卍解しないと席官にもなれないらしい。   作:赤茄子 秋

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お礼もできずにお別れしたのは、残念です…

護廷十三隊五番隊副隊長 日番谷桃


ソウルソサエティ篇
7話 座学サボってたから、世間知らずだわ。


○月×日

 

最近、初めての友人ができた。雀部副隊長だ、彼は俺を仲間と言って茶会に誘ってくれた。まぁ、俺ってこの人の次に古参な副隊長だしな。この人はいつも隊長の話断ってるのでも有名だ、総隊長の事をずっと話してたが自然と飽きなかった。

 

友人と飲む茶がここまで美味いとは知らなかった。

 

○月×日

 

女の子の友達が居ない、男の友達は一人できたけど女の子が居ない。誰か、アホそうな子は居ないのか?ちょっとバカで可愛い子は!?駄目だ、女の子の死神って身持ちが良さそうな子しか見当たらねぇ!

 

○月×日

 

あぁぁ!?何で俺に、彼女が居ないんだよ!この歳でまだ卒業してねぇよ、てか女の子の友達も居ないよ!

え?虎徹勇音?弟子に手を出したら紹介された卯ノ花隊長に殺されるわ!!雛森桃?あのイケメンに勝てるところがあるなら言ってみろよ!!そして日番谷隊長も狙ってるんだぞ!勝てねぇよ!え?卯ノ花隊長?プロポーズしたら俺の屍を遮魂膜に投げ込むと思う。

 

…俺に、未来はあるのだろうか。

 

○月×日

 

胸の大きさじゃない…性格の良さなんだ…

 

○月×日

 

可愛い彼女が欲しい

 

○月×日

 

おっぱい、おぱ…おぱぱばぱぱぱぱぱぱぱp

 

◯月×日

 

邪念は鍛錬で消してきた。

 

いつものような平和…うん、平和な時間が流れてく。そんな時にこの招集はあった。副隊長の証である副官証を強制されてつけるの何気に初めてかもしれない。

 

で、副隊長も全員集められましたよ。隊首会には出られないけどね。

 

で行われたのは緊急隊首会だ。そして、今回はそれに見合うだけの事件だった。

 

朽木ルキアっていう子が大罪を犯したらしい、死神の力をあろうことか通りすがりの人間に渡したそうだ。

 

あ、それって罪なのか。知らんかった。

 

で、その子は死刑だってさ。

 

いや予想外ですわ。双極ってのはよくわかんないけど…あ、死神処刑する斬魄刀だったかな?座学サボり気味だったからよぐわがんね。

 

で、死神の力を渡しただけで死ぬのか?

 

いや、渡して無くしたなら取り返せばいいじゃん。そこまでやばいの?もし無くしたならまた修行して死神の力をゲットできないかな?

 

その後は適当に理由言われたけど、俺は納得しなかったなぁ。世の中で数少ない女性の死神を殺す理由なんざ、存在しないだろう?

 

つまり…あ、俺には何もできないけどね。何か出来そうな人に任せるわ。てか、処刑まで2週間とか短いと思うのは俺だけかな?

 

何か急いでるようにしか感じないんだよなぁ…もしかしたら、俺が世間知らずだからなのかもしれんが。

 

まぁ違和感があるなら隊長達の誰かが解決するだろ、俺はいつも通りに卯ノ花隊長と鍛錬するよ…

 

◯月×日

 

旅禍ってのが侵入してきたらしい。

 

とりあえず侵入者ですね、遮魂膜って凄い膜が瀞霊廷を覆ってるんだけどそれを突破してきたらしい。

 

数は分かってるだけで5人、被害は十一番隊が壊滅的被害を受けて3席と5席がやられたらしい。卍解つかってたら流石の俺でも霊圧で感知できると思うし、卍解使わなかったのかな?

