卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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最終話 狐飛姫

 

 ユーハバッハとの戦い、萩風カワウソは敗北したと考えている。肌身離さず共に生きてきた斬魄刀を失い、更には異空間を作るという荒技を持ってしても最後は限界を迎えた事で意識が途切れ、リルトットや雪緒といった介入が無ければ新たな災厄として尸魂界を襲っていただろう。

 

 あの戦争で、萩風カワウソは多くのものを失った。友も居場所も、隊長という肩書きも。得られるものこそあれど、敗北者として過ごして1ヶ月が経とうとしていた。

 

「ねぇ、そろそろ何というか……」

 

 そして、その萩風は霊王宮にて縮こまる一人の少女へ向けて話かけ続けている。

 

「頑張ったんだし、抱きつくぐらいダメかな。

 

 

 天狐?」

 

 それは、自分の最愛の斬魄刀であり、ユーハバッハとの戦いで死ぬ事を受け入れた家族。今から新しく斬魄刀を作るとなれば、彼女が現れる事は無い。だが、それは喪失感が見せる幻ではない。

 

「嫌じゃ! 妾は今、過去に戦った霊王の眷属やユーハバッハよりも、お主が怖い!」

 

 天狐、彼女は生きていた。いや────正確には、生き返らせられていた。

 

 あの戦いで,萩風カワウソは確かに彼女を失った。しかし、彼は新たな霊王として世界の楔となった。相応の力を手に入れてしまい、更に雪緒やリルカといった今回の功労者から『完現術』を耳にしてしまい、彼は一筋の希望を見出してしまう。

 

「自分で言うのはアレだけど、今の俺は霊王だし……出来ても不思議じゃないでしょ?」

 

 完現術は魂を使役する力、それ自体は萩風カワウソもいつの間にか身に付けている。それは本来『霊王の欠片』を持つ者だけが身につけられる能力であるのだが、二代目霊王としての素養が後天的にあった萩風も、それが身につけられない道理はない。しかし、その先の力を萩風は知らなかった。

 

 完現術には使い慣れたり、愛着のあるものの形を変えられる。物質の性質や大きさまで変えられるのだが、それを媒体にした固有能力も発現出来る。

 

 そして、その使い慣れ愛着もあった『天狐の欠片』を気絶していても、握りしめていた。

 

「やっと子離れしおったかと思い成仏した筈が、絶対生き返れないはずの妾を復活させて来たんじゃぞ!? しかも何か昔の記憶とか色々蘇ってくるんじゃぞ!? とても怖い!!」

 

 そこから零番隊を蘇生し、二枚屋王悦に斬魄刀を作る準備をさせた。ただ天狐の欠片だけでは万全を期せないと考えた萩風は、尸魂界中から集められるだけの天狐の魂の断片も回収し、それらを合わせて斬魄刀を打ち直して貰ったのだ。

 

 そして霊王としての力、同居人として居続けた萩風カワウソの魂、それらを使い辿り『戻って来い、天狐!!』と彼は叫びながら力果てるほどの心血を注いだ時には、彼の右手に天狐は帰って来たのである。

 

 完現術がなければこうはいかなかった、過去に卍解を折ってしまい愛する者を失ったなら取り戻すという『覚悟の決まってしまっている男』なのだから、こうなるのは必然だったのだろう。

 

 天狐は狼狽しているが、やってしまったのだから仕方ない。それだけ彼女が愛されていたと言う事なのだから。

 

 ただ、あの戦いで取り戻せたのは霊王の力や天狐の力があったからだけではない。

 

「なぁ、所で俺の体どうなってんだ?」

 

 リルトット・ランパード、彼女無しではユーハバッハには勝てなかった。そしてそんな彼女は最後の一撃に『明らかな補強』が入っていた自覚がある。それは彼女の左手に宿る『先代霊王の左腕』の力もそうだが、それ以外に一つ要因がある。

 

「あー……王鍵って知ってる?」

 

「あ? 知っては……てめぇ、俺を勝手に眷属にしたのか!?」

 

 リルトットは萩風の最初の眷属となった。しかしあの時はそんなつもりは欠片も無く、重傷を負っていたリルトットを何とかしたいと言う考えからそうなってしまったと言うのが正解である。

 

「いや、無自覚ですらあるけど……一応双方の合意が無ければ、出来ないはずだし」

 

「へ? そ、そうかよ。まぁ……俺はお前を救ったからな、とんでもない貸しを作ったわけだよな! だから今回の話はこれで終わりだな!」

 

 何か思い当たる節があるのか、リルトットは意図的に話を切り上げる。彼女としてもそのおかげで霊王宮に滞在していても何も言われなかったのでそこは助かっている。ちなみに日番谷やウルキオラ達は萩風の治療を受けて全員虚圏や現世に送られているので、ここにはいない。

 

「所で、アレは?」

 

 だからだろう、リルトットはここに何故かいる者達に向けて指を指した。

 

「死ね! 死ね! 死ね! クソ変態野郎が! 私の体で何しやがったんだ!!」

 

「ナニって、女の子がそんなはしたな……ちょ、そろそろ不味い」

 

 そこには顔を真っ赤にさせながら、殺してもまるで死なないサンドバッグを爆撃し続けている爆弾女の姿がある。リルトットのかつての仲間、バンビエッタ・バスターバインであり、サンドバッグの名はジゼル・ジュエルだ。

 

 しかし、二人の関係はあんなものではなかった筈だ。一体何があったのか、リルトットは聞かない方がめんどくさく無いと思い2人からは聞いてなかったが、連れて来た当人くらいから理由は聞いた方が良いだろう。

 

「あー、王悦さんが刀の準備してたからその間に下界で天狐の魂魄を集めてたんだけど、その時に拾った」

 

 拾った、概ね先の戦いで生き残った星十字騎士団を見つけてしまったと言う事なのだろう。ただそれだけの理由で拾うのは少し薄い気もする。

 

「まぁ、リルトットの記憶の中じゃ和気藹々としてたし。知り合いなら連れてきた方がいいかなって」

 

「和気藹々……?」

 

 ただそれはリルトットの同僚でかつ、仲間だったからだろう。ここに連れて来られた当初は肌の色がゾンビ化していたバンビエッタであったが、それは霊王によって蘇生と治療、更に寿命の問題を解決する為に眷属化するという事で元のバンビエッタに戻れている。

 

 ちなみにアレだけ爆撃されてジゼルが生きているのも眷属化したからだ、それを今なら分かるリルトットとしては『そんな振り撒いて良いものなのか?』とジトッとした目で振り撒いた霊王を見る。

 

 ただ萩風としても『え、あげたら不味いの?』という目をしているので、恐らく本人に霊王という存在の自覚が無いのだろう。その自覚が出来た頃に頭を抱えていそうだが。一応理由としては全員ユーハバッハの力の残滓『血杯』による力から復活する可能性を潰す為ではあるのだが、星十字騎士団をそのまま自分の支配下に置くつもりなのだろうか。

 

 そうこうしていると、もう一人の眷属が現れる。

 

「ったく、騒がしいったらありゃしねえぜ」

 

 アスキン・ナックルヴァール、この戦いで日番谷冬獅郎によって時間を止められてしまい、霊王によって解放されるまでは戦いが終わっている事すら気付かなかった男だ。そんな彼も、今は霊王宮に居座っている。飯でも食って来たのだろう「ここ飯は美味えな」と気分は良さそうだ。

 

「うっさいわよ! 陛下に助けてもらってきゃ、私の純潔ぐちゃぐちゃにされたままだったんからね!?」

 

「まぁ同意も無しに、するのはなぁ……」

 

 なお、バンビエッタの方はずっと不機嫌だ。それも仕方ない事なのだろう、萩風としても割と純情なので手を尽くして治したところではあるが、心の方までケアできるわけでは無い。そして、そんな萩風に彼女は擦り寄ってくる。

 

「ただ、陛下……私やっぱり、体は大丈夫でも心はボロボロなんです。だから、陛下の温もりで……」

 

 どうやらユーハバッハが敗北した事や色々鑑みて鞍替えする気満々のようだ。萩風としても護廷十三隊と戦った敵ではあるのでいきなりこの態度は厚かましいにも程があるが、それはリルトットが左腕を使って引き離す。

 

「痛いわね! てか、今何したのよ!?」

 

「いちゃつくんじゃねえよ、気持ち悪い」

 

 バンビエッタに対して昔よりも毒を吐く態度を見せるリルトットに「私がリーダーなのよ!?」とじゃれ合い始める。萩風は暫くリルトットの元気が無かったとは雪緒達から聞いていたのもあり連れて来たが、結果としては良かっただろう。

 

「アスキン、あの二人っていつもあんな感じ?」

 

「まぁ概ね」

 

「なら良かった」

 

 だが、漸く全てが落ち着いたと見たのか。アスキンは膨れた腹を押さえていた手を腰に回すと、萩風に向き直る。

 

「で、陛下。俺たち匿うのは何でですか」

 

 その言葉に掴み合っていたリルトットとバンビエッタ、またボンヤリと行く末を見ていたジゼルの動きが止まる。そして萩風もそれが本音で話さなければならないものだと察する。

 

「俺たちは死神全員殺そうとしてたんですぜ、それに復活を防ぐ為だけに全員を眷属にしたり、何の意図があるんですかい?」

 

 萩風カワウソは、死神だった。護廷十三隊寄りの存在なのは今も変わらない筈であり、ここにいる全員が何らかの形で敵対し命を奪っている。破面にしろ、死神にしろだ。それは命という物を尊重している萩風という霊王にとっては許せない事だろう、だが殺されていない。

 

「俺は今、霊王だ」

 

 そして、その理由は──

 

「滅茶苦茶、この肩書き捨てたい」

 

