むかしむかし、あるところに、尋常ではないほど醜い面構えの女王様がいました。
その名前はピンキー。使いの者たちは、彼女の顔を直視しないよう努めていました。
あるとき、ピンキーは子供を生みました。というより、生んでしまいました。
その赤子は出産した瞬間、ウンコが飛び出たのかと思ったほどに、醜く、臭い子でした。ピンキーはその子に、田所と名づけました。
女王室には、ピンキーが持ってきていた、不思議な鏡が一つありました。
毎朝、ピンキーはその鏡に向かって、こう聞きます。
「鏡や、鏡。この世界で一番美しい女性はだれ?」
すると、鏡が声を返しました。
「女王様。あなたこそが、一番美しい」
そう、それは意思をもち、質問に必ず真実を答える鏡であり、ピンキーすらストライクゾーンに入ってしまうほどの、ブス専の鑑だったのです。
それを聞くと、ピンキーはにんまりし、その醜さに拍車をかけ、ぐっすりと眠りました。
ですが、その娘である田所は、体が大きくなるにつれ、どんどんと親に負けじと醜くなっていきます。
田所が24歳、学生になったある日、ピンキーはいつも通り、鏡に質問をしました。
「鏡や、鏡。この世界で一番美しい女性はだれ?」
「女王様、あなたは確かに美しい。ですが、あなたの娘である田所のほうが1145141919810364364893倍美しい」
ピンキーはその事実に驚きました。田所と自分の間に、いつのまにか天文学的数値の差があったとは思ってもいませんでした。
ピンキーは怒り狂い、ヤクザの谷岡に金を渡し、田所の抹殺を依頼しました。
「お前ちょっとクルルァについてこい」
谷岡がそう言うと。
「行きますよ~イクイク」
人を疑うことを知らない田所は、すぐについてきました。
森の中に誘い込み、谷岡は拳銃で殺そうとしましたが、やはりこんなことはいけないと、田所を逃がすことにしました。
「おう、殺す手はずだったけど逃がしてやるよ。あくしろよ」
「粋スギィ」
田所は谷岡に感謝をのべて、森の中へと消えていきました。
どこにも行く当てのない田所は、夜になるまで森の中をさまよい続けました。
「お腹減った。お腹へらない?」
空腹になり、おなかをさすりながら歩いていると、小さな家が目に入ってきました。
「オッスおじゃましま~す」
城生まれで常識を知らない田所は、無礼にもそんなことをいいながら、勝手にドアを開いて中にはいりました。
もし中に、殿レベルの人間がいたら、即打ち首です。いや、まともな人間が田所を見れば、その醜さからすぐに殺しにかかることでしょう。
ですが、幸いにも中には誰もいませんでした。
あったのは大きな机と、そこに豪華な料理がのっていました。
どう見てもそれは、家主がパーティーのために用意したもの。普通であれば食べることははばかられますが、教養のない田所はノータイムで食べにかかりました。
きたならしく、口からボロボロと食べかすを吐きながら、その場の料理を平らげてしまいました。
「ね、寝ますよ」
腹が妊婦ほどに膨らんだ田所は、満腹になって眠ってしまいました。
いびきをかきながら、深い眠りの中にいると、周りから声が聞えてきました。
「やべぇよ、やべぇよ」
「ふざけんじゃねぇよ、どうしてくれんだよ」
「殺されてぇかお前……」
「おまんこ~(憤怒)」
その声に目を覚ますと、なんと田所の周りを小さな7人の小ホモが囲っていました。
彼らが楽しみにしていた、豪華な料理たちは田所の胃の中。
一般の人ならば、ボコボコにリンチした後、地面に埋めるでしょう。
私だってそうします。
しかし、残念ながら彼らの反応は少し違いました。
「はえー、すっごい綺麗」
「いいじゃんいいじゃん」
「いい顔してんねぇ! どおりでねぇ!」
「ちょまって、こんなブスええん!?」
「おまんこ~(歓喜)」
そう、彼らもまた極度のブス選だったのです。そもそも、彼らはTDN人間ではなく子ホモなので、並の人間たちと感性が違うのは、当然といえば当然です。
「城から追い出されちゃってさぁ。ちょっとここに住まわせてくれよな~頼むよ~」
その願いを、子ホモたちは聞き入れ、田所は新しい家族たちと暮らすことになりました。
一方そのころ、お城では。ピンキーはいつも通り、鏡にこう聞きます。
「鏡や、鏡。この世界で一番美しい女性はだれ?」
「女王様、あなたは確かに美しい。ですが、森の奥地に、子ホモ達と住む田所のほうが1145141919810364364893倍美しい」
ピンキーはまだ田所が生きていることに驚きました。鏡は決して嘘はつきません。つまり、谷岡が逃がしたのです。
すぐに、ピンキーは谷岡を呼び出しました。
どうして殺さなかったのかと、見逃したことを責めましたが、谷岡は田所の命を案じて、すでに殺したとしらを切り続けました。
