世にも幸せな冒険者・・・達?   作:優すけ

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笑い病?そんなものは無かった!!
ゼンばあさんは既にとある場所に住み着いています。そしてユリアさん(仮)は・・・今頃村で呆然としている事でしょう(笑)


ヒールニントの災難・・・6

そして村を半壊(?)させた四人は、任務書に記載されている地点へ到着したのだった。

そこは一見動物の巣かなにかのように見える、小さな穴が雑草に囲まれていた。

 

「任務書によるとここなんだけど・・・」

「この中に入ってくわけ?」

「まぁ俺たちなら何とか入れそうだな」

「ふむ、トラップ? あなた少し偵察してきてもらえませんか?」

「しゃ〜ねぇ〜な。ちと待ってな」

 

片手に軍用懐中電灯を持ちながら、ゆっくりと狭い穴に降りていくトラップ。

軽く周囲を警戒しながら彼の帰りを待っている三人だったが、意外と早く穴から顔を出した。

 

「ちょっとぐるっと見て回ったんだけどさ、少し狭い以外は特に問題無さそうだぜ? さっさと行こうぜ」

「そっか。それじゃ先頭はトラップ、次にパステルがマッピングしつつキットン、俺って順番で行くぞ」

「いつも通りの順番ね。それじゃ早く行きましょ?」

「はいはい、取り敢えずトラップには予備のバッテリーも渡しておきますね」

「あいよ」

 

ゴソゴソと方眼用紙や予備バッテリーを取り出しつつ、四人は穴の中へ入っていくのだった。

 

・・・・・

・・・・

・・・

 

ダンジョンの中は確かに暗く狭かったが、軍用懐中電灯のお陰で非常に明るくなっている。多少の狭さは、鍛えている皆にとって大した問題では無かった。

 

「しかしまぁ、依頼してきた連中はどこの奴らなんだ?」

「ヒールニントって書いてあったから、てっきり村の人の誰かかと思ってたんだけど・・・」

「ふむ、まぁその辺りは気にする必要ありませんよ? 要は依頼料をしっかりと上に支払っているかが重要なだけですから」

「ま、そうか。『SEEDは何故と問うなかれ』って言葉もあるしな」

「私達はSEEDじゃ無いけどね」

 

相変わらず緊張感の無い会話をしながら進んでいく彼らだったが、ふと先頭のトラップが足を止める。

 

「ん? ありゃ・・・宝箱か?」

 

懐中電灯で照らされた先にポツンと置かれていたのは、いかにも典型的な古びた宝箱が置かれていた。

 

「ふ〜ん、まぁ一応調べてみるとするか」

「・・・ちょっと待って下さいトラップ。何か変な雰囲気がしますよ?」

 

進もうとしたトラップを、少し首を傾げだキットンが制止する。どうやら彼にしか気づかない何かを感じ取ったらしい。

 

「ん、分かった。任せるわ」

「トラップや私達でも気付かない仕掛けって事? それってやっぱり・・・」

「ああ、多分精霊関係だろうな」

 

クレイが宝箱に歩いていくキットンを見ながらパステルに答える。

ちなみに彼らもある程度の気配察知や罠発見は可能である。余談ではあるが、トラップも並の剣士以上に剣術は使えるし、パステルもある程度の武道の心得はある。クレイも聖白魔法を使えるし、キットンは下手なシーフより探索が上手い。あくまで全方面に平均以上の能力を持ち、それ以上に専門分野があると言うだけの話である。

 

「ふむ、これは・・・下手に触るとワープ罠に引っかかる仕掛けですね。それも巧妙に魔力で隠されていますな」

「んじゃ、触らないで進めば良いってこと?」

「ハイ、無視して先へ進みましょう」

「全くやれやれだぜ・・・早く帰って酒でも飲みてえよ」

 

折角の宝箱だったが、罠だと分かりガックリとするトラップ。しかしそうそう魔力で隠した罠が仕掛けられた宝箱など無い。やはり何か面倒な事が隠されているのではと先へ進む四人は思うのであった。

 

・・・・・

・・・・

・・・

 

「ん? 何だか向こうの方が明るいぞ・・・」

「ホントね。天井に穴が空いてるのかしら?」

 

トラップが先の方を照らすと、何やら通路の上から明るい光が見えた。通路自体はまだ先へ続いているが、取り敢えず怪しい所は全部見て回らなければならない。

 

「んじゃちと見てくるわ。お前らは周囲頼むな」

「分かった。気をつけるんだぞ?」

 

クレイがかけた声にヒラヒラと手を振りながら、空いていた天井の穴に向かって飛び上がるトラップ。音も立てずに消えた彼だが、すぐに顔を下に向けて三人に声をかけた。

 

「なんかすっげ〜広い部屋だ。ありゃあヒカリゴケでも生えてるんだろな」

「ほぉ、それはまた・・・危険はありませんか?」

「・・・・・」

 

