Nルートエンディング直後、マサカド公と主人公は一つ、やり残したことを始める。
「よくぞ成し遂げた、うぬらの活躍により人間は己らの世界を取り戻した。だが肝に銘じておけ、人間は同じ過ちを繰り返す。
再び我らが共に戦う日が来る、それまでしばしの別れである」
善意の大魂と悪意の大魂を取り込み、完全な力を取り戻したマサカド公が、天蓋へと吸い込まれていく。
岩塊で出来た城塞のような巨人、マサカド公の姿が取り戻されていくと同時に、天蓋が割れていき、東京に25年ぶりとなる太陽の光が降り注いだ。
「これで別れと言ったが・・・・・・そういえば、瑣末な用事を一つ忘れていたな」
「用事? 何のことかしら?」
イザボーには分からないだろう。
そうだ、男でなければ分からない。
「・・・・・・ああ、あったな。確かに些細な事だ、しかし俺達には大事なことだ」
そうだ、ほんの少しだけ思い出した前世の出来事。
大陸間弾道ミサイルを防ごうと、天蓋に変じようとして自我を失ってしまったマサカド公を、ツギハギと共に討った。
そして自分はマサカド公と一体となることで、共に天蓋になり東京をミサイルから守ったのだ。
かつての俺が守った世界、今の俺が元に戻した世界。
マサカド公と混じりあった、かつての俺の希望。
俺がマサカドで、我はうぬだった。
前世の我と、転生した俺。
いや、違うな。そんな難しいことじゃない。
もっと、もっと、もっともっと単純なことだ。
そう前世だの何だのそのようなことはどうでもよい、本当に単純なことよ。
そうだ、肩書だとか難しい理由だとかそんなことじゃない、ただ一つのこと!!
サムライでもない、チャンピオンでもない、ただ一人の男として。
東京の守護神でもなく、武将でもなく、ただ一人の男として。
どちらが強いか、はっきりと決着を付けたい。
「そう思うだろ」
叫びは同時。
「うぬも!!」「お前も!!」
そうだ、単純なそれだけのこと!!
もはや語る言葉など無い、ただぶつかり合うだけ!!
剣を抜き、岩塊巨人マサカドへと駆け出していく。
マサカド公もゆっくりと動き出す。
共に憂いなく戦えるように、人のいない一帯へと向けて、自分たちの戦場へと。
「まずは、これよ!! かつて戯れに覚えた根来の技受けてみよ!!」
マサカド公の体から、扇状の魔力が宙へと舞い上がる。
次の瞬間、それは無数の針状へと姿を変え降り注ぐ。
その軌道は千変万化、その勢いは高速。
それは大地を穿つ魔針。
駆ける、駆ける、駆ける。
須臾の時間でも止まれば、その魔針は命を穿つだろう。
近付けば近付くほど、雨は勢いを増していく。
ならばこちらも雨を降らせよう。
懐から銃を抜き放ち、刹那に弾幕を張り巡らす。
それは止むことのない五月雨の如くに。
魔力の篭った親王の弾丸が、魔針を撃ち抜いていく。
弾雨の応酬、一撃の威力と範囲は向こうが上。
だが単位面積での威力と手数ならこちらが上。
そして的の大きさも、向こうが上。
五月雨が天扇弓を撃ち抜き、弾丸がマサカド公の岩塊を削り取る。
だが天扇弓も無限の軌道を描く魔技、落とし損ねた魔針が幾本も迫り来る。
「う、おぉぉぉおおおおおおおッ!!」
咆哮、剣で叩き落す。
一本、ビリビリと衝撃が体を駆け巡っていく。
二本、横殴りに叩きつけ砕く。
三本、踏み台にして跳躍。
四本、大上段から振り下ろした剣撃、反動を利用しさらに上昇。
五本、不意の一撃。躱しきれないと判断し、銃を軌道に噛ませ反らす。
破損した銃には目もくれず、魔力を集中させていく。
すでにマサカド公は射程内。
使うは唯一つ。
極限の威力を込めた大魔法、名をメギドラオン。
轟音とともに炸裂した圧倒的な力の奔流に、さしものマサカド公の巨体も後退っていく。
「ゴアァァァアアアアアア!!!」
地を震わす咆哮とともに、岩塊の体に亀裂が走り始める。
「怨ォ雄怨悪汚降終負追折嗚怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨ォォォオォ!!!!!!」
だが大地霊マサカドが一筋縄でいくわけがない。
裂帛の気合、極限の集中力、怨敵調伏の念を込めた力の波動がメギドラオンを押し戻す。
一度放たれた極大の破壊魔法を、押し戻していく。
魔力を注ぎ込み、押し切る。
そうはさせじと、押し返す。
拮抗状態。
「おおぉぉぉぉおおおおおおオオオォォォオオオオオッ!!」
「怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨おおぉぉぉおォォォオォ!!」
爆轟!!