「ええい! あなたが逃がしたことは、もうお見通しなのよ! 死になさい!」
「ギョアアアアアア!!」
ピンキーがガパッっと口を開き、胃液を浴びせると、谷岡はドロドロに溶けていき、骨だけになりました。
裏切り者の始末が終わると、ピンキーは田所を殺すため、一つリンゴを用意しました。
それをベロベロと入念に舐めると、パンツの中に突っ込み、恥部をこすりつけます。
するとどうでしょう、リンゴは黒濁に変色し、毒リンゴに変わったのです。
ピンキーはそれを籠に入れると、老婆に化けて森の中に入ってきました。
すぐに、一人っきりで、子ホモ達のために花を摘んでいた、田所と出会います。
「お嬢さん、リンゴは一ついかがですか」
「リンゴのことが好きだったんだよ!」
田所は、ピンキーに渡されたリンゴを、すぐさま一口かじると、口から臓物という臓物が、全てを吐きでてきました。
血が一面に広がり、胃や腸などがぶちまけられた花畑で、田所は息絶えました。やったぜ。
それを確かめたピンキーは、にんまりとし、そのまま城に帰っていきました。
その夜、田所の死体を見た小人たちは涙しました。
「悲しいなぁ……」
「先輩!? なにしてるんですか、まずいですよ!」
「生き返れ生き返れ」
「あ……やっと、一つの命が終わったんやなって……」
「俺の心の傷が、どんどん開いていきますよ」
「おまんこ~(消沈)」
田所を花のつまった棺桶に入れ、皆で供養しました。
するとそこに、白馬に乗った王子様がやってきました。
名前は木村。散歩中に、偶然ここに通りかかったのです。すごい偶然ですね。
「よお、ホモの兄ちゃんたち。どうしたんだ」
木村が声を変えると、子ホモ達は木村に、田所にキスをするよう願いました。
そう、この手の毒とかは、たいていキスとかで、なんやかんやあって生き返るからです。
「なんでキスする必要があるんですか(正論)」
木村は持ち前の正論で返しました。
残念ながら、木村はまともな感性の持ち主でした。当然、ステロイドウンコの死体とキスはしたがりません。当たり前だよなぁ?
「じゃ、帰りますね……」
木村は子ホモ達を背に、自らの城へと帰って行ってしまいました。
その晩、疲れ果てながらも、城に帰ったピンキーは、早速、鏡に聞きました。
「鏡や、鏡。この世界で一番美しい女性はだれ?」
「女王様、あなた……あな……あなな――」
パリーン。
突然、鏡は砕け散りました。
「いったいどうしたの」
ピンキーは砕けた鏡に向かって聞きました。
「さすがにブススギィ!」
そう、ブス選の鑑である鏡も、さすがに老いと疲れによってブス度を増したピンキーには耐えられなかったのです。
鏡はその言葉を最後に、こと切れました。
ピンキーは怒り狂います。
「私がブスですって! ふざけるんじゃないわよ! 私は美しいのよ、全人民に確かめさせるわ!」
ピンキーはお城にあるお金をあるだけ使い、自分の顔をTV、ネット、新聞など、ありとあらゆる情報媒体で、一斉に流そうとしました。
家臣たちは必死に止めましたが、ピンキーは止まりませんでした。
そして、その瞬間がやってきました。
「さあみんな、私の顔を見なさい!」
ある日の7時。全人民は、ピンキーの顔を直視しました。
デデドン。
きっと、みんな美しいというに決まっているわ。
そう思ったピンキー。と同時に、あることに気が付きました。
音がしない。
突然、城から一切の物音がしなくなったのです。
部屋を出て、声を上げながら廊下を歩きます。ですが、誰も出てきません。
歩き続けると、一人、倒れている使用人がいました。手には携帯を持っています。
ピンキーは使用人に手を添え、ゆすってみましたが、反応はありません。
次に、心臓のあたりに耳を当てます。
音はしませんでした。
「死んでる……もしかして」
すぐにピンキーは外に出て、街に向かいました。
そこで目に入ったのは、道端に倒れている人々でした。
そう、ピンキーの顔を直視した彼らは、全員心停止して、死んでしまったのです。
ピンキーは一人ぼっちになってしまったのです。
絶望の中、できることといえば、膝をついて、天を眺めていることだけでした。
煌々と照り付ける太陽は、砂漠を強烈に照らしていた。
そんな場所で、たった一人、歩く人影があった。
西から風が吹くと、彼女はボロ衣を揺らしながら、手に持っている長い棒を砂に突き刺し、強く握った。
風が去ると、彼女――ピンキーは顔を上げ、先を見つめる。
なにもない。ただ、地平線だけが横にまっすぐ伸び、ピンキーを囲っていた。
ピンキーの顔面が振りまかれたあの日、死んだのは人間だけではなく、植物も腐敗していき、一気に地上は砂漠と化した。
希望はどこにもなかった。あるのは、無限とも思える砂の海。
それでも彼女は歩き続ける。
この地平線の先に、光があると信じて。
The end