転生天使は視続ける   作:オルフェイス

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前回少しだけ出たアッシュの視点です。


配下の勇者。魔王達の宴にて────

リムル・テンペスト。

 

 

それが、今回の魔王達の宴(ワルプルギス)で調査することになった者の名前。

 

 

師匠曰く「興味深い存在」であるらしい。

 

 

とある情報源から聞いた話によると、人と魔物の共存を掲げる変な魔物───いや、魔王であるらしい。

 

 

確かに、そういう意味では興味深い存在なのだと思う。今まで誰もしようとしてこなかったことをしようとしているのだから、誰だって興味を示す。

 

 

けど、師匠はそこが気になったわけではないらしい。

 

 

師匠は、暴風竜ヴェルドラとミリム・ナーヴァの関係に興味を持った。

 

 

どちらも世界最強クラスの存在で、暴風竜の方はよく暴れることで有名だ。何百年か前に封印されて以降、音沙汰はなかったと聞く。

 

 

そして、暴風竜は勇者の施した封印から解かれたにも関わらず、未だに暴れ出す様子がないらしい。

 

 

ヴェルドラが暴れだしていないのは、新しく誕生した魔王リムルが関係している───というのが、師匠の見解だ。

 

 

魔王ミリムも、魔王リムルが作った町に頻繁に訪れていたらしい。

 

 

そして、魔王ミリムは魔王クレイマンに操られている────フリをしているのだとか。

 

 

なぜそんなことをしているのか、師匠にも理由はわからないらしく「ミリムにはミリムの考えがあるのでしょうね」と言っていた。

 

 

だからこそ、そういった諸々を調べるために、私をギィ・クリムゾンの所に行かせた。

 

 

……レジーは、ギィ・クリムゾンと一緒であるということが不安だから、軽い口調で言いながらも師匠に言及していたのは、わかっている。

 

 

でも、私だっていつまでも弱い訳じゃない。ちゃんと成長して、強くなっている。

 

 

今はまだ、仮面で顔を隠してないと不安だけど……いつか、私は自分に打ち勝てるようになりたい。

 

 

『そろそろ着くみたいだな』

 

 

「……」

 

 

考え事をしているうちに、魔王達の宴(ワルプルギス)の会場にたどり着いた。

 

 

他の魔王の姿は見受けられず、いるのは目の前にいるギィだけだった。ギィは目の前にある椅子に座り、他の魔王が来るのを待つ気らしい。

 

 

目の前にいるのはギィ・クリムゾンであり、今の私は、それに従う従者。

 

 

今回限りの関係であり、喋らずに、魔王リムルの性格と能力を見極める────

 

 

師匠と視界を共有しているので、解析は師匠がやってくれている。だから、私はただ見るだけでいい。

 

 

ついでに、もし戦闘になった場合は見て技を盗み、自分の力に変える。

 

 

下手なことをしなければ、簡単な仕事になる。

 

 

────そう、下手なことはせず、自分より強い存在に絡まれたりしなければ、無事に終われる。

 

 

そう考えていると、他の扉が開き、そこから新たな魔王が出てきた。

 

 

それも、二人か。

 

 

『(アイツは、ラミリスか。で、もう一人が……)』

 

 

「(……魔王リムル)」

 

 

青銀色の髪と黄金の目をした、見た目だけなら私よりも年下である、新しい、スライムの魔王────

 

 

あれが、魔王リムル。見ただけでは、その強さを図ることは出来なかった。そのエネルギー総量も、全くわからない。

 

 

エネルギーが溢れていることはなく、隠蔽は完璧。

 

 

目の前のギィ・クリムゾンとは、全く別のタイプだ。

 

 

魔王リムルがエネルギーを完璧に隠す隠蔽型だとすれば、魔王ギィは敢えてエネルギーを出し、相手を騙す誤認型。

 

 

戦う前から、勝負は始まっている…ということか。

 

 

『(へぇ?なんだ、思った程じゃねぇな)』

 

 

───私には解析出来なかったが、レジーには解析できたらしい。

 

 

『(エネルギーは覚醒魔王並、それに、究極能力を二つ……いや、それ以上持ってやがるな。まぁ、流石に中身まではわからねぇか)』

 

 

「(えっ?)」

 

 

声には出さなかったものの、驚いてしまった。本来なら一つしか獲得できない究極能力を、二つ以上保有している────通常は、ありえないことだ。

 

 

その、はずなのだ。だから、魔王リムルは異常だということ────私には、それだけしかわからなかった。

 

 

師匠は、魔王リムルの特異性に気づいていたのかもしれない。だから、それを確認するために私を送り込んだ────?