 あるにはあるが、そもそも本人は霊王を辞めたかった。

 

「……え? あ、え?」

 

 その反応に、アスキンは思わずぎこちない反応をする。それは他の者たちも同様である。何故なら霊王とは明らかに異次元の存在であり、世界の楔という責務はあるものの、持っている権能は文字通り世界を支配する力を持っている。

 

 ユーハバッハや藍染惣右介が堕とそうとした頂に立つ者、それが霊王なのだから。誰しもが成ろうと思って成れる者ではなく、楔である理由意外に成りたくないと考える要素は無いはずなのだが。

 

「俺はようやく隊長として一歩を踏み出したのに、王って……しかも世界の楔とか、俺じゃ無くてもいいだろ」

 

 本人には、霊王が特別な席だとは欠片も考えていなかった。無論無条件になれると迄は考えていない、しかし「条件に揃う者はいくらでも居るだろ」とか考えている。

 

 なお、口には出してないが『王という立場で求婚とか、無理だろ』など頭の中に埋め尽くされているのも理由にある。護廷十三隊の隊長は確かに格は違うが、王に比べれば遥かに身近な存在だろう、だから早く彼は隊長に戻りたがっている。あまりに考えが小市民であった。

 

「だから俺、先代霊王の欠片を出来る限り集める旅に出る事にしたんだが、やっぱ人手が欲しくて……それに全員、命を奪ったんだから相応の贖罪として手伝わせるのに問題無さそうだし」

 

 滅却師達に加護を施したのもユーハバッハ復活の阻止と諸々の処置以外にあった理由はそれだ。萩風は命を奪い奪われるような事を忌避しているが、だから死んで償うなど虫が良過ぎると考えており、生きて贖罪をさせる事────霊王の眷属として、働き続けさせるのはその一環となると考えている。

 

 それに滅却師ならば世界に不協和音を生み出す魂の滅却が出来る、その意味では死神には出来ない仕事を任せる事も出来るだろう。

 

 ただ、それを鑑みてもリルトットは聞く。

 

「それなら、護廷十三隊の死神に頼めば良いだろ」

 

 霊王ならば、護廷十三隊に命令が出来る。確かに滅却師達に仕事をさせるのは難しい事ではない筈だが、先程から彼ら以外に頼るのに少なくとも、人手という問題は解消出来るのに頼らない理由が無い筈だ。

 

「それは……」

 

 ただ、何か萩風は言い淀む。今迄の適当な相槌を取っていたようなものと違い、顔色が少し目が険しくなっている。そこで皆気付くだろう、萩風カワウソは霊王としての自覚は少なくとも、霊王とはどういう存在か理解しているのかという事に。

 

 世界の楔であり、誰しもが求めるような存在が護廷十三隊に近ければ人質を────萩風カワウソと親しかった者を盾に霊王の力を寄越せと言う存在が現れる可能性も出て来る。

 

 滅却師というユーハバッハの手を離れ独立する彼らに影響は無いが、護廷十三隊を巻き込む事は出来ないと。霊王となってしまった萩風なりの、彼らへの葛藤があるのだろう。そんな考えをしていると皆が萩風を察していると、ここの管理者である和尚がやってくる。

 

「おぉ、萩風霊王。今し方、四十六室を通して総隊長がおんしに面会を要望してきたんじゃが」

 

「断っておいてください!」

 

 即答した、ただ何故かその断り方が少し違う。リルトット達の考える場合の断り方なら焦燥しながら断らないだろう、急激に滅却師四人の萩風を見る目の温度が冷えてくる。

 

「今は帰れない、会わせる顔が無いってのもあるけど卯ノ花隊長に怒られたくないし。熱りが冷めるまで帰れないし今の状態で帰りたくない、あと怒られたくないし」

 

 もう取り繕うのは辞めたのか、あっさりと白状した方が楽になるとでも考えたのか先程のリルトット達の気遣いを消し去るような言葉が並べられている。

 

「怒られたくないだけじゃねえか!!」

 

「そうだよ。卯ノ花総隊長が怒ってみろ、とても怖い」

 

 悪びれる事もなく答える新霊王に、ここまで王としての器が欠片も無いとは思わなかったと、温度差と同時に心の距離も広がっていく。ただ萩風も最初の侵攻の時の叱りも後回しにされているので、溜まっている説教の時間は凄まじいものになっているのだろう。それを時間が沈静化してくれると信じているのだ。

 

 ちなみに巻き込む云々も理由としてはしっかりとあり、王のうちに護廷十三隊に顔を出すつもりはない。

 

 ただ、それを聞いた上で皆の反応は当然良くない。

 

「僕はパス、バンビちゃん取られたし面倒臭い」

 

「俺も手を組むのはここまでだ、借りは助けたのでチャラだろ。なんなら俺に借りがあるんじゃねえか?」

 

「まぁ、俺も楽しみ無くなったし。致命的に暇でもやるのはなぁ……」

 

 バンビエッタ以外はすぐに反応した。やはり贖罪として働かさせられてもアスキンやジゼルとしては『自分以外でも殺してた』という認識があるので、それを求めるのはユーハバッハに対してのものだという考えがある。

 

 そしてリルトットに関しては足は再生して貰ったが、それ以上付き合うとなれば話が違ってくる。ユーハバッハと戦う為に手を組んだのだから、眷属になっても手を貸すとなれば理由が弱い。

 

 バンビエッタはあっさりと新しい陛下を見限ってく3人に『え、じゃあ私も辞めとこ』とあっさり手のひらを返そうとしている。

 

 そうして、4人が各々の新しい道を歩んでいこうと、話は終わりだと萩風に背を向けて歩き始めると──

 

「あ、言い忘れてたけど。霊王を放棄出来たら叶えられる事何でも一つ聞くよ」

 

「「「ご命令を、陛下」」」

 

「こいつらマジか」

 

 ──萩風の呟きにリルトット以外の全員が振り返り、口々に陛下と言い始めたのは語るまでもない事だろう。

 

 ☆

 

 ユーハバッハとの戦いから、120年が経っている。そんな節目でもない日でもあるが、萩風カワウソにとってはそうではない。尸魂界そのものの歴史の転換点でもあるのかもしれないが、間違いなく重要な日なのだ。

 

「はい、これで正式に僕が三代目霊王ですね」

 

 彼、と言っても性別は無いが名前は産絹彦禰(うぶぎぬひこね)。三代目霊王であり、萩風カワウソによって先代霊王の集められた欠片をもってして霊王となった存在だ。その欠片はユーハバッハから取り返したものも含んでおり、正真正銘世界を維持する新たな楔である。

 

 三代目候補として長い間治療を受けていたが、漸く彼を維持し作り直せるだけの欠片と仕事を終えた萩風によって、本人も快く霊王をしている。

 

「それじゃあ『狐飛姫(ことぶき)』さん、下界のお仕事頑張ってくださいね」

 

「アウラさんも、霊王の教育係頑張って下さい」

 

 そして完現術者であり、彦禰の母親としても働いている道羽根アウラは新たな霊王から名付けられた名で彼を呼ぶ。霊王の移譲と共に零番隊の隊士として就任した萩風カワウソは王族特務の一員とし、所属する運びとなったのだ。

 

 ただ、零番隊としての仕事にはそこまで縛られてない。

 

「もう行くのか、カワウソ」

 

「また最近、天界の動き活発になってますからね。就任の挨拶として瀞霊庭に行かないとですし、護廷十三隊の挨拶も兼ねて早めに行きますよ」

 

 零番隊 天界神将 第五神官 狐飛姫、彼の仕事は天界の管理だ。それはここに居ては対応出来ない、いつどこから天界(ヒーヘイブン)から来訪者(シュヴァルツアーデ)が襲ってくるかまでは萩風達には分からないからだ。だからこそ虚圏や尸魂界の至る所に向かい、天界を監視している。霊王宮程しか無かったあの空間も、いつの間にか他の世界程ではないが相応の大きさに広がってしまい、四界と言われるに相応しい立ち位置になってしまったのだから仕方ない。

 

 ただ、その分地獄送りにされたここ100年以上の魂魄も流転し屍同然とされたら直ぐに向かうようになってしまい、天界の動きは未だに収まらない。

 

「カワウソ、おんしはただの死神では無い。それを肝に銘じるのじゃぞ」

 

「ただの死神に戻りたくて色々やって来たんですよ、上の事は任せました」

 

 萩風とて仕事はまだ溜まっている。監視も皆に任せているところはあれど、生まれてくる存在と戦えるのは時間稼ぎでも彼を除けばリルトットぐらいだ。

 

 萩風は一瞬で霊王宮を降っていく。現世の世界を周りきる程の速度で、この日を彼が待ち望んでいたというのは途轍もなく大きい事なのだから、その足が速くなるのは当然だろう。

 

 ただふと、見送る和尚は気になる事がある。

 

「ところで霊王様、四十六室に伝令を送っておらん気がするんじゃが」

 

「あ、そうですね。でも今日は眠いですし、明日知らせましょう!」

 

 そう言って三代目はアウラに連れられて宮殿に戻っていく。教育係とは名ばかりの甘やかしっぷりに流石の和尚も口には出さないが、そのまま彼らを見送る。

 

「あやつの足なら、5分と経たずに着いていてもおかしくないんじゃがのう……」

 

 これから苦難が起きそうな彼に向けて呟くと、和尚もその場を去っていった。

 

 ☆

 

 その事件による報せは、すぐに全瀞霊庭の死神に響いていた。

 

「現在侵入した旅禍は黒陵門を突破後逃走中、土地勘は無くしきりに自身を『零番隊の第五神官』と名乗っており、中央四十六室に確認した所そのような役職の者は過去にもいない事が分かっております」

