「わ、わ、なに?」
「音からして、エレキテルパンサー辺りか・・・」
大きな騒音を出しながら近くにやってきた土埃。勿論食べている最中のご飯は全員で持ち上げて、音の発生源を見る。そこに現れたのは・・・
「よ、おめぇら冒険者だろ?」
クレイの予想通り、エレキテルパンサーに乗っていた、やけに派手なジャケットを着たいかつい男が声をかけてきた。
「ま、まぁ冒険者資格はありますけど・・・あなた誰?」
「あたし? あたしぁ〜な、こういうもんだ」
少し引きながら返答したパステルに、その男は葉巻を吸いながらすっと名刺を差し出した。
「プルトニカン生命、エベリン支社次長・・・ヒュー・オーシ?」
「おうよ。まぁ平たく言やぁ冒険者専門の保険屋よ」
スパ〜っと煙を吐きながら答えるヒューという男。いかにも成金丸出しの雰囲気を漂わせながら、ニヤリと近づいてくる。そして目の前にいたキットンへ指をつきつけた。
「あんた、冒険とはなにか分かるか?」
「それは勿論、生きてくお金を稼ぐありがた〜いお仕事です!!グフフフ!!」
「あ、あはは・・・」
ドヤ顔をしてビシッと答えるキットンの答えに、苦笑いを浮かべるしかないクレイ。少なくとも彼は人助けと自身の鍛錬と思っていたからだ。やはりパーティーの良心は彼だけなのかもしれない・・・
「そ〜だお金!! やっぱり金は大事だよなぁ〜!? しかしだ!! 冒険ってのは危険がつきもの。冒険中に起こる事故の多さは実に99%以上!!」
待っていたとばかりに身を乗り出すヒュー。しかし、彼らはたった今その1%以下の確立に会ったばかりなのである。胡散臭いにも程がある。
「そこをビシッと保証するのがこのプルトニカンスペシャルよ!! もし怪我をしても安全確実保証!! 最近はこの辺りでも危ない事件が多いんだぜ〜?」
「え? この近くで何かあるんですか?」
思わず聞き返すパステルに、ニヤ〜っと笑ってヒューが口を開く。
「おうよ、つい何時間か前のホットな情報よ!! ここから少し離れた場所で謎の連続爆発があったって〜のよ!!」
「・・・ぇ?」
思わず言葉が止まるパステル。ちなみに後ろではトラップとキットンが大爆笑している。あまりの笑いっぷりに大草原不可避である。
ちなみにクレイも横を向いて体を震わせている。
「いやぁ〜、あれはヒドイかったねぇ〜。もしあんなのに巻き込まれたとあっちゃ〜確実に死んでるね!! そりゃ〜もう間違いなく!!」
「・・・・・」
「しかも木々まで残さず消し炭だ!! よほどの極悪人が非道な実験でもしたんだろぅな〜・・・ナンマイダ〜ナンマイダ〜」
「・・・・・・・・・」
張り付いた笑顔のままピクリとも動かないパステル、そして笑いすぎのあまり過呼吸まで起こしかけている三人。両腕を大きく広げて大々的に語る彼に、何とか『下手人』が口を開いた。
「え、え〜っと・・・ホントに私達はそういうのいりませんので・・・」
「なんだなんだ〜? 金がねぇのか? 仕方ねぇ、今回のそのクエストで得た報酬。そいつを担保に・・・」
「い、いやその・・・」
「上手い話にゃ裏がある。ま、それ以前にオレ達にはそんなの必要ねぇっての」
口籠もるパステルに助け舟を出したのは、笑いも収まり、キノコの串焼きを頬張っていたトラップである。モグモグと咀嚼した後に飲み込むと、ヒョイとヒューに近づいた。
「大体よ〜、俺達のどこを見てそれに勧誘しようと思ったワケ? 少なくともそう見えるほど初心者に見えちまったって事かい?」
「そりゃ〜そうだろ? そこのファイターの鎧は竹を貼り合わせたようなハリボテ、他の面々も明らかに間に合わせの装備じゃねぇか」
ハッと鼻で笑いながら見返すヒューに、同じくハンっと笑うトラップ。
「お〜い、クレイ。どうやらお前の竹アーマーちゃんが余程気に入ったらしいぜ、この御仁」
「え、このアーマーか? そんな普通のアーマーだけど・・・」
「ブヒャヒャヒャ!! それが普通だったら、世の中のプレートアーマーは全部鉄くずですよ!!」
「まぁ、少なくとも普通じゃないよね・・・」
首を傾げて近寄るクレイだが、大笑いしながら指差すキットンとタハハと苦笑いするパステル。そんな彼らを見てふとニヤケ顔を収めたヒューがその『竹アーマー』を見つめる。
「う〜む、やっばりただの竹を繋ぎ合わせただけの・・・」
「ホントあんたって保険屋の癖に見る目がねぇよな〜。ま、分からないならさっさと帰ってくんな。そのお大事なパンサーちゃんに乗ってよ?」
ヒラヒラと手を振って馬鹿にしたように笑うトラップを見て、顔を上げたヒューは腕時計を見た・・・
「・・・け、15分も無駄にしちまったぜ」
そして苦々しい顔をしたかと思うと、さっさとエレキテルパンサーに乗り込んで轟音を立てて立ち去っていく。それを見送りながら続きの肉を食べ始めるトラップに、パステルが口を開いた。
「良かったの? 本当の事言わなくて」
「良〜んだよ。分かる奴だったらむしろあらゆる手を使って留まるだろ〜けど、節穴じゃあ意味ねえよ」
「全くですね。このアーマーの真価も分からないようでは・・・それこそ時間のムダというものですよww」
「う〜ん、そんなに持ち上げられるものなのかな・・・このアーマー」
釈然としない顔のままスープをすするクレイだが・・・他の三人はごく普通の顔をして残りのご飯を平らげていく。もう早目に寝ないと明日の朝が早い。さっさと後片付けをした四人は、大きめの軍用テントにそそくさと潜り込むのであった・・・
・・・・・
・・・・
・・・
ちなみに、魔法で防御を高めたアーマーはすごく高価である。プラスを一つつけるだけで普通のアーマーが10個は買えるほど。そして彼の竹アーマーは・・・+99。武器防具を大事に手入れするクレイは、少しでもパワーアップ出来る素材があればなんでも竹アーマーに強化させた。その結果、あらゆる属性防御に状態異常耐性・そして物理防御を備えた、伝説の鎧も真っ青な性能となっているのだった・・・合掌。
クレイ・S・アンダーソン
小さい頃から父親に厳しく鍛えられた剣術は、入学した牙の塔でも猛威を振るい、あらゆる剣技を習得した。
その中でも特にアルベイン流剣技は好んで使い、いざ剣が無い状況でも戦えるように武術の心得もある。
そしてイケメンでもあるため、老若問わず女性にモテるw
武器は代々伝わると言われているロングソード。不思議な光を放っており、石化などの状態異常に大きな耐性がある。
防具は竹アーマー+99と、ウッドシールド+99。勿論元の素材がもっと良い装備だったら、更に強い装備になったのだが・・・彼の不思議なこだわりによりこうなってしまった。
故郷にいる許嫁とその妹の事はとても大事に想っており、里帰りした時は必ず顔を出すようにしている。