 

 

『(いや、流石にそこまでじゃねぇだろ。何か気になったからって理由だと思うぜ?今のアイツは、見ることしか出来ないしな)』

 

 

「(……視ることしか出来ないからこそ、私たちがいる)」

 

 

『(…ま、死なないようにしろよ?)』

 

 

レジーはそう言うと無言になり、静かになった。

 

 

今は、何も考えなくていい。ただ、目の前のことを観察するだけでいい────

 

 

新たに魔王ダグリュールとディーノ(師匠に教えてもらった)が入ってきて、ディーノはラミリスと会話をはじめていた。

 

 

といっても、魔王ラミリスは自分の配下の自慢しかしていない。一応、耳には入れておく。

 

 

次に現れたのは有翼族(ハーピィ)の魔王であるフレイと、その従者……?

 

 

明らかに、一人おかしい人がいた。一見、獅子のマスクを被った有翼族(ハーピィ)のように見えるけど……

 

 

『(あ?あいつ、カリオンじゃねぇか。なんだ、死んでなかったのか)』

 

 

レジーが呟いた一言で、あれが誰なのか把握した。

 

 

魔王カリオン───たしか、今回の魔王達の宴(ワルプルギス)の開催の原因……だと言われている。

 

 

師匠は「間違いなく嘘でしょうね」と断言していた。

 

 

私がジュラの大森林について知ってることは少ないけど、師匠が言うのならそうなのだろう。

 

 

『(つーことは…なんだよ、茶番かよ。つまんねぇなぁ、おい)』

 

 

「(レジー)」

 

 

『(へいへい)』

 

 

レジーは魔王カリオンの生存で全てを把握したみたいで、途端につまらなそうにしていた。

 

 

けど、それはわかりきっていたことだ。これは茶番。魔王クレイマンが踊る、サーカスのようなもの───

 

 

それは、レジーにもわかっていたはずのこと。だから、今こんなふうに不貞腐れているのは────

 

 

「(…ありがとう)」

 

 

『(…気づかねぇフリでもしてくれたら、嬉しかったんだがなぁ)』

 

 

心の何処かで緊張していた私を、和ませてくれたのだろう。

 

 

だから、ちゃんと感謝の言葉を言う。私の相棒には、本当の自分でありたいから────

 

 

────他の扉が開く。

 

 

出てきたのは、魔王ヴァレンタイン───魔王に化けた偽物と、従者に化けた本物。本当のヴァレンタインは、従者の方だ。

 

 

直感だけど、これはすぐに見分けがついた。なんというか、分かりやすいのだ。

 

 

王者の雰囲気を隠しきれていない。多分、他の人にはわからないものなんだろうけど─────私には、わかる。

 

 

『(くくく、王者の雰囲気ねぇ……アッシュ、お前の持つスキルって─────)』

 

 

「(からかわないで)」

 

 

『(ちょ、まだ言ってな────ぎゃぁぁ!)』

 

 

今は()()に入っているレジーにはお仕置きをしておいて、次に入ってきた魔王を観察する。

 

 

新たに入ってきたのは、魔王レオン・クロムウェル────私と同じ覚醒勇者であると、師匠に聞いた。

 

 

そして、元人間である、とも。

 

 

───けど、さほど興味はない。気になることもない。知りたいことは、全て師匠が知っていたから。

 

 

魔王レオンは、魔王リムルと会話をしているのが見えた。内容も聞こえるが、私の知らない人物のことだったので、そこはスルーした。

 

 

そして、しばらくして─────この魔王達の宴(ワルプルギス)の主催者が、訪れた。

 

 

魔王クレイマン。確か、傀儡王だとか言われている魔王……でも、見た限りまだ魔王種のままだ。

 

 

少なくとも、私よりは弱い。

 

 

…それと、魔王ミリムも一緒に来ていた。

 

 

魔王ミリムは無表情で、感情が抜け落ちたような顔をしている。

 

 

魔王ミリムのことを知っている人物なら、それはおかしいと気づくだろう。

 

 

クレイマンに操られている───そう考えるのは、魔王ミリムのことを深く知らない人物のみ。

 

 

例えば魔王カリオン、フレイ、クレイマンなどの新参の魔王は、間違いなくそう誤解していただろう。

 

 

でも、本当に操られていると思っているのはクレイマンのみ。なぜなら、魔王フレイとカリオンは、魔王ミリムが操られていないことを知っている。

 

 

