見失いかけている。水の中でどうにかもがこうとしているのだ、砕蜂も浮竹も。2人だけでなく、全員が何とかしなければならないと考えていても動けない。

 

「やけに大人しい隊首会ですね」

 

そんな水底を攪拌するように、凛とした声とともにドアが開く。

 

そこには今しがた自身の必要な重傷者の治療を済ませてきた四番隊の隊長、卯ノ花がいる。

 

「朽木隊長と日番谷隊長の一命を取り留めました、ですが復帰は難しいでしょう」

 

だがいつもの定位置に付かず、あえて総隊長の遺体と対面するように立った。周りの沈んだ空気を直ぐに感じ取ったのだろう、彼女がそこに着いたのには誰一人異論は言わない。

 

「いつまで死を悼んでいるのですか、我等が為すべきは次に何を備えるかでしょう」

 

「何故落ち着けている、総隊長と最も関わり合いが長く敵の首領と渡り合った者が……」

 

砕蜂は先より弱々しく、霞んでいくように呟く。それを卯ノ花は一瞥すると、少し溜め息を吐いてから砕蜂を射抜くように睨み、呟く。

 

「今の砕蜂隊長を見て、萩風はどう思いますかね」

 

「ぇ、ぁ……っ……!?」

 

砕蜂の治療をしたのは萩風だ。その時に顔を真っ赤にして治療を受けている砕蜂を見たからこそ出た言葉なのだが、他の隊長達にはわからないだろう。なおその時に砕蜂は『肌が綺麗』や『鍛え抜かれた美しい体』など褒めちぎられていたのも付け加えておく。

 

「……済まなかった、落ち着けた」

 

治療の時を思い出してるのだろうか、顔を真っ赤にしながら落ち着いたと言う砕蜂を他所に他の隊長達も「それもそうだ、俺達がやらねばならん」と意思を表していく。下がっていた士気に火がついたのかもしれない、全員が隊長という自覚を思い出していく。

 

士気を取り戻す護廷十三隊の隊長達、それを見た卯ノ花は自身のいつもいる砕蜂の隣へと移動しようとした時だ。

 

「会議中失礼します!卯ノ花隊長へ、緊急の書簡が」

 

突然扉が開かれ、そこには片手に手紙を持った中央四十六室の使いがいる。卯ノ花は自身への命令だとわかると少しだけ考え込むと、直ぐに覚悟を決めたように使いへと顔を向ける。

 

「この場で構いません、読み上げてください」

 

「は、はっ!四番隊隊長 卯ノ花八千流 彼の者を2代目護廷十三隊総隊長兼一番隊隊長に命ずる。中央四十六室よりの伝令です」

 

それを聞いた隊長達は驚きもしているが、納得もしている。彼女だけは敵の長に挑み続けた、護廷十三隊で総合的に見れば彼女以上の死神は居ないだろう。

 

しかし、卯ノ花は予想していた事と違うのか「そっちの方ですか」と呟く。総隊長に任命される可能性があるとは予期していたが、それ以上に予期していた事があったのだろう。

 

「わかりました」

 

そして卯ノ花は書簡を受け取り、胸元に仕舞い込むと立ち位置を確認する。砕蜂隊長の隣なのは変わらないが変わるのは自分が中心となる事だろう。

 

総隊長の立ち位置へと移動した彼女は四番隊の羽織を脱ぎ捨てると、遺品の一つである一番隊隊長の羽織を着る。違うのは背中の数字だけだが、その重さを実感してるのか一呼吸置いてから周りの隊長達を見つめる。

 

「これより、護廷十三隊の指揮を執ります」

 

☆☆☆☆☆

 

終わった。色々と終わった。

 

被害が中々にやばかったので全力で治療作業してたから忙しくて隊首会に出れなかったから具体的な被害がわからないが死者の数がかなり多い。というか副隊長の怪我人の数が半端ないな、死人もいるし。

 

でも、何より総隊長が死んでいたのがマズいだろう。これは護廷十三隊に良くない。

 

