転生天使は視続ける   作:オルフェイス

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最初はアスティ視点ですが、三人称視点に変わります。


…あと、遅れてすいません!

アスティの出番が少ないです。


魔国。向かう配下たち

 

────迷宮。

 

 

この世界において、本当に迷宮といえる場所はたった一つしかない。

 

 

いや、正確に言えば生み出せる存在は、なのだが、まぁそれは置いといて。

 

 

この世界の迷宮は、魔王ラミリスの持つスキルによってしか創造することはできない。その創造された迷宮を支配することなら可能かもしれないが、一から作り出すことは、それこそヴェルダナーヴァか、ラミリス本人でない限りは不可能だ。

 

 

だが、今まで魔王ラミリスがこの迷宮を活かしきれていたのか、と言われれば、そうではない。

 

 

そのスキルは、配下がいて初めて真価を発揮するものだ。迷宮内において、ラミリスが実現できないことは殆どないと言っても過言ではない。

 

 

例え配下が死んだとしても、それが迷宮内であれば、ラミリスが死ぬことを望まない限り、死ぬことはなく、滅びることは決してない。

 

 

ラミリスは、魔王になってからはその力を持て余していたように見えた。いや、本人はそう思ってはいないのかもしれないが、配下がいない状況で、ラミリスは力を奮うことがなかった。

 

 

配下がいてこそ、ラミリスの迷宮は真の強さを発揮する。だが、逆に言えば、配下がいなければ迷宮は怖くはない。攻略も容易い。

 

 

なので、魔王ラミリスは倒そうと思えば倒せる存在でしかなかった。

 

 

────そう、魔王リムルが誕生するまでは、そうだった。

 

 

だが、魔王ラミリスと魔王リムルの協力関係が結ばれたことで、ラミリスは新たな配下を得た。

 

 

そして、魔王リムルの助言によって、迷宮はさらに進化して───とうとう、難攻不落の迷宮が完成したのだった。

 

 

 

 

▲▼▲▼

 

 

 

 

────というのが、私から見た迷宮の概要だ。

 

 

といっても、迷宮を覗くのは相当集中力が必要で、全貌がわかったわけでもない。

 

 

だが、ラミリスの迷宮に着々と大きな変化が訪れているのは、はっきりと見えた。

 

 

そして、どうやら魔王リムルは、ラミリスの創造した迷宮を使って人を呼び込む気でいるらしい。というか、祭りを開いて迷宮を解放していた。

 

 

何処までも甘い、優しい魔王。だが、それでいて魔王リムルには冷徹さも見えた。

 

 

いざとなったら、敵対者を容赦なく殺すことが出来る冷酷さも持ち合わせている。

 

 

それに、自国に外部の者を入れる危険性も、わかっているはずだ。いや、それ以上の危険性も、わかっているはずなのだ。

それなのに、敢えて内部に侵入される危険を犯すのは、一体どういうことなのか。

 

 

……自信、もあるのだろうが、あれはやりたいからやっている────云わば、我が儘だ。

 

 

自分の欲しいものは手にいれるし、やりたいことはやる───良い意味で、欲深い魔王だ。嫌いではない。

 

 

なら、危険もなさそうなので、折角だし私の配下たちに行ってもらうとしよう。

 

 

魔王リムルの統治する国───ジュラ=テンペスト連邦国に。

 

 

 

「あの、師匠。話が唐突────」

 

 

「おぉ!最近噂の魔国か!いやぁ、行ってみたかったんだよなぁ!楽しみだな!」

 

 

「うっさい。わかるけど、黙って」

 

 

「ディッカ、あれは言って聞くようなやつではないだろう。ああいうのは放っておくしかない」

 

 

「そうは言うけどね。最低一回は言わないとずっとあれよ?」

 

 

「…まぁ、わかるがな……だが、言っても聞かないのも事実だ」

 

 

「………眠ぅ」

 

 

「あの、寝るのは行ってからにしましょう?」

 

 

『くくく、今言っても無駄だろうぜアッシュ。もう寝てやがる』

 

 

「……いつも思いますが、個性豊か過ぎますね、ここは……」

 

 

「そんな貴女に、良い言葉を教えてあげましょう───類は友を呼ぶ、ですよ」

 

 

「知りたくありませんでしたね、そんな言葉」

 

 

 

 

▼▲▼▲

 

 

 

 

─────時と場所は変わって、現在。

 

 

魔王リムルのおさめる国に、彼女らは訪れていた。

 

 

「ここが……賑やか、ですね」

 

 

『くくく、中々楽しめそうじゃねぇか。お?あっちになんか売ってんな。なぁアッシュ、後で────』

 