 

 一番隊の隊長室に報告に来た死神は資料をもとに、その部屋の主人に報告をする。瀞霊庭に侵入者が現れたのは120年振りの事であり、その記憶がある死神も隊長格を除けばそこまで居ない。

 

「また先代総隊長の卯ノ花御意見番が狙いのようで、現在二番隊が警備体制を敷いています」

 

 ただどちらかと言えば滅却師が攻めて来た時よりも黒崎一護達が朽木ルキアを助けに来た時と似ている。ただあの時と違い侵入して来たのは1人、更にその1人が未だ捕まる気配がない。だが問題なのはそこではない。

 

「それで、被害は」

 

 資料を捲る音だけが響く、今もまだその賊が瀞霊庭内に潜んでいるという事もあり事態は火急であるのは明らかだ。そして、それは正しいだろう。

 

「確認されているだけで接敵した副隊長2名を含む120名が昏倒させられており、死者こそ出ていませんが……まだ伸びるかと思われます」

 

 今の護廷十三隊は、人材不足であり人手不足だ。見えざる帝国との戦いで多くの隊士を失い、立て直しは進んでいたところに現れた新たな敵である天界からの来訪者と、今では6000人いた隊士も戦争で半数が亡くなり、更に来訪者の影響などもあり昔よりも少ない4000人程度の隊士しか居ないが、よくここまで回復出来ただろう。

 

 そのうちの120人が副隊長2人を含めて倒されたのだ、相応の素早い決断が必要となる。そして、その決断をする護廷十三隊の総隊長である彼だ。

 

「いかがなさいますか、日番谷()()()

 

 日番谷冬獅郎、護廷十三隊三代目総隊長は改弍の副作用によって伸びづらくなった背を縮めながら、斬魄刀を背負い賊の意図を探っているが特に思いつくようなことは無い。

 

 ただ、それが久しぶりに帰ってきた彼であるなら四十六室を通して一報があるはずなのだがそれもない。

 

「天界以外からの客は、久しぶりだな」

 

 先代の意志を継ぎ、現護廷十三隊において唯一の改弍到達者の力は次元が違う。100年前と違い完成し掌握したその力は、もはや誰も止められず、誰でも止めてしまうだろう。

 

「最悪の場合は俺が出る、四十六室にもそう伝えておけ」

 

 だからこそ、そんな彼が出るのは最後の時だけだ。

 

 ☆

 

 門を突破し、知り合いを探して数時間。萩風カワウソは道に迷っていた。仕方ない事だろう、いくら死神として長く居ても120年前の侵攻で瀞霊庭そのものを作り変えられてしまったのだから。修復にも多大な時間がかかり、瀞霊庭は新しいものに変わった。

 

 だからこそ萩風は、四番隊として馴染みもあった地下水路に身を潜めている。

 

「で、ここも変わってるのか。100年以上も離れてたら流石にそうなるか」

 

 ただそれでも分からない、地下の掃除は四番隊の仕事でもあったので馴染みがあったはずなのだが、それも変わってしまっている。もはやここは知らない土地なのだと思い知らされている萩風だが、こんな時のためにしっかりと準備はしている。

 

「それで、山田アルマジロだっけ」

 

「山田有次郎(あるじろう)です! 元四番隊副隊長の山田清之助の息子にして……すいません調子乗りました、殺さないでください!!」

 

 それがこの拾った四番隊の隊士である。問答無用で襲いかかってくる護廷十三隊の死神を仕方なくちぎっては投げ、ちぎっては投げ続けていたがそのままでは埒が明かなかったので捕まえたのである。

 

 ただその捕まえた死神がどこか見た事のある雰囲気を持っていたから道案内を頼む腹づもりになった。

 

「清之助なぁ……どっちかというと花太郎の息子に見えるが」

 

 一時期は自分の上司でもあった死神だ。三代目霊王を作る過程でおいたを知るの分かっているが、一応は萩風の後輩だった死神だ。ただ席を拒み続けてる時だったので、先に副隊長になった記憶がある。なおその当時でも卯ノ花の側には萩風の方が控えていたりもする。

 

 ただ、萩風は道案内を任せるにもちょっと落ち着いてくれないので仕方なく話を聞く所から始める。と言っても、この流れは三度目ぐらいなのだが。

 

「ちなみに、『萩風カワウソ』って名前に聞き覚えはやっぱり無い?」

 

「ありません!」

 

「二代目霊王って単語は?」

 

「昔の戦争で死んだ人ですよね? 二代目とか分かんないです!」

 

「じゃあ、玉藻舞姫も?」

 

「全く聞いた事はありません!!」

 

 やはり全ての質問において、彼は知らない。それどころか霊王という存在すら情報が殆ど無い、これは異常だろう。あの萩風ですらその単語に聞き覚えはあり、アレだけの情報が下界に発信されたのだから皆が皆知らないはずはないだろう。ただ、その理由は想像がつかない。

 

「本当に俺って存在、消え去ってるなぁ」

 

 しかし、120年もすればそうなっても仕方ないかと納得はしている。音信不通となった隊長が居れば行方不明か死亡扱いになるのは勿論の事、そもそも萩風は隊長として在籍した期間は10日よりも無いのだから、それで名が広まるわけもない。

 

「あ、なら120年前の戦争でユーハ……滅却師の王は誰が倒したって聞いてる?」

 

「護廷十三隊の隊長と虚圏の破面が力を合わせて倒したと勉強しました!!」

 

「まぁ、間違ってはないか」

 

 ここまで昔の戦争についての話が不明瞭なのは疑問も残るが、上の貴族がそう決めたのだからそれが都合が良いのだろう。萩風としても霊王だった時は一度として四十六室に干渉していないので、どうなっているかも分からない。

 

「天界については、どのくらい知ってる」

 

 ただここで、一番認識しておきたい事実を聞く。萩風カワウソによってユーハバッハを倒す為だけに作られた異空間、その手を離れて三界の脅威となってしまった世界について話を彼に聞く。

 

「凄く、危険な場所だって……以前来た化け物は総隊長が倒しましたけど、それまでに隊長が4人も救護舎に運ばれて……」

 

 護廷十三隊の隊長が4人、その言葉に萩風は頭を押さえる。隊長程の使い手であっても倒してしまうという事は、最高位の存在と、それも相性の悪いタイプと戦ってしまったのだろう。萩風の認知する限りでこの120年に7体の来訪者が生まれ、3体は萩風が、ウルキオラが1体、護廷十三隊が1体を倒して居るのを知っている。残りは未だに所在は掴めていないが、護廷十三隊にそれだけの被害が出ていたことを萩風は初めて知る。

 

「……やっぱり、責任取って俺が何とかしないとな」

 

 零番隊天界神将はその管理を任せられた彼に与えられた肩書きだ、生み出してしまった責任を萩風は取らねばならない。

 

「え? 何か言いました?」

 

「とりあえず、出るって言ったんだよ。知り合いに会えれば話も通じるだろうし」

 

 まずは今直面している問題から対処しなければならないので、山田を抱え萩風は外に向かう。

 

「先ずは、四番隊隊舎から行くか」

 

 古巣である、救護舎へと。

 

 ☆

 

 外に出て早々、その者達は現れる。まるでそれは、そこから出てくるとあたりをつけていたかのように。

 

「おー、出てきたな」

 

 その声に霊圧を消していた萩風は意味がないものとして解く。萩風はともかくとしても、連れている隊士の霊圧は垂れ流されているのだから仕方ない。地下でそんな霊圧を感じ取っていたのか、後は出てくるのを待っていたのだろう。

 

「待ってたぜ、一護以来だなこりゃ」

 

 そして、それを待っていた影は4つある。

 

「斑目隊長と倫堂副隊長!! それに綾瀬川隊長と吉良副隊長も!?」

 

 護廷十三隊の隊長格が4人、それが待ち構えていたと知り山田はその圧に思わず尻餅をついてしまっている。それを横目にした萩風は彼等のいる屋根上まで一気に上がっていく。山田を巻き込まないようにと言う配慮も見えるが、話し合いには目線は合わせた方が良いと考えての事だろう。

 

「久しぶりだな、一角。隊長になったか」

 

「あー、聞こえねえな。旅禍の声なんざ」

 

 今の萩風は頭を傘のようなもので隠している。ただその身につけているのは零番隊を知る者ならば覚えのある格好なのは確かだ。漸く萩風はまともな話し合いの出来る知り合いに会えたと安堵するが。

 

「だから俺は、全力で戦わなきゃいけねえなぁ!!」

 

 その安堵は、急激に高まる斑目一角の霊圧に押し黙らせられる。

 

「卍解!!」

 

 無防備な相手への容赦の無い卍解、それを正面から萩風に叩き付けるとそのまま吹き飛ばし瓦礫の中へ埋めてしまう。龍紋鬼灯丸は破壊力に比重を置いた卍解であり、その力は何度も天界からの来訪者と事を構えているからこそ末端の隊士でも耳にしたことぐらいはある。

 

「萩風さん!!?」

 

 山田の目線の先には粉塵の中で恐らく見るも無惨な姿となった彼がいるだろう。ここまで一緒に過ごしていていつでも自分を無理やり従わせられても、落ち着くまで待ったりとどこか悪人とは見えない者だっただけにその結末は受け入れ難い。

 

「斑目隊長、いくらなんでも話を聞かずに」

 

「あぁん?」

 

「は……何でもないです」

 

 そして、一角に異議を申し立てるような心の強さは持ってない。側から見れば適切に賊を処理したのだから、賊に絆された方が良くないことだろう。しかし、一角はまだ霊圧を欠片も緩めていない。

 

「安心しろ、この程度で死ぬような人じゃねえよ」

 

