卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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モンハンでムフェトとかマム・タロトガチャしたりwowlで駆逐艦に乗ったりしてました、投稿です。


35話 重なる敗北と救援

 激しい戦闘の続くソウルソサエティ、その中でもとある一角だけは更地となっていた。

 何もないところではない、ただ吹き飛ばされ中央にある小さな瓦礫をのぞいて物が無いのだ。

 その中央に腰掛けている滅却師は、死神だったものを見下ろしていた。

 

「ちょっと休憩かな……糖分の補給もしときたいし」

 

 血の池に沈み、全身をズタボロにされている。黒ずんでいるがその背中には『九』の文字だけが辛うじて見える。

 斬魄刀は半ばで折れ、仮面の破片が少しずつ消えている。

 

「厄介だなぁ、隊長クラスは誰も口を割らない……でも隊長クラスじゃないと誰も知らないみたいだし」

 

 実力者であった、彼は2000人を超える隊士を抱える護廷十三隊でも13人しかいない実力者の1人だった。

 しかし、この滅却師もまた化け物であった。理解不能な力を奮い続け、万が一にも行方不明の探し人へ被害が出ないように最小限の力で制圧をした。

 

 その最小限の力は地面に転がる彼の卍解を一方的に倒す程度の力があった、更地を作りあげる程度の力があった。

 

「まぁいっか、起きたら今度は……跡形も無く殺し尽くそうかな? そうすれば、きっと出て来てくれるよね」

 

 九番隊隊長、六車拳西は殺害された。

 

 最恐の滅却師、グレミィ・トゥミューによって。

 

 ☆☆☆☆☆

 

 空を轟音が切り裂き、刹那の間をあけて衝撃波が降り注ぐ。

 

 砕蜂の卍解の破壊力は隠密行動が命である隠密機動とは掛け離れた派手な力だ。それ相応の体力と霊力を消費し、元から立つのにも限界を感じている砕蜂は衝撃波で意識が飛びかけるほどだったが。

 

「やりましたよ隊長!! あのスカした野郎をぶっ飛ばしました!!」

 

 それを彼女を支える大前田により踏ん張らされていた。

 

「耳元で喚くな……頭に響く……」

 

 煙の中からは卍解を受けた滅却師、蒼都が落下して行くのが見える。体の形を保っている事に驚くが、服は黒焦げて片方の腕は欠損し、力尽きたようだ。その軌道を眺めていると、何故かそれが急停止する。

 

「……っ!?」

 

 同時に、砕蜂の全身を凍てつくような殺気が覆い尽くす。静止した蒼都は焼けたマントをチギリ捨て、充血しきった目で砕蜂達へ顔を向ける。

 

「……僕を、傷付けたな」

 

 ボソリと聞こえた、砕蜂には何を言っているかは詳しく聞き取れなかったがそれは徐々に覇気のある言葉へと変貌していく。

 

「逃げられると思うなよ、絶対に逃がさない。ふざけた事をしてくれたな。もういい、しっかりと苦しめて殺してあげるよ。手加減も何も関係なく、無慈悲に、残虐に、ぶっ殺してやるよ!!」

 

 響き渡るような雄叫びに、気付けば空気が支配されていた。

 

 先程までとはまるで別人のように……いや、これが彼の本性なのかもしれない。陛下以外に傷付けられないと自負していた体を自尊心ごと傷つけたのだ、砕蜂への明確な殺意は隣の大前田でも感じる程に荒く激しい。

 

「下がれ、大前田。ここで、無駄死にする必要は無い!」

 

 瞬間、砕蜂が考え付いたのは大前田とその家族であった。既に砕蜂は満身創痍、直ぐにでも四番隊に運び込まなければならない程に重症だ。

 

 そして彼女は駒として、これ以上この戦いで役立てるとは思っていなかった。戦況は五分であり少しでも力になるべきであるが、大前田という副隊長も同時に失うリスクも大きい。

 

 もはや砕蜂は死を覚悟している。いや常日頃から覚悟はして任務に当たる彼女だが、ここまで明確な死を感じることは無かった。霊力も先の一撃で使い果たしている、直ぐに戦闘に復帰できるわけでもない、無論諦めるつもりはないが最低限の逃げられるだけの時間稼ぎをしなければならない。

 

「置いてけるわけ無いですよ!! 砕蜂隊長見捨てて、俺が萩風隊長に顔向けられる訳ないでしょ!!」

 

 しかし、それは大前田に止められる。砕蜂にも待ち人はいる、更に言うならば彼女の戦う大きな理由の一つだ。その関係を知るからこそ、大前田も砕蜂を抱えようとしたその時、大前田の背後から声が聞こえる。

 

「萩風か、良い事を聞いたな」

 

「なぁっ……!?」

 

 瞬間、大前田が蹴り飛ばされ瓦礫に埋もれる。気づけば蒼都が行動を起こしていたのだ、副隊長でも並以下の実力である彼は容易に倒されてしまう。

 

「うぐっ……大前田……」

 