大気が爆ぜ、空間が震え、衝撃波が吹き荒れる。
極限の波動のぶつかり合いは互角。
拮抗した力が空間の限界を超え炸裂し、力の奔流が渦を巻く。
天を衝く巨岩マサカドと人一人。
力の奔流に対し、どちらが不利かは一目瞭然。
荒れ狂う波動は風に舞う木の葉のように、容易く人の体を巻き上げる。
凄まじい勢いで廃ビルが迫る。
四肢を振った反動でなんとか体勢を立て直し、ビルの壁面に着地。
否、足から激突と言った方が正確か。
その衝撃で壁面に亀裂が縦横に走っていく。
やがて慣性が力を失うと、重力に引かれ地面に落下、先程と同じく激突に等しい着地。
ナラクの数回層を一気に飛び降りた時に比べればこの程度!
そう強がり気力を振り絞るが、ダメージは軽くない。
「マハラギダイン!」
息を整えるまもなく、マサカド公の追撃の一手。
灼炎の大火炎魔法。
地上から見上げるそれは、天を焼き焦がすような光景となって見えた。
直撃すれば間違いなく致命傷。
迎え撃つべく、こちらも次の手を打つ。
「マハブフダイン!!」
極寒の大氷結魔法。
上空に撃ち出される冷気が、立氷を作り、飛雪を生む。
ダメ押しにと、ありったけの氷結魔法を封じた魔法石も投入する。
温度と温度、しかし+と-、炎と氷、真逆の力がぶつかり合う。
相殺!
だが・・・・・・マサカド公の狙いは、端から魔法による攻撃ではなかった。
見ればマサカド公がこちらに狙いを定め、両の拳を握り合わせこちらに振り下ろそうとしていた。
メギドラオンと怨敵調伏の激突により、吹き飛ばされたことでこちらを見失っていた。
だから相殺するのを見越し、それによって位置を特定するためにこそ火炎魔法を放った。
驚天動地。
まさにそれを絵にしたかのような、凄まじい光景。
天が落ちてくるような、大質量の物理攻撃。
回避行動など間に合うはずもない。
大轟音。
マサカド公の腕が根本から折れ、吹き飛び、中天を舞った。
「ふ、ふふふふ、ははははははは!! これだ、これを試してみたかった!!」
物反鏡。
物理的な攻撃を反射する魔法の道具。
これだけの巨体、その攻撃。
それを反射すればどうなるだろう?
これほどの大質量を、反射すればどんな光景が見えるだろう?