 すると、一角の展開していた卍解が投げ返される。ただそれは一角に帰すようなものであり、まるで一角に対して行った攻撃には見えない。そして、その投げ飛ばした本人は粉塵の中から現れる。

 

「お前、絶対分かってるだろ」

 

 それも、無傷の姿で。

 

「ひっ、生きてる!?」と山田は山田をしているが、それを気にすることなくまた一角と同じ目線の高さまで萩風は登っていく。今度こそ話し合いをするぞという意志を持たせながら。

 

「えらく声と背丈が変わりましたね、萩風さん。素手で受け止められたのは納得いきませんが」

 

「やっぱり分かってたか、俺じゃなきゃ絶対死んでるぞ」

 

 一角はバトルジャンキーではあるし相応の頭の足らなさもたまにあるが、馬鹿ではない。こんな時期に倒された隊士の数は120以上、しかし全員が軽傷で気絶で済まされているとなれば天界からの刺客ではない、そして零番隊を自称するとなれば存在は限られてくる。

 

「で、その面隠してるのは理由があるんですかい?」

 

「……俺の顔、面影が消えつつあるからな。いきなり見せたら色々大変そうなんだよ」

 

 ただ、やっと腰を据えて話し合いが出来ると安堵する萩風の考えは甘かいとしか言えないだろう。それは未だに仕舞われていない卍解と、抑えられるどころか高まっていく彼の霊圧に違和感を覚えるべきだっただ。

 

「そうなんすね……まぁとりあえず────続きをやらねえとなぁ!」

 

 斑目一角はバトルジャンキーになる時ほど、頭が回る。そんな彼が敵の力も分からないうちに最初から卍解をぶつけることなどない。萩風であると分かった上での攻撃だ、しかし彼にとってそれは大した問題ではない。

 

「待て一角、俺と戦う理由はもう無いだろ。卯ノ花総隊長に報せを……」

 

「いやー、旅禍の声は聞こえねえなぁ!」

 

「お前、俺と戦いたいだけかよ!」

 

 昔に比べて遥かに力をつけた一角の卍解を相手に、素手で相手するのは限界があるだろう。かと言ってここで戦ってしまえば本当に収集がつかなくなるのは目に見えている。後でいくらでも手合わせならしてやるからと宥めようにも、もうその気になってる一角は止まらない。

 

「行きますぜ、卍──」

 

 そして、もう一つの完全に身に付けた力を解放しようとした時だった。

 

「おい、随分と楽しそうじゃねえか」

 

 もう1人の隊長が、降り立っていた。隊長格が卍解をして戦っているのは瀞霊庭に響き渡るのはもちろんの事だが、そんな霊圧を振り撒いていてこの男が気付かないわけがないだろう。そしてそんな霊圧に誘われて、来ないはずがない。

 

「げ、更木隊長……」

 

 更木剣八の登場に、一角は渋々卍解を収める。ここで更木剣八が来たという事は他の隊長格が来るのも時間の問題であり、自分が楽しむ時間はそこまで残っていないと察したのもあるが、横取りされる事が目に見えていたからだろう。ここまでの獲物を、戦わない理由がない。

 

「更木隊長、お久しぶりですね」

 

 ただ、そんな事は梅雨知らず萩風は更木の元へ寄っていく。話の通じない一角や面識はそこまでない弓親よりは過去に斬り合った仲である更木の方が話が通じると考えての事だろう。

 

 ただ、それは悪手なのに気付かない。

 

「あぁん? お前、萩風か」

 

「雰囲気だけで気付いたんですか? それなら話が」

 

 早い、そう続けるつもりだったのだろう。しかし萩風がその言葉を紡ぐ前に感じ取った殺気に紙一重で回避し下がる。萩風の頭のあった位置には大斧が振るわれており、現に萩風の顔を隠していた笠のような覆面は空を舞って落ちて来ている。

 

「なんだ、随分と顔が変わったな。それに変な耳まで生えてやがる」

 

 そして、現れた頭には獣のような耳が生えている。顔も背丈も変わったが、それば卍解・改弍よる副作用だ。改弍は使用を重ねれば重ねる程、何らかの影響が使用者に現れる。日番谷冬獅郎は体の成長速度が遅くなるが、萩風カワウソはその体が徐々に天狐へと近づいていく。今では外見は尻尾や爪、髪に一筋混じる金髪ぐらいでしか見分けが付かないだろう。

 

「昔の狛村隊長の気持ち、こんな形で知る事になるとはなぁ」

 

 ただ、そんな萩風の迷いなどお構い無しに更木は斬りかかる。あの大斧で過去に萩風の体は泣き別れにされた事もある、抜刀し受け止めるもののやはりかつての仲間というのもあり受け流すことしかできない。

 

「更木隊長、俺は昔の仲間で三代目四番隊隊長の萩風カワウソですよ! 覚えてるんでしょ!?」

 

 しかし、その言葉は届いていないのか更木の手は緩む事はない。そしてどんどんギアを上げ、萩風の顔色も悪くなってくる。こんなじゃれあいと言い訳も出来ない戦いで瀞霊庭を荒らしてもいるのだ、この後に面会予定の四十六室や総隊長とどんな顔をして出ていけば良いのか分からない。

 

「俺はお前が萩風だろうが萩風じゃなかろうが、どうでもいいんだよ」

 

 ただ、そんな萩風の事情なぞ更木にはどうでも良い事なのだ。総隊長に叱責されようが、御意見番に諭されようが、四十六室に糾弾されても知った事ではないのだ。

 

「お前が俺を楽しませるだけ強いか、それだけだ!!」

 

 ただ己を楽しませられるか、それだけだ。

 

「卍解!!」

 

「っ!!」

 

 120年振りの侵入者が過ごす1日は、まだ終わりそうに無い。

 

 ☆

 

 山田有次郎は、今日は厄日であると分かっている。どこからか現れた侵入者に捕まり、その侵入者の戦いに巻き込まれ、そしてまた地下に連れて来られている。それも今度は、しっかりと霊圧すら隠されて。

 

「何で僕、こんな所に居るんですかね……」

 

 何故だろう、頭の中に色々な情報があり過ぎて旅禍と居ても全然気になっていない。ただ、その情報量を持ち鍵で有る当人は無防備に一息をついている。

 

「危なかった、本気で戦ったら更地になってたぞ。ギリギリ逃げれて良かった」

 

 そんな呟きをしているが、そんな余裕があるだけ目の前の存在はおかしいのだ。護廷十三隊において、隊長とは絶対の存在でありそれから逃げ仰るのは勿論のこと、戦えるような存在は稀有なのだ。中でもあの3人の隊長は100年以上隊長を務めている怪物であり、逃げている時点でこの萩風という存在は異常だろう。そして、その異常な存在はもう一つ気になることを言っていた。

 

「四番隊って救護班ですよ? 先々代は総隊長やってたし、先代は隊長3人から逃げれたり、もう色々おかしいですよ……」

 

 この男が護廷十三隊の元隊長であっても、おかしい。仮にそうだとしても逃げた事や戦えた事は理解できても、今更帰って来た理由も分からない。追放されたのか行方不明にでもなっていたのか、少なくとも100年以上隊長をしている自身の隊長を知る山田有次郎からすれば、やはり不気味に映る。だが、悪いもので無いのも分かってしまう。

 

「とりあえず、四番隊隊舎向かうか。昔と地形変わり過ぎててわからないけど、案内頼む」

 

「僕、隊長に殺されないですかね?」

 

 渋々といった様子で山田は拒否してもどうせこの人は四番隊に行くだろうと諦めながら溜息を吐く。それならまだ自分が話を通した方が被害は少ないだろう。ただ、そんな憂鬱な彼を察してか萩風は声をかける。

 

「今の四番隊の隊長って、虎徹勇音さん?」

 

「え、あ、はい。そうですけど」

 

 ただ、それを聞いて萩風は安心する。彼女なら問題は無いだろうと。

 

「なら大丈夫、あの人優しいし。俺の事は好まれてたかは知らないけど、そこまで嫌われてないと思うから。まぁ……遺書読まれてるよなぁ、忘れてくれてるかなぁ」

 

 ただそんな懸念を持つぐらいしか、彼女には信頼がある。卯ノ花を除けば間違いなく、護廷十三隊として共に過ごした時間の長い死神は彼女なのだから。

 

 ☆

 

 虎徹勇音、四番隊隊長の彼女はただその時を待っていた。どれだけ待ち侘びていたか、分からないほどに。古く萎れボロボロになっていく最後の手紙を胸にしまっていると、遠く離れていてもいつまでも近くにいるかのように感じられる。だからこそ、いつまでも慕う彼が戻ってくるのを待っている。

 

「隊長! 山田9席が────旅禍と共に戻って来ました!」

 

 そして、それが今日だった事を彼女は侵入者の存在を知ってから察している。誰1人大きな傷を与えず、副隊長ですら容易く対処できるような誰かは、彼女は想像できてしまっている。恐らくこれは総隊長や御意見番と当時の彼を知る者なら分かっているだろう。

 

 ただそれでも、誰も分かっていても話していないのはそういう事なのだろう。

 

「他の隊への伝達は、出来る限り遅らせて下さい」

 

「は! ……は? いや、隊長どういう……!?」

 

 そう言葉を残し、彼女は騒がしい外に出る。本当の賊であればこの時点で多くの死者が出ているし、大人しく待っている事なぞあり得ない。ただ待っているのが誰であるのか、彼女はそれが自分であると分かっている。

 

「だから、隊長呼んで欲しいんだって。俺の話通じる人それ以外思いつかないし」

 

「貴様のような賊に易々と隊長を呼ぶわけあるか! 四番隊三席である、この私が……!!」

 