 弱々しいながらも抵抗する砕蜂の首を掴み、苦もなく持ち上げる。彼女の前に見える男は迸る霊圧を撒き散らしている。ただの鬼道や白打で対応できるような状況でない事は直ぐにわかった。

 

「先ず最初に、部下のデブとその家族を殺す。目の前でゆっくりと殺してやる」

 

 しかし、それは抵抗しない理由にはならない。しかしなけなしの力を振り絞り腕を引き剥がそうとしても無駄であった、その様子を見て滅却師の顔は愉悦で歪み、油でも刺したように口は回り始める。

 

「次に萩風とやらを目の前で殺す。その肉を君の口に詰めてから手足を削ぎ落としていき、最後に卍解を奪って首を引き裂いてから……仲良く纏めて消し炭にする」

 

 それがいい、と納得した彼は少しだけ腕の力を強める。砕蜂は酸欠と苦痛で顔に苦悶の表情が現れる。

 

「萩風とやらはどこにいる?」

 

 か細い砕蜂の息の音だけが聞こえる。話すには締め付け過ぎているが、それでもボソボソと何かが紡がれる。

 

「……鹿に……する、なよ」

 

「ん? 言う気になったのかい?」

 

 蒼都は砕蜂を手放す。ゲホゲホと咳込みながらも砕蜂は空気を吸い込んでいるようだが、関係なしに髪の毛を引っ張り上げて無理やりに顔を合わせられる。

 

「どうだい?」

 

 もはや死は免れない、苦痛から解放されたい、そんな言葉が内側を覆いつくしていく。

 ここで少しでも話をして時間を稼げれば誰かが助けに来るかもしれない、だがどこの戦況も芳しくない状況だ、期待をしたいが隊長格は恐らく来れないと確信をしている。

 

 話さなければ自身へ想像するのも悍しい苦痛を味合わされるのは明らかだ、そしてそれは自分よりも先に部下に降りかかる。

 ここで選べというのは酷だ、しかし砕蜂の心は直ぐに決まっていた。

 

「この程度で話すと思ったか。うつけめ」

 

 目だけでの反抗、それしか彼女にはできない。もはや指一本動かす事すら苦しい彼女には言葉を絞り出すのも難しいが、血反吐を吐きながら絞り出した拒絶は蒼都の表情を一瞬ではあるが曇らせた。

 

「侮るのは自由だが……護廷十三隊は強者揃いだ。それに……人間にも侮れない奴等はいる」

 

「……立場を理解してないみたいだね。それなら仕方ない……まずはデブとお別れだ、嬲り殺せば少しは気持ちも変わるだろう」

 

 その覚悟に今のままでは砕蜂の口を割らせることはできないと思ったのか、蒼都は彼女を投げ飛ばす。大前田がよく見える場所にだ、彼は足の骨が折れたのか意識はあるようだが動く事は出来ない。

 

 自身で選んだものではあるが、不甲斐なさで頭が一杯になる。彼のいない間を守り切るという覚悟は叶えられないどころか、部下1人守れずに、敵1人打ち取れずに終わってしまう。

 

「(結局、何が私に出来たというのだ……すまない、大前田。直ぐに私も、そちらへ……)」

 

 自分の終わりを悟り、彼女は目を閉じた。

 

「随分楽しそうにしてんじゃねぇか、俺も交ぜろよ」

 

 しかし手放そうと諦めかける意識の混濁の最中、一つの霊圧を感じ取る。

 隊長格の誰かではない、しかし感じた事のない霊圧ではない。

 

「隊長や一護が出るまでもねぇ」

 

 直後、大前田に詰め寄ろうとしていた滅却師は弾けるように吹き飛ばされた。

 その音と霊圧に砕蜂は再び目を開いた。

 

 絶好のタイミングで助太刀に来たのは砕蜂もよく知る死神だ、特徴的な頭をしているというのもあるが彼自身が護廷十三隊でも指折りのバトルジャンキー、刀の鞘と刀を合わせた始解の名は『鬼灯丸』、噂によれば席官でありながら卍解を使えるという数少ない実力者の1人。

 

「護廷十三隊最強! 十一番隊に、この斑目一角様が居るのを忘れんじゃねーぞ!!」

 

 斑目一角が滾る霊圧を撒き散らし、参上した。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 そもそも滅却師とはどういう存在かと言えば、一言でいうなら魂を滅却する存在だ。

 

 人間でありながら死神のように虚を倒す事のできる存在、ただし決定的に異なるのが魂を消し去る事なのだ。死神はあくまでも調停、バランサーであるのに対しそんなもの関係ないと言わんばかりに能力を行使する。

 

 それは魂魄のバランスを崩し、世界の崩壊に繋がる。これにより200年前に護廷十三隊と相容れなくなり、滅ぼされてしまう。

 

 だが生き残った者もいる。石田雨竜は現代を生きる滅却師の生き残りの一人だ、純血の父親はいるが混血の滅却師は現代に残っていない。

 