 

思い立ったが吉日、ちょうど治療室に居るらしいから行ってきた。

行くと十二番隊の涅隊長に脅されてたけど、ここ四番隊管轄ですからね?でもゴネてきたから「俺を相手取るってことが、どういう事かわかってての行動か?」と「俺に手を出したら卯ノ花隊長を敵に回すぞ!?あぁん!?」という意味を含めて追っ払った。渋々去ってくれた後に3席の斑目君に戦闘の事について聞いたら驚いた顔をしながらも卍解は使わなかったと言っていた。まぁ使っちゃ駄目だよな。卍解をしたら瀞霊廷がヤバいことになるだろうし、総隊長から許可とか無いと駄目だよな。

 

俺も卍解しないように気をつけないとな…

 

◯月×日

 

六番隊の阿散井恋次(あばらいれんじ)副隊長がやられた、卍解が使えない状況下とは言え副隊長をやるとか敵は中々強いそうだ。

 

あ、ちなみに今の俺は両腕を包帯でぐるぐる巻きにしてます。まぁ名誉の負傷だから問題無い、女の子に血を流させるわけにはいかないし、これがベストだと思ったからな。

 

何故かと言うと藍染隊長が殺されたのが発見されてから話は始まるんだけど…

 

☆☆☆☆☆

 

ポタポタと赤い水滴が滴り落ちる、その水滴の根源となる泉にもう命は宿っていない。見ればわかるのだ、斬魄刀が胸に刺さっている。目も半開きのまま影が差し込んでいる、第一発見者の雛森桃にはわかる。回道に少なからず精通している彼女にはわかる。

 

藍染隊長は殺されたのだと。

 

「藍染隊長…」

 

その後ろから他の部隊の副隊長が集まる、呆然と立ち尽くす彼女へ駆け寄る三番隊の副隊長の吉良が揺さぶるも彼女の目に光は宿らない。

 

「雛森くん、どうしたんだい?雛森くん!!」

 

そして次に動いたのは四番隊の副隊長である萩風だ、直ぐに藍染の死体から斬魄刀を抜き取り治療に取り掛かろうとする。だが直ぐに諦める、何故なら死んでいるのをはっきりと確認してしまったからだろう。

 

壁に足をねじ込んで体を支え、藍染隊長であった物言わぬ体を抱える。

 

「いやぁぁぁぁ!!」

 

そして雛森はそれを見て更に絶望する、何故なら回道に精通している四番隊の副隊長が匙を投げているからだ。まだ息があるかもしれないという一抹の希望すら、拭いとられたのだから。

 

「なんや、朝っぱらから騒々し…おや、これはえらい一大事やね」

 

そんな一同の背後に現れたのは三番隊の隊長である、市丸隊長だ。同じ隊長格が亡くなったというのに、えらく緊張感が無い。まるで知っていたかのように、そう考えた雛森の頭には同じく隊長であり幼馴染である十番隊隊長、日番谷の声を思い出す。

 

《三番隊には気をつけろ、特に藍染が一人の時はな》

 

「お前か!!」

 

刀を抜き、そのまま彼女は斬りかかる。副隊長とは言え隊長に次ぐ実力者だ、不意をつければ隊長と言えど殺せる。ましてや、背中を見せて抜刀すらしていないならば。

 

しかし、それは一対一の場合に限る。

 

キンッ!というぶつかり合った金属音が響く。市丸は抜刀すらしていない、雛森が振るった斬魄刀は別の死神、彼の斬魄刀によって防がれていた。

 

「僕は三番隊の副隊長だ、ここを退くわけにはいかない」

 

吉良は市丸の手前で彼女の斬撃を防いだ。当たり前だ、市丸隊長は吉良副隊長の上司なのだから。とっている行動は違うが、藍染隊長の為に剣を振るう雛森副隊長と立場は同じなのだから。

 

「退きなさいよ!」

 

「退かない!わかってるだろ!」

 