それだけだ、本当にそれを見てみたいために仕込んでいたのだ。
アマテラスから授かった鳥船の比礼をかざし、アメノトリフネの術で高空へと舞い上がる。
マサカド公の頭上まで飛び上がり、術を解除。
重力に乗って、加速を得る。
拳に魔力を集中。
「マハジオダ」
「遅い!! ワルターゆずりのぉ、会心波ぁああああ!!」
雷撃魔法の発動より早く、拳がマサカド公の岩塊の顔にめり込む。
ビシリと音が響き、亀裂が見る間に広がり、巨岩が崩れ落ちていく。
ぼろぼろと崩れ落ちる巨岩マサカドの胸の辺り、そこに何者かがいる。
直垂を纏った偉丈夫、手には大太刀。
直感的に悟る、これが、この男がマサカド公の本体なのだと。
吹き飛んだ巨岩の腕が、ようやく重力を思い出したように落下し、東京を檻のように取り囲んでいた壁にぶち当たった。
それが戦いのゴングとでも言うように、崩壊していく岩塊を足場に駆け出すは同時。
マサカド公がその太刀を抜き放ち、奥義が一閃する。
絶命の意を込めた剣でそれを迎え撃つ。
鍔迫り合い、受け流し、斬り、躱し、突いて、弾き、叩き付ける。
「くく、くくくく、ふふふふはははははは!! こんな愉快な気分で戦うのは初めてだ!! 関東を平らげ新皇を名乗った時ですらこれほどではなかったぞ!!! 楽しませてもらうぞ」
「いいねえ、存分にやろう!!」
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
マサカド公に駆け出していく彼。
イザボーは突如として始まった戦いを、呆然と見つめていた。
「何の・・・・・・何の意味があるっていうの、こんな戦いに?」
「ヤソマガツヒぃ~~~~!!」
「え!?」
振り向けばそこには数体の悪魔が立っていた。
クラブミルトンで戦ったコウガサブロウ、六本木で戦ったテンカイ、そして逆さヒルズの悍ましき赤玉製造所で出会い、酷い目にあったヤソマガツヒ。
国防のために召喚されたという、必殺の霊的国防兵器シリーズだ。
そして戦士然とした悪魔と、杖を手に脳を想起させる姿の悪魔、雷を纏う悪魔。
イザボーは出会ったことがないが、この3体も霊的国防兵器なのだろう。
「あなたたち」
「サシの勝負だからな、俺達は置いてかれちまった」
「サシの勝負って、そんなことに一体何の意味があるのよ」
コウガサブロウの言葉に、問いかけるイザボー。
それに対して、戦士然とした悪魔が答える。
「意味ならあるのさ若人よ」
「あの2人のマグネタイトが中天星を示している。あの者は強き父として、この国に勇気と活力、そして希望をもたらす者、星々がそう示している」
「混沌も秩序も内包し、どちらでもない中道を歩もうとする力。それが人の道というもの」
「学神たるこの身も、血が滾る思いよ」
「ああ、羨ましいな。俺もやりたい、誇りと憂いをかけて存分に」
「この戦いを見届けたら、俺達も試合うか」
「いいねえ!!」
「ヤソマガツヒぃ!ヤソマガツヒぃ!!」
「ははは、お前も興奮してるのか?」
そんな彼らを呆れて見つめるイザボー。
「結局どっちが強いかって子供みたいな理由じゃない。人間も、悪魔も・・・・・・殿方というのは本当にどうしようもない方達なのね」
「反論できねえな」
だけど、それでも、彼らの言うように意味があるのだろう。
理屈じゃない、生きるための力、感情。
それを沸き上がらせるための禊が必要なのだ。
「思い廻りて幾星霜。夢を失ったこの時代に、人々に、この戦いは希望の種を蒔こう。それは必ずや芽吹き、自らの運命を切り開く力となろう」
「ならばこの戦い、この東京の人々に見せてやらねばなるまい、オモイカネ殿!」
「知恵の神と、学問の神の合わせ技というわけですな。いいでしょう」
学問の神にして雷の神ミチザネ。
そして知恵の神たるオモイカネ。
元々、悪魔と電脳は相性がいいが、それを操るためにはやはり特化した悪魔でなければならない。
だが特化した悪魔ではなくとも、やりようはある。