 

「……わかったから、少し大人しくして」

 

 

一人は仮面を付け、フードを被った少女───といっても、仮面で顔は隠されている───アッシュ・グレイル。

 

 

その手には大きな大鎌を持ち、一目見ただけでは『死神』にしか見えない。

 

 

そして一人でブツブツと何か言っているため、何処となく───いや、完全に不気味だった。

 

 

「ふーん。魔物に、人に……本当に色んな種族がいるんだ」

 

 

そう呟いたのは、見目麗しい顔を持つエルフの少女────ディッカ。

 

 

腰に細剣を携え、軽装だが装備を身に付けているその姿は冒険者のようにも思える。

 

 

そんな彼女は物珍しそうに周りを見渡し、魔物と人が共存している光景を見るたびに、不思議そうに、それでいて楽しそうに微笑んでいる。

 

 

「おおおお!見たことがないものが沢山あるな!早速行って────」

 

 

「おい待て。いきなり行こうとするな」

 

 

そう言って何処かに行こうとしているのは、黒い鎧を身に纏い、大きな槍を背負っている若い少年───園部琢磨(タクマ・ソノベ)

 

 

そして、それを止めているのは全身赤色の服を着た男────メルギリス・アルバーグ。

 

 

明らかに重いのはタクマの方であるはずなのに、赤いメルギリスはまったく引きずられる様子もなく、タクマの首根っこを掴んで留めていた。

 

 

「………ぐぅ」

 

 

「……寝ていないで、さっさと起きてください」

 

 

そう言いながら、未だに背中で眠り続けている幼女を起こそうと体を揺すり、声を掛けている和服の女性────柳春風(ハルカゼ・ヤナギ)

 

 

ハルカゼに背負われ、ぐぅぐぅと安らかに寝ているのは、サイズがまったく合っていない服を着た幼女─────ナルカムイ。

 

 

彼女たち六人が、アスティ・ソロアの配下。そして、全員が最低でも準魔王級の力を持つ強者。

 

 

そんな彼女たちが、魔王リムルの統治する魔国に訪れた、その目的は─────言ってしまえば、ただの観光である。

 

 

アスティは魔国を──正確に言えばリムルのことを危険ではなく、問題もないと判断したから彼女たちを向かわせた。

 

 

勿論、ヴェルドラという危険な存在もいるが、今のヴェルドラはそうそう暴れることはないと判断してのことだった。

 

 

だから、彼女たちを向かわせることを考えた。もしもヴェルドラが未だに暴れるようであれば、向かわせることはなかったであろう。

 

 

それと、どうやら複数の魔王がこの国に来ているようだが────アスティはそれを問題としていなかった。手を出すようなことをしなければ、何の理由もなく襲ってくるような相手ではないからだ。

 

 

ベンチを見つけたハルカゼは、未だに背中で寝ているナルカムイをそこに降ろし、全員がいることを確認して言葉を発した。

 

 

「では各自、問題を起こさないように行動してください」

 

 

ハルカゼがそう言うと、寝ているナルカムイを除いた全員が赴くままに、魔国の奥へと進んでいった。

 

 

ディッカは人と魔の住まう魔国の観光を────

 

 

タクマは面白い物を、楽しい事を見つけに──────

 

 

メルギリスは強い者を探しに─────

 

 

ハルカゼは美味しい物を、美味を探求するために─────

 

 

ナルカムイはただただ眠り─────

 

 

アッシュは情報を得るために─────

 

 

今、アスティの配下六名が、魔国に放たれたのだった──────

 

 

 

 

▲▼▲▼

 

 

 

 

『迷宮深層にて』

 

 

 

 

「ちょ!?し、師匠師匠!なんか迷宮がヤバイことになってるよ!?」

 

 

「む、どうしたラミリス。そんなに慌て────む!?なんだと、もう70階層まで行かれているのか!」

 

 

「こんなにハイスピードなのは予想外なんだけど!?」

 

 

「クアーッハッハッハ!面白い、このペースならあと数時間もすれば最深層に到達するであろう。迷宮の王として、盛大に出迎えてやらねばな!」

 

 

「……うーん?あれ、この人間、何処かで見たことあるような……何処で見たっけ……?」

 

 

 

 

 

 

『武闘大会にて』

 

 

「これでぇ、フィニッシュ、だぁぁぁ!」

 

 

「ぐぼぉ!」

 

 

『おおっと!メズール選手に勝利したゴズール選手、ミスターブラック選手のパンチにノックアウト!自慢の再生能力も役に立たず───!勝者、ミスタァブラァァァクッ!』

 

 

