「リアルリアル鬼ごっこ」   作:日夏孝朗

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「リアルリアル鬼ごっこ」

 

 

 

 

 宮殿で、じいから王様は初日の報告を受けていた。

「申し上げます。初日にして、すべての佐藤は抹殺いたしております」

「おお! すばらしいな! 初日で、すべてか?!」

「はい、すべて」

「五百万人からおったのに、すべてとは鬼たちは優秀だな。一人で5人を一時間に捕まえる計算だぞ?」

「いえ、捕まえたのは3651人です」

「何っ?! では他の者は、どうしたのだ?!」

「はい、他の者は山田さんと結婚して山田姓になったり、田中さんのところへ養子に入って田中姓になったりして対象から外れることで逃げております」

「うむむ?! なんという逃げ方を……だが、捕まえた3651人は、姓を変えようとは思わなかったのか……」

「はい、だいたいが80歳以上の年寄りで、老い先短く、このまま佐藤のまま死にたいという考えだったようです」

「年寄りか………」

「おかげさまで年金や医療費が概算で1200億円ばかり浮いております。これを捕まえた兵士たちの報償にしては?」

「そうだな」

「では、今回の計画は、これにて終了ということで」

「なに、もう終わるのか?」

「もはや、国内に佐藤はおりませんゆえ」

「……そうか……いないなら、しょーがないな」

 王様は正面からは見えない小さめのマントをひるがえして寝室へ行き、ワインを飲んで眠った。

 

 

 

 クリスマスが終わり、お正月も過ぎ、節分の頃になって王様は、なんとなく納得いかない気分になってきた。

「じい!」

「はっ、何でしょうか」

「あのクリスマス前にやった佐藤ゼロ計画だがな、やはり、やり直そう!」

「やり直しでございますか、ですが、すでに佐藤なるものはおりませんが?」

「いや、あのとき名前を変えて逃げたヤツらは、基本的に佐藤とみなして追え! 結婚して名前が変わってもダメだ! 養子もダメだ!」

「そうですか………あと、前から気になっていたのですが、弟君の王子も佐藤さんですが、どうしますか?」

「うっ……う~ん……弟は見逃せ、家族だからな」

「はっ」

「他は例外なく捕まえよ。改名していてもダメだ!」

「はっ、そうなりますと、ゴーグルのシステム改修に1ヶ月ほど、かかります」

「そうか。では、ひな祭りに行うとしよう」

 王様は、ひな祭りで血祭りにあげるつもりで楽しみに待ちました。

 

 

 

 ひな祭りの日、じいが報告します。

「報告します、捕まえたのは7人です」

「何?! なぜだ?!」

「はっ、もともと佐藤姓だった者たちは、ひな祭りの計画を聞いて、すべて国外に逃げました。すでにクリスマスの頃から予想していて準備していたようでパスポートやビザを取り、この王国から出て行きました」

「むぅぅ……捕まえた7人というのは逃げ遅れたのか?」

「いえ、前回と同じく、やっぱり自分も歳なので、もうそろそろ死んでもいいかな、という年寄りばかりです」

「ぐぅぅ……」

 呻った王様は考え込み、命じます。

「ゴーグルのシステムをミサイルに積み込んで国外に逃げた者を殺せ!」

「それでは世界中の国と戦争することになります。逃げた者は500万人、あらゆる国へいっております。そこへ小型であってもミサイルを撃ち込めば、必ず戦争になりますし、すでに国際社会から我が王国は孤立しつつあります」

「ぐぬぬ……」

「もう、国内に佐藤だった者はおりません。これで、よろしいのではないでしょうか?」

「…………。そうだな、もう、いいか」

 だんだん、どうでもよくなってきた王様は佐藤のことを忘れることにしました。

 

 

 

 五月五日、子供の日、鯉のぼりを見ていた王様は、わがままな幼稚園児のような悪しき想像力を久しぶりに発揮しました。

「じい!」

「はっ!」

「あの鯉のぼりというのは嘘の固まりだな」

「……は? どういう意味でしょう?」

「あれは、鯉ではない、ただの布だ。布に色を塗っただけだ」

「………はい、……たしかに、そうでございます……」

「あのような嘘は気に入らんな。これからは本物の鯉を吊せ」

「生きている鯉をですか?」

「そうだ! ただちに実行しろ!」

「…はっ!」

 兵士たちによって池の鯉が吊されました。鯉のぼりを吊していた棒に、生きている鯉が針金で吊され、ビチビチともがいています。それを見て王様は満足そうに笑います。

「ははは! どうだ、じい! すばらしいだろう?!」

「…はい、すばらしいです…」

「これぞ、名付けてリアル鯉のぼり!!」

「おお…、すばらしいですな…」

 じいは想いました。今回は被害が少なくて良かった、もうリアルシリーズはやめてほしい、と。

 

 

 

 王国の隣りにある国へ引っ越ししていた佐藤愛は、現在はチョッチョポリス愛という名前でしたが、何不自由なく育ててくれた叔父夫婦を睨んでいました。

「お母さんがトラック事故で死んじゃったお金を全部使ったってホントなの?! 私は幼児教育を学べる大学に行きたいのに! 学費がないの?!」

「「………」」

 叔父夫婦は目をそらしました。そばにいる佐藤輝彦にして現在はパンチドリンカー輝彦も弟を睨みます。

「お前にはトラック会社から入った慰謝料を全部、愛の養育費として送ったろうが。1億3千万は、あったはずだ。なぜ、使い切った?」

「王国で一戸建てを買うのに使って、さらに、この国に引っ越してくる費用も大変で。王国にあった一戸建ても、あの佐藤ゼロ計画のときに売り払ったから、買い叩かれてしまって。こっちでも仕事も見つからないし……すいません、兄さん」

「ちっ……とりあえずフルボッコな」

「やっちゃえ、パパ!」

「オヤジ………せっかく空港で再会したのに……けど、まあ、ここは殴るところかもな」

 佐藤翼からウイング翼に改名していた翼は弟を殴る父を見ながら、きっと子供の頃から人を殴ってきたんだな、一番殴られたのは母さんじゃなくて、弟さんなのかもな、と想ったけれど、やっぱり母親の慰謝料を使い込まれたのは許せなかったので、とりあえず翼も蹴りを入れておいたし、愛はリアル焼き入れと称して、熱くしたフライパンで叔父を殴った。

 

 

 おわり

 

 

副題「リアルな対応」

 

 

 







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