二人が鍔迫り合いをしている間に、市丸は悠々と離れて行く。だが吉良が退くつもりも、退けない事もわかっている。ならば、彼女が取る行動は予期できた。

 

(はじ)け『飛梅(とびうめ)』!!」

 

そして彼女の斬魄刀が解放される、七支刀のような斬魄刀へと形状が変化する。

 

「っ!!自分が何をしてるのか、わかっているのか!」

 

同時に、吉良へ向けて爆発が起こる。飛梅の能力である、始解した彼女の斬魄刀の力であり、彼女が本気なのだと吉良は瞬時に理解する。

 

(おもて)()げろ『侘助(わびすけ)』!!」

 

そして彼もまた斬魄刀を解放せざるを得ない状況であった、このままでは殺し合いになる。二人には退く事ができない理由がある、冷静でない雛森副隊長が相手の吉良副隊長には退けないのだ。

 

そして、二人の攻撃が交差しようとした時に。

 

「っ!!」

 

先程まで藍染隊長を抱いていた萩風が、二人の間に立っていた。

 

「イテテ…二人とも、斬魄刀をしまってくれると嬉しいんだけど」

 

それも、素手で始解された斬魄刀を受け止めてだ。当然無傷では無い、ポタポタと赤い水滴が糊のように粘性を持ちながら両者の斬魄刀を伝って手に流れ落ちる。

 

「え、あ…」

 

そこで二人はやっと理解したのか、動きが止まる。そして深々と刺しこまれた二人の斬魄刀が彼から抜きとられる。

 

そして周りの者達だが、副隊長でありながら誰一人としてこの戦いをとめられなかった。否、動けなかったのだ。この混乱した状況をうまく把握できず、これを上手く納める方法が無かったからだろう。

 

「痛いと思ったら…骨まで届いたか」

 

だが萩風は全く関係のない自分が血を流す事で、お互いの動きを止める事ができた。結果的に雛森副隊長が冷静さを取り戻すきっかけも与えていた。だからあえて、彼も斬魄刀で守らなかったのだろう。

 

とも考えられるが、始解が行えないという噂通りならば斬魄刀を使う意味がなかったともとれる。

 

「萩風副隊長、腕が…!?」

 

「大丈夫、傷口は塞いだから。痛みは残るけどね」

 

松本副隊長が負傷した萩風へ駆け寄る、そして他の副隊長はようやく吉良と雛森を拘束する。

 

そして最初傷を見た松本は顔が青くなる、左腕は灼け爛れ右腕からは骨が見え傷ついていたのもみえたのだから。

 

が、直後にその青くなった顔は色を取り戻す。

 

「もう骨をくっつけて…?」

 

「応急処置だけどね。斬魄刀で傷ついたから、少し回復に時間はかかるけど、俺の心配はしなくていいよ」

 

いや、そこに驚いているだけではない。回道に長けた萩風ならここまで回復するのも噂程度には知っているからだ。

驚いているのは松本くらいだろう、だから無知な彼女が萩風の元へ駆け寄ったのだ。

 

だが殆どの副隊長全員が驚いているのは《始解された斬魄刀を受けて何故、骨に届いた程度で済むのか》だ。本来ならそのまま切り裂かれ、最悪死んでいる筈だ。また副隊長達の誰一人として、萩風の動きは捉えられなかった。藍染隊長の死体だが、丁寧に地面に置かれている。磔になっていたのを下ろし、それをして皆の間を駆け抜けて2人を止めたのだ。

 

これだけの動作をして見えないはずがないのに見えなかった。

 

それもそのはずだろう、近くにいた隊長である市丸ギンですらその軌跡がうっすらと見えた程度なのだから。

 

「牢屋に連れてくぞ」

 

二人はそのまま他の副隊長達に連行されていく、松本も萩風の容体が無事なのを確認してから近くに居るであろう日番谷隊長へ報告へむかう。

 

「大丈夫かいな、萩風副隊長」

 