オモイカネとミチザネがその力を補い合い、電脳世界へと侵食していく。
ミチザネの雷、すなわち電気、そしてオモイカネの演算力。
それらは東京中に行き渡り、街頭のビルに設置されていた電光掲示板、ハンター商会の電光掲示板、僅かに残っていたTV受像機、携帯用TV受像機に映像を映し出す。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「なんだこりゃ!?」
「チャ、チャンピオンが戦ってるのか!?」
突如として電光掲示板が戦闘光景を映しだしたことで、騒然となる東京の各地。
そして新宿のハンター商会では。
「でけえ!? なんだこの悪魔は!! また新しい悪魔が攻めてきたのか?」
「いや、覚えがある。こいつはマサカド公だ」
「マ、マサカド公って・・・・・・なんでチャンピオンと戦ってるんだ?」
「・・・・・・なんとなく分かる気がする。どっちが強いかはっきりさせたいんだよ」
その言葉に静まり返る商会内。
「そんなことで、戦ってるっていうの?」
女ハンターの疑問の声。
だが男達は一様に納得していた。
「そんなもんだぜ」
「ああ、分かる。どっちが強いか、男ならはっきりさせたい」
「チャンピオンか。そうだ、思い出すな。あの頃に見た、格闘技の試合」
年配のハンターが、昔の事を懐かしそうに語る。
だが商会のマスターはまた違った感想を口にした。
「俺はナントカセブンって特撮番組を思い出したぜ、デカブツだからな」
「ナントカ、セブン・・・・・・・・・ああ、そうだ、思い出した。俺、子供の頃そのシリーズが大好きだったんだ」
「俺もだ、TVにかじりつくようにして見てたっけ。毎週、それが楽しみだった。あの頃は、平和だった。親父もお袋もいて、幸せだった」
「何で、忘れちまったんだろうな。あんなに大好きだったのに、あんな風に誰かを助けられる大人になりたいって思ってたのに」
「今からでも遅くはないさ」
「そうだな」
その時、誰かが叫んだ。
「お、おい!? こ、これ東京の天井が無くなってないか!?」
「あ、ほ、本当だ!」
「じゃあ、さっきの揺れは天井が無くなった音なのか!?」
「お、俺、ちょっと外を見てくる!!」
そんな光景が東京の各地で起こっていた。
すでに外に出て、東京の天蓋が外れるのを目撃していた人々。
そして天蓋が無くなったのを知って、地下街から出てきた人々。
「太陽だ、ははは、太陽だぁあああ!!」
「これが、これが、朝ってやつなのか?」
もう東京に天蓋は無い。
果てなき空が彼方まで広がっている。
轟音。
マハラギダインとマハブフダインがぶつかり合う音だ。
「チャンピオンとマサカド公か」
「凄いな・・・・・・」
ポツンっと水がアスファルトを濡らし始める。
極高温と極低温の魔法がぶつかり合うことで、驟雨を生じさせたのだ。
「な、何だ!? 空から水が降ってきたぞ!!」
「雨だ!! ははは、25年ぶりの雨だぁああ!!」
「雨? これが、雨なのか、はははは!!」
久しぶりの太陽を見る喜び、初めて太陽を目にする者の驚き。
そして暖かな雨が東京を癒やすように、優しく降り注ぎ始める。
路上の片隅に咲く花が、風を受けて揺れていた。
「花が、咲いてる。気付かなかったな、陽の差さない東京でも、花は咲いていたんだ」
そうだ、これが生命なのだと、そう言うかのように花が揺れている。
生きてる証を精一杯、かざしている。
「花だって?・・・・・・本当だ、花だ、花が咲いてる」
皆が集まって、たった一輪の花を見ていた。
生命の息吹が確かにそこに芽吹いている。
喜びや感動を求めて生きても、傷付き悲しむことの方が多いだろう。
これからも涙を流す夜もくる、こんな暖かい雨と違い、冷たい雨に打たれ震える日もあるだろう。
だけどもう明けない夜は終わったのだ。
必ず朝陽は昇る、今と同じように暖かく包み込むように。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
銀座。