 その石田が何故『見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)』で滅却師側として属しているのか。

 彼は黒崎一護達と共に現世で戦った、むしろ死神側の滅却師だ。黒崎一護と敵対する程度の薄い関係ではない。

 だからこそ一護も破面であり滅却師の術を使う敵と相対しても石田を置いて虚圏へと向かった。

 

 その時にはただ事ではないと察していたからだ、そして石田もまた一護達とは接触を行わずにいた。

 何故か、理由はいくつかある。一つは不用意な接触は両者へと後々に誤解を生む事だ。だが大きな理由はそれではない。

 

「雨竜よ、残念だ」

 

 石田は地べたへと、理解不能な力によって這いつくばらされている。それは隣に控える滅却師による能力である事は分かるが、何故か抵抗もできない。

 

「あんたは……!!」

 

 石田雨竜、彼はハッシュバルトという二番手の居ないこの好機を狙いユーハバッハの暗殺を狙っていた。

 理由はある、それは世界の敵だとか死神の敵だから……などとというものでは無い。もっと個人的な物で、暗殺を図っていた。

 ユーハバッハは現代に生きる全ての混血下にある滅却師の魂を吸収する事によって復活した怪物だ、その被害者の中には彼の母親も含まれている。

 

 一護達との接触を絶った理由、それは己の手で復讐を成し遂げる為だ。その自分勝手な復讐に一護達を利用したくなかったというのもあるが、この手で滅ぼしたかったのだ。

 

 しかし、ユーハバッハの能力は石田の想像を遥かに超えていた。暗殺を行おうとした瞬間に、それを未来予知していたユーハバッハによって彼は星十字騎士団の神赦親衛隊(シュッツシュタッフェル)によって取り押さえられていた。

 

 夜になるまでの僅かな時間、その暗殺までの時間を利用され、急襲された石田ではタイマンであるならまだしも3人の神赦親衛隊に対応する事は出来ない。

 実力もそうだが、未来予知という……いや、未来把握という最悪な能力を前に一方的に敗北を喫したのだ。

 

「後を任せる」

 

 そう言い残し、ユーハバッハは悠々と去っていった。

 

☆☆☆☆☆

 

「ぐはっ……!!」

 

 檜佐木修兵、彼は護廷十三隊の中でも始解の力は大きな方だ。その力は護廷十三隊に入る前から席官は間違いないと言われるような実力であり、秀才であった。

 

「うむ、これで目につく隊長格は片付けたか……」

 

 対して星十字騎士団の1人、マスクはその戦闘力を正面からぶつけるのには相性の悪い滅却師だ。

 彼の能力、SのSuper Heroは力のぶつけ合いでは戦う土俵が悪かった。檜佐木もある程度の滅却師、ある程度の星十字騎士団ならば勝つ事も出来たであろう、しかしまだ戦えはするが勝ち目は程遠い。

 

「だがギャラリーが少ないのは良くないな!」

 

 もはや自分が狩られるのも時間の問題、そんな時だ。

 

「おぉ!! なんだ、ワガハイを差し置いて派手ではないか!!」

 

 夜空を切り裂き、一つの光が落とされた。遮魂膜の外から現れたそれは本来であれば人が居るはずもない、いや居ても消え去る。

 

「なっ!? この霊圧……!!」

 

 しかし、中からは2人の死神が現れた。着装するのは護廷十三隊の隊服ではないが、護廷十三隊の檜佐木もよく知る死神だ。

 遮魂膜すら無傷で貫通できる装衣を纏い、遙か天空から舞い降りたのは2人の副隊長。

 

「ここは私が相手しよう、恋次は檜佐木副隊長を」

 

 霊王宮へ治療の為に送られた死神、朽木ルキアと阿散井恋次がそこにいた。

 既に抜刀したルキアを、自身に肩を貸す阿散井を目にし、直ぐにその実力を確認する。

 

「(なんだよ、以前とは比べ物にもならねぇ。どんだけ強くなってきやがった)」

 

 霊圧の力強さがまるで違う、更にその洗練された感触も肌で感じられた。

 

「気をつけろよ、朽木。特に後ろの小さいのは……どういう理屈かはわかんねぇが頭巾頭を強化してくる、やるなら纏めてかあっちからにした方が良い」

 

 だが、それでも目の前の敵は自分を相手に全力も出さずに遊んでいた滅却師だ。

 それは絶対に負ける事はないという自信によって裏付けられた能力があるからであり、檜佐木はそれを破る鍵は見つけたがそれを出来る体力はまだ回復していない。

 

「阿散井、すまん」

 

「気にしないでください、この為に戻ってきたんですから」

 

 いつの間にか、後輩は育っていた。副隊長になったばかりの朽木は既に頼れる存在になっていたのだと知り、これからの護廷十三隊を牽引する1人になるのだと確信する。

 

 檜佐木は戦線の一時的な離脱を選んだのであった。




●砕蜂&大前田希千代vs◯蒼都

●六車拳西vs◯グレミィ・トゥミュー

斑目一角vs蒼都

●檜佐木修兵vs◯マスク・ド・マスキュリン

朽木ルキアvsマスク・ド・マスキュリン
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