そして四人は、ピット少年の案内により件の老人の元へ駆けつけた。
倒れていたその老人だったが、キットンが診た限りでは軽い脱水症状に陥っていただけであった。
「う、うむ・・・すみませんのぅ、このような老体に気遣って下さって・・・」
「いえいえ、困っている人を助けるのは当然の事ですから」
「全く、クレイちゃんのお陰でまた任務終了までの時間が延びちまった・・・さっさと片付けねえとゴン太にどやされるぜ?」
「うぅ〜ん、でも仕方ないでしょ? ああなったクレイを止めれる人なんか、会長ぐらいよ?」
「まぁそうですねぇ〜。林水会長ぐらいしか暴走したノルやクレイを制止できる人はいませんからww」
「俺って、そんなに暴走してるかな・・・」
少し腕を組んで悩んでいたクレイだが、彼らを見た老人がふと口を開く。
「そうじゃ、あんたらリズーに怪我などされませんでしたかな?」
「リズー?」
「そうですじゃ。あやつらはこのズールの森に住む野蛮な獣人。その爪はかなりの威力を誇り、傷跡からは悪い病原菌も蔓延るとか・・・」
「・・・それって、クレイがさっさと片付けちゃったモンスター達・・・?」
パステルがふとクレイの方を見ると、彼は後頭部をカリカリと掻きながら苦笑いする。
「悪い、ほとんど確認してなかった」
「全くもう・・・きちんと敵は確認しないといけないわよ?」
「おいおいパステルよ〜、お前がそれを言える立場かよぉ〜? お前の方がよっぽど無差別破壊をしてると思うぜ?」
「なによそれ!? 私はちゃんと気配を確認してから・・・」
「ギャハハハハ!! 普段研究室であれだけ爆破しているパステルとは思えませんね!! 」
「ゴメン、パステル・・・こればかりは庇えない・・・」
「うわぁ〜〜ん!! クレイにまで言われた〜〜!!」
老人そっちのけでわいわい騒ぐ彼らに、流石のピット少年や老人も口を開くタイミングが図れない。しかし、とにかくこのままでは前に進まない。一旦彼らを連れてヒールニントに戻るしかないと判断した二人は、何とか日が暮れる前に村へ帰るのだった・・・
・・・・・
・・・・
・・・
しかし、ようやく村へたどり着いた彼らを迎えたのは、とても『手厚い』対応であった。
「悪いが、このヒールニントにはあんたらを歓迎する人間はいないんでね!!」
「得体の知れん冒険者なんかを山に向かわせられるか!!」
「おい、こいつらを牢にブチ込むんじゃ!!」
「気の触れた冒険者達から山を守るんじゃ!!」
村長を含め、集まった村人達からは敵意を感じる視線しか感じなかった。
よくよく聞くと、どうやらその村長は助けた老人(ミシュランという名前らしい)を騙していたらしく、最初からミシュランとピットを見捨てるつもりで村から出したらしい。
昔からよくある固定観念の固まった村らしく、外部の人間を特に毛嫌いする集落との事。
「あ〜、つまりは村民を助けただけの俺たちを、不当に捕まえるって事?」
「何を言う小僧。ここへ来るからにはそれなりに情報を得ておるのであろう? 欲をかいた輩にホイホイと村の敷居を跨がせるとのか」
「うぅ〜ん、私達としては事を大きくしたくないんだけど・・・」
「小娘が大きな口を開く。四人ぽっちで我々に歯向かえるとでも?」
トラップが腕を組んで睨みつけるも、全くその村長は気にしない。それどころか、パステルの呟きにもしっかりと答える始末である。そしてクワや槍を構えた村人達が六人を囲む。
「これは・・・」
「ま、仕方ないですねぇ〜・・・」
「ゴン太学級心得、その三・・・」
「理不尽な要求に対しては・・・」
「「「「全力を持って叩き潰す!!」」」」
「いかんラーダ!! 彼らを怒らせては!!」
「はん!! 何を言うミシュラン。お前の眼力も衰えたものだな!! こんな小僧達に何が出来る!!」
ミシュラン老人がラーダと呼んだその村長に警告を発するも、彼は全く聞く耳を持たない。その間にクレイ達は既に円陣を組んでいた。その表情はまさに真剣である。
「分かっているよな、皆・・・」
「当たり前じゃないクレイ・・・ここはいつもの通り・・・」
「・・・トラップ、イカサマは禁止ですからね?」
「へっ、見抜けなかったらお前らが間抜けなだけだろ?」
「それじゃ、せぇの・・・」
円陣を組んでいた四人がバッとその場を後ずさると、すかさず全員が片手を空に振りかぶる。そして・・・
「じゃ!!」
「ん!!」
「け!!」
「ん!!」
凄まじいスピードで中央にその手を振り下ろした!! その手は残像を残しており、目まぐるしく形を変えていく!!そして・・・!!
