TV放送と映画二作を見ただけのにわかが我慢できない衝動で書いたのでビルドが好きな方に喧嘩売る出来。
ただ先に言っておきたい。ビルドを批判したいわけではありません。
好きだから妄想するんです。
一・ベストオブベストと言われるよりは
葛城忍がエボルトの仲間として姿を現しクローズマグマ、グリス、ローグの三人のライダーを相手に、ニンニンコミックフォームのビルドに変身した。
その分身能力をもってライダーたちに引けを取らない力で応戦する。
「なんでビルドドライバーでここまで戦えるんだよ!?」
「ボトルの性能の差だ」
「ハァ!?どうみてもただのフルボトルじゃねーか!」
グリスの疑問にビルド―――葛城忍が律儀に答える。
その答えには納得できないとクローズが異議を唱えた。
忍に立ち向かう三人のボトルはいずれもフルボトルの発展形。その性能は単純に考えてもハザードトリガーを使ってもいない通常のビルドに劣るはずがない。
―――風遁の術。竜巻斬り!
「こういうことだ」
忍は4コマ忍法刀を振るいライダーたちを吹き飛ばした。
防御や回避で対処されたが、今のは距離を取り変身するための牽制。
大したダメージは与えられないのは計算の内だ。
―――海賊、電車!
忍が自分のベルトからボトルを抜き、海賊レッシャーフォームにビルドアップする。
すると抜いたフルボトルにまさかの変化が起こった。
紫と黄色だったボトルから色が抜けて透明に変わる。
中身が空っぽになったのだ。
「発展を続けた技術が最初の形に立ち戻ることはよくある話だろう」
「こいつ、ボトルを使い捨てにしているのか!」
「一度の変身でボトルのエネルギーをすべて使用している。そして……」
ローグが看破し驚愕するのに目もくれず、忍の傍に二体のクローンスマッシュが仕えるように並び立った。
忍はそのスマッシュたちの体へ迷わず空のフルボトルを突き刺す。
スマッシュは瞬時にネビュラガスの成分に分解され、フルボトルの中に吸収された。
そしてボトルはそのまま忍者とコミックのボトルの輝きを取り戻した。
忍が現れたショックで立ちすくみ、離れて見ていた戦兎も思わず声をあげた。
「そんな、浄化もなしに!?」
「ロストボトルを精製する技術の応用だ。エレメントの種類が限定されるうえパンドラパネルには使えないが、これでクローンスマッシュのエネルギーを不足なく使用することができる」
「味方へらしてんじゃねーか!おおりゃあぁ!」
忍は切りかかってくるクローズの剣を、取り出したカイゾクハッシャ―で容易く受け止め、そのまま電車型トリガーを引き、エネルギー弾をクローズへ打ちだす。
電車型の射撃がクローズを襲い、肉体を大きく弾き飛ばした。
「ぐあぁ!」
「このビルドを単純にクローンスマッシュ二体分だと思わないことだ」
今のクローズの力であれば数体のクローンスマッシュなど物の数ではない。
そのクローズが吹き飛ばされた姿が、忍の言葉と強さを裏付ける。
「ビルドの戦闘データが大量にあってこそ、ハザードレベルの低い私でもこのビルドなら君たちの相手が出来る」
「……!」
「お前のおかげだ。巧」
■×■
二・Tシャツ芸の秘密がこうだったら
猿渡一海と氷室幻徳はハザードレベルを上げるため、あえて内海に捕まり怪しまれぬよう抵抗するフリをしながらネビュラガスの注入を受けいれた。
もう十分だと測ったところで隙をつき逃げ出したものの、奪われたボトルもベルトも注入機器の傍にはなく、逃げる前にそれらを探さねばならなくなった。
無理矢理入れられたガスが馴染まないせいか身体が鉛のように重い。
忍び込んだ研究室らしき場所。
そこで自分たちのドライバーを見つけここにボトルもあるかと探していると、葛城忍と鉢合わせてしまった。
見つかった!と構える二人に対して、仲間を呼ぶ訳でも変身する訳でもなく呆れたような眼差しで見つめてくる忍。
「随分と無茶をする。特に氷室幻徳。君はクラックボトルでもうボロボロだろうに」
「なんだと?」
「……フン」
幻徳には最初からわかっていることだ。
あのボトルは異常だと。自分に強大な力を与える代わりに大きな代償を強いてくると。
わかったうえで己のすべてを変えるために欲し、手に入れた兵器としての武器だ。
「あのまま使い続けていれば、あれはいずれ君の身体を割り砕いていた」