「ふぅむ、楽しくはあったが、あまり強くはなかったな……次に期待するか!」

 

 

 

 

▼▼▼▼

 

 

 

 

「がーはははは!速いだけでは俺には勝てん!出直してこい!」

 

 

『なんと!変身したゴブタ選手、ラリアットで向かい打たれ、一向に起き上がらない!ミスターブラック選手によって一発KOだぁぁ!』

 

 

「ゴブタのやつめ。あっさりとやられおって……リムルよ、ゴブタをワタシに預けてくれ。そうすれば、立派な戦士に育て上げてやるのだ」

 

 

「あれ、案外あっさりとしてるんだな。てっきりもっと怒ると思ってたんだけど」

 

 

「それは仕方あるまい。なにせあれはアスティの配下。生半可なことでは倒せない相手なのだ。だから、次に戦うときにあんな無様な負け方は許さないのだぞ!」

 

 

「ん…?いや、アスティって誰だよ?」

 

 

「む!?い、いや、アスティはまた別の日に話すのだ。それよりもリムル!」

 

 

「あぁうん。ゴブタね。それなら、俺も頼みがあるんだけど─────」

 

 

 

 

 

『とあるベンチにて』

 

 

 

 

 

「……すぴー」

 

 

「あれ、誰か寝てる」

 

 

「ん、どうしたの?あら、この子───っ」

 

 

「…お姉ちゃん?どうかしたの?」

 

 

「…いえ、なんでもないわ。皆と離れちゃってるから、急ぎましょう」

 

 

「……うん!」

 

 

(なんなのかしらね、あれは。あんな場所で寝てていい存在じゃない。私じゃあ間違いなく負ける。そもそも、勝負にすらならないでしょうね────)

 

 

(あれ、なんで私、あの子のこと、怖いって思ったんだろ……?)

 

 

 

 

『とある食事処にて』

 

 

 

 

「ふぅ……おかわりください」

 

 

「じょ、嬢ちゃん。流石にこれ以上は無理だからな?」

 

 

「…仕方ありません。次にいきますか。あ、店主。何処か良い所を知りませんか?」

 

 

「あ、あぁ……ここから北に餃子やラーメンを───」

 

 

「では、そこに行きます。ご馳走さまでした。美味しかったですよ。お代はそこに置いておきますね」

 

 

「ま、毎度あり……

な、なんて嬢ちゃんだ。たった一時間で店の食べ物を全部食いつくしやがった……」

 

 

 

 

『演奏場にて』

 

 

 

「………」

 

 

『どうだアッシュ。良い演奏じゃあねぇか?』

 

 

「そう……ですね。昔を、思い出します」

 

 

『……あー。悪い』

 

「いいよ、別に。昔は昔、だから」

 

 

「────それで、何か良い情報は得られましたか?」

 

 

「っ!?し、ししょ───」

 

 

「そんなに驚かないでください。今回、私も少し気になったので来てみただけですから」

 

 

「……師匠、なぜ突然……?」

 

 

「貴女にとって、良い情報が手に入ったからこうやって直接言いに来たんですよ────戦争屋を、東の帝国で視ました」

 

 

「────」

 

 

「ですが、すぐには行かないこと。最近の帝国はキナ臭い。単独で行くことはないように」

 

 

「それ、は……はい。わかりました、師匠」

 

 

「よろしい。では、レジー。アッシュのことは頼みましたよ」

 

 

『はっ。言われるまでもねぇよ』

 

 

「……ところで、ディッカ?聴こえてますか?」

 

 

「えっと、多分聞き惚れているせいで、他の音が聞こえないんだと思います、けど……」

 

 

「音楽を楽しんでいるようですね。感受性が強いことは、いいことですよ」

 

 

「……ちゃんと、聴いてるから」

 

 

『反応が遅かったけどなぁ────ちょ、振るなぁぁぁ!!』

 

 

「そういうこと言わない」

 

 

「……まぁ、自覚はあるわよ。それでも、こっちを優先してるだけだから」

 

 

「それなら結構。今日は楽しむと良いでしょうね」

 

 

「ふふ、言われるまでもないわよ」

 

 

 

 




ちょっとわかりづらいところもあったと思うので、少しおさらい。

『迷宮深層にて』
行ったのはメルギリス。会話はラミリスとヴェルドラ。
『武闘大会にて』
タクマ、ソーカ、リムル、ミリム、ついでにゴズール。
『とあるベンチにて』
ナルカムイ、クロエ、ヒナタ。
『とある食事処にて』
ハルカゼ
『とある演奏場にて』
アスティ、アッシュ、レジー、ディッカ。

でした。
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