ガイア教団の活動拠点。
「戦いとは、こんなに純粋なものだったのか」
憎しみでも無い、打算も何もない、ただただ純粋に雌雄を決しようと力を振るう。
自分達は力による支配、悪魔との共存、そんなお題目を掲げて鍛え続けてきた。
そしてそうでないものを見下してはこなかったか。
だがあれを見ろ! これがチャンピオンだ、これがマサカド公だ。
なにものにもとらわれない、純粋な力のぶつかり合い。
「今ならば、分かる気がする。本当の強さというものが」
誰かが呟いたその言葉、それをガイア教団員は実感として認識した。
「チャンピオン、頑張れ!!」
「負けるなぁマサカド公!!」
だから皆、純粋に両者を応援していた。
ハンターも一般人も、ガイア教団も、そして悪魔ですら関係なく、誰もが一緒になって応援していた。
「マサカド公の腕が!?」
振り下ろしたマサカド公の腕が、根本から砕け宙を舞った。
それは東京を取り囲む、檻のような岩壁にぶち当たり打ち砕く。
向こう側に見えるのは、緑に包まれた大自然。
東京が失ってしまった大地への新たな扉が開くように、マサカド公の崩れた岩塊が丘のように、外の世界へ続く道となっていた。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「マァサァアアカァアドォオオオオ!!」
「ガァアアアアアアアアアアア!!」
幾百もただ斬り結び続ける。
袈裟懸けに斬りつけ、刃が火花を散らす。
勢いのままに互いに反転、位置が入れ替わり、慣性が2人の間合いを空ける。
再び駆け出し、また白刃を振るい刃鳴り火花を散らす。
頑ななまでに、自分自身を貫き、勝者という真実を奪い合う。
「妖花烈風!!」
クー・フーリンから伝授された魔技。
それをいなし、マサカド公の刃が首に迫る。
倒れるように躱し、胴を薙ぐ。
飛び退り回避するマサカド公。
予備に持っていた銃を抜き撃ち乱射する。
転がって射線から身を避ける。
弾切れ、銃を捨て間合いを詰める。
大上段から振り下ろし、それを受け止めるマサカド公。
力任せに押し切ろうと、渾身の力を込めギリギリと押し込んでいく。
だが無理な体勢から、まさかの蹴りが飛んできた。
腹を蹴られ吹き飛ばされ、地面を転がる。
マサカド公が剣を突き立てようと飛びかかってくる。
間一髪、身を捩ってそれを躱し、そのまま転がる勢いを使って起き上がって、剣閃を走らせる。
それを受けたマサカド公の太刀が限界を越えて折れ砕けた。
「とぉどめだぁあ!!」
「ザンダイン!!」
カウンター気味に放たれた衝撃魔法の直撃を受け吹っ飛ぶ。
その衝撃でこちらの剣も折れ、もはや使い物にならなくなった。
「ジオダイン!!」
吹き飛びながら、中空で電撃魔法を放つ。
雷に打たれたマサカド公が、身体から白煙を上げて片膝を付いた。
だが、その目はまだ死んでなどいない。
勝つのは自分だと、やつもそう思っているはずだ!!
「ふ、ふふふふふ」
「ははははははは」
笑いながら、立ち上がる。
雨で泥濘んだ地面で、あれだけ転げ回れば当然。
お互い泥だらけの酷い有様だ。
もう幾度目になるのか。
互いに同時、駆け出し間合いを詰める。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「すっげえ!! ちゃんぴおんってこんなに強いんだ」
生まれて初めて浴びる太陽の光の中で、ビルの電光掲示板に映し出される戦いに見入る子供達。
「ははははは、僕に比べればまだまだだがね」
1人の青年がそう言った。
「おにいさん、そんなにつよいの!?」
「うっそだあぁあー」
「嘘じゃあないさ、彼はカジュアリティーズだからね。僕はラグジュアリーズなんだ。僕のほうが偉いんだ」
「かじゅありでぃーず?」
「らぐじゅありーず?」
「凄いってことさ」
そんなことよりも、チャンピオンの戦いだ。
見逃せないと、すぐにまた掲示板に釘付けになる子供達。
「そうさ、僕はラグジュアリーズなんだ。見ていろ、すぐに追い越してやるんだからな!!」