「……大儀のためになら、この身体を惜しむ気はない」
変身するたびに肉体に罅を刻んでいくような痛みが幻徳を蝕んでいた。
しかし、自分が犯してきた罪に比べれば、あまりにも軽い代償だ。
己のすべてが新たな国に繋がっていくならば、喜んでこの身を差し出そう。
その覚悟はとうにしている。
不意にガコンと何かが開く重い音が傍で鳴った。
見やれば、ナシタの地下にある浄化装置に似た白い装置。
その小窓が開き、中にはスクラッシュゼリーとクラックフルボトルが入っていた。
忍はそこから二つを取り出し…………一海たちに差し出した。
「君たちが改造されている間に調整しておいた。今までよりも強く安全に使えるだろう」
「お前がいじったもんをどう信用しろってんだ」
「だが、これが無ければ君たちは戦えない。丸腰同然でここからどう逃げる?」
「チッ……」
「不安なら巧に調べさせるといい」
選択肢はないとばかりに差しだしてくる忍の手から、業腹ではあったが二人は奪い取るようにボトルを受け取った。
本当に何も裏がないのか、調べたところで戦兎ではどうすることもできないと考えているのか。
「お前の言葉が真実なら、何故俺たちの手助けをする?」
「私たちにはハザードレベルが高い人間は一人でも多く必要だからだ」
「へっ、誰が大人しくお前らの兵器になるかよ」
「ああ、それで構わない」
「あん?」
「下手に消滅されても困るからな」
仮面ライダーたちをロストスマッシュに変えて十本のロストボトルを作ることが、現在のエボルトたちの目的のはずだ。
エボルトとは別の狙いがあるかのようなその態度は意図の読めない分、不気味に映る。
「お前たちは……いや、お前は一体何を考えている」
幻徳の問いに答える声はない。
にらみ合いで誰も音を発せないなか、その静寂を破るように警報が鳴り響いた。
「バレたのか!?」
侵入者を知らせるシステムなのか、机の上のモニターに外の様子が映し出された。
そこにはビルドとクローズが難波のハードガーディアンたちと戦闘する姿があった。
一海たちは彼らが自分たちの救援に来たのだろうとすぐに思い至った。
「君たちの迎えが来たようだな。早く行くといい。出口は向こうだ」
「……行くぞヒゲ」
「ああ」
自分たちが合流しなければ、戦兎たちを敵地で延々と戦わせるはめになる。
まともに答える気がないこの男を問い詰めることよりも、今は脱出を優先させるべきだ。
忍を警戒しながらその場を離れた。
去って行く背中を見届ける忍。その眼の奥で光る意思を、本人以外に理解できる者はいない。
「おら、しっかりしろ」
「……すまんな」
パイプだらけの暗い逃げ道の途中。
幻徳の足取りが覚束ないものになるのを見咎めて一海が肩を貸した。
ふらつく身体は、ネビュラガスを無理矢理入れた疲労だけが原因ではないのが一目でわかった。
「あのセンスゼロの服も、要はただのやせ我慢だったってことか」
妙だとは思っていたのだ。
唐突に明るく振舞いだしたことも必要以上に軽快な動きが増えたことも。
すべて自分の身体の限界を仲間に悟らせないための過剰な演技だったのなら頷ける。
「フン…………そんな気はない。センスが高すぎて、俺と親父以外の誰も理解できないだけだ」
「親子揃って私服がアレなのかよ……」
『私が首相』『俺が補佐官』と書かれたどうしようもないTシャツを、ドヤ顔で親子並んで着ている姿を想像して一海はげんなりとした。
一応、自分のセンスが周囲に理解されないものとわかっているだけマシとみるべきか。
■×■
三・CGよりチェイサーマッハ式が見たかった
新たな世界を創るために開かれた光の狭間の世界。
ビルドと、万丈龍我を吸収し力を取り戻したエボルト。
世界の運命を左右する最後の戦いはすでに終盤に差し掛かっていた。
この狭間は新世界を生みだすための、云わば巨大なエネルギー変換装置だ。
内部にあるものを、高いエネルギーを持つものから順に変換していくようだ。
戦いの最中も二人の身体を粒子に変換され、弱体化していく。
ビルドはフルフルラビットタンクボトル、ハザードトリガー、ラビットタンクスパークリングを。
エボルトは、星や人々を吸収して得た武装、エボルトリガーを順に失っていく。
戦う前からジーニアスボトルも六十本のフルボトルもすでにない。
―――忍者!コミック!
―――Best Match!