そして朽木隊長は内臓が消え去るレベルでの負傷、意識の回復すら怪しい。日番谷隊長は氷漬けにされてたから全身の凍傷とかでほぼ死人だ。2人とも何とか命を繋ぎ止めているが時間の問題である。

 

日番谷隊長の事をお願いします!って泣きついてきた雛森さんを見て心が痛んだな。ごめんね雛森さん、俺って俺にかける回道はそこそこだけど他人にかけるのは他人を知り尽くすだけのデータが無いと殆ど何もできないんだ。

 

そんな感じで、ある程度の治療作業が終わってやっと隊首会に出ようと思った時だ。

 

中央四十六室へ卯ノ花隊長から呼び出された。

 

わかっている、覚悟はしてた。

 

破道の九十九を使った俺が悪い、あれ環境破壊が半端ないから禁術になっててもおかしくないやつだ。そんなのを勝手に使ったのだ、緊急時で多少は大目に見てくれると信じたい。

 

だがこれだけで呼び出されるとは思えない、何かあるはずだ。しかも呼び出すのが卯ノ花隊長だ、四十六室じゃないところに何かあるはずだ。

 

「入りなさい」

 

卯ノ花隊長に呼ばれ、扉を開ける。

 

中に入ると周りを囲うように……うわぁ、尸魂界のすっごい偉くて頭良い人達が、いっぱいだぁ……。

 

なんか俺の心が空っぽになっていく気がする。

 

「その者に、か」

 

「はい」

 

重厚な感じの話し方をする賢者、そしてその声を向けられているのは護廷十三隊の総隊長の証とも言える一番隊隊長の羽織を着る、卯ノ花総隊長だ。ここで俺に任命する事、何となく予想はできる。というか、決定事項なのだろう。

 

「彼を私の後任として護廷十三隊 四番隊 新隊長に任命します」

 

予想通りだった、やはり繰り上がりで俺が隊長になった。緊急時なので仕方ないが、やはり俺だった。俺以上に虎徹さんは戦闘能力は無いだろうけど、回道はじきに抜かれるから虎徹さんが任命されるとも思ってたんだけどなぁ。

 

だけど、これだけじゃないとも俺は思った。隊長になるのは仕方ない、卍解の先も後少しで見つかりそうだし……あとは切っ掛けがあればって感じだ。

 

だけど、隊長にする事だけの為に態々呼び出して説明するとは思わない。

 

「そして、更木剣八への剣術の指南を任せます」

 

……更木剣八?護廷十三隊、ヤンキーの集団である十一番隊隊長のあの更木剣八?いつもうちの四番隊に難癖付けに来るあの十一番隊のトップ?

 

俺、あそこの人達は嫌いではないけど苦手なんだよな……めんどくさいと言うか、一角みたいに早めにマウント取っとかないと舐められっぱなしになりそうなんだよね。四番隊を馬鹿にする奴は片っ端からお話をしたけど、それでもやっぱりそりが合わないんだろうなぁ。

 

というか、そんな人達の隊長と?あかん奴やん、ヤンキーのボスとか。いっつもボロボロな斬魄刀を持ってて副隊長が可哀想とは思ってるけど、あれと戦うの?え?ヤンキーに剣術教えるの?

 

俺、死なない?

 

「先ほどの事から、如何に更木剣八という存在の力が必要がご理解いただけたと思います」

 

そこに俺の死亡の可能性は述べてくれたのかな……あ、なんか哀れんだような視線をいくつか感じる。述べたのかぁ……そっかぁ……、で誰一人として反論はしないのかぁ……。

 

「話は終わったみたいですね。萩風、行きますよ」

 

☆☆☆☆☆

 

重傷であったバンビは体のあちこちに包帯や湿布を貼りながら城の中を歩いている。あの時、萩風カワウソと戦った滅却師は全員生きている。

 

全員が大なり小なりダメージを受けはした、だが萩風の本気である無詠唱の鬼道を受けたのだ。彼等は萩風に対してまだ奥の手を見せていない、だからこそ負けたとは思っていない。

 

だが勝てない可能性があるのだと理解すると、バンビエッタはいつもよりも気性が荒くなっていた。更に追い討ちをかけるように彼女のチームであるバンビーズの1人であるリルトット・ランパードの消失も大きいだろう。