そしてそのまま連行されて行く雛森副隊長の目の前を通り、萩風へと歩み寄る。この二人に接点はない、というか萩風と接点のある隊長は卯ノ花隊長だけだが。

 

この場には二人だけであった。

 

だからこそ、萩風は問うた。

 

「市丸隊長、雛森副隊長を殺そうとしてましたね。殺さないようにできる力があるにもかかわらずに」

 

返答は無いが、恐らく間違い無いのだろう。少しだけ嫌らしく微笑み、それで萩風は理解する。彼から発せられた微弱な殺気、それを見抜けていたのは萩風だけだろう。常に卯ノ花隊長との殺意の溢れた戦いに身を投じていたからこそ身につけた特技だ。

 

「俺は隊長格だろうが、女の子の血を流す奴は許さないんで」

 

そう言い、萩風はその場を後にする。これから報告に向かうのだろう、ご丁寧にいつの間にか現場を市丸が簡単に手を出せないように結界を張っている。

 

「怖いなぁ…萩風副隊長は…」

 

そう言いながら、彼を見送る。その目は蛇のように冷ややかなものであった。

 

「殺したいくらいに、なぁ。」

 

☆☆☆☆☆

 

旅禍、それは尸魂街に紛れ込み災いを巻き起こすと言われる存在だ。そしてその旅禍の中で最も強い男、黒崎一護は副隊長である阿散井恋次を破り地下へと治療の為に避難していて。

 

「おい花太郎、さっきの奴は副隊長の中でどんくらい強いんだ?」

 

そして、治療を受けながら出来る限りの情報収集に努めていた。阿散井恋次という副隊長を確かに彼は倒した、だが13人居る副隊長の一人だ。彼がどの程度の力であり、それは13人居る隊長格との力量差はどのくらいあるのか一護には想像がつかないからだ。

 

「わかりませんよ、僕は四番隊なんですよ?他所の隊士がどれくらい強いとか知りませんよ!」

 

そして尋問される山田花太郎は回道に通じていても、瞬歩もできない非戦闘員の代表的な男だ。普通の四番隊の隊士とはこういう男だ、読者は勘違いしてそうだが彼が四番隊のオーソドックスだ。

 

「じゃあお前んとこの副隊長と隊長はどうなんだよ、あいつより強いのか?」

 

そして一護からの質問は自然と花太郎の属する四番隊へと移っていく。

 

「さぁ…隊長は優しくて貫録もありますけど…副隊長が斬魄刀を使ったのを見た事も聞いた事もありませんから…噂じゃ、副隊長は始解もできないとか言われてますね…あ、でも部下を大切にしてくれる良い人ですよ!僕たち四番隊を誇りに思ってくれてる人です!」

 

萩風副隊長は回道の腕だけで副隊長となった死神、そう言って彼を揶揄する死神も少なくはない。彼が斬魄刀を解放するどころか、抜刀する所も聞いたことが無いからだろう。

 

だからこそ、そんな噂が流れていく。

 

「でも昔に隊長の推薦を断ったとか…ってのも聞いた事もありますね」

 

こちらもあくまで噂、隊長が殉職や引退、行方不明になった際に隊長の席は空く。だがそれを断ると言う事は斬魄刀をモノにしてるのでは?とも考えられたが…どちらにせよ前線に出ない意気地なしのレッテルが貼られている。

 

あくまでも、一部の死神からではあるが。

 

「一応聞くが、名前は?」

 

一護は何か引っかかるのか、その名を問う。

 

「萩風カワウソ、副隊長では雀部副隊長に次いで古参の死神らしいです」

 

間接的ではあるが、この時が黒崎一護が萩風カワウソという死神を知った瞬間であった。




この世界の主人公はかなり空気になってます、ご了承ください。

貴重な千年血戦編以外の主人公活躍?シーン。

そして建てられる死亡フラグ。

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