卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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37話 第二次侵攻 後半戦

 

 二次侵攻開始からどれだけ経ったか、元は四番隊の隊舎であった場所は臨時の救護施設にかわっているが、そこには耐えず負傷者が運び込まれている。中にはもう助からない者も、すでに事切れた者もいる。

 

 だがそれを悔やむ時間はない、悔やんでいては救える命が救えない。だからこそ、副隊長として虎徹はここで檄を飛ばし続けているのだ。

 

 事態は劣勢、だがそれでも希望はある。

 

「戻ってこられたんですね」

 

 そんな希望の1人が、檜佐木を抱えてやってきていた。

 

「状況は良くなさそうだな」

 

 阿散井恋次、上に運ばれ戻ってきた六番隊の副隊長だ。しかし、その霊圧はもはや副隊長どころか、以前の彼すら圧倒するものとなっている。

 

「はい、既に隊長が2人亡くなりました。被害も少なくなく、中でも吉良副隊長は重体で……」

 

「吉良……あの野郎、無茶しやがって」

 

 状況が良くない事は彼も理解している、だがここまでこの戦場を保ち続けている事も分かっている。自身の友人でもある吉良が卍解により命を投げうつ事も厭わなかったのも、いや彼だけでなく皆が命をかけて戦っているのを分かっている。

 

 だが感傷に浸る時間もない。到着して間もなく、彼は行く。ただ傷を治すためだけに上に行ったのではないのだ、ただ遅れて戦場へ来たのではないのだ。

 

「阿散井副隊長……お願いします」

 

「心配すんな、その為に戻ってきたんだよ」

 

 滅却師を倒す為、仲間の為に帰って来たのだ。

 

☆☆☆☆☆

 

「この戦いに散った者達の無念、晴らさせてもらう」

 

 ルキアは恋次に檜佐木を託し、この場に立っている。無論檜佐木が重傷であったというのもあるが、単独で立つのは自分自身の手で滅却師を討ち取るという覚悟があるからである。

 

「ほう、ワガハイに勝つとはホラを吹くのは悪党の特権だったか!」

 

 袖白雪の冷気が漂い、世界を白く染め上げていく。それが何を意味するかは滅却師には分からないだろう。瞬間、マスクの全身が凍り始める。

 

「き、貴様この氷……!?」

 

 始解の状態で、力の差を見せつける。

 ただ凍る体を見て戸惑っているようだが、手遅れだ。いくら星十字騎士団の精鋭滅却師であっても、氷像となればそう簡単には溶ける事はない。2000人の死神を擁する護廷十三隊の副隊長は甘いはずがない。

 

 しかし、簡単ではないのはお互い様である。

 

「がんばれがんばれ、スーパースター!」

 

 ルキアが氷結できる範囲は氷輪丸という最強の一振りと比べれば範囲が狭い。あくまでも彼女の斬魄刀は氷結能力が主たるものではなく、付随されたものであるという事もあるが、射程外からの歓声は目に見える変化を発現させる。

 

「ふむ、少し寒さかったがもう問題ないな! ナイスな応援だぞジェイムズ!!」

 

 氷像となっていた滅却師、マスクは氷を破っていた。いやむしろ氷に対する耐性でも付いたのか、まるで効いている様子ではない。

 

「なるほど、よく理解した。纏めて倒すのが良いというのもな」

 

 ここで朽木は檜佐木副隊長の残した言葉の意味をようやく理解する。あまりに隙だらけであったので大男から凍らせてしまったが、逆説的に子分を倒せば氷結はいくらでも可能だろう。

 

「喰らえ、スター・イーグル・キック!!」

 

 しかし、やはり目の前の相手は邪魔をしてくる。これをいなしながら子分を仕留める事は不可能ではないが、好都合であったのでルキアはそのまま蹴りを片手で受け止めた。

 

「私に触れるのは、やめておいた方が良い」

 

 瞬間、斬魄刀で触れてもいないはずのマスクの足が凍り始める。

 

「ワガハイの足が凍るだと!?」

 

 マスクは素手で攻撃を防がれてしまったが、それは別に驚いてはいない。それよりも凍りついた事に驚いている。彼の聖文字、Sのスーパースターは際限無くパワーを上げていく能力であるがそれは耐性という意味でも強化されていく。

 

 簡単に言えば、同じ攻撃では倒されない。

 

 先程と同程度の氷結能力であれば凍らされる事もないだろう、それはつまり彼女の氷は先程よりも強力である事を示している。

 

「私の斬魄刀、袖白雪は切先から冷気を放つ斬魄刀だと考えていた。しかし、それは違う」

 

 氷輪丸の完全な下位互換、いや氷結系の斬魄刀ならそう言われても仕方ないがその本質は異なる。どの斬魄刀にも系統が同じでも、全く同じ能力という事はない。

 

「私自身の体温を絶対零度にまで操る斬魄刀だ、そして心せよ……これから見せるのが、本当の袖白雪だ」

 