 外に出てみればどうやら睨み合い、というか一方的に自分の所の三席が刀を構えて威圧している。ただそれを向けられた方はというと全く動じておらず、辟易しながら戦わないようにしている様子が見える。他の隊士が不安な眼差しを向け、その行末を見守っているが埒が明かないだろう。なので彼女は前に出る。

 

「およしなさい」

 

 そう言うと、彼女は部下に刀を下げさせる。隊長に言われた事で流石の三席もたじろいでしまい、刀を納めて下がる。代わりに前に出た彼女は改めて相対する賊を見る。その姿は過去に刻まれた彼の姿とは、かけ離れたものだ。

 

「久しぶりだね、虎徹……いや、虎徹勇音隊長」

 

 しかし、性格や雰囲気は変わらない。言葉遣いも昔から、自分に対して優しく、苦労をかけないように抱え込む事を知っている。そして性別が変わったと見紛う程に整った容姿はかつての戦争────ユーハバッハと相対した時の彼の姿と瓜二つだ。

 

「時間が経つのは早いけど、偉く美人になって……卯ノ花隊長と風格は似て来たのかな」

 

 今では護廷十三隊の隊長格でしか認識を許されない霊王の1人であり、あの戦争における功労者。卍解の先に向かい世界の崩壊を防ぐだけでなく、世界そのものを救ってしまった一部の者に口伝のみで語られる英雄の1人。

 

 虎徹勇音の師にして、卯ノ花八千流の弟子。その者に対して彼女は──

 

「改めて、萩風カワウソ。霊王を降りて帰って来」

 

 ──容赦の無い斬撃を飛ばしていた。咄嗟に萩風は刀を引き抜いてそれを弾いてはいるようだが、あまりに突然の事で目を見開いて周りと彼女を見ている。

 

「……え?」

 

 ただそれでも、状況は何も分からない。それもそのはずだろう。

 

「卯ノ花八千流が二番弟子 護廷十三隊四番隊隊長 虎徹勇音」

 

「え、え?」

 

「参ります」

 

 100年以上も待たされた上に一言も無く突然帰って来た死神に、溜まるものもあるのだから。

 

 ☆

 

 虎徹勇音に襲い掛かられた萩風は刀を交え、その後に集合した隊長達によって拘束された。と言っても拘束は御意見番のいる場所までの護送の為であり、そのまま解放され彼はここに来た目的の一つである彼女との面会に漕ぎ着けていた。

 

「あら、久しぶりですね。萩風」

 

「は、はい……お元気そうですね、卯ノ花隊長」

 

 卯ノ花八千流、護廷十三隊の前総隊長である。今は御意見番という立ち位置で護廷十三隊の新総隊長の助言役をしており、前線に立つ死神ではない。ただその貫禄は健在であり、今もなお語り継がれる生きた英雄だ。

 

「もう隊長ではありませんよ、長い事総隊長を務めましたが先代のようには行きませんね。私の隣を任せられる副隊長も、一言もなく帰って来ませんでしたから」

 

 そんな彼女も当然、萩風に対して思うところが無いわけではない。むしろ待たされていた者の中では一番、彼女は溜まるものがある。それこそ正式な霊王に対する面会の希望をここ100年で50回以上出しており、その全てで断られているのだから。

 

「それは、その……色々と事情とか」

 

「どこかの誰かさんと一度も会えなくて大変でした、それなのに仕事は増えるばかりでしてね。天界からの客人の始末で刀を振ったのも一度や二度ではありませんでした」

 

 ただそれはまだ責められない。笑顔の下がとんでもない事になっているのを萩風は長い付き合いなので分かってしまう。時間が彼女のそれを収めてくれると信じていたようだが、それは大きな間違いだったのだろう。

 

「どうしたのですか、いつまでも立っていては疲れるでしょう」

 

 ただ優しく、彼女は萩風に語りかける。その全ての所作が惚れ惚れしてしまう程に流麗で、かつての記憶も蘇ってくる。本当は怒ってないのではないかと淡い希望も持ってしまうほどだ。

 

「とりあえず────そこに、正座して下さい」

 

「……はい」

 

 しかし、座布団の無い畳の上を指差されそんな淡い希望はすぐに消え去るのであった。

 

 ☆

 

 卯ノ花からの叱責は、日が落ちても続いた。日が昇り始める時間から今回の事件は始まったが、まさかこんな事になるとはと萩風は自身の見立ての甘さを嘆く余裕もない。本来であれば天狐が何らかの助言を与えてくれるのだが、今回は「痛い目を見ろ」と遠回しに言われているのだろう。

 

「まさか、貴方がそんな理由で帰って来なかったとは思いませんでしたよ。猛省してください」

 

「はい、すいませんでした」

 

 そしてもう隠す事も出来なかったので洗いざらい全てを話した。もう霊王だったとか関係なく、この人の前で嘘をつけないと萩風は全てを話した。ユーハバッハと戦う為に天界を作った事、ユーハバッハとあの後1人で戦った事、死にかけて助けた滅却師がユーハバッハを倒さなければ体を乗っ取られていた事、新しい霊王を立てる為に手を尽くしていた事、天界からの来訪者と戦い続けていた事、様々な事を話せる限り話した。

 

 あの後に多忙であったのは嘘ではないので包み隠さずに話した。護廷十三隊に自分の問題なので迷惑はかけられないと動いていたのだが、それも含めて色々と叱責をされた。自分1人で抱え込み過ぎであると、その態度に途中から彼女も溜息が増えていた。

 

「ところで、私達を巻き込むかもしれないから帰らないというのはどういう了見でしょうか? 私がただの乙女扱いされるとは思っていませんでしたよ」

 

「本当に巻き込みたくなかったんです! なので許してください!!」

 

「許す? 面会を拒絶して距離を意図して取ろうとした貴方がそれを言う権利があるとでも?」

 

 思わず卯ノ花が胸ぐらを掴み上げる。萩風としても自分に非があるのを分かっているので抵抗はしていない。卯ノ花の笑顔が全く崩れていないが、こめかみに青筋が浮かんでいる時点でかなり不味いだろう。卯ノ花が手を出すような事は殆どないのだが、それぐらい萩風はやらかしているのだから仕方ない。

 

 ただ、そんな修羅場状態の部屋にノックが響く。

 

「卯ノ花御意見番、失礼しま……萩風さん!?」

 

 そこには頭に包帯を巻いた虎徹勇音がいる。萩風と本気で戦った時に誤って刀を弾かれた時に額を切ってしまったのだ。その時の傷はいつでも治せるが、包帯を巻くだけに留めているのは何か理由があるのかもしれない。

 

 そんな彼女がやって来て最初に見たのが掴み上げられた萩風である、急いでその場を諫めようと間に立って何とか萩風も解放される。

 

「虎徹さん……ありがとう、急に斬りかかって来た時は人違いかと思ったけど、相変わらず優しいね」

 

「その……私としても、強くなったんだって知って欲しかったですから」

 

 久しぶりに見せる萩風の笑顔に、虎徹は目を逸らす。昔は常に共にいたが、ここまで自分だけに向けられた笑顔は記憶に無い。ただ萩風としても本当に助かったと感じているからの感謝の笑みなのだが、勇音は気付いていない。

 

 萩風が戻らなくなった四番隊で、自分だけではやっていけないと妹に泣きついて副隊長になってもらい、それではいけないと卯ノ花に斬術の師として弟子入りし、胸を張って護廷十三隊の隊長として立つ為に過ごして来たのだから。それに萩風の遺書を独り占めしていた事も彼女としても隠し事ではあるので、その後ろめたさもあるのだろう。

 

 だが、とりあえず一件落着といった所だろう。一番の懸念であった卯ノ花の叱責も落ち着いており、これから小言は暫く言われるだろうがそれは自分の過ちとして認められる事なのだから。

 

 ただ何故か、先程から卯ノ花の声が全く聞こえない。

 

「とりあえず、霊王様の連絡も後で来るはずで……あの卯ノ花師匠? 聞いてま……あっ」

 

 何故なのか、そう思い漸く彼は振り向く先にいる卯ノ花は萩風の足元を見ていた。何なのかと思い彼も足元を見る、そこには確かに何かはあるのだが────卯ノ花は先程までとは比にならない怒気を込めた声で、彼の足元を指を指す。

 

「萩風、その写真は何ですか?」

 

 写真、ただの写真だ。正直言うことでもなかったものなので話してなかったものであり、何故怒っているかも萩風には分からない。ただ、今が非常に不味い状況であるのを分かっている。先程までの『全く、困った弟子ですね』みたいな怒り方ではなく『お前何やってんの?』と言う怒り方なのだから、空気も変わる。

 

 ただその写真には破面が写っているだけだ。虚圏でウルキオラの右腕として働いているハリベルとその従属官達、そしてもう1人の少女が写っているだけの写真だ。その少女を皆微笑ましく眺めているだけの健全なものであり、叱責される要素などないはずだ。

 

 ただ、問題があるとすれば──

 

「特にその写っている幼子、誰かの面影を感じるのですが?」

 

 ──そこに写っている現世の基準なら小学生ぐらいに見える少女がその写真に映る1人の面影と、更にこの写真の持ち主の面影を併せ持っている事だろうか。

 

「ま、待ってください! 違うんです、説明させてくださいって!!」

 

 何かやばい、何がヤバいかは分からないが萩風は全てを話すと言う意志を見せる。何故か分からないが萩風の第六感が卍解を使われる未来を予期しており、絶対にそれは阻止しなければならないと危険信号を送っている。

 

「彼女とはその、昔から親交があって……知恵をつけてきた天界の奴等に巻き込ませないようにする為に、もう会う事は難しいって話をしたら、その……そういう雰囲気になってて」