「「「「ぽん!!!!」」」」
差し出された四つの手。その手が指し示したのは・・・
「よっしゃ〜〜!! 今回は俺が頂いたぜ〜!!」
「く・・・負けたか・・・」
「やっぱりトラップはこの手の勝負は強いわよね・・・」
「あの5手目のフェイントに引っかからなければ・・・」
そう、彼らの師匠方がいる道場『梁山泊』に伝わる超高速ジャンケンである。相手の出す手を読みながら瞬時に手を変えるこのジャンケンは、いざ迷った時に行われる『公平な』解決法であった。ちなみに今回の迷った点とは・・・
「流石に私達全員だと村が消し飛んじゃうしね・・・」
「う〜ん、折角助けたピットやミシュランさんにも悪いし・・・」
「分かっていますねトラップ? あくまで殺しは無しですからね?」
「へいへい、まぁ精々手加減しつつ・・・」
「きさまら!! さっきから一体何をしておるのじゃ!! さっさと縄に・・・?」
先程から完全に無視されて激昂しているラーダ村長だったが、何やら彼らの纏う空気が変わったのを感じたのか・・・ビクッと体を震わせて見つめる。
その視線の中、トコトコと無造作に歩き出してきたのは派手な服を着た赤毛の男であった。彼は呑気に周りを見渡すと、皆に聞こえるぐらいの大きさで声を上げる。
「あ〜、それじゃ取り敢えず忠告〜。抵抗しなければ怪我をさせませぇ〜ん。おとなしく降伏しなさぁ〜い」
簡単にもほどがあるほどの文面に、明らかな棒読み。しかし頭に血が上った村人達が聞く訳が無い。
「ふざけるな!! お前達が大人しくしろ!!」
「これだけの人数に、どうにか出来るとでも思ってるのか!!」
「言い訳は牢で聞く!!」
激昂する村人達に、一応最後通告を行ったトラップはすっと人差し指を空に向ける。
「・・・?」
「あ〜ミシュランさん? 取り敢えずここから離れましょう。退路の道は俺達が切り開きますから」
「ほら、ピット君も早く」
「あ、はい・・・で、でも・・・」
「だ〜い丈夫ですよ!! まだ彼は『分別』がつきますから!! ギャハハハハ!!!」
「え、え〜と・・・」
残ったクレイ達がミシュラン老人とピット少年を庇い、スッと防衛体勢を取る。そしてトラップが宙に描いた『文字』は・・・
「一応警告はしたからな? ・・・竜乃炎弐式、出やがれ『崩』!!」
浮かび上がった『崩』の文字が光ると、一瞬のうちにトラップの周りに炎の球が無数に浮かぶ。それらが意思を持ったように空中を舞うと、凄まじい勢いで周囲へ降り注いだ!!
チュドドドドドドドドド〜〜〜〜ン!!!!
「うわぁ〜〜〜〜!!??」
「な、なんなんだこれ〜〜〜!!??」
「こ、こいつら何者だ!!??」
なるだけ怪我をさせないようにとトラップが配慮した攻撃だったが、その勢いは村人達の武器を根こそぎ打ち砕き、近づこうとした面々の目の前へコレでもかと言わんばかりに凄まじく叩きつけられた。
勿論それだけで終わるゴン太学級では無い。追加とばかりにトラップが手を掲げると、その手が暗い炎に包まれていく。
「誰に対して喧嘩を売ったのか、ゆっくり味わいながら・・・後悔しろや!! 炎殺・黒龍波!!」
ズカババババ〜〜〜ン!!!!!
そしてその手から放たれた炎は、まるで龍を思わせる形を取りながら村の中を走り回り、ことごとくの家々をなぎ倒して回った。一応最低限の集会所はクレイ達が防護アイテムなどを使い守ったが、とにかくヒールニントの村はあっという間に焦土と化した・・・
「あ、あぁ・・・何という・・・」
「あ〜、一応これをお渡ししておきますね」
呆然とするラーダに対し、ごく普通の表情で一枚の紙を渡すパステル。ふるふると震える手でそれを受け取った彼は、その目を大きく開かせた。
「こ、これは・・・!?」
「グフフフ・・・私達を初心者冒険者みたいに扱ったのが貴方達の敗因ですねぇ〜」
「とりあえず、請求はそこに記載されてる住所にお願いします。あぁ、ちなみに最初から我々に対する対応はこのミニカメラで保存・共用してますので悪しからず」
呆然とする彼に、淡々と牙の塔の連絡先の書かれた紙を渡しながら告げるクレイ。理不尽な事に対しては鬼にも悪魔にもなる、それが天下のゴン太学級なのでる。受けた恩は倍返し、受けた恨みは百倍返しなのが牙の塔なのであった。
「く、くぅ・・・牙の塔の連中め、哀れな村人に卑怯な手を使いおって・・・」
「あぁ〜あ、たまにいるんだよなぁ、こういう連中」
「まあ仕方ないかもしれないけど・・・」
「ゴン太学級心得、その一・・・」
「「「「卑怯汚いは敗者の戯言!!」」」」
・・・・・
・・・・
・・・
「あ、一応ピット君とミシュランさんの家は守っておいたからね?」
「あ、はい・・・ありがとう、ございます・・・」
「う、うむ・・・」
ニコッと微笑むパステルの笑顔は、二人にとって悪魔の笑みにも感じられたという・・・合掌。
トラップ
代々盗賊一家の跡取り。本名は不明・・・詳しくは原作を是非ごらん頂きたい(笑)
シーフを極めると忍者になるという(ff1?)伝え通り、あらゆる忍術・炎術を習得している。装備は二刀流の忍刀に派手な服、そして隠し武器多数である。ギャンブル・酒大好き人間だが、決して非道な事はしない(?)男だと常に言っている。・・・まぁ、彼もゴン太学級の一員なので、推して知るべし。