 

それも虚圏で萩風カワウソや黒崎一護とぶつかったと聞いたなら、生きている可能性は薄いのだろうと。

 

故に今の彼女の近くに滅却師の一人どころか、周りを歩こうとするものも居ない。彼女に鬱憤を晴らされる為だけに殺されてしまうからだろう。

 

「やぁ、バンビさん」

 

だが、そこにいる滅却師は無防備に彼女に話しかける。命知らずとも言えるその行為にバンビエッタも「何よ」と不機嫌に舌打ちをしながら振り返る。そこでバンビエッタは振り返ったら生意気なこいつを半殺しにするつもりだったが、そこに居た滅却師に絶句する。

 

彼ならば、どんな状況の彼女でも気軽に話しかけられるだろいた。いや、どの滅却師にも気軽に話しかけられる。不敬だとしても、話しかけられる。最強格の一人なのは、間違いない。

 

「グレミィ……何の用よ」

 

グレミィ・トゥミュー 最高の怪物だ。普段はのんびりとしたようだが、能力は最悪そのもの。彼の機嫌が損なわれた瞬間に、バンビエッタは塵すら残らずにこの世から消え去る。

 

そんな存在から話しかけられれば、流石のバンビエッタも怯んでしまう。

 

「彼女は、死んだのかな」

 

一体何を聞いてくるのかと思いきや、彼が聞いてきたのはとある滅却師の生死であった。バンビエッタは直ぐにわかる、そもそも女性の星十字騎士団の被害が出てるのは一人だけだ。そして彼が態々バンビエッタに話しかけて来たという事からも、誰について聞きたいのかも把握する。

 

「殺されたかもしれないわね。黒崎一護か萩風カワウソにね」

 

虚圏で音信不通となり行方不明になったリルトットの生死を陛下は把握できているが、何故かそれについて公表されない。だからこそ彼は彼女の所に訪れたと理解した彼女は、その答えに満足しているかどうかだけが気掛かりになっている。

 

「へぇ……わかった、ありがとう」

 

そして、あっさりとグレミィはその場を去ろうとする。あまりにあっさりと終わったのに拍子抜けしたせいか、思わずバンビエッタは彼を呼び止める。

 

「……意外ね。リルに惚れてたの?」

 

「だったらどうするの?」

 

「どうもしないわよ。どっちにしろ、萩風の方は私が殺すから邪魔するんじゃないわよ!」

 

☆☆☆☆☆

 

言いたい事を言えて満足したバンビエッタはその場をせっせと去る。

 

自分の言いたい事を一方的に告げた彼女の後ろ姿をチラりとグレミィは見るが、直ぐに興味無さげに地面へと顔を向ける。

 

取り残された彼はそのまま少しだけ立ち止まる。特別な思い出も無ければ、特別な思いを思う事もない場所。そんな場所に立ち止まるが、何を思うのかドーナツを空から作り出すと、一口食べる。

 

輪っかを軽く齧り、咀嚼し飲み込むがそこにはお菓子を食べて喜ぶような笑顔はない。そしてそれを直ぐに投げ捨てる。

 

周りに誰がいるなら勿体無いとも思うだろうが、生憎と誰もいない。後で掃除係の仕事が増えてしまうのだろうと思えたが、その心配は床にドーナツが触れた瞬間に無くなる。いや、心配どころか物体そのものが消えた。

 

床に落ちると同時にドーナツはこの世から消え去ったのだ。

 

それをしたグレミィは指を舐めて満足しなかったドーナツの余韻を感じているのか、ポケットに手をしまい込んでドーナツと共にその余韻を忘れるように天を仰ぐ。

 

いつものようなつまらない現実を見るその目は、彼にしかわからない程度の違う目をしている。グレミィはもう一度、今度はキャンディーを取り出すと齧る。

 

「あーぁ、思い通りにいかない。美味しくないなぁ」

 

グレミィは小さく呟き、辺りの静謐な空間にそれはよく響いた。

 

そして投げ捨てられたキャンディーの音も、よく響いていた。




黒崎へ死亡フラグが立ちました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。