この茶番を行っているのは、他ならぬ魔王ミリムだ。傀儡王クレイマンが、逆に傀儡にされている───なんともおかしな話だ。

 

 

だから、クレイマンがミリムを殴り付けても、愚かなことをしているとしか思わなかった。

 

 

『(くくく、滑稽だなぁ、おい。笑えてくるぜ)』

 

 

本当に操られているのはどちらなのか────

 

 

魔王クレイマンは、死を持って、それを知ることになるだろう。

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

────そして、クレイマンは死んだ。

 

 

途中、半端な状態ではあったけど、覚醒魔王になったのにそれはもう、あっさりと。

 

 

魔王リムルによって、滅ぼされた。

 

 

……クレイマンとの戦闘に入る前に、リムルとミリムが戦ったが、それも最後になってミリムがネタバラシをしたせいで、さらっと終わった。

 

 

あと、その戦闘の最中にヴェルドラが出現したり、クレイマンとリムルの配下同士の戦いがあったり、かと思えばラミリスの配下───ベレッタというらしい───が魔人の戦いでリムル側についたり、クレイマンと協力関係であった、フリをしていたフレイが裏切り、カリオンが正体を表したり────あと、私の予想通り、魔王ジル・ヴァレンタインは偽物で、本物の魔王はルミナス・ヴァレンタインだということが判明したり───

 

 

一気に話が進んだ。

 

 

────そして、魔王カリオンと魔王フレイは、魔王ミリム・ナーヴァの軍門に降りた。

 

 

つまり、カリオンとフレイは、もう魔王では無くなったのだ。軍門に降りるというのは、そういうことだ。

 

 

同時に、カリオンとフレイは自力での覚醒魔王に至ることが出来なくなった。

 

 

師匠曰く「理論上、配下になった魔王種でも覚醒は可能」であるらしい。ただ、そのために必要な(ヨウブン)がどれだけ必要なのか、不明なのだとか。

 

 

過去に配下の魔王種を覚醒させた魔王はいないらしいので、所詮は理論上でしかない、とのこと。

 

 

あまり私には関係ない話だったので、たまに思い出す位にしか記憶していない。師匠も、それについては何も言ってこなかったので、そこまで重要なことでもないのだろう。

 

 

予想外ではあったけど、ヴェルドラの姿は確認できた。一目見ただけでは、弱っているようにしか見えないが、実際はエネルギーが外に漏れでないように制御しているのだろう。

 

 

カリオンとフレイが魔王から降りたので、十大魔王から八大魔王になってしまったが、それがあまり良くないらしく、魔王全員で名前を考えることになっていた。

 

 

別に、名称くらい他人が考えたものでも良いのでは?と最初こそ思ったが、思い返してみれば、この世界において、名前とは非常に重要な要因(ファクター)だ。

 

 

魔物が名付けによって進化することを考えれば、それも当然と言える。

 

 

だから魔王たちも、こんなに名前に拘っているのだろう。

 

 

異世界から来た人間である私には、正直分かりづらいことだった。

 

 

そんなことを考えていると、魔王リムルが新たな名称を決めていた。

 

 

八星魔王(オクタグラム)

 

 

新星(ニュービー)であるリムルが付けた名前────これには他の魔王も満足しており、こうして魔王達の名称は決まった。

 

 

そうして、少しの会話の後────魔王たちは解散した。

 

 

これで、私の長いようで短い魔王達の宴(ワルプルギス)が修了したのだった。

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

「ただいま戻りました、師匠」

 

 

「ご苦労様です。それで、どうでしたか?魔王達の宴(ワルプルギス)に行ってみて」

 

 

「…もう、行きたくないと思いました」

 

 

「そうですか。ですが、これで魔王の強さがわかったでしょう?」

 

 

「はい。師匠の言っていた通り、上には上がいました。魔王ギィもそうですが、魔王ダグリュールとディーノ───それに、ミリムは今の私よりも強い」

 

 

「そう、正確に判断できているようですね。では、レオンは?」

 

 

「……苦戦はすると思いますが、そこまで厄介でもないかと」

 

 

「相性の問題もあります。貴女とレオンは、とても相性が良い。だから、そう思える」

 

 

「………」

 

 

「学びなさい、アッシュ。貴女が、強くなりたいと思うのであれば───」

 

 

「愚問です、師匠。私は、皆と共に強くなります」

 

 

「倒せるといいですね?仇を──」

 

 

「─────そのために、強くなっていますから」

 

 

 

 




アッシュには復讐するべき相手がいます。因みに相手はオリキャラです。
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