 

 彼女、エミルー・アパッチとは長い付き合いだ。それこそ虚圏に行けば必ず会うぐらいの仲ではある。しかし破面と死神、それも霊王となれば関係を深める事は難しい問題がある。ウルキオラやハリベルには認められていても、それ以上の関係にはなれない。

 更に言えば萩風は霊王として果たさなければならない責務があり、その過程で虚圏にいる彼等が危険に晒される可能性を考えていたのだ。天界の来訪者は知恵をつけ始め、元が地獄のならず者であるので邪悪な存在として産まれることが殆どだ。そして、そんな存在を狩る霊王を敵にするなら、虚圏で萩風と親しい者に目を付けないわけがない。

 

 なので萩風は彼女を諦めた、そしてそれを伝えた。そうしたらそういう雰囲気になり、ウルキオラとのみ面会していた時に出来ていたことを聞いたのである。なお耳にしたのはほんの数ヶ月前であり、その写真もウルキオラから貰ったものだ。今はスクスクと育っているようで、霊王の血を引いているおかげでとんでも無い素養があるらしい。

 

「なるほど、そういう雰囲気にして子供を作る余裕はあったのですね。こちらには一度として顔を見せた記憶は無いのですが」

 

 ただ親としての自覚を持つよりも周りの問題を解決しなければいけなかったのでまだ会いに行けてはいない。霊王を辞めた今なら会っても多少はマシになるはずなので、その為にこの写真は胸元にいつもしまっていたのだ。

 

 なお、それは置いておいても護廷十三隊に顔を出さなかった事に卯ノ花はキレている。それこそ今すぐにでも斬魄刀を引き抜こうとするほどであり、その豹変振りに「え、今のどこに殺意が!? いやあの、責任は取りますけど!!」と萩風は情けない雄叫びをあげている。

 

 ただ、そんな卯ノ花の手を勇音は止める。

 

「もうやめましょう、卯ノ花さん!」

 

 目には涙が浮かんでおり、その手を収めるというよりは懇願して思い止まらせるようなものになっている。彼女も何か胸中が複雑な思いで一杯なのだろう、しかしそれでも彼女は止める。

 

「もう、萩風さんは幸せにしなきゃいけない人が居るんです。だから……」

 

「勇音……そうね、少し気が動転していたようだわ」

 

 だから、その先の言葉は萩風には分からない。しかし卯ノ花はそれを理解していたのか殺気を完全に収める。その様子に今度こそ落ち着いたのだろう。ただ萩風は『子供作って責任取らない屑野郎』という点に怒っていると思っているので、反省しているようで反省出来てないのだが。

 

「はい、ちゃんとしまって……」

 

 そうして、勇音が写真を拾い上げて萩風に渡しに向かう。これはしっかりと、また胸の中にしまっておくものであると。

 

「虎徹さん……ん?」

 

 ただ何故か、今度は彼女の手が止まる。彼女に手にある写真は別に見せられないものではないはずだ、しかし彼女はその2枚目の写真を見ると──

 

「萩風さん、これはどういう事ですか?」

 

 ──荒ぶる霊圧を纏い、萩風の胸ぐらを掴んで彼の眼前に一枚の写真を突き付けていた。あまりにあまりな行動に反応が遅れたというのもあるが『これ対抗したらダメなやつだ』と霊王であった第六感が警報を鳴らしていたので無抵抗のままその写真を見る。

 

 そこには金髪の少女と萩風カワウソの2人が写っている。それだけだ、しかし強いて言えばその写真はある意味もう1人写っているという事だろうか。

 

「違うんだ、虎徹さん。事情はあるから話させてほしい」

 

 その少女、リルトット・ランパードは萩風カワウソの最初の眷属にして現在は萩風直属の部隊の隊長を務める滅却師だ。来訪者を対応する為に滅却師の滅却の力は役立つものであったので、今では魂魄のバランスは彼女達無しでは取れたものでは無い。

 

 ただ、問題なのはそこではないのだろう。

 

「このお腹の膨れた少女、身籠った子の親は誰ですか?」

 

 リルトットのお腹が大きいのだ。まさしくそれは命の宿っている事を示しており、隣に写る萩風の顔も何処か親しげに見える。

 

「…………それは、その」

 

「誰ですか?」

 

 ここに来て漸くだろう、彼女達が何故キレているのかを察する。自分達を放っておいて、どこでうつつを抜かしていたのかと。会いに来る余裕が無いやら巻き込むことが出来ないなど色々と言いながら、何をしていたのかと。過程は知らない、事実を語れと言っている。

 

「………………俺、です」

 

 その言葉を聞いた瞬間、勇音によって首は滅茶苦茶に揺らされた。力任せに、殴る蹴る斬るなどは彼女の気質として出来ないようだが、それでも先ほどとは違い怒気10割の萩風の気遣いなぞ欠片も無い揺さぶりをしていた。

 

 ちなみにリルトットが孕んだのはそれが霊王を放棄した時の願いであったからだ。もう放棄が決まったような時期、ちょうど1年前ぐらいに『俺に出来る事なら何でもするんだよなぁ?』と言われてしまい、やってしまったわけである。今は元気に育っており、零番隊も手伝っているらしい。その写真は別で胸の中にあるが、そう説明する余裕は無いだろう。

 

「まさか、こんな節操無しとは思いませんでした。霊王になって変わってしまいましたね、それもこんな可愛らしい……私なんかとは程遠い女性ばかり!! この大きい背があっても、私の事なんて視界にすら入ってなかったんですね!!」

 

 色々と言っているが、萩風は聞き取れない。120年も家族とも言えた護廷十三隊に帰らず子供作って意気揚々と帰ってきたと羅列させてみれば中々に屑な事をしているように感じ『天狐、俺どうしたらいい?』と匙を投げて流れに身を任せる以外に出来ないのだから仕方ないだろう。下手な言い訳や抵抗も、彼女達の神経を逆撫でするだけなのだから。

 

 しかし、その勇音の手を今度は卯ノ花が収める。

 

「まぁまぁ勇音、落ち着きましょう。やはり王様というのはそれだけ豪気でなければ務まりませんものね」

 

 だが何故だろうか、先程と異なり萩風は全く安心出来ていない。それはあれ程までに激昂していた卯ノ花が笑顔のままに彼女を諫めているというのもあるが、その卯ノ花が明らかに何かを思いついたかのような表情と昔に萩風と決闘をしていた時の獲物を見る目をしているからだろう。

 

「ところで萩風、私は待たされたわけですがそれについてどう思います?」

 

「あ、その……」

 

「誠意を、見せられない甲斐性無しに育てた覚えは無いですが……どうですか?」

 

「俺に出来る事なら、何でも聞きます」

 

 何故か、抵抗が出来ない。抵抗したらダメな気がして何も言えない。萩風カワウソはユーハバッハと相対していた時は感じていなかった恐怖を、今頭の中で感じていた。護廷十三隊の総隊長や初代剣八であった圧から、何か危険な雰囲気を感じていた。

 

「そうですか、そうですか! 実は、貴方からしか貰えないものが二つあるんです」

 

 そしてその予感は、やはり正しい。この危機感知という二代目霊王としての権能の正しさに、萩風は初めて後悔をする。あまりに希望がない事に、避けようのない何かに抵抗できないのであれば死刑の宣告でしかない。

 

 そして、その卯ノ花の要求は──

 

「一つは────苗字です」

 

 ──拍子抜けするほど、軽いものに聞こえた。

 

「え、そんなので良い……いやなんでもないです、どうぞ好きなようにお使いください」

 

「えぇ、そう言ってくれると思いました。ではもう一つも頂きますが構いませんね?」

 

 ただそれを口に出しては不味いと思い萩風は思い止まる。願いは二つと言った、もう一つをまだ聞いていない。この一つ目はその落差を作る為に敢えて軽くした可能性すらある、こんな考えを卯ノ花に対して何故しなければならないのか、萩風は胸中が涙で一杯にしながら最悪の可能性ではない事を確かめる。

 

「命では無いですよね?」

 

「あら、正解ですよ」

 

 ダメだったようだ、萩風カワウソは自身の墓がここであると悟り無気力なまま膝を折っていた。

 

 ☆

 

 萩風カワウソが瀞霊庭に侵入してから、一月が経とうとしていた。そんな中で開かれた隊首会には萩風の姿もあり、四番隊の隊長が立つ位置に立っている。

 

 中央には総隊長である日番谷冬獅郎と側に控える副隊長の雛森桃(苗字を変える届出は出してない)がおり、萩風の見知った顔も他にはいるが、見知らぬ隊長の顔も多い。

 

「卯ノ花御意見番と四番隊の虎徹隊長は産休に入る事になった。それと二番隊の砕蜂隊長も身籠った事を機に引退、代わりに二番隊の隊長は副隊長だった四楓院夕雲に任せる」

 

「はい、頑張ります!」

 

 新たな隊長として闘志を燃やす彼女とは異なり、今回の隊首会の温度は冷えている。と言っても冷えてないものもいるが、冷ややかなその目線は全員、萩風カワウソの方へと向いている。

 

「それと、人手を一気に減らした張本人である零番隊の萩風カワウソには暫く四番隊の隊長代理をしてもらう。顔の知らない奴は覚えておいてくれ」

 

 隊長と御意見番の3人を孕ませた零番隊のクソ野郎、そのレッテルが貼られているのだから仕方ない。命を貰うと言われた萩風であるが、まさかあんな事になるとは思ってもいなかったのでげっそりとしている。ここ最近はその手続きやら対応やらで色々と気を回していたのだ、更に四十六室の対応も重なれば精神的な疲労が体にも現れてくるだろう。

 

「あんな騒動を起こしたこの女を、信用しろと?」

 