だがビルドにはまだ葛城忍のボトルが残っている。
戦兎は父の遺したボトルと己で作った武器をもって、フェーズ3まで減退したエボルを攻める。
分身の術で数を増やしての連携攻撃を狙う。
4コマ忍法刀の機能を使い、煙幕で視界を塞いでから両サイドから六人で炎と竜巻を打ち込み大きな火炎旋風でエボルトを襲う。
「親の形見のボトルか……だがそれじゃあ俺には通じない!」
「ぐっ!」
だが炎をものともせず、ニンニンコミックの分身たちを鎧袖一触とばかりに打ち砕いていく。
互いに弱体化は進むものの、ドライバーとボトルのスペックの差の開きが未だエボルトを優勢にさせているのだ。
本体の戦兎も刀を弾き落され重い一撃を食らい膝をついた。
強制解除までのダメージはないものの、忍者とコミックのボトルも粒子に変換されたために変身が解けてしまった。
「サービスだ。これでお前に止めを刺してやる!」
エボルは戦兎に見せつけるように、引き抜いたラビットエボルボトルを掲げた。
ウサギを模したボトルの装飾が龍の形に変わっていく。
体内にいる万丈の遺伝子を使って精製しているのだろう。
エボルはそれを自分のドライバーに装填する。
―――Dragon Dragon! EVOL DRAGON!
―――フッハッハッハッハッハ!
フェーズ2、ドラゴンフォーム。
クローズと同じ顔を持つエボルトの第二形態。
今まさに助けようとしている相手の顔で、自分の命を奪わんと迫る悪辣さに戦兎は反吐が出そうになる。
取り出されたビートクローザーが戦兎に向けられる。
「終わり……だ!?」
その時、小さな影がエボルトの頭部を襲撃した。
その隙に戦兎はすかさずエボルトから距離を取り、軽快な音楽を鳴らすその影の正体を確認した。
クローズドラゴン。
元は戦兎が、変身できなかった万丈を護り導くために制作したドラゴン型自立行動ユニット。
万丈が持っていたはずだが、どうやらエボルトに取り込まれずに済んでいたようだ。
戦兎がエボルトの取り込まれた際、万丈が自分の力で進化させたはずだがエネルギーを奪われたのか、本来の青い姿に戻っている。
「そうか、お前もあいつを助けたいのか」
肯定するようにドラゴンは返事代わりの音楽を鳴らしながら戦兎の周りを飛び回る。
その意思をくみ、共にエボルトの中で眠る万丈を目覚めさせるためにその体をつかみ取る。
「いまさらそんなものでなにが出来る!」
「なにができるかどうかは……実際に験してみなければわからない!」
嘲笑うエボルトを見据えて、戦兎は不敵に笑う。
ベルトからボトルを抜き、ラビットボトルを強く握る。
するとラビットボトルのカラーが赤から金色に輝く姿に変貌した。
世界も自分もどうなるかの瀬戸際なのに。失敗すれば目の前の宿敵にやられてしまうのに。
ドラゴンにコレを差したらどうなるのかが気になって。ハラハラして。ワクワクして。
未知の可能性に心が踊ってしょうがない。
「さぁ、実験を始めようか」
ああ……これだから実験は止められない!
力を込めるように。祈りを込めるように。己を奮い立たせるようにボトルを振る。
空中に無数の巨大な数式が浮かび、エボルトへ向かう。
これは世界を変える計算式だ。
変形させたクローズドラゴンに、金のラビットフルボトル装填し起動ボタンを押す。
―――覚醒!
青い龍の姿が赤く変化し、グレートクローズドラゴンに進化する。
思わず戦兎の笑みが深まった。
「勝利の法則は、決まった!」
力を取り戻した龍の姿に自分の計算が間違いでないこと確信し、戦兎は力強くボトルスロットにドラゴンを装着してレバーを回す。
ベルトから使用者を変身させるため、透明の管が小型ファクトリーを形成する。
この形は―――クローズのボディだと判断できる。
―――Are you Ready?
「もちろん」
―――Wake up CROSS-Z! Get Great DRAGON!
―――Yeaaaah!
ファクトリーが急速に戦兎に迫り、ハーフボディを合わせるようにその体を包む。
ウサギの耳のように赤く伸びる複眼と龍の翼を背負うように背から肩へかかるプロテクター。
ラビットラビットフォームのような頭部を持つグレートクローズのボディに変身した。
―――Best Match!
想定外の変身をしたためか、本来はボトル装填時にのみ鳴り響くベストマッチ検査機能音声が遅れて流れる。
そう、これはベルトも認めた最高のベストマッチなのだ。
「なにをするかと思えばなんだそれは?ただの繋ぎ合わせじゃないか」
「歪に見えるか?でもな……これが、俺たちのベストマッチだ!」
桐生戦兎の天才的頭脳と、万丈龍我の何にも負けることのない強靭な肉体と精神。
それが兼ね備わったこの姿に、恥じる部分など何一つない。
誇るように左手で赤く伸びるウサギの目を磨き撫でた。
相棒の言葉を借りて、戦兎は高らかに吼える。
「今の俺は、最っ高に負ける気がしない!!」
この力で万丈を取り戻し、新たな世界を創り出す!
チェイサーマッハはあの姿だから心を打つんです!