 ルキアの体温は氷点下、分子が完全に静止する絶対零度にまで下げられる。耐性がついたはずのマスクの体が凍りついたのはその影響である、そしてその力はまだ全てではない。

 

「卍解」

 

 瞬間、マスクどころかその子分であるジェイムズすら巻き込んで白い冷気が辺りを包んでいく。始解の時は異なる範囲と冷気の奔流、すぐにマスクは察した。

 

「ジェイムズ!! ワガハイは絶対に凍らないようなスターで……!?」

 

 ただ、その判断は遅過ぎた。

 

白霞罸(はっかのとがめ)

 

 卍解は基本的に2種類で分けられる。斬月のように圧倒的な速度という特異的な能力が新たに発現するタイプ、そして氷輪丸や千本桜のように既存の能力が圧倒的に拡張され発現するタイプ、袖白雪は後者にあたる。

 

「やはり、まだまだ扱いきれんか」

 

 辺りを瞬間的に凍結させたルキアはゆっくりと卍解を解く、まだ会得して日の浅すぎるそれは扱いを間違えれば全身が砕け散るだろう。

 

「だが皆が繋いだこの戦場で、甘えてなどおられぬ」

 

 ただ、敵対した滅却師を子分ごと粉砕する事は造作もなかった。

 

☆☆☆☆☆

 

 五番隊隊長、平子は優秀な死神だ。斬魄刀、逆撫は少々尖った能力を持っているが、時と場合を選べば敵を一方的に倒す事もできる。

 

 だが、真に優秀であるのは戦況をしっかりと考え駒として自分を動かせる事だろう。

 

 そんな彼は今、戦場を駆け回り続けている。

 

「アホ過ぎるな、ホンマ……」

 

 滅却師、BG9とは相性が悪過ぎた。サイボーグという逆撫の天敵とも言える存在は卍解が有効に働けない相手でもあり、千本桜が奪われていた時はギリギリで命を繋いでいた事が奇跡であった。

 

 しかし千本桜が無くなろうと、これを野放しには出来ない。故に平子が取ったのは時間稼ぎ、他の隊長や副隊長で手が空いた者に任せるという事だ。

 

 これに関しては策として悪くはなかった、というよりも最悪なのはこの滅却師を野放しにした時の被害が果てしなく大きいと考えていたからだ。

 

 実際、卍解レベルの火力が無ければ勝てない。それだけ硬いというのもあるが、複数で組まれた時に厄介な存在になると考えたのだ。近遠距離を自由に戦えるだけでなく、機械故に正確な性能はどの敵でもどの味方でもマッチして動ける。

 

「体力は尽きた筈だ、五番隊隊長平子真子」

 

 ミニガンのような文明的な武器は容易に遮蔽物ごと平子の体を貫いてくる。

 

「(っ、もう……足が言う事聞かへん)」

 

 そして唯一の懸念として、死神側が劣勢であった事がある。すなわち援護が来ないのだ、敵は感知し追い詰めてくる存在ゆえに絶対に勝てない鬼ごっこを強いられていたのだ。

 

 全く抗う事ができないというわけではない、ただじわじわとなぶり殺されていくだけだ。

 

 だが、もはや限界どころではない平子はまた立ち上がる。

 

「機械でも頭あるんなら分かれや、体力が尽きた程度で……隊長は止まらへんぞ」

 

 1秒でも稼ぐ、1秒でも生き延びればその分だけ他の負担を減らせる。玉砕覚悟で突撃する余裕なんてない、あとはみっともなく死ぬまで逃げるだけである。

 

 だが無駄ではない、これまで逃げた事で十分に戦況に影響を与えている。十分な仕事をしただろう。

 

「朽木隊長の卍解は、戻ったみたいだな」

 

 だからこそ、間に合った。弾丸の雨は平子に襲い掛かる前に、それは全て蛇腹刀によって叩き切られている。

 

「恋次、遅いねん……良いタイミングやでホンマ」

 

「すいません、平子隊長。大丈夫ですか?」

 

「アホか、どこをどう見たら大丈夫に見えんねん……さっさとアレ倒してまいや」

 

 卍解を封じられ、多くの死傷者を出していた護廷十三隊の戦力では拮抗する事すら難しかった、だからこそそこから離れていた個の力はまさしく平子の求めていた援軍であった。

 

「六番隊副隊長阿散井恋次、貴様のデータは既に掌握している」

 

 霊王宮にて治療を受け、復活した阿散井恋次がそこにいた。四番隊に檜佐木を届けていたが、即座に戦場へ駆け付けていた。

 

「残念だが、そりゃこの前までの俺だろ。今の俺じゃそんなの意味ねぇぜ」

 

 両軍に共に疲弊する者が多く、戦死者も大きく出ている。だからこそここから先は真の意味で強者しか残る事は出来ないだろう。

 

 第二次侵攻、後半戦が始まる。





◯朽木ルキア Vs ●マスク・ド・マスキュリン
●平子真子 Vs ◯BG9
阿散井恋次 Vs BG9
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