「あの、こう見えて男です」

 

「御言葉ですが総隊長、今は天界の来訪者との戦いが続く戦時下です。先の戦いでも隊長が2人も入れ替わりました、そんな非常時にこの女を入れる理由は分かりかねます!」

 

「あの、男なんですけど……」

 

 なお、そんなクソ女が3人の女性を孕ませたとして非難の目を向けられているのだ。ただそう言うのは萩風とは面識の無い隊長達であり、他の面識のある隊長達は静観を決め込んでいる。なお萩風の主張する言葉は全く耳に入っていないように見える。

 

「信用するかどうかは今後の萩風を見てお前らで判断しろ、だからと言って決闘はするなよ」

 

 日番谷はそう収めるが、それで収まるはずがない。顔見知りである護廷十三隊の隊長の方が多いのであまり厳しい視線は少ないが、そうでは無い5・8・9番隊の隊長達の視線は厳しい。

 

「うちの副隊長やっといて、ただで済むと思わん事だな」

 

「この変態が……」

 

 口々に護廷十三隊を穢す悪辣な存在として威圧するが、そう言われてしまっても肩書きやらやって来た事実だけを並べてしまえば少なくとも自分から誤解を解く事は出来ないだろう。だからこそ日番谷も総隊長として『自分の目で判断しろ』と言っているのだ。

 

「……誰か庇ってくれたりしません?」

 

 だがここまで逆風を起こされていれば少しは居心地が悪いだろう。そんな眼差しを周りに向けると、十番隊の隊長と目が合う。

 

「大丈夫だろ、また肩を並べて戦えるのが俺は嬉しいぜ」

 

 そうじゃないんだよな、とは言わないが久しぶりに会った黒崎一護の顔に『まぁダメな時は潔く殴られる……殴られるだけで済むかなぁ』と内心複雑なまま、隊首会に臨んでいく。

 

 ただそれも砕蜂や朽木白哉が入った事により寛容となった四十六室による情報統制が緩む時まで、その居心地の悪さは続くのであった。

 

 ☆

 

 萩風が霊王宮を出てから数日、三代目霊王の書簡が届いた頃に2人の死神が下を見下ろしていた。零番隊の麒麟寺天示朗と兵主部一兵衛だ、彼らは一つの時代に区切りがついたと肩の力を抜いていた。

 

「ようやく、あいつは霊王辞めたか」

 

「辞めたと言っても、三代目に何かあればいつでも代われるがの」

 

 だが何かあった時にはいつでも霊王として楔になれる、それが萩風カワウソである。ただ楔としての仕事も含めて移譲し、ただの死神と思い込んでいる彼の認識の甘さには2人とも頭を抱えている。

 

 ただの死神が零番隊にはなれない。霊王が変わろうと、零番隊の条件は変わらない。その加入の条件は霊王に認められた尸魂界の歴史に変革を起こす程の名を残す偉業を成す事だ。

 

 そして、萩風カワウソにはそれが当て嵌まるからこそ零番隊に居るのだ。

 

「理論上はどんな奴でも霊王になれる、そんな結果を残した唯一の死神ですからね」

 

 萩風カワウソと全く同じ時間、同じ状況、同じ修行を行えば誰しもが霊応に足る器を手に入れると証明してしまったのだ。萩風カワウソには必要な素養は何も得ておらず、むしろ死神としての素養も霊力は天狐由来のものから発現したので零と言っても過言ではなかった。

 

 そして、そんな存在が霊王としてこの120年を治めていたのだ。零番隊として入れない道理はない。

 

「で、あそこどうするんです? また萩風みたいなの産まれたら面倒ですぜ、あいつみたいな奴が成るとは限らねえですし」

 

 ただそうなると、麒麟寺は萩風が霊王となってしまった要因でもある『過去に霊王を貴族が襲った洞窟』の対処を和尚に問う。萩風が特別に変わった要因はあそこだ、あそこで同じ事をすれば誰でも器を手に入れられるだろう。

 

 しかし、それに対して和尚は首を横に振る。

 

「居らんよ、また同じ死神は現れん」

 

 和尚は知っている、萩風カワウソがどのような死神でありどのような意志と時間をかけてあそこに辿り着けたかを。死の間際を数千数万と意図して飛び越えさせ続けた末に適応という形で変異し出来た器を、卍解ですら先に折れてしまう程に過酷な鍛錬の先にしかそれが無い事を。

 

「奴が特別な必要がある所以外が特別強かった、それだけじゃよ」

 

 萩風カワウソ、あれは霊王に次ぐ奇跡だったのだから。

 

 ☆

 

【護廷十三隊】

 

『御意見番』

 卯ノ花八千流が総隊長を退き護廷十三隊からも引退しようとした所、経験の薄い新総隊長である日番谷冬獅郎から引き止められて就いた役職。基本的な決定権は無く、隊首会などで日番谷から意見を求められた時に自身の考えを伝える役割を担い、二代目総隊長としての威厳は未だに轟いている。現在はその役職を務めながらも、育児に精を出しているらしい。なおその子供が後の総隊長となるのは別の話である。

 

『一番隊』

 日番谷冬獅郎の指揮する部隊。総隊長である彼は唯一の改弍の使い手として卯ノ花に推薦されその責務を全うしている。背はここ100年で2cmも伸びておらず、これは改弍による副作用で成長が遅くなっているからである。なお副隊長の雛森桃とは子を設けており、今は護廷十三隊になる為の勉強中である。

 

『二番隊』

 砕蜂が指揮していたが、引退に伴い四楓院夜一の弟である夕雲が隊長となっている部隊。なお副隊長は大前田希千代の妹である大前田希代が務めている。また砕蜂な育児をしながら貴族という事もあり四十六室に所属するが余りにも萩風や霊王について秘匿しようとしていた動きに後に語る朽木白哉などと協力して尸魂界を変える為の働きをしている。なおその娘が貴族会のトップに立ち「血統」と「力」と「知性」で支配するのは別の話である。

 

『三番隊』

 綾瀬川弓親が隊長を務める部隊。元は鳳橋隊長が纏めていたが本人は死亡扱いで現世にて活動している。辞めた理由は当時の副隊長になら隊長を任せられれと判断しての事だが、本人が固辞して綾瀬川が隊長となる。なお本人はさっさと隊長を辞めたがっているが辞められないまま100年が過ぎ、改弍に至れない不甲斐なさを感じながらも表には出さず副隊長である吉良イヅルと共に三番隊を背負っている。また吉良は隊長と遜色ない力持つ副隊長なのでさっさと変わって欲しいとも感じている。

 

『四番隊』

 虎徹勇音が隊長を務める部隊。以前までは副隊長をお願いしていた妹も居たが、甘えたままではいけないと感じた勇音の願いにより十三番隊に戻っている。なお代わりに副隊長へ任命された山田花太郎であるが、萩風という副隊長を知る彼からすれば荷が重すぎると苦労している。また勇音の産休中は代理隊長として萩風カワウソが仕事を代わっているが、一般隊士からの風当たりは強いらしい。

 

『五番隊』

 以前は平子真子が隊長を務めていた部隊。しかし天界からの来訪者が現世にも出没する事から後述する八番隊の隊長と共に隊長を引退し、仮面の群勢として現世で活動している。なお後任となった隊長は萩風カワウソを護廷十三隊に紛れ込んだ異物として警戒しているようだが、後にその認識は来訪者との戦いで改めていく。

 

『六番隊』

 朽木ルキアが隊長を務める部隊であり、副隊長として阿散井恋次が彼女を支えている。四十六室を変えるべく引退した朽木白哉の後任としてルキアは隊長となっており、隊長副隊長共に隊士からの信頼は厚い。萩風カワウソが帰還した時は下手に関わって状態を悪くするよりはその戦う姿を見せた方が早いだろうと特に間に入ろうという意思はない。なお元隊長の朽木白哉は四十六室で後に砕蜂の娘の後ろ盾として活動するが、想像と違ったタイプの是正にドン引きするのは別の話である。

 

『七番隊』

 斑目一角が隊長を務める部隊であり、元隊長の狛村は雛森に介抱された後に山の中で過ごしている。綾瀬川隊長と同様に隊長を辞めたがっているが、改弍に至れない事を理由にまだその時では無いと鍛錬を続けている。副隊長の倫堂与ウとしてはこのまま隊長を続けて欲しい気持ちはあるが、その気持ちが変わる事は無いらしい。

 

『八番隊』

 元は京楽春水が隊長を務めていた部隊であるが、本人が『後進の育成がしたい』という要望を当時の総隊長であった卯ノ花に伝え、再起不能扱いで護廷十三隊を引退しており、副隊長であった伊勢七緒もそれに付いて行き教官をしている。そして後任である矢胴丸リサは暫く隊長を務めていたが平子同様に現世に戻り、今は更に後任の隊長が部隊を指揮している。

 

『九番隊』

 元は六車拳西が隊長を務めていた部隊。ただ彼は鳳橋楼十郎と同じく戦死者として扱われているが、今は仮面の群勢として現世で活動している。隊長退いた理由はまだ精神的な甘さも残っていた檜佐木を隊長にする事で無理矢理矯正しようという考えからであり、実際に産絹彦禰と関わった事件で大きく隊長として成長も出来ていた。ただ檜佐木は度重なる卍解の使用で隊長を退き、今は何故か結婚した久南白と共に新聞を瀞霊庭内に発行する記者として活動している。なお後任の隊長は義理と人情に熱いタイプであり、萩風の何人も孕ませた行為に立腹している。

 