その笑顔にはもう一点の曇りもなかった。
自らの意志で歩き出そうという強い意志に満ち溢れている。
そして喫茶フロリダでは。
店内は2人の戦いで大騒ぎだ。
同郷の村の者、サムライ衆、皆がTVに釘付けになっている。
「凄いものですね、これもあなたのご指導の賜物ですかなホープ君?」
「いや、あやつはもう私などとっくに越えて行ってしまいました」
犬猿の仲と言われたウーゴとホープ。
その2人がグラスを傾け、ワインの味を楽しみながらその戦いを観戦している。
「いやあ、見事なものです。この私でさえこう、身体がうずうずしてきますよ」
「本当に、今日はいい日だ。何も気にせずに酒を飲み、こうして心沸き立つ戦いを見れるとはな」
「こんな気分は本当に何年ぶりだろうねえ」
「俺の作ったツマミより、この2人の戦いの方がよっぽどツマミになってるかもな」
「いやいや、それはそれ、これはこれですよ。そちらのツマミもあった方がいい」
皆が思い思いに語り、笑い合っている。
「貴様は東のミカド国も東京も、何もかも越えて行ってしまったのだな。ならば進め、道無き道を行き、信じるべき明日を切り開いてみせろ」
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「があああああ!!」
「うおおおおお!!」
右フックからの、下アッパー。
たたらを踏むも、足を踏ん張り、腰の入った拳が顔面を捕らえる。
その腕を掴み、背負投げ。
倒れた相手のマウントを取り、殴る、殴る、殴る。
泥を投げられ目を潰され返される。
泥の上を相手を掴み、捕まれ、転げ回り、立ち上がっては素手で延々と殴り合う。
そういえば・・・・・・自分はどっちだろう?
マサカド公かそれとも・・・・・・
どちらでもいいか、今はただ目の前のこの野郎を倒すだけだ。
野郎もそう思ってるはずだ!!
顔を掴み、全力を込める。
頭骨が軋みを上げる。
上下のワンツー、頭を振り、思いっきり相手の頭に叩き付ける、蹴り、その足を取って投げる。
ぜいぜいと、息を荒げお互いの意地をぶつけ合う。
「うぬの負けだ!!」
「俺の勝ちだ!!」
叫びながら拳を打ち出す。
クロスカウンター。
お互いの身体がゆっくりと崩れ落ちていく。
倒れるは同時。
ようやく2人が戦う戦場に到着したイザボー。
彼女は見た。
倒れ伏した2人。
その一方が、蹌踉めきながらも、ゆっくりと立ち上がろうとしている。
泥だらけで、ボロボロで、もうどちらがどちらなのか判別できない。
それでも、その光景を、イザボーは、そして東京の皆が固唾を呑んで魅入っていた。
やがてその両の足で大地を踏みしめると、腕を空にかざし、太陽を掴み取るように拳を握りしめた。
それは勝利の意思表明。
マサカド公は人間は同じ過ちを繰り返すと言った。
だけど、それでも、きっと人間はやり直すことができる。
どんなに世界が荒れ果てても、それを乗り越えて進んでゆける力がある。
そう、この後ろ姿を忘れない限り。
メガテン系の掲示板で情報交換や雑談していた時のこと。
マサカド公と戦わないのかな?
そんな意見に、
「一つ大事な用があったな」
「ああ、俺もだ」
殴り合いを始める2人、というスクライドネタが。
ちなみに自分は
スタッフロール
EDの歌詞
でレスしたら、ぴったり過ぎると言われました。
この時のやりとりで、ちょっとスクライド風に喧嘩を始める2人というネタで書いてみたいと思ってたので、メガテンクリアを機に書き上げてみました。
いやあ、筆が乗ること乗ること。
こういう作風が性に合ってるんでしょうかね。
あと魔法や技の描写がちょっと苦労しました。
具体的にどういうものかわからないんで、元ネタ当たってみたり、色々工夫してみましたが、こういうのに頭使うのも楽しいですね。
マサカド公はあの巨体だとあれですし、頭だけだと殴り合いできませんので、途中で3やSJバージョンを本体ということにして登場させました。