もう一度顔を引っ込めたトラップが、慎重に気配を探る。そして・・・

 

「こりゃあ、周囲の壁が全部魔物みたいだぜ・・・キットン、分かるか?」

「壁の魔物ですか、デモンズウォールとかですか?」

「いんや、そこまで強そうに感じねぇ。まあ皆上がってこいよ。あ、ちなみにそこらへんの宝石には触るんじゃねえぞ? あからさまな罠だからな」

 

そう言われてキットン、クレイ、パステルの順番で天井の穴へ飛び上がっていく。パステルが最後なのは勿論エチケットである(笑)。

 

「あ、あれは・・・まさか『沼流沼羅』!?」

「何!?知ってるのかキットン!?」

 

急に劇画調に顔が濃くなったキットンに、同じく『クワッ!!』と顔を濃くするクレイ。そして重々しく口を開くキットン・・・

 

「左様、私のモンスターポケットミニ図鑑(民◯書房刊)にはこう書かれています・・・『沼流沼羅』、一見壁にしか見えない魔物ですが、光り物が異常に大好きな性格をしており、それを奪おうとすると反対に彼らのコレクションにされかねないという驚異のモンスター・・・ちなみに、かつての戦国武将・武田信玄が『動かざる事山の如し』『早き事風の如し』と言う名言を残していますが、それは普段は静かに抑えていてもいざという時は素早く行動を起こす事。その由来がこの沼流沼羅である事は間違いありません・・・」

「ぬぅ、げに恐ろしき魔物よ・・・」

「・・・ところで、いつまで続くの? その漫才・・・」

 

ジトッとした目で見てくるパステルに、ポンッと顔を元に戻した二人はケラケラと笑う。

 

「いやぁ〜一度やって見たかったんですよね〜ww」

「分かるさ、その気持ち。『漢』なら一度はやらなきゃな!!」

「全く、ホントバカばっかなんだから・・・」

「おいおい、お前らホントにこの状況分かってるのか? やっちまうのか放置しとくのか、さっさと決めちまおうや」

 

トラップの声に改めて周辺を見渡す三人。

あちこちに落ちてる宝石だが、拾えば間違い無く襲いかかってくるだろう。取り敢えず鑑定スキルを使ったトラップは、それらが本物とただのガラスとが混じってる事に気づく。

 

「う〜ん、取り敢えず任務中に手に入れたお宝は好きにして良いんだよね?」

「けどまぁ下手にコイツら全滅させたら、この洞窟がどうなるやら・・・」

「仕方ありませんね、それではスマートに宝石を手に入れつつ穴から退散するとしましょうか」

 

キットンがそう言うと、スッと両腕を横に伸ばす。そしてブツブツと何やら呟いたかと思うと・・・フワッとした風が彼の周りに集まり、それが数人の小さな女の子に変わった。

 

「それではシルフ、私達を頼みますね」

『〜〜〜♪』

 

ニコッと笑った彼女達が周囲を回り始めると、四人の足がまるで羽のように軽くなった。

 

「うっし、それじゃ・・・」

 

「「「「ドキドキ宝石強奪RTA始まるよ〜!!」」」」

 

結局。彼らのとった行動は至極単純である。要は・・・迫り来られる前に全てを取れ!!

 

「うっひょ〜!! 12字方向から接近中〜!! 接敵まで20秒〜!!」

「3時方向からは10秒〜!! 私はもう撤退するわね〜!!」

「おいキットン!? そっちはどうだ!?」

「後2つですねぇ〜!! ・・・回収完了しました!!」

「よし!!さっさと飛び込め〜〜!!」

 

そして次々と穴に飛び込む四人。その数秒後、穴は沼流沼羅によって塞がれたのであった。

 

「全部取れたのか?」

「取り敢えず目に付いたのは取れた筈ですが・・・」

「ふぃ〜、やっぱこのスリルがたまんねぇよな〜。破壊無しって縛りはメンドくせえけど」

「ふふふ・・・ほ〜ら、鑑定とかは帰ってからにして、早く先に進みましょ?」

 

袋一杯に詰めた宝石を見ながらホクホクしている三人に、ニコニコした顔のパステルが先を促す。そう、まだダンジョンは始まったばかりである・・・上機嫌な四人は、さらに奥へと進むのであった。合掌。




キットン
由緒正しき(?)キットン族の末裔。薬草関係の知識はずば抜けており、他の人が使うよりも倍の効果をもたらす。
色々な大晶霊と契約を結んでおり、攻撃・回復にと非常に重要なポジション。

装備は農耕用のクワに、アイテムカバン。特に暇さえあればモンスターポケットミニ図鑑(民◯書房刊)を読みふけっている。
・・・明らかにカバンの容量よりたくさんの本が入っているのだが、本人曰く整理整頓すれば大丈夫との事。

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