『十番隊』

 10年前に日番谷冬獅郎が総隊長へ昇進した時を境に黒崎一護が隊長を務めている部隊。副隊長だった松本乱菊は護廷十三隊を引退し、思い人の墓を整えている。代わりに副隊長となったのは斬魄刀を持たない茶渡泰虎であり、最初こそいきなりのこの扱いに多少の不満も出ていたが今では十番隊をしっかりと率いられている。与えられた仕事は虚圏との関係を保つ謂わば外交官的な立ち位置であり、虚圏の王であるウルキオラとは良好な関係を築けているらしい。なお黒崎一護の妻である井上織姫も四番隊で末席ではあるが席官をしている。

 

『十一番隊』

 更木剣八が隊長を務める部隊。過去には単独で来訪者を撃退もしているが、知恵をつけてきた彼らには苦戦している模様。なお副隊長を務める 射場鉄左衛門は120年前の戦いで故人となっていたが涅マユリによって蘇生されて副隊長を務めている。なお三席には黒崎一護の息子である黒崎一勇がいる。彼は色々と特質的な能力があったので萩風に目をかけらており、師弟に近い関係を築いている。なおお姉さんとしか呼んでいない模様。

 

『十二番隊』

 涅マユリが隊長を務める部隊。副隊長であったネムはジゼル・ジュエルとの戦いで不調が出てしまった為、眠八號として再構成され今は三席を務めている。代わりに副隊長となった阿近は他の隊長格からの何でも屋扱いされて色々仕事が溜まっているらしい。

 

『十三番隊』

 浮竹十四郎が隊長を務めている部隊。肺に居着いていた霊王の右腕は終戦後に欠片の回収をしていた萩風との交渉により健康な内臓機能を手に入れた事で今もなお隊長として働けている。なおその影響で多少は霊圧が落ちてしまったが、それでも十分なほどに古参の隊長として護廷十三隊を支えている。副隊長は朽木ルキアと阿散井恋次の娘である阿散井苺花が努めており、本人は彼女が成長した時が隊長の辞め時だと考えてもいる。

 

『藍染惣右介』

 過去に護廷十三隊と敵対した元五番隊隊長。萩風カワウソの特異性に鏡花水月中の斬撃を避けられた事から察しており、霊王として感知する力を有しているとまで見抜いていた。だからこそユーハバッハが特記戦力にしていなかった事に落胆し、霊王を吸収したユーハバッハを倒す可能性を捨てていなかった。過去に霊王にならないかと誘いを受けた時もあったが断っており、今は感覚器を増やして対処してくる萩風を相手にどう戦おうか楽しみにしつつ、その時を待っている。

 

『先輩』

萩風に嘘をついてしまい色々世界の命運とか分けてしまったキッカケ。萩風と仲が良かったのは出身地が近いというのもあったが、それは彼の中に「天狐の魂魄の断片」が紛れていたので属性的にも仲良くなりやすかったのも要因としてある。現在は隠居しており、隊長していた事すら最近まで知らなかった。

 

【完現術者】

 

『現世組』

彼らは浦原喜助の支援により普通の暮らしを手に入れられていた。ただ力を望んでいないものもいたが、それは後に『先代霊王の欠片』を集めて回る萩風カワウソに願ったものは回収され普通の人間になっている。

 

『死人組』

銀城は浮竹と和解し、諸悪の根源であった存在と戦いに向かったがその存在は霊王の新しい器を奪われるだけでなく遥か高みから全て掌で踊らされていた事に気づき最後は魂を滅却されて息絶えた。なおそれをやった萩風カワウソは無自覚で計略を利用していただけなのを知らない。またグレミィを倒した月島も普通に流魂街で暮らしており、死後の世界でのんびりしている。

 

【虚圏】

 

『虚夜宮』

 虚圏の王であるウルキオラ・シファーの治める城、破面の多くが住んでいる。浦原喜助からの技術支援などもあり、今では何もなかったこの世界でもテレビが見れるようになっている。なお最近の悩みはハリベル達の育てている萩風カワウソの子供『リーンレイス・アパッチ』が無意識に『王虚の閃光』を放つ事であり、それを止める為に執務を中断する事がしばしばある。なおその子供が卍解と帰刃を身に付けてウルキオラに対して王座を分捕り婿に据えようとするのは別の話である。

 

【零番隊第五神官】

 

『星十字騎士団』

 ユーハバッハが死に、殆どの星十字騎士団も死んだ。生き残ったのもたったの4名であり、石田雨龍を除いた全員が(石田雨龍も死後に)霊王の眷属となっている。

 

『バンビーズ』

 零番隊『狐飛姫』直属の部隊であり、名前はバンビエッタが付けた。隊長はリルトット 副隊長はアスキン、そして所属メンバーは8人であり、全員が元星十字騎士団。アスキンと石田、そしてグレミィ以外は元バンビーズであり涅マユリの骸部隊から萩風が強奪し蘇生(体内の菌も除去)した事で形成された部隊。

 

 石田雨龍は萩風カワウソから直々に招待を受けたが初めは断り、死後に再スカウトをかけた萩風の言葉にしょうがないといった様子で受けているが、それは黒崎一護などかつての仲間が護廷十三隊に入隊した影響が大きい。今はバンビーズの参謀を務めている。

 

 リルトット・ランパードは霊王の左腕の力を使い敵を倒すバンビーズの隊長を努めており、過去には霊王の特別世話係という役職で呼ばれていたが名前にセンスのかけらもなかったのでバンビエッタに変えさせた。実は力の宿った左腕よりも治してもらった右足の方を大切にしており、それをアスキンに指摘されてから萩風を意識してしまい、願いでは『萩風との子を作る事』を望んだ。霊王と滅却師の子供という事もあり、無茶苦茶な力を持つのはまだ先の話だろう。

 

 バンビエッタ・バスターバインはバンビーズの1人であるが隊長どころか副隊長ですら無い事に納得いっていない。なお萩風もその役職は眷属になった順番で任せているので他意は無いのだが、気にしている。また何故かアスキンと結婚しているが副隊長の座を寄越せと毎日詰め寄っているらしい。願いではリルトットの気を萩風に向かわせない為に『グレミィ・トゥミューの蘇生』を求めたが、結果としてその思惑はうまくいかなかった。

 

 アスキン・ナックルヴァールは副隊長を務めているが、何故かバンビエッタ・バスターバインと結婚している。理由は零番隊に仕立てられた服が似合っていたなどが重なってなのだろうが、凸凹夫婦として萩風カワウソを支えている。願ったものは『飽きない世界』であり、天界というはちゃめちゃな世界の誕生にユーハバッハでは見られなかったものを体感して相応に満足している。

 

 ジゼル・ジュエルはバンビーズに所属する滅却師。バンビエッタをゾンビ中に好き放題した影響で彼女から距離を取られている。願ったものは『人形(ガチ)』や『バンビちゃん(ゾンビ)』といった萩風の倫理的に応えられるものではなかったので、代わりに「そんなに女の子の振りするなら、女の子にしてあげるよ」と『女の子にされてしまう』という形で無理矢理願いを消化されてしまう。なお反論しても周りから援護はなく、今は男の子に対して時折起こる胸の高鳴りと戦っている。

 

 グレミィ・トゥミューはバンビエッタの願いによって蘇生された滅却師、しかしその脳は三代目霊王に使われており蘇生なぞ出来るはずもなかったが細胞の培養など萩風が霊王として本気で手を尽くした結果受肉し能力も『想像したお菓子を出せる』程度になってしまったが、それでリルトットの胃袋を落とすことが出来ず惨敗、何故かミニーニャ・マカロンと最近は雰囲気が良い感じであるが、本人は気づいていない。

 

『萩風カワウソ』

 零番隊に所属する死神であり、元は二代目霊王。正式な肩書は『王族特務零番隊 天界神将 第五神官 狐飛姫』であり、完現術により完全に復活させた斬魄刀『天狐』と共に戦う姿からその名は名付けられた。外見は天狐にかなり近づいており、いずれ完全に女性になるのでは無いかと不安がある(その不安は的中する)。

 霊王宮には離殿もあり名前は天狐殿とされ、滅却師達が普段は生活している。その仕事は天界と地獄(地獄は天界のついで)の管理であり天界から現れる来訪者と戦う事が主な仕事。

 既に5人の子供がおり、何故そうなっているのか全く心当たりがない模様。ただ等しく全員に責任を持って子育てをしに行きたくとも仕事が多過ぎてまともに動けないらしい。また自身の二代目霊王としての力は扱えており、初代には及ばずともいつでも新たな楔として代われるらしいが、その事は零番隊以外には知られていない。最近の悩みは隊長の誰も卍解・改弍について語ってくれない事であり、それを聞いた日番谷は「まだそんな非常識が常識なのかよ」と頭を抱えている。





完結

色んなキャラに見せ場を作ろうというコンセプトで作った本作ですが、満足頂けたなら嬉しいです。正直この作品のどの辺りを気に入っていたのかもあまり分かっていませんでしたが、とりあえず文章力とか2年前より多少は上がって見られるものにはなったかと思います。

ちなみに初期では黒崎一護が主人公である事を尊重して萩風を乗っ取ったユーハバッハを力を合わせて倒すみたいな形にしようとしてましたが、それよりは普通の大団円にした方が良いかと思いそうしました。ただヒロインとかそれっぽくして繋げる気はありませんでしたが、希望が多かったのでこういう終わり方になった次第です。

とりあえず長かったこの作品は終わりますが、またどこかで『赤茄子秋』って名前を見たらこんなの書いてたなと足を運んでくだされば嬉しいです。今後の創作はオリジナルの何かを書きたいと考えてますが、纏ったら出す予定です。とりあえず今はアニメを楽しむ予定。

最後に、神作品の創造主である『久保帯人』先生に感謝の言葉を述べさせてもらい締めたいと思います。

